キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
何処かの空間、その隙間のロココ様式の部屋ではユメ先輩がふと疑問を述べた。
「師よ、そもそも先生ってどんな感じで生きていたんです?」
「まだ許してないよ。それで何処からだ?」
「そもそも先生ってどういう人かまだよくわからないんです」
「そりゃ分かんないよ。僕らも分かんないんだから」
タイユランの何を言ってんだバカという目で、ユメ先輩を見た。
ユメ先輩は唖然とした顔で張り付き、セイアの長耳を弄んでいる。
「師、それでも外務大臣なんですか……!?」
「相手に容易く君の事理解してるよなんて言う奴は無責任なヤリチン野郎だよキミ、馬鹿じゃないのか?!」
相変わらずコントするのが好きだなと思いつつ、セイアはユメ先輩の手を払いのけた。
「私も知りたいな」
「君も知りたいの? それを言われると弱るな」
「師が冷たいです」
「冷たいのは君の遺体だろ」
呆れた自称警察大臣が呟く。
窓の向こうからはプラナがやや不安げにこの光景を見ている。
”僕も知りたいな”
「むう、多数決はこういう時に困るな、じゃあ話そうか、最初からにするかい?」
頷くのを見て、ごそごそと音を立てて画面のリモコンを探す。
映し出されるのは大西洋を中心とした地図だ。
「このバカでかい海が大西洋、視点はすこーし彼が生まれる前から始まる。
当時フランスは絶対王政ではありつつも段々平民が力を有し始めていた、所謂3部会という制度が成立し、王様に意見を提案しようと言う制度が出来ていた。
だがブルボンの過ちが起き始める、戦争をし過ぎた、金がない」
「なんだか親近感を感じて来ました」
「アビドスなんかよりは複雑だよキミ」
タイユランはそう言うと、視点を地中海へ映す。
「そんな時に独立戦争で熱狂に燃えてたコルシカ島を宗主国のジェノバが治安維持に手を焼いてフランスに引き渡した、遠征軍が送り込まれ、抵抗者をぶち殺して征服と言う訳だ、無論島民は抵抗したから何人も死んだがね」
「……外の世界は偉くあっさり死んでいくんだな」
「この当時のフランスの人口は3000万人ぐらいだ、出生率が高いのはある程度の医療の成立とシステムの成立と避妊技術が未発達なのが大きいけど、産んでいかないと消費と生産レートが狂うからね」
その言葉に”先生”以外の二人はやや鼻白んだ。
”僕の時代は生まれてこのかた人口減少とか少子化だったなあ”
「発達し過ぎて高齢者が死なない上に子供の育成費用が高騰してるからね、成熟した資本主義社会では投資の余地がなくなるのと同じだよ」
咳払いして、タイユランは話を戻した。
画面が変わり厳めしい鋭い顔をした女性が映る。
「で、これが皇帝の母親、レティツァさんだ、島民だから当然コルシカ人ゲリラ戦士でもあったという話だ。
彼女は皇帝以降も子を増やし、かなり子沢山で長生きして歴史の変化を見ていく」
「……もしかして師よ、人相は母親似ですか?」
「父親似が近いかも知れないね、不思議と彼は両親に愛されたと確信を抱く根拠があるタイプの独裁者だ」
画面は更に変わり、幼少期のナポレオンを映す。
「いやあしかし話に聞く限りこの頃から元気だったらしいんだ、ガキ大将で喧嘩っ早いというんだからね。
不思議なのは女子には手を上げないと言うんだ、案外彼なりのマチズモとかかな、立派と思うけど」
画面に幾つかの経歴が映る、その文字を見てセイアが首を傾げた。
「5歳までは女子向けの修道院とあるけど、事実なのかい?」
「事実だけど理由は幾つかある、喧嘩っ早い彼に手を焼いた母親の方針と、単純にそこの修道院の作るジャムが美味しいからというものだ。
噂だが彼の初めての恋愛もそこが舞台と言う説がある、子供の頃のものだけどね」
「手を焼いたんだな……」
「兄を泣かしてる程度に……」
セイアが呆れた顔をした。
「結構ゲヘナ的ですね……」
「それがこの後幼年学校に入って以降、彼は急激に数学に傾倒して才覚を見せていくんだ。
この当時ではフランス国内でもかなりの数学者なんだが、この後の数学的計算も優秀だから彼はある種天才として産まれたんだな。
それはそれとして反抗的だった、姿勢が悪いと手をマスケット銃の装填用のウェルロッドで叩かれてキレて教師に銃を向け、ケンカは良く起こした」*1
「やっぱりゲヘナじゃないですか」
「ちなみに大好きなのは図書室、ガリア戦記とかを速読しちゃうタイプでどんどん読んじゃう」
「あれっ急にトリニティ?」
ユメ先輩が困惑しながら首を傾げた。
セイアも唖然としつつ尋ねる。
「……師よ、聴きたいがこれ当時は何才だね」
「士官学校卒業して砲兵中尉になるのが22とかそこら辺だから、まだ10歳とか中学生までだけど?」
「ここまで誰も殺してないことを驚くべきかな」
「流石に止められただろうしね」
殺意は否定しないんだ。
セイアの困惑を置いて、話は進む。
「数学優秀と言う点からパリ王立士官学校へ入って、彼の運命の転機が起き始める。
まず、海軍に入るかという悩み、そして父親の死。
これが結構響いてくる」
「どうしてです?」
「本当は海軍に入ろうか本気で悩んだらしいんだ、彼、それに金がないんだ、父親が死んで母親に強請る訳にはいかないから」
金がないと夢も追えんからなあとタイユランは思いつつ、話を続ける。
「結果、彼は士官学校のカリキュラムを11ヶ月で促成栽培されるという手段で卒業した。
砲兵科は数学ができる将校が不足するものだし、彼には金が必要だった、こうして砲兵として学校を更に過ごして、若き中尉が成立する事となる。
最初の配属は南仏の砲兵連隊だ」
”士官学校卒業して中尉になるのが早いね”
「……そうか、君のところじゃ少尉というのが実のところぺーぺーの社会人1年生と言うのは馴染みがないかね。
基本的な軍隊は中尉以降が現場に慣れ始めた正社員扱いだからね」
”先生”は納得した。
画面には砲の射撃練習をさせながら「眠い」と退屈気なナポレオンが映っている。
「この時期の彼だが中々不良軍人と言うべきでね、好きでなった軍隊だがフランスは好きじゃないときたもんだ。
配属先で出会った女性と初恋を始め、交際も始めたが、ある時期からあれこれ理由をつけて軍務の休暇を申請し、給料を取りつつ地元コルシカ史を書き始めるんだ」*2
「とんでもない事してないか?」
「だってこの時期の彼フランス軍人と呼ぶにはあんまり……」
タイユランが目を逸らす。
「ちなみに裏では私や警察大臣らが神学校蹴りだされたりあれこれしてた」
「貴方も貴方でなにをしてるんです」
「馬鹿に馬鹿と言ったと思ってくれ!」
笑いながらタイユランと自称警察大臣が画面を変える。
「さて、そんな中で遂にフランス経済が遂にアビドスよりヤバい状態になった、ちょうど少し前にアメリカと言う国の独立戦争に首を突っ込んだら戦争に金を使い過ぎたんだ」
”あー、独立戦争……”
「しかも独立した合衆国は王様が居ない国だ、自分たちで決めて国を動かすと言う前例がない事態が起きちゃって常識がひっくりかえった。
神も王のいない国じゃ恩寵はないと言うのが一般的だったからね」
1789年かぁ、懐かしいなあと思い出深そうに大人たちが画面を見ている。
ネッケル解任でキレた群衆がバスティーユを襲い、チュイルリーへ雪崩れ込む、いやぁ革命かな。
「そんでもってそのころ、ちょうど若き日の彼はパリに居た。
休暇の取り過ぎで書類を出さなきゃいかんからな、彼はそんなバスティーユ以降の混乱したパリを見て心底暴徒が嫌いなんだ。
まあこの以前に砲兵連隊の将校として暴動鎮圧に出たんだが、彼ははっきり命令した。
”浮浪者を率先して撃ち殺せ”、見せしめとして死んでもいい奴を即断したんだ」
「えっげつないですね……」
「でも効くんだよねえコレ、即断即決したから効果絶大だ、軍隊が即座に”それ相応の手段でやるぞ”と見せるのは大事だからね」
そう言う点ではカヤの政策は半端に過ぎたんだよなあ、連邦生徒会会長の政策もそうだ。
SRTなんていう藁人形なんか用意しちゃそいつにヘイトが流れるんだから、最高権威者に向けさせて叩き潰すのが肝要なのに。
「そんなわけで彼は再び長期休暇を出して地元へ還った」
「帰るんだ……」
「帰るんですね……」
”帰っちゃうんだ……”
「そりゃ勝手に殺しあえと言いたくなるでしょ、彼からすればぶっちゃけ他人どころか半分敵だし」
画面は変わって、でかでかとサングラスをかけた男が映る。
『ずっと以前、国王と会った事がある。
戴冠式の帰り、11歳でラテン語の最高成績でお祝いの詩を読んだ……貧しく勉強だけが生活。
ようやくもらった誉め言葉、天にも昇るここち』
『優しいルイおじさんをどうする気です?』
『死刑』
余りにも衝撃的な発言に3人が全員驚愕した。
「というわけでパリではこのロベスピエール氏のジャコバンが天下を握りそうになり出した。
”キミ”は知っているだろう?」
”確か恐怖政治を作った人ですよね? ”
「その通り、カヤ室長もこれくらい出来ればよかったのかもしれないが、こんなのが増えても困る」
画面は幾つかの勢力が解説として映し出されている。
「まずジャコバン、過激派でそれ故に少数だ、当初は立憲君主制フランスを図るがヴァレンヌ逃亡事件で国王への国民支持が弱まり国王と仲たがいしてしまった。
続くジロンド、何がしたいか分からない。経済と革命防衛戦争をグダグダにしてしまった。
こうした革命諸勢力は王党派と同じくどうすればいいか分からないまま暗中模索していたんだ」
「懐かしぃねぇー、私が地獄へぶち込んだツラが見える」
「もっかいサン=ジュストが首飛ばしに来るから辞めなさいジョセフくん?」
けらけら笑う自称警察大臣がタイユランに釘を刺された。
「そんなパリでの混乱は突然コルシカを襲った、コルシカ独立論が出て来たんだ」
「えっ、いきなりかい?!」
「そーなんだよー、革命なんていつもそうだけどね」
画面が変わり、別の男が映る。
「これがコルシカ独立運動の指導者だったパオリ氏、若きボナパルトのアイドルにして英雄だった」
「あ、なんかようやく人生が上向きそうですね」
「ならないんだなコレが! パオリにとっちゃ親仏派が邪魔なんだよ、数々の島での騒乱や対立、さらに初めての軍事作戦のサルディニャ島への攻撃失敗から彼は完全に対立した。
遂に彼は対立の果てに島を家族ともども追い出されてしまった、さらにこの頃のパリでは遂にルイ王の首もギロチンの露と消えた、大混乱だ」
タイユランが隣の警察大臣を指さす。
「ちなみにそいつが国王死刑賛成に鞍替えした、1票差だったという説が色濃い」
「これが響くんだよなァ」
「更に拡大したジャコバン派は反革命の容疑者を大量にギロチン台へ流し込んでいった、もうロベスピエールですら制御不能だ、民衆は内外の敵の事を熱狂的に攻撃している、止めれる者はいない」
画面に映像が映る。
ロベスピエールが段々と鬼気迫った顔で演説していっている。
『甘っちょろいジロンドじゃ祖国は守れねえって言ってる』
『ベルギーとラインの左岸を失って国王を救おうとしたからな』
『権力を集中せんと祖国は救えんと言うんだ』
『集中』
『つまり独裁』
”先生”が渋い顔をした。
彼の見たキヴォトスの最末期でも見られた風景だ、歴史が違えど行き着く先は同じだ。
『ロベスピエールが好き好んで独裁してるって? 傾いた国を直すにはそれしか無いってやってるんだろ、挙げ句内戦を扇動するとはなんて野郎だ』
「相変わらずの彼はそうしてジャコバンへ接近する、だが革命とテロルは更に白熱化した、シャルロット・コルデーという女が一番暗殺しやすい目標が何かを理解しないまま行動を起こした、もっとも穏健な奴から死ぬ事で恐怖政治は完成したんだ」
”先生”がさらに頭を抱えた、暗殺と言う手段は毎回世界を最悪へ変える。
「さてそのころの彼だが、革命の混乱で人事記録が消されて四苦八苦してた」
「なんというか、至極普通だね」
「ただの砲兵将校だよ、そんな彼に命令が出た、ツーロン攻城戦だ」
「あー、たまにサオリちゃんに話したりしてましたね」
ユメ先輩が納得した顔で言った。
『ハッハー、火薬の匂いだ、戦場に帰って来たぞォ』
画面にはうきうきとした顔で砲兵陣地を見学するナポレオンが映る。
「途端元気になったね」
「今と同じくらいだね」
”あれ素なんですね”
三人の困惑にタイユランは「そりゃそうよ」と返し、画面を変えていく。
「まず彼が取り組んだのは陣地の変更や大砲の数と弾薬数の確保だ。
近隣から大砲を集め、退役軍人を募集し、歩兵を転属させて火力を増強する事からだ」
「え? それ全部されてないんですか?」
ユメ先輩がぎょっとした。
流石に攻略戦のやり方くらいイメージはつく。
「無いよ、司令官のカルト―は画家で軍人じゃないから」
「なんで?」
「革命期ってどんな事も起こるんだ、解任された後に出て来たのも今度は医者のドッペくんだし」
「なんでぇ?」
「将軍の大半は読み書きができる貴族とか資本家か神学者なんだもん」*3
画面ではブチギレて後方へ将軍を批判する手紙をしたためるナポレオンが映る。
「あ、耐えかねて解任工作してる」
「こういう所変わらないんだなあ」
「ちなみに革命政府の委員を抱き込んでいるんだがその一人はロベスピエールの弟さんだ」
”大物じゃん……”
画面に二人目の将軍もバッテンが描かれ、3人目が出て来た。
見るからに年を喰った爺さんと言う見た目だ。
『アメリカ人にケンカのやり方教えておった、連中そのうち偉くなる』
「また偉く濃いのが……」
ユメ先輩が資料を見ながら驚愕した。
「凄いですね、13歳からずっと軍人で死ぬまで現役?!」
「元気なんだよこの爺さん……」
そんな中で映像は、兵士らへ演説するドュゴミエ将軍を映す。
『そうとも! お前たちは強い!
なぜなら奴らは国王の為に戦う犬畜生で、ワシらは愛する祖国の為に戦う自由の戦士だ!
お前たちはなんだ!』
『革命軍!』
『わしら革命軍は地上最強だ! 言ってみろ!』
『革命軍はァ! 地上最強オオォーッ!』
『奴らをぶち殺せ! ツーロンに手を出したことを後悔させてやるぞ!』
湧き上がる革命軍に暫く呆気にとられて、セイアが呟く。
「もしかして皇帝のアレ」
「パクリだね」
自称警察大臣がのんびりと足を組んで「楽しかったなあ、リヨンで独裁者やるの」と呟く、
「またなんかしたんです?」
「ちょっと坊主と金持ち減らして教会の壁を削ったんだ」
画面が変わり、ツーロン包囲下の砲台へ変わる。
グラフが表示されるが、驚くべきばかりのキルレートだ。
『名前変えるか』
『国民公会を投げんじゃないよ』
派遣議員のことを無視して消していく。
『消すんじゃないこら』
『まぁまぁ黙って見てて』
『新しい名前が「命知らずの男たちの砲台」というのもどうなんだ』
『ほかは「共和主義者の勇気」とかですから良いでしょ』*4
士気の大胆な解決に”先生”は苦笑した。
『兵隊って単純なんだ、いくら金の為でも愚にもつかん名誉に飛びついちまう。
泣けるぜ』
”あんたが言うのかよ”
「みんな自分のことを棚に上げるからね」
やがて雨が降り始め、豪雨が始まる。
『くそっ、攻撃を継続する筈が』
『強攻あるのみ』
豪雨の薄暮での強襲が開始される。
リンを混ぜた最初期型の照明弾が臼砲から撃ちだされた!
「どうして銃器があるのに密集するんです?」
「通信機が無いからさ、それに寄せ集めで声の届く範囲かラッパの音が聞きとれる範囲までしか指揮できない……はずなんだが彼なんでか指揮するんだよ」
”本職には勝てん”
「本職をごぼう抜きにしてるからね……」
そのまま画面では乗馬を撃たれたナポレオンが足に銃剣を刺された。
「あ、刺されてる」
「うわーいたそー」
段々麻痺して来たらしい二人の言葉を受け流し、画面は変わっていく。
ツーロン攻略は死闘というより革命戦争の全体を表したかのような、不十分な準備から始まり、誰が権力の中心へ近づくかの証左となった。
なぜなら、最終的に作戦計画にただの砲兵大尉が派遣議員の後ろ盾を得て立案し出したのだから。
そして彼は、新将軍となった。
ツーロン攻囲中の10月には少佐、攻略後は議員らから貢献を評価されて12月には准将として旅団指揮官となった。
僅か20後半の、あまりにも若すぎる将軍である。
余談だが革命期フランスでは中佐と元帥と中将などの一部階級は廃止され、師団長以上は任命職だからほぼトップになったと言える。
『新将軍!』
『小伍長!』*5
『いよっ大出世!』
『これだ。俺が欲しかったもの、俺の人生に足りなかったもの!』
なんと驚くべき事に、下級兵士たちの酒場に堂々と入って歓声が上がるのである。
普通はそうはならない、貴族や高級将校とは生活が違う、触れあう慣れ合う事は好ましくない。
だがこの世にはいるのである、立場の上下関係なく人を興奮させるという特殊なスキルがあるものが。
「いやぁ、栄光への道が始ま」
「らないんだなコレが!」
自称警察大臣が楽しげに笑いながら言った。*6
『ただ一人の人間が国民公会の意思を麻痺させている、その一人は誰か、ロベスピエールだ!』
『カンボン?! 奴は俺の計画には居ない! 公正と反骨精神だけで挑んたな……』
ジャコバン崩壊の、始まりである。
『徳が破れ悪党が勝利するのか?
革命は終わるのか!』
こうしてアンティーブ・カレ要塞へナポレオン、投獄!
投獄原因はアルプス方面に派遣されていた派遣議員3名に売られて告発である。
が、ジェノヴァ公使の宛先で「必要ならジャコバンやロベスピエールだろうと革命の敵は斬る」という手紙を事前に送り無事証拠不十分で釈放される。
だというのに裁判で何故か一番擁護したのは告発したサリチェッティであった、なお予定された判決はパリ送り*7ではなく、暫く謹慎と言う予定だったという。
「しぶといな本当に」
アズサが見たら「諦めが悪いとはこういうことか」と感心しそうだとセイアが呆れて画面を見る。
『離せ! 俺をなんだと』
『知ってるさ! 所詮砲兵大尉が限界の元大尉さんよ! 公安委員だからって舐めてんじゃねえぞ!』*8
ボナパルト、休職編の開始である。
ちなみにまだ20代である。*9
「で、次は本屋ですか……」
「多芸だね」
”セリカ相手になんか優しい原因はこれかな”
なお幾つか彼の副業を紹介すると、測量技師や家庭教師である。
ちなみにこの時期の地形測量局は今風で言えば作戦用務幕僚の一種である、カルノーが改革したりあれこれしてる時代の奔流ゆえである。
ついに食うに困ってという事で『トルコ、行こうかな』と考え始め*10、或いは再び金なさ過ぎてセーヌ河に飛び込んで死ぬか考えたり*11していた。
が、パリの治安は加速度的に瓦解へひた走る。
まず食料供給が破綻した。
ジャコバン時代はパンがあって首が飛んだが、逆になったのである、まあインフレから守る為に最高価格定めたのはそのロベスピエールなのであるが、そいつは何故かいま居ないのである。
ついでにそこらを「金ぴか青年隊」*12とサン=キュロットやジャコバン残党と政府が殺し合っている。
なお貨幣価値は1万分の1である、もはや正貨じゃなんも買えん。
『書きたい物書いて何が悪い!』
「あの人は誰です?」
「革命期フランスの浦和ハナコLV999、バスティーユで排水管からあることない事叫んで革命の原因になったポルノ作家」
「なん……なんだって?」
セイアが目を開いた。
「ちなみに結婚のトラブルもあって皇帝もなんかそういう気分なのか創作して小説を書いた」
「へー、どんな内容なんですか?」
「英語、フランス語でkindleで売ってるから買いなさい」*13
だが当然だがパリは大爆発、いつもの暴動へ市民は一直線を開始した。
概ね王党派などが集まって自称3万、概算2万5千の王党派が決起する。
対する国民公会の兵は4000ばかし、まるで話にならないどころか、絶対的優勢を確信した彼らは国民公会側の兵士へ親しく呼びかけた。
「分かりましたよ! ここから大活躍して危機を救うんですね」
「そうかあ、具体的にはどんなふうに」
「……わかんないです!」
「君と話してると時に正直な事が悲しくなるよ」
タイユランの嘆きもどこへやらのユメ先輩を見て、セイアは「巻け巻け」とハンドサインした。
『砲撃で奴らの目を覚ませろ』
『言いにくい事を、あっさり口に出したなこの男』*14
やがて現れた暴徒と王党派は、バリケードなどを用いて巧妙に張られていたキルゾーンへ飛び込んだ。
時間稼ぎとしてバラスが交渉に出てあわや頭が縦に真っ二つになりかけるなどを起こしながら、彼らはそれと直面した。*15
ミュラにより確保された火砲である。
最初のよく引き付けられた砲の一斉射撃は、完全に王党派を壊乱させる。
初撃から3分でカタを付けたと言えた。散弾で追い散らされ、歩兵の躍進を受けた王党派たちは大混乱に陥りサン・ロック教会へ逃亡した。
彼が冗談交じりに「ブドウ弾の一吹き」と呼んだ45分間の連続した散弾による砲兵射撃や歩兵からの銃撃で300名近い犠牲が出たが、規模と行為からして少ない物だった、その後の訴追と裁判による死者は10名である。
「ちなみにサン・ロック教会の支柱に銃弾痕が残ってたんだがね、2000年代に補修されちゃったらしい」*16
「……もしかして、大分丸くなりました?」
「うん」
「昔ならこんなもんじゃなかったしね」
タイユランと自称警察大臣が顔を見合わせ、丸くなったよなぁと頷く。
つい昔のノリでガス弾と迫撃砲で暴動粉砕した寝起きの皇帝か、色彩が来て総力戦してる時か、ベアトリーチェぶっ殺しRTAしてる時くらいだろう。
「あの人甘いときは甘いんだよね」
「時に許してやるのが男と言うスタンスだからねえ、女子供は特にそうするからねえ」
「まあ悪いとは言わないんだけどねえ」*17
やがてセイアが頭を抱えて片手を上げた。
「何が何だか分かんなくなってきたよ」
「「だろぉ? 我々も分からん」」
”僕にはアンタらも分からんですよ……”
”先生”のことばに「それが仕事さ」と返して、タイユランは愉快気に笑った。
少し遅めのティータイムと行くべきだろう。
想い出話は少しの間おひらきだ。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。