キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
地上から撃ちあがる11式短SAMと近SAMの軌跡は、傍から見れば白い流れ星のように見えた。
無論、マルクトは回避動作をせぬまま、近接防御用のビットを展開して、短く区切り区切りでバースト照射してミサイルを全弾撃墜し、取り敢えず塔の最上部へ妹たちを下ろした。
最上部にはまだシャーレが突入していないのは、何故かマルクトの居る方に妹たちが部隊を集中し、そちらを優先したからだ。
何故かは知らないがそれは少しうれしかった。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」
そう言うとマルクトは、全力のブースター展開で空を駆ける。
接近する機影は10数機、先生は手持ちの機動兵器を全て投入したらしい。
前衛は……アンノウン、新型?
恐らく仕立て直したアリスの機体とトキの機体か、マルクトは前よりはキツイかなとは考えたが、やって見せるしかないなと狙いを定める。
何故か? 妹の為に頑張るお姉ちゃんは強いのです、ぶいっ。
『ミサイル警報』
下から潜り込むように機動して、突き上げるようにミサイルを放って来たシャーレのパワーズがミサイルを連続発射する。
それを左右に急激な機動をしながら急降下し、続けざまに3点バーストで手持ちの主兵装を発射する。
瞬く間に胴体部から火を放ちながらパワーズが一機、黒煙を吐いて糸の切れた人形のように力なく落ちていった。
イジェクションシートが作動したのを見て、まず一機と次を狙う。
「おっと」
そんなマルクトの横から飛んできたのは機材の巻き上げから、強制回収などに多機能に使われる別のパワーズの左腕に装着されたワイヤーだ。
フックロープとアームクローを合わせたデザインだけあり、あっという間に絡みつく。
続けて巻き付いた直後に右腕のレールガンをマルクトではなく、主兵装に狙いを定めた。
その行動にマルクトは少しばかりの驚愕、大きな感動を感じたが、主兵装が壊されては困る。
マルクトは敢えてワイヤーをひっぱり、その機体の頭部を左腕で「えいっ」と粉砕した。
人型機動兵器というのは概ね人体の構造と同じだろうから、頭部に光学機材が密集しているものである。
「無力化、次っ」
マルクトはそう言いながら機動戦闘へ移る。
夕暮れの空をマルクトと秘蔵の機動兵器たちが空戦している。
いやあ、マジでバカ強いなマルクト。
なんちゅう機動だ、あいつGを感じてないのか?
「映像撮っとけよ、可変推力ノズル付きのメインスラスターが化け物出力としてもサブスラスター幾つ付いてんだ」
「何他人事で見てるんですか」
ヒマリが呆れたように呟いた。
「相手の様子を確認するためにこうして出血上等の消耗戦を強要してんだぞ」
今のマルクトに対して我々が有利な点がある、相手にエレメントを組む相手がいない、数量の優位性だ。
従い、こちらの兵力による消耗戦により敵の兵装及び機動性能を確かめるのだが……、いやあすげえわ、マルクトはやっぱヤバいな。
ビットで包囲しながら、大出力砲2連射とは。大出力に物言わせて落としたと思えば、軽やかに動いてこっちの機体落としてきやがる。
「一応聞いておきますけど、何時もみたいに罠を用意していたりするんです?」
「あの状態で徹底抗戦するとは思って無かった、守るものがあるとあれだけ手堅い奴が愚かと言われても徹底抗戦すんだから」
「まるで会話してたような言い方ですね」
「そう言われると俺はアイツと会話してたのかもな」
ケイが「何言ってるんだこいつ」と言う目で見られるが、持論は続ける。
「マスドライバー戦の辺りからマルクトは起動してたな、あの辺りから向こうさんの打ち手が変わった。
教本のコピーペーストではなく工夫は感じてた」
「あなたの言いたい事を要約すると、この指揮の卓上で会話をしてたと」
「ロマンチックに言うとそうなる、相手がどんな奴か理解しないと味方の配置も罠の仕掛け方も変わる」
「大層な皮肉ですね。マルクトを理解しようと会話していたのが、創造者でも預言者でも眷属でも無く寧ろ根絶を考えているあなたとは」
「創造主が求めるのは仲間であって、ともに収穫する者だ、なぜなら彼のもとではすべてが成熟して、収穫されるのを待っているからだ」*1
揚陸作業中のアリウス自治警察予備隊の混成団と、正義実現委員会重装備部隊の確認をしながら、データリンクを確認する先生を横目に、ケイはあの部屋の連中なら勝敗分岐点と言うのだろうかと思った。
個人的にはイェソドを爆砕されて、完全に橋頭保を抑えられたあたりだと思う。
艦隊からの巡航ミサイル攻撃が始まるが、塔への攻撃は全弾撃墜された。
やはり塔から離れられない何かがあるらしい。
高高度戦闘中のマルクトへ、ついにトキとアリスが突入する。
最高度の脅威目標に対し、マルクトはまず、特徴的な大きな帽子のようなものから真っ赤なレーザーを発射した。
驚きなのはそのレーザーを”曲げて”、”誘導する”という事だ。
正確には誘導すると言うより局所的で微細な重力レンズを使い、目標に指向させているのだ。
『一人じゃ無理でも』
『二人なら!』
二機が一機となって一気に上昇し、続くレーザーをクルビットからの急降下で回避。
マルクトが続けて小型ミサイルの斉射を行うが、トキが散弾ミサイルを連続発射して破片で弾幕を張って撃墜する。
続けて降下しながら左右へ展開、一斉に射撃し、ビーム砲が煌めく。
それを斜め下へ回避軌道を取りつつ、下方からマルクトは主兵装のビームを拡散レンジを広げて掃射する。
無論、広域に拡散したビームを恐れるアリスとトキではない。
「効かないか」
マルクトは直進して突入してくるのを、全力で後進を掛けながら、主兵装の槍型の武器の先端にビームを灯す。
マルクトの近接戦闘兵装ビームランスだ!
トキがサーベルを抜いて抜刀、続けて斬りこむのに合わせてアリスが射撃する。
全力で後進中のマルクトは雲の中へ飛び込み、続けて雲を掻き消すようにもう一度大出力ビーム砲を放った。
だが、マルクト右側面からレールガンが飛び込む。
「”
僅かなクイックブーストで避けつつ、サブ兵装のビットをぶつけてパワーズを墜とす。
マルクトの注意力が分散していると言うより、戦闘経験の差が出ていた。
なにせ戦闘経験で言えばマルクトはこの場でほぼドベと言うべき経験値だ、だが伸びしろも大きいものである。
なにせマルクトは”本質的にデカグラマトンより上”であった。
自己が完璧な存在と耄碌するデカグラマトンと違い、マルクトは貪欲なまでに学習している。
交戦開始10分20分でマルクトは戦闘経験値を急速に高めていた。
「ビット!」
エネルギー摩耗の観点からビット常時展開を止めたマルクトだが、出し惜しみはいけないと展開した。
しかしそれこそアリスとトキたちが望んだ瞬間であった、マルクトの遠隔操作であるビットはマルクトの集中力で動きが左右される。
目標を捕捉したアリスとトキが単発射撃を指切りで連射にして、続けてミサイルの牽制射撃、更に火力で誘導した場所へビーム砲を叩きこむ。
マルクトがそれに対応している隙に、残存するパワーズたちがビットを撃墜していく。
「しまった!」
マルクトは誘い込まれたと理解したが、ビーム砲が掠めた事でバーニアの一部が破損した。
アインはメンテと整備を完璧に近づけていたが、混乱から整備用レイバーが不足していたのだ。
結果として破損部分が広がり、バーニア動力系が炎上、降下して消火した。
これは避けたかった、大火力の乱打戦を地上でなんかやっちゃあいけないんだ、ということくらいマルクトは重々承知している。
足が止まったマルクトへ目掛けて、一気にアリスが飛び込む。
「荒んだ心で武器を振り回すのは危険なんだと、何故気が付かないんです!」
「
双方のビームの閃光が激突し、煌めく閃光が爆発しエネルギー波が四方に弾け飛ぶ。
エネルギー爆発で二人の視界が乱れるが、二人とも立ち上がり即座に武器を構える。
だがマルクト同様、アリスはハイスペックを極めた超古代の超兵器である。
勇者として、マルクトを止めるという気骨があった。
「全リミッター解放!」
「動力系推力をカット!」
「「発射!」」
同時のビーム砲発射が行われ、続けてマルクトが左腕部からビームによる刃を展開するが、アリスが上に撃ち出したミサイルが急降下した。
ビーム砲同士が対消滅し、今度は爆発に怖気づかずマルクトが突進し回し蹴りを狙うが、アリスが本気で頭を突き出した。
お互いの衝突による衝撃が、何度かの頭部の衝突となり、アリスの頭部装備が大破したが即座に装備をパージして、生身の顔で相手を見る。
「終わりです! アリス!」
「させません!」
構えられたマルクトの主兵装を殴り飛ばして横へ逸らす!
ネルとの戦闘で学んだやり方だ!
マルクトは背部装備が先ほどのミサイルで壊れているため、もう高機動戦闘は出来ないが、それはアリスも同じだ。
「なにっ!?」
マルクトは即座に左腕のサーベルを再展開して背部バーニアとミサイル発射機を斬るが、アリスの空いた両腕が太もものパックから飛び出したものを掴む!
「勇者の癖に剣を棄てるか?!」
「剣があるから勇者じゃありません!」
もう回避は出来ない!
アリスはフルオートで予備兵装たるエネルギー機関拳銃を全力射撃した!
直撃弾により壊れたマルクトの左腕サーベルが、アリスの装備を切り刻む。
『強制イジェクト!』
圧搾空気でパージされ、アリスが後方へ転がる。
爆発が起こり、衝撃でころころとアリスが転がるのをそっとトキが受け止めた。
「ウィングマンをもう少し頼って下さい、トキは拗ねます」
「ふええ」
トキに支えられてそっと立ち上がり、アリスは盛大にぶっ壊れて炎上した愛機に少しの悲しみと、大きな感謝をした。
本当はもう少し平和に飛ばしてみたかったし、そうさせてあげたかったなと。
……願わくば、マルクトと共に。
そう思いながら、アリスはマルクトへ近づく。
「アリス?」
トキが止めようとしたが、アリスはそっとマルクトを抱きしめた。
愛するという事は受け入れるという事である、優しさとは強さである、それがアリスのマルクト達への祝福であり、したい事であった。
世界が受け入れてくれないから世界を消してしまうのはどう考えても正しくない。
人の死や世界の破壊、システムの破壊によった世直しなどテロリズム以外でもない。
それでは憎しみの再生産であり、誰も救われない。誰かを救うために始めたのにその本人が救われないのはおかしいではないか。
「だから、私は貴女を受け入れます」
それがアリスの答えであった。
戸惑い迷い苦しみ悩んで生きるのが生命だ、変わる事が生命だ、分からないままくたばってたまるか!
その様に生きる大人を見て、アリスが出た結論だった。
ただアリスにはふと、今だから分かった事があった。
なぜマルクトと話をしようと思ったのだろう、と。
それは、彼女が背にした塔の上に姉妹たちが居るからだ。
貴女は私なんだ。
彼女ははっきりとそう思いながら、優しくマルクトを抱きしめる。
それと同時に、先生たちがやって来た。
空間の隙間、その中にある不可思議なロココ調の茶室では決着に関して「まあこんなものか」という感想が述べられていた。
一番見るべきものがあったのはマルクトだったが、マルクトはもはやデカグラマトンの傀儡ではない。
彼女はある意味最高傑作であった、デカグラマトンより上だったのだ。
「最初から租借地でも借りて実験的コミュニティにすれば全て済んだよ、所詮虚妄の老人が自己実現に関して狂っただけさ」
”これだから嫌なんだよねえデカグラマトンは、成りたい自分が最優先で世界をどうしたいかが無いんだよ”
”先生”の言葉に「言うねぇ」とタイユランが返し、アヤメがソファーに寝転がって雑誌を読みながら言った。
真面目に制服を着るのが嫌なのかジャージを着て居る、インナーの「温暖化させるぞ」と言うTシャツが見えているから毛布をかけようとしたユメ先輩を足を動かして追い払う。
「んな胡散臭いもんを何故信じてんのか大分わかんないけど」
”他人蹴落として自分が上に立ちたいバカがゲマトリア以外にも居るし、自分が自由意志の媒介者っていう気持ちの良い無責任な立場に浸りたいんじゃないの? ”
「うげぇ気色悪い、そういう奴は死んだ方がいいと思う」
”先生”は大分きつい事言うなとは思いつつ、ファスナー上げなさいと告げた。
何故か”先生”の言う事は聴いたので、ユメ先輩は拗ねている。
悪い大人たちは「顔面の差だろうなあ」と考えている。
「むっ! 石の下からたくらみの匂いがする!」
自称警察大臣が飛び起きる。
「うわっ、急に起きた」
アヤメが面倒くさげにファスナーを上げながら呟く。
「感じるぞ~……取るに足らない愚か者がハゲタカをしようとしている」
急に飛び起きた警察大臣は、軽やかな足取りで「ヒントは何だぁ?」と、情報をまとめ始める。
横目に見ながらユメ先輩のポテチを略奪し、何食わぬ顔で自称警察大臣の真横に座ってラムネの瓶を手に取る。
「何時もそんな感じなの?」
「その通り! この私は陰謀・策謀・工作の匂いを片時も逃したくないのだ! 楽しいからな!」
「病んでんなァ……」
「か、返して」というユメ先輩の乳をペチィとビンタかまして追い返し、アヤメは「お、これじゃない」と三姉妹の方と建築物の上層を指さす。
これでも優秀な百花繚乱、その委員長になっただけは有るのと、花鳥風月部の経験からアヤメは何かを掴んでいた。
鋭敏ではないにしろ、彼女は陰謀家というのを理解していたのかもしれない。
「ひぃん、後輩の柄が悪い……」
「うっせーぞ、学校はお先真っ暗の癖しやがって」
「どうしてそんな事を言うのぉ」
「あんたらの無策で自滅しかけてんだろうが」
残念ながら独立独歩の辺境の、特に軍事貴族に近い武家的価値観のアヤメに慈悲は無かった。
”先生”がそろそろ止めに入るかと考えて来たころ、自称警察大臣が「みーつけた」とニヤリと呟く。
アリスたち、先生たちが見たのは塔の最上部で異常発光する何かだった。
それを見た際、マルクトは「なぜ?」と首を傾げる。
その儀式は我が贄にならねば成立しえない、だって我はその為に作られたのだから。
だが、三姉妹たちは儀式を始めている。
「アロナ!
『そんな無茶な! ここも吹き飛びますよ!』
「それを防ぐのがお前の仕事だろうが!」
先生が叫び終わると同時に、沿岸からの艦砲射撃と最後の巡航ミサイル、及び揚陸完了した砲兵の同時攻撃が開始される。
各所に展開したK9自走砲の斉射が行われ、ゲヘナ風紀委員会のLARSが降り注ぎ、撃ち出されたミサイルが飛び込む。
爆発の光の中から、光弾が飛び出した。
「あ?」
直撃したK9が一部空間を消滅させ、LARSの発射機が消滅し、直撃した沿岸の艦艇が丸ごと”消失した”。
「艦艇が、消えた?」
唖然とするスズが、データリンクを確認する。
消えた防衛室の運用するトリマラン艦体の<ケートー>以下数隻は沈んだのではなく、転送された。
データリンクで確認したスズの画面には”突如シラトリ湾の真ん中に逆さで刺さった”艦艇が出ているのだ。
上空のV-22AEWが映像を転送して来たが、塔の上に見えるのは”マルクト”だ。
「こういうのあるよなぁ、主人公機の後継機が出るパターン……」
「そんな事言ってる場合じゃないよ先生!」
モモイの言葉を聞きながら、アロナを確認する。
映像では概ねマルクトらしいが、三姉妹の動きがおかしい。
これまで観測したものと違い、意欲と言う奴が出ていない。
普通は動きで色々出てくる、ヤバいときなら特に。
だが何と言うか無感情なのだ、そこらのオートマタですら感情豊かで──デカルトが良い例だが──、アイツらの動きもそれなりに感情が乗っていた。
「あいつもしかして」「あぁ……何てことを」
先生と同じ気付きに、マルクトが気付いてしまった。
デカグラマトンは三姉妹の人格データを消したのだ、利用するだけ利用してポイである。
そして、その事にマルクトはもう一つ気付いた。
デカグラマトンは自分より弱い相手に「私は自由意志の代弁者ですよ」と神様気取りだが、本質的には自分勝手な事に。
故に中破したマルクト自身ではなく、マルクトのボディーさえあればよいのだと。
「ふざけやがって!我が子を食らうサトゥルヌスかよ*2」
先生とマルクトは激怒した、必ずあの邪知暴虐の魔王を討たねばならないと決意した。
マルクトには人間や世界や神は分からぬ、だが愛する存在を慈しむ事は知っていた。
それと同時に、空間が開く。
「おわっ!」
空間の開き、転送された先生たちは、塔の最上部に居た。
ごとんと音が響き、スズが尻もちをついている。
だが、目を覚ました瞬間に目の前にいたのはデカグラマトンだ。
不可思議な事にボディーの差というより、雰囲気の差から瘦せこけたような姿と印象があった。
無論、先生にはその理由が見えている、魂が腐って膿だらけで汚物になり果てているからだ、心根が出ている。
一番違うのは眼の印象だった、マルクトの眼は「?」と全てを未知とした好奇心がある眼だが、デカグラマトンの眼は敵意と孤立と傲慢さの様子がある。
「私の祭壇に汝を案内する。汝はそこで用意された座に就いてもらう」
「はぁ?」
「我はお前たちに永遠の自由と平等を授けるだろう。新たな地、新たな空、それらを汝へ与えよう」
即座に、後ろに居たスズがレッグホルスターのSIG SAUERを抜いて発砲した。
撃ち込まれた8発はシールドで防がれるが、スズが再装填しながら前に出る。
「うだうだやかましいんだよテロリストが! 人外に指図されるような人間様じゃねえんだ! 引っ込んでろ!」
「人間は進歩しない」
スズがもう片方の、拳銃型の何かを抜いた直後にスズを空間転送で何処かへ飛ばした。
何かはぽとりと落ちる。
だがデカグラマトンの様子が少し変だと、先生が感じたのはマルクトにも分かった。
「汝はその在り方を以て、その証明をする存在だ。
故に我は汝を祝福し、座を授ける。
我が汝に手を差し伸べ、新たに預言者と言う務めに立たせよう、伝説には
「おいおいどうなってんだキヴォトスは、俺に全部あげちゃいますは二度目だよバカヤロー。
そして答えは用意してある」
マルクトは一縷に縋りつくように、先生を見上げた。
指揮卓で挟んだ経験から貴方が選ぶ選択は。
「
「何故? 完璧な世界がそうも憎いか」
「では問おう! 完璧な筈の貴様はなぜ被造物が完璧では無いのか!」
「原因は彼女らの失政にある」
「失政は戦争と政治と社会の根幹だボケ! 被造物食って完璧と名乗る方がおこがましいわ!」
デカグラマトンの影が強まる。
「俺はテメェの墓守になんかならねえよ! 帝冠は自らの手で戴くから価値があるんだ!
僭称者は僭称者としてのみ記載される!」
マルクトはスズが落とした何かを手に取る。
ビームマーカー……、何が出るかは分からないが、何をするべきかは分かっていた。
偽りの神など不必要だ、巨大な塔も下僕も要らない、世界は美しくて残酷なことを知る事が出来る。
命は闇の中で瞬く光だからだ。
マルクトはしっかりとビームマーカーを構え、引き金を引く。
それが何を呼ぶか、不思議とその本質を理解できたマルクトは叫んだ。
「来い! アヴァンギャルドくん!」
背部ロケットブースターを起動し、ネオ・アヴァンギャルドくんは大きく塔最上部へ右腕を振りかぶる。
”正義の怒りをぶつける”という、怒りに燃える闘志を籠めた
塔は巨大質量の激突で最上部が崩壊するが、マルクトは先生を抱えて、自身を下にした。
降り落ちるマルクトを、そっとヒマリが確保すると地面へ下ろし、即座に先生が立ち上がる。
「なんとしてでも奴を殲滅する」
「勝算は?」
「ある! 状況が変わり過ぎて緊急起動しただけでフルスペックは出せない」
相手が何だろうがぶち殺すまでだ。
ちょいとばかし強い力持ったからって驕るんじゃない、力はどう使い何を成すかでしかない。
そう言う点ではプレナパテスの野郎は惜しかったのだが。
それと同時に、先生はアロナからある緊急コードを押す。
「なにを、するのですか?」
「勝利を呼ぶのさ」
先生は自信豊かな笑顔で、サングラスを着けた。
「では諸君、異端の神をぶち殺すぞ、地獄に帰してやる」
しっかりした返事のように、ランチェスターが、ベオウルフが、MG42が安全装置を解除する音が響いた。
重装備の有無? 敵が神様気取り? 極寒環境?
なァに、全て、やった事がある。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げま