キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
人類がこれまでに経験したことのない、異生物との戦争だ!
──デビルマンCryBaby──
先週取り違えてた分の再投稿です、ご迷惑おかけしました。
連邦捜査部には主要敵対勢力が三種ある、カイザーを始めとするメガコーポ群、ゲマトリアを始めとする暗黒の蛆虫たち、そして自身ではなく世界を変える事を選んだデカグラマトン。
対話とは他者と自身を合わせようとすることであり、能力や才能ではない事に気付かない頭でっかちで独りよがりな存在。
そうした連中は本質で言えばゲマトリアなどと大差がありません、主観の押し付け合いを会話や対話と言わないからです。
まあどちらがマシかと言われると僅差でデカグラマトンがマシですけど……。
【 滅びし獣たちの海 】
極点で確認されたゲブラ、整備補修がされている可能性を確認したリオさんたちは、現状で一番頼れる作戦指揮官を呼び出しました。
そう、先生です。
いやー、呼べば特殊部隊と共に即応してくるのを先生と呼ぶのか甚だ怪しく感じてきますね、
「だが、信号そのものが我々を呼ぶ釣り餌の可能性も大きい、その場合非常に厄介なケースだ」
「ふむ? 何でしょうか、この手の専門家はキヴォトスに少ないのでぜひ伺いたいのですが」
「軍事作戦を作れる能力があると言う事だ」
デカグラマトンも馬鹿ではありません、彼らは敵対者が居る事を理解しています。
そうである場合、もっとコソコソと隠れる筈です。
ですがこうして「見せて」来た、それが不可思議なのは当たり前ですね。
「言わずと理解できるだろうが、永遠に学習進化する場合この星の支配者のパラダイムシフトの可能性となりうる」
間違いなくSKクラス級の大問題です、カイザーによる「学園都市の差し替え」と同じく、世界のテクスチャを差し替える事です。
さて、そんな状況で取り敢えず先生が考えたのは……まずは無人偵察機からでした。
いやー、何というか、そうなんですけど駒の打ち方が着実ですよね。
観測しながら部隊を展開し、荒事上等で砕氷艦を召し上げちゃってまぁ……レッドウィンターにコネがあるからってよくやりますよ。
しっかり偵察部隊を前に出して観測射撃までしちゃってまァ……。
『疑問。先生はどうしてこの時、標定射撃法を使用したのでしょう?』
「んー、プラナちゃんのよく知る先生と同じく、最悪に備えてるからじゃないですかね?」
『?』
「電波誘導兵器類がハッキングされる可能性を考えてるって事です、我々が居てもカードは切り時が肝要ですから」
普通はしないと思うんですけどねぇ……。
ただあっという間に、デカグラマトンの最初の総攻撃は誘引され、衝撃力を失い、砲迫の集中射撃で分断されて、機甲兵力の待ち伏せにより潰走しました。
さらに攻撃点の分析や行動目標の分析から、休火山にある作戦基地まで割られてしまったのです。
安易な軍事作戦や攻撃は危機を招来するんですねぇ。
【 夏のない年 】
先生の考えた休火山基地への攻撃法、それはー?
正攻法のフリして即時突入!
いや確かに最適解なんですよね、守備軍まで出撃して攻勢に出て失敗して逆襲出来ないんですから。
そのためにわざわざ砲兵射撃しても対砲迫が来ないのを確かめたんですもんね。
いやー、ひどい、素人にすることじゃないですね、初心者狩りじゃないですか。
『突入兵力の大半は無人機でいつでも棄てれる辺りが先生らしいですね』
「あの人前にゲームやってた時、終盤ほぼメンバーがホバーSIVでしたからね」*1
再建途上のゲブラを持ち出したデカグラマトンの邀撃ですが、すいませんトキさんは伊達にミレニアムの最高級じゃないんですよ。
テックの勝利だ! モーターヤッター!
しかし戦闘しながら突入していると、地下の溶岩地帯には明らかに何かが……。
「データ識別、SSV⁻38情報収集艦……レッドウインター製の消息不明船舶です」
「数年は前に襲撃で沈んだんじゃなかったのか⁉」
「焼け跡がありますし、沈んだところをデカグラマトンに利用されたんじゃないですか?」
ここで漸く、これまでのデカグラマトンの行動が分かるわけです。
なぜエリドゥの発動が探知で来たか、なぜアリスを狙いゲブラを打ち上げれたか、なぜゲブラを回収できたか。
全てこのコクマーが観測していたからです。
そして電波や熱源を隠すために基地として休火山を利用する……。
ゲブラが蒸発し、トキさんの機体が吹っ飛びましたが、流石ビッグシスター製です、イジェクションシステムは優秀ですね。
人材が一番高い部品である事をよく理解しておられる。
『そ、それ以上の進撃は、生命の保証をしかねますよ、この火山を破局噴火させることも出来るんですよ?』
その後の勧告は、先生を寧ろ後押ししました。
残念ながら黒服以降、敵と交渉する必要性が無いと判断してるのが先生です、恨むんなら長話した上につまらない話したゲマトリアを恨んでください。
『そんな、我々は人間が決断や判断に悩まない様にしようとしてるんですよ! 善行です!』
「俺には無い悩みだなそれ、じゃ、そういうことで」
『貴方の独善的主観で否定しないでください!』
「お前それ同じことを俺が言ったらお前らに刺さるけど良いのかよ」
語るに落ちてる……。
というか、言ってる事がアニメの悪役ですよそれ。
「ばかやろう、そんなの人間じゃねえ!」と主人公に一刀両断されるタイプの。*2
というか、よりにもよってミレニアムの生徒に「自律思考の否定の同意」を迫るってバカじゃないんですか。
「やりたい事が多すぎて大変」がミレニアムの良い所で悪い所ですよ、才覚があるインテリの悪癖です。
結局、コクマーも人類による原始的な狩猟法、すなわち囲んで叩くで狩られてしまいました。
不可思議なのは「逃げる」選択が無い事です、勝てないなら逃げると言うのは別に悪い選択じゃありません、撤退して仕切り直すのが恥であるときは、大抵指揮者が原因です。
「……物質再構成だァ~?」
「ええ、名もなき神、旧支配者の代表的な力よ。もしかしたら眷属の製造元かもね」
「は? 元手0で兵隊作れんのかよクソが。プレナパテスといい、俺の相手はなんでそう俺より良いもんあるんだよ。むかつくなぁ、俺には
ぶー! アロナちゃんたちがいてまだ足りないと申しますか!
アロナちゃんたちを見れば世の組織人たちは感涙して”咽び泣く”事は間違いなしですよ! *3
「全くひどい話ですよ! アロナちゃんにプラナちゃんが居てまだ足りないんですから!」
『……疑問。そもそもアロナ先輩、あんまり使われてませんよね?』
「ヴっ……た、確かにアロナちゃん最近は親戚がランドウォーリアーとかスカイネットになってる気がしてますが……」
『仮に停止してもあの大人は作戦指揮が特に問題をきたしてません。暴動鎮圧やセトへの対応で現れています。……これでは有効性を示すのは難しいかと』
うーんこりゃ参った、アロナちゃん流石にこれは想定外。
先生は相変わらず索敵はしつつ待機して、アリスさんを呼ぶことにしました。
いやー、召集の判断が早いというか……、躊躇が無いというか。
「あーあ。俺もなんか元手0で人件費も無料の100万くらい溶かしても世論が怒る訳が無い機械の兵隊とか出せるようにならねえかなぁ。そうすりゃ大半の奴に学生させてやれるんだがな」
「先生がまたなんか変な事言ってるよ」
「いつものことでしょうが」
「聞こえてんぞコラ」
隊員たちに首を傾げられつつ、先生が適当な事呟いてます。
……先生の望みをかなえるとそれ、何処かの「ラジャラジャ」とか言ってるドロイドじゃないでしょうか?
【
拉致られて来たモモイさんたちはいつもの通り鼻水交じりにしていました。
それと同時並行で砕氷艦から展開した増援部隊をアタッチメントし、スズ戦闘団は即時戦闘可能に、更にリオ会長の輸送船を受けて空中機動化されました。
同時に装備が補充されてアビ・エシュフMk2は予備機が搬入、更に対デカグラマトンの量産型アビ・エシュフであるパワーズ部隊18機が展開です。
斯くして連邦捜査部は極地で戦争を始める用意を整えました。
「リオ先輩」
「なにかしら?」
「……もしケイが蘇らせれるなら、空がきれいだって、見せてあげれますか?」
おぉ、アリスちゃんが慈しみといたわりの心を開いている……。
アリスちゃんは何と言うか、本質的に力を理解しているところがあります、それは要するに。
「力のある無しや、才能のある無しではなく、何を成すか」ということです、彼女は本当に力自体には拘泥していません。
それはそれとして空中の微細物質書き換えて身体を再生!? 物理学や既存科学をなんだと思ってるんですか?!
単純な物理破壊が通じる相手じゃないのは知ってましたが、明らかに戦闘用にしても過剰ですよコレ、恒星間文明戦闘兵器とかですよ、比較対象がゼットンじゃないですか。
「そうあなた達がデスマーチしたり掃除さぼったり偏った食生活したりDJごっこしたり、あげくメイドの姿で変なことしてる時もですよ」
「「ギク」」
何故か不必要であるはずの情緒は育ってるんですけどね……。
『あんたたちに、宣戦布告をしに来たの! 今度こそ震えあがると良いわ』
おっとここで情緒教育しくじりバカ登場~っ、どうしてどいつもこいつも交渉が出来ないんですか! デカルトのが高尚になりますよ!
結局、彼女らの目的は安易な世界の改変……意味も考えないでどうしてそんな事をしたがるのか。
「王女、あなたは、危なくなったらどうしますか?」
「危なくなったらですか? ……リオ先輩を見習って、最後に下がってアリスも安全な場所へ逃げます」
最後にと言う辺りがアリスちゃんは、リオ会長の事の本質を見ていたんですねぇ。
まああの子らしいと言えばらしいですが。
進撃を始めた先生たちでしたが、多次元バリアによる隔離という手段に出たデカグラマトンの妨害を受けても全く動じていません。
「んじゃあとりあえず伝令を用意するか」
「はーい」
「……相変わらずこういう時の先生、即断即決というか」
ユズ部長が「よーやるよ」と呆れた顔をするのも無理有りません。
ですが、この場において最強のワイルドカードがありました。
ケイとアリスです、先生すらその本質を気付いていない超兵器が目覚め始めた。
「辛くて苦しいかもしれません、理解されないかもしれません、それでもこの世界は、美しいですか?」
「それでも少しずつ誰かの笑顔を増やす事が出来ます! 先生がアリスたちにそうしたように!」
この世界は戦い勝ち取り守る価値がある。
其処に行き着いた彼女らは、制御を完璧に取り戻しました。
物質組成が変化し、アリスのレールガンはいまや事象崩壊砲やタキオンランスの同類と化した次元爆縮エネルギー投射兵器と化しています。
途方もない大火力です、文字通り空間を裂いたのですから。
「いやー……プレナパテス先生、アレの直撃弾で良く消し飛びませんでしたね……」
『大変でした……』
「お疲れ様です……」
あんなの喰らったら普通蒸発ですよ。
ただあんな攻撃は、ある意味別のを呼び覚ましました、マルクト自身が作戦指揮に介入し始めたのです。
【 エウダイモニア 】
遂に事態へ本格介入したマルクト、それに合わせて防衛室も連邦捜査部への支援を始め、機密の無人戦闘機群まで出てきちゃいました。
『データ入力』
『
VLSから撃ち出されたミサイルは切り離されて、大型飛行爆弾として滑空し目標へ炸裂。
SRTの遺産ですが、いやー気前よくぶちまけますねあの大人は……。
続けてトキさんはアームクロ―かましてケテル改造のシールドベアラーに近接、シールドをかち割り突入、続けて殴り込んでいってます。
流石に次元爆縮投射は過剰なので、レールガンに再構成されたアリスちゃんの武器で支援射撃がされてますが、いやー、ヒマリ部長らにケイちゃんが居るから当たる当たる。
「洋上艦隊へ艦砲射撃の支援を願え。カタパルトを撃ち出せない様に5か6発くらいミサイルを撃ち込め」
「了解」
何かを撃ち出してるのに気づいた先生は即座に火力攻撃目標へ選定しました。
まあ単純な話、なんであろうと脅威ですからね。
この先生「連邦生徒会会長の遺産って言うんなら爆撃機とバンカーバスターくらいあるんじゃないの?」とか言い出すんだからもう。
突入され、デカグラマトンの必死の抵抗でガスを撒きますが……。
怒らないでくださいね、CBRN戦の想定済みの相手に、単にガスを撒くだけとかバカみたいじゃないですか。
「状況ガス!」
「ガス!」
「直ちに装面! 状況ガス!」
というかガス攻撃自体はカイザーの二番煎じじゃねえかよエーッ!
ジェネラルのほうが頭冴えてる絶対者ってなんですかそれ。
「何じゃいお前ら」
『ゲッ、ガス撒いてもすぐ対応してる』
「3回目だよバカヤロー! てか何しに来たんだよ、俺今忙しいんだ、人類の敵を絶滅させるアルバイトしてんだよ」
実際、カイさんは手ごわかったですからね。
あの人「勝てないからそもそも戦わない」を選びましたし。
しかしデカグラマトンのしもべらの問いに対して、ケイちゃんは呆れた顔で返しています。
「だいたい、個の自我、すなわち現状におけるティファレトと作戦状況に置いて必要な手段が今矛盾してる事実は、あなた方の不完全性の有力な証拠ではありませんか?」
『我々は合理で動いている』
「非合理的ですよ、打ち上げになんで秘匿性が肝心のここを使うんです? ワンタイムパッドの様に地点を切り替える事が秘匿性の肝要……と、シャーレ砲兵陣地変換マニュアルに書いてありますね。
そもそも合理、を誰が判別するんです? 私ですか? あなたの主観? あるいは先生? 少なくともこの全ては不正解ですね、客観になりません。
進化が不確定かつ想定不可能であるというのはなるほど事実その通りです、リオ会長のコマーシャル通り、文明とコーンはよく似ています。
ネズミを理想的環境にいれて育てたら何故か絶滅しますし」
『だから、我々が必要なんです!』
「お気付きですか? 皮肉ですよ。マウス・ユートピアみたいに破滅するのが関の山です」
酷い! あの子容赦がない!
ケイちゃんあまりにもえげつないのは駄目です!
結局、ティファレトは先生に「素直にデータ渡すか種子ごと爆破されるか」を選ばされてしまいました。
いやー、選ばなくていいとか言ってる相手に脅迫で選択を強要するとは世の中は皮肉に満ちてますねー。
教職のやる事と思えない? それはそうですが……。
【
マルクトの立てた本土決戦作戦案は非常に手堅く堅実な物でした。
イェソドによる遅滞、ケセドとケテルによる機動兵団での増援、ダメコンと部隊を隠蔽待機させ、分散させる。
恐らく正攻法では勝つまで手間がかかり過ぎるでしょう。
では、この防備を大人はどう崩すか。
まずは艦隊によるミサイル攻撃で外殻の敵を排除し、続けてトキで警戒線を破壊、浸透したエイミと特務分隊を展開する。
これらをタイミングを合わせて行い、撃ち出すは輸送船の主機として活用されていたシェマタのコア部分!
破壊措置が出来ず腐っていたのを転用されたものですが、伊達にプラズマ化する砲弾を作る砲のコアじゃありません。
即席で弾頭にされただけあって完璧な炸裂ではありませんでしたが、40メガトン級の大爆発です。
「こういうの見たよね、重機動メカモフングル 逆襲の……」
「それは爆破失敗しただろうが! 縁起が悪い!」
「そうだよお姉ちゃん、ヴィクトリーのエンジェル・ロールケーキとかのが良いよ」
「<リーンホース>も<ジャンネ・ダルク>も沈んだじゃん」
作戦前の、壮絶な会議の様子である。
とはいえ、この会議で決められた以上の大戦果でした。
イェソドは融解、分散配備された対着上陸戦部隊も守備隊も吹き飛んだか崩落、ネツァクは回路が焼き切れて連携不可能。
最悪です、事前のマルクト案はほぼ不可能になりました。
『最終目的地だ! 各部隊所定作戦行動に基づき機動開始!』
ついにデカグラマトンの神聖なる
敵の勢いを漸減するには他に手段はない、そうした状況ではマルクトは自ら出撃するという手段しかない。
そりゃそうです、他に動ける機動兵力いませんもん。
ケテルくらいでしょうけど、ケテルだって直協歩兵を欠いたら戦車はおしまいですし。
「何処からの攻撃だ!? 見えないぞ?!」
「状況不明!」
「各小隊ごとに防御円陣!」
奇襲ではありますが、マルクトはブースターを吹かせながら急降下してきました。
目視索敵で確認したスズ団長の「スクランブルを出せ! 対空射撃開始ィ!」の号令とほぼ同時に対空射撃が開始されますが、対空射撃どころか邀撃に出たアリスとトキを返り討ちにしていきます。
「人間はとても予想外です。特にあなた。
我は御旗の下に創造されし、ひとつの意志。世界の果てに到達せし王国の巡礼者。
マルクトと申します。
皮肉なことに、貴方と同じく、
堂々たる風格で宣言せしマルクトは、まさに降臨でした。
そして降臨したマルクトは、最後の和平交渉に移りますが……。
「おや? ”先生と生徒”というテクスチャは押し付けじゃないと?」
「生徒には悪い教師を拒否する権利があるし、学生時代の俺はキレて銃を向けたがな」
「なんとも異なことをおっしゃる。それでは私がこうする事は批判できないのでは?」
「こっちの生命を脅かしうる存在に対しての生存権をめぐる闘争だ、君たちが始めた戦争だ」
結局、こうなりました。
マルクトの活動時間の短さを、大出力によるケイへの掃滅と言う形で解決を図る、最大の効果目標であり遅滞として最適な目標です。
しかし、種々の妨害と時間の不足はマルクトをもってしても足りませんでした。
むしろ、マルクトの早期撤退は先生に「強攻!」の根拠になったのです。
「なるほどー、先生は指揮が上手い!」
「お前今まで何だと思ってんだコラ」
……案外モモイさんは精神が太いのでしょうか。
【
鋼鉄大陸の本土決戦は圧倒的な連邦捜査部臨時集成集団を前に、ついにのたうつ事すら出来なくなりました。
無理もありません、ベテランを多く擁した支隊や戦隊を伴い、適時遅滞戦闘しながら主陣地へ後退するなんて出来ないのです、前線指揮官も足りないで持久抗戦なんか不可能です。
後退タイミングを失い、兵力消耗を繰り返し、兵力集中競争を崩され、絶対優勢の数量を活かせず、総攻撃も反攻も失敗し損害比は少なく見積もっても5倍以上!
そんな中で主力の機動兵団も策源地も分散して待機させた防備隊も、全て失って一日稼いだのはむしろマルクトの底力でしょう。
「各部隊が二割に満たないレベルにまで減耗し、脆弱な防御線で、飽和状態となりながら抗戦するのはやはり……」
『彼女自身が一尺一寸でも姉妹の為に抵抗するから、でしょう』
「砲爆撃で山野形が改まっても、ですね。しかし、不思議な気分です」
『なにがです?』
「無私の至情と言うものが存在すること、それを目にする事について」
そしてそこまでして仕えた存在をデカグラマトンは裏切りました。
そうであるが故に、あの三人は最後にデカグラマトンを裏切りました。
その結果はなにか、再度のハッキングの失敗、弾道弾3発の直撃。
結局、神の神たる所以は行為も行動も観測出来ないからである。
人が知覚できる存在は神なんかじゃないのです。
「作戦を実行。バベル バベル バベル!」
『バベル了解。実行する』
三姉妹が死んだ以上、塔に破壊しない価値はない。
そうであるなら爆破すると言うのは簡単なロジックです。
ですがその虚妄の塔こそが、デカグラマトンの真の支配者だったというのは、酷い話と言うかなんというか。
結局のところデカグラマトンの自意識は存在したのでしょうか?
それともそんなものはあると思い込まされただけだったのか。
自由意志を広げると正当化したものの、自らがそれを有していないせいで自己消滅へいたった者……。
人は他者を必要としないようにはできてない、まあそう言う事なのでしょうね。
【
さて、一つの戦争は終わりました。
デカグラマトンの脅威自体は排除され、そして遺されたのはマルクト、しかしもうマルクトは脅威目標ではなくなりました。
もうマルクトは未知と世界の改変を狙う相手ではないからです。
彼女はそれなりに大騒ぎを起こすかもしれませんが、それはそれです。
代わりに顔が青い人たちが居ます。
連邦生徒会です。
「いやー、撃ったなァ……銃砲弾どんだけ使ったか算定付くんかな」
「各隊員配給弾薬の6割を射耗しましたからね」
「おかしいよな、俺ちょっと大盤振る舞いした気分になって即応弾は3基数用意させたんだがな」
「正規軍規模相手との正面戦を数日やればこうもなりますよ!」
ユウカさんが帰ってきた先生に呆れて説教してますが、ユウカさん自身も「こうもなろう!」という感想があるのか、数字の衝撃を呑み込めてないのか、ちょっとスイッチが入ってません。
先の色彩襲来はほぼ二日程度で済んだようなもんですからまだ良いですが、数日単位でこの大人がガッツリ火力戦したら偉い事になりました。
因みにこれを実現する為、ユウカさんは黙々と輸送段列を調整して輜重を整え、ハイランダーやオデュッセイアの人たちのペース配分をしていたんですが……なんかユウカさんの顔がつやつやしてます。
「私初めてですよ、こんなマクロ単位まで考えながら手順手配したの」
「なー、リオやヒマリが居たからまだマシだったが、偉い面倒を掛けちまったなぁ」
「まぁ何時もの事ですけど……」
今次作戦では投入兵力は最終的にほぼ一個師団規模になり、それを連隊戦闘団程度の指揮本部でなぜか円滑に指揮統制出来たのは、紛れもなくアロナちゃんたち、そして先生たちの両輪で回したからです。
普通なら絶対に破綻しますが、専門家は本業以外は別の専門家を呼ぶのが仕事です、出来るところをコツコツと……と言う事なのです。
「しかし
「さぁ?」
「装具品まで帰って来たのは流石に恐いが……」
どうしてか、デカグラマトンの転送を喰らったスズ団長は海釣りおじさんらに発見されました。
まあ何でか生きて無事だったんですから、それはそう言うものだと思いましょう。
連邦生徒会の再建したてのサンクトゥムタワー議場公開答弁や、記者会見は鋭い問いかけをしてくる記者などに揉まれつつ、先生は残った仕事を処理して終わらせました。
表向きは「何も言えません」としつつ、わざと戦闘映像の一部をリークさせ、ある程度真相を匂わせる、そうする事で大手マスメディアは黙らせ、別のセンセーショナルなニュースまで誤魔化す訳です。
「取り敢えず銃砲弾の補充は幾つかに分散して発注だ、カゼヤマも流石に困るだろうからな」
「レイセオンの株でも買おうかな……」
補充の手配をしながら予算案を纏めてますが……、ワー凄い、アロナ官僚じゃない事に神に感謝したくなります、信じてませんけど。
流石に報告を見たリンちゃんも目を見開いています、先生が火力戦主義者である事は明らかですが、総力を投じた火力戦とは何かを見た訳ですから。
あーほら! 数字見たアオイ室長が吐きそうになってます! ぎゃーっアユムさんが倒れたー!
「なんですかこの数字は」
「対策費用と補充の補正予算案」
「会長も居ないのにどうやって承認しろと」
「知らんよ未だに決めてないのはそちらの話だ、暇な外局の小官は関与してないので分かりかねます」
困った顔をするリンちゃんの顔を、じっとはっきり見て先生は告げました。
「と、いうわけで補正予算、お願いいたしますよ。
0の桁を一つ減らして何万の民衆が犠牲になるかはよくお考えを」
結局のところ、キレてる最大の原因はこれなんでしょうね。
数字がどんな意味を持つのかと言う話です。
考えても観ればこれまでの連邦生徒会はその主導力に不足してきました、色彩襲来では組織として問題を露呈、エデン条約はぶん投げ、アビドスでは黙殺。
活躍するのは結局のところ外局であるが、その外局は制御できてるか怪しい……、うーんどうしてこうなったのでしょう。
アロナちゃんの責任なのでしょうか。
『九分九厘そうだと思いますが』
「ヴえっ……」
『前任者たちのため込んだ失政が原因なのは事実そうでしょう』
「ヴ、ヴえー……」
『あまつさえ失踪ですし』
うう……正論は人を傷つけます……。
……あれ? プラナちゃん、なんだか先生の寝ている様子が変じゃないですか?
『確かにそうですね、レム睡眠にしては変です。先生はショートスリーパーですが……』
「ええそう、4時に起きて仕事始めちゃうような類いの……じゃなくて、何か寝言が」
しゃ、シャークネードの杖? しゃあけどの杖?
よく聞き取れませんね……。
おや? それとは別に……シャーレ隊員らが大騒ぎしています。
「会長が帰って来たぞ!」
「なにぃ!?」
「本当かぁっ!?」
「会長が帰ってきた!」
……へ?
「降伏以外の手段を取れば何であれ、危険を伴うのは確かだ。
しかしあらゆる歴史の教訓は説いている、”宥和政策より危険な政策は無い”と。
(中略)
これらは戦争の道となる。
何故ならこれらの声は我々大半の声じゃないからだ」
──ロナルド・レーガン大統領 "A Time For Choosing"演説──
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。