キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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「コステロ氏、あなたは無一文なのですか」
「(硬貨の揺れる音を響かせながら)その通り、本当ですよ」
──フランク・コステロ*1 浮浪者容疑*2で逮捕された際に記者への答え──

*1
本名は「フランチェスコ・カスティーリャ」、暴力より交渉が上手い政治へ食い込むマフィアのスタイルを確立した

*2
300ドルのスーツにたった所持金6ドルだったから。




後這う蟹が餅を拾う

 

 治安の良くない地域だが喧嘩は売られない、実に有難い事である。

 予定通りの場所へ近づくと、あまり素行の良くなさげな生徒らが路地にたむろしていた。

 そんな生徒らを「ほら通行の邪魔してんじゃないすよ」と押し退けてコノカが進むと、その生徒らは威嚇ではなく困り果てた様子で言った。

 

「姉さん、頼んますから何も壊さんでください、ね!」

「なんすかー、何か壊されると思うんすかー?」

「頼んますよ本当」

 

 困り果てた様子の見張り達を意にも介さず、扉をノックする。

 

「おーい、開けるっすよー」

「勘弁してくれよ……」

 

 スライド式の覗き窓越しに、生徒が困った顔をした。

 すると何食わぬ顔で覗き窓から手を突っ込み、コノカがその生徒の顔面を掴む。

 

「ほらー、ちんたらしないであけるっすよ、もたもたしない」

「あだだだ! 開けます! 開けますから勘弁して!」

 

 戸を開けながら「ひぃん」と呟きつつ、その生徒は通路の奥へ案内した。

 すると、先生の身体に手を当てて「アンタは駄目だ」とか言い出した。

 

「おっなんだァオメェ、抵抗すんのかお前!」

 

 押し飛ばして怒鳴ると、困り果てたその生徒が財布を出して数万ほどポケットに忍ばせようとしてきた。

 ポケットからつまみ出して更に問い詰める。

 

「お? なんだこれは? お前これ賄賂か? ポリが居る前で良い度胸してんなァ! えぇっ!」

「頼んますから今日は帰って……」

「いきなり現れるのが商売なんだよ、それが警察と兵隊だ、ボケ!」

 

 ずかずかと押しとおる先生にユキノは呆れながら随行した。

 伊達にコルシカの男では無いと言うべきか、それともガラが悪いのは天性か。

 騒音を聞いて奥の扉が開き、黒い犬のようなタイプの男が出て来た。

 

「なんでぇい、一体全体騒々しい」

「よっすー」

「あぁコノカさんですかい、なんですいきなり……つーか後ろの人たちは?」

 

 コノカに嫌そうな顔をしながら男が尋ねたので、コノカは後ろを指しながら「連邦捜査部っす」と笑顔で告げた。

 数秒で男の顔が青くなり、戸を閉めようとしたのでコノカが鞄を挟んで止める。

 

「おらー、じたばたしないで開けるっすよー」

「いやだああああ! 俺は確かに立ち食い師で情報屋だけど連邦捜査部に連れてかれる様な悪行はしてねえよォ!」

「じたばたしない~!」

 

 足をさらに挟んで、コノカが更にドアを押し開けた。

 漸く部屋の中に入ると、情報屋の足を掴んで引き摺り、ソファーに座らせる。

 

「逮捕じゃなくて資料提供しろって話なんだから大人しくしろオラ」

「えぇーっ……」

 

 コノカにより座らせてお話を伺わせる。

 オフィスの長椅子に抱きついて離れたくないとぐるぐる回りながら、あれこれともごもごしている。

 ただ真実此方が単純に話を聞きに来ただけと漸く理解すると、キョトンとした顔で言った。

 

「本当に?」

「だからさっきからそう言ってるだろ、罪の意識に目覚めたとかなら任意同行するぞ」

「いやそれは結構です……」

 

 情報屋の男は「あまり詳しいことは知らない」と言いつつ、あれこれと話し始めた。

 大半は公然情報と大差がなくコノカの資料より価値がなかったが、重要な情報があった。現場で襲撃してきた側を唯一目撃出来た構成員が、相手は「オートマタやサイボーグの類いだった」と言ったというのだ。

 

「最近何かと物騒な情勢ですし、オートマタ採用する企業とかも増えてるすけど、プロフェッショナルな義体化戦闘部隊と区別出来る奴じゃ無いし……。

 ぶっちゃけ、これも眉唾物じゃ無いのかって話ですし……そんくらいです」

「火も無えところから噂は生えねえんだ。夜中の枯れ木を幽霊に見誤るのは夜に人を狙う誰かが居るから発生するもんだ」

 

 財布から適当に数万ほど出し「表のガキどもにちったぁマシな服着せとけ」と言いつつ、建物を出る。

 外では困ったような眼をした生徒らが、早く帰ってくれと言わんばかりにこっちを見ていたので、建物を指差して「オッサンに報酬渡したから服でも強請れ」と告げた。

 

 

 

 トラックに戻ると同時に、車両をシラトリ湾へ向けさせる。

 以前と変わらず事務所のあるそれなりのビルに、インペラトールPMSCの文字が踊っていた。

 トラックが近づくとゲートの警衛が片手を上げて制止し、「誰か!?」と誰何してきた。

 

「俺だ、理事居るか?」

「アンタか」

 

 M16A2を吊るした警衛所の指揮官が、肩の無線でビルと二、三話して、「良し」と告げた。

 トラックから降りて、先生らはビルの応接室に通され、書類仕事用オートマタが「お茶とコーヒー、どちらがよろしいですか?」と聞くので、コーヒーと告げた。

 数分ほどして、身なりの良い、いかにもD.U.の金融街を歩いていそうな仕立ての良いスーツを着こなすオートマタを連れて理事が現れた。

 

「なんだねいきなりやってきて。ケーキでも食うか?」

「いきなりやって来るのが商売なの知ってんだろォ、そこのミスターは誰だ」

 

 ビジネスマン風のオートマタを見ながらそう言うと、にこやかにそのオートマタは告げた。

 

「ただの家具販売店のオーナーですよ」

「へぇ、最近のコンシリエーリは兼業化の兆候があるんですか」

「さぁ? なんのことか、自分の様な者には分かりはしませんし、分からない方が良い」

 

 ニヤリと笑いながらそのオートマタはそう返した。

 先生自身はファミリーだのオメルタだのはよく知らないが、出身地が出身地であった。何せコルスである。

 彼の時代にはまだユニオン・コルス*1や、フレンチ・コネクションは存在してない、まして彼の死後にマルセイユでフランス判事一名を暗殺するレベルの話も知らないが、大体は掴める。

 もとよりコルシカはイタリア半島の連中に切り取り自由にされ、その後勝手に売られた土地だからイタリア語くらいは察しがつく。

 

「ま、俺は古いタイプの人間だ……ミントの代わりにコインが出るスロットとは面白い話だと思わんか?」

「いや全くですな、考えた奴が居たらワイルドハントへ行くべきです、きっと美術テストには合格出来ますよ」

 

 そう言うとそのビジネスマン風のオートマタは、「フランク・カステーロと申します」と告げた。

 

「今回此方に来た理由については、恐らくカルパチョ・ファミリーとの件でしょう?」

「ご理解が早くて何よりだ、手際よくどっかの誰かが、現金輸送車を皆殺しにしちまったからな」

「で、今回は……"やり過ぎるな"と言う話ですかな?」

 

 カステーロはそう言うと、持ってきたケーキを食べ、彼のコップに注がれたミルクを飲んだ。

 特に気にしないでケーキを食べてるヒヨリに「こいつと来たら」と思いつつ、「そもそも、なんで揉めてるのかね」と探りを入れた。

 

「簡単ですよ、シラトリ湾が一時期使えなくなって、鐘崎にも荷物積み下ろしが増えたんです。

 おかげで港湾荷役の労働者はノルマが増えた、だが連中、残業手当を増やせって要望を拒否した。挙げ句の果てにコッチの店に荒らしまで送ったんですよ」

「だがアンタのファミリーは再編したて。抗争も戦争もできないが、カイザーを雇うと組織ごと乗っ取られてお終いだ。しかしアリウス系は雇えない……だろ? 

 アランチーノの件で迷惑をかけてるのでコンシリエーリとしては今回はマーセナリーを雇うと本校とシャーレから怒られが出かねないから、か?」*2

「否定も肯定もしません」

 

 フッと笑ってカステーロは足を組みながら言った、敵意はないと言う意思表示だ。

 一流のビジネスマンと犯罪者と俳優の共通点はスタイルと演技力である、そして優れた軍人と犯罪者には違いはさほど無い、たった一つの大きな違いは利益が個人に行くか国家に行くかということ。

 

「ただ貴方としても損はしない、カイザーに握られるより安定した港湾荷役で満足する人々の方が都合が良いからお越しになられた、と言うあたりでしょう?」

「否定も肯定もしない、だが俺はアンタが自分を必要悪とか抜かしたら普通に潰す」

「そんな事言いませんよ、必要悪じゃ無くて、社会という舞台で演者を待ってる役の空きでしか無い」

 

 肩をすくめてカステーロはそう告げた。

 

「役の、空き?」

「イエス。役の空きです。空きポストにいずれ誰かが入るのです。終わらない舞台は続くということです」

 

 ユキノの問いに、カステーロは静かに頷いた。

 

「それが良くないものでも?」

「良いものと良くないもの、それは誰が決めるんですか? 

 権力者ですか? 権力者は正しく絶対ではない。

 聖職者でもないし、ましてや先生や大人の言うことだから正しいと言う訳じゃないでしょう? いや、アリウス生徒と先生の前でこれを言うと釈迦に説法な気がしますがね」

 

 最後にクククと笑いながらカステーロはミルクを更に飲んだ。

 

「結局のところ信じて待つしか無いだけですよ、子供と大人は関係無い……信じるに足るものを願って見つけれるのなら願いもしますがね」

 

 複雑な顔をするユキノを横目に、先生がぐいっと机の上に身を乗り出す。

 

「アンタの人生哲学に興味はないんだ、そう言うのはいちいち語るより背中で見せた方が良い……。

 真面目な話、アンタが株価や原価操作で変な噂を流しているかを聞きたいだけだ」

「噂?」

 

 カステーロは首を傾げた。

 

「たとえば?」

「カルパチョ・ファミリーがいく人かの失踪者に関与している、と言う噂だ」

「あぁ、昔からではありませんか? 人が宣伝に出る時、理由は幾つも有りません。

 何かを売り込みたい時です」

 

 カステーロの返答は暗に「ただの宣伝戦略じゃないのか」と返した。

 

「そうだな、実際の所、失踪者のいく人かは、夜逃げで逃げ出しているのを警察も確認している。

 だが、何を売り込みたいのかと言う事だ」

「一つしかないでしょう、恐怖です、つまり、威嚇ですよ」

 

 カステーロは両手を開いてそう告げた。

 先生はやや呆れた様に「威嚇になるか? それ?」と返したが、カステーロは「大半の奴には威嚇になるでしょう」と返した。

 

「誰かの武器や身元のわかる物を魚と包んで送るとかじゃ無く? 地元の近くだとそう言うのだったが」*3

「直接的に過ぎるとそれはそれで問題だと思うんですが……」

 

 カステーロの呆れた様な呟きを聞きつつ、先生は「威嚇にしてはレベルが低いと思うがね」と返した。

 

「まあ、あそこも経営が苦しいと言うことでしょう。

 港湾警備事業の入札金のやり繰りに困ってる様ですし……」

「あー……」

 

 先生が右手で顔を覆った、全体像がはっきりと見えてくる。

 まず、俺が暴れて海賊が増えた。

 結果として港湾警備事業の需要が高まったが、カルパチョ・ファミリーはそれに対応出来なかった、結果としてコストが嵩んだ上に役に立つか怪しいと見做され、店主や船主たちに支払いを拒まれ出す。

 そうした経営の問題を抱えた中で鐘崎港湾荷役の急増、焦ったファミリーは賃金向上と引き換えに労働時間を増やすと言う解決策では無く、性急な手段で稼ごうとする。

 そこでカステーロは頼れる事ができて、港湾警備事業に食い込みたい実力者としてインペラトールPMSCを呼び込んだ。カイザーでは自分の組合(ユニオン)まで根こそぎ潰されてしまうからだ。

 結果として理事は上手くやった。レンジャーによる奇襲によって陸地でもカルパチョ・ファミリーは失態を晒すことになった訳である、よりにもよって集金が襲われたわけだ。

 この恥をすすぐ為に威嚇としてカニの噂を使ってみたカルパチョ・ファミリーだが、問題はカニなどの甲殻類全体にネガティブな噂になって、漁師連中やショバ代を払わせてる連中に迷惑をかけて、自爆しているわけだ。

 

「なるほどねぇ」

 

 話を伺い、失礼する。

 ユキノらは「単なる組織抗争と威嚇ですか……」とため息を吐いていたが、ミサキがぼそりと「本当になるんじゃないかな」と呟いた。

 

「なんですって?」

 

 クルミが本気で驚いた様子で尋ねた。

 

「言霊、って言うのはイメージが実体化、具現化しやすいと、成るよ?」

「そ、そりゃあアリウスがそう言うのが出るのは分かるけど……そんなこと言ってたらあちこちで出て来るんじゃないの?」

「さあ? でも前例がある。今までそうだったからと言ってこれからもずっとそうとは限らない」

 

 ユキノは真面目な顔つきに変わると、マギやミサキたちに向けて「アリウスの場合、実体化したケースはどれくらいの時間がかかりましたか?」と尋ねた。

 

「……だいたい2週間くらい」

「てことは、これもしかしてそろそろ具現化するんじゃ無いかしら……」

「多分ね」

「……前にやってたペロロジラvsシリーズの最終章じゃないんだから」

 

 クルミが空を見上げて呟いた。

 確かワイルドハントの連中やミレニアムの協力に飽き足らず、ウチから隊員を貸してくれと言ってきた作品だから覚えている。

 コトリとヒビキが「面白いと思うし」とペロロジラの特撮スーツ腹部に熱線砲装置を仕込んだせいで、最後溶けてたはずだ。

 ただ実際の所、実体化するのが近いと言うのは可能性が捨てきれない。

 そうであるなら連邦捜査部としては可及的速やかに事態を収拾するべく、突入が必要になる。問題はこれが別件で突入するべき事態であると言う事だ。

 たとえば特権や転び公妨で突入すると、連邦捜査部が介入する何かになってしまう、そりゃダメだ。信憑性が出てきちまう、真実だもん。

 で、あるからには我々としては別件で、しかも公然たる案件である必要がある。

 

「あっ、なら良い提案がある」

 

 マギが片手を上げた。

 

「おいまさかお前」

「前にアズサたちにやられたあの手だ、出来の良い後輩の友達の知恵をパクるとしよう!」

「勘弁してくれよ……」

 

 どう言うことかFox小隊らが聞くと、マギは「あのドヤ顔コンシリエーリの適当な事務所に手榴弾とかぶち込んで、理事に部隊展開を唆すんだ」と笑顔で述べた。

 当然だがそれを聞いてオトギは思考が停止し、クルミは唖然とし、ニコは愕然とし、ユキノは呆然とした。

 カヤは「政権のやることじゃねーな」という顔をしているが、「まー、誰も損はしねーか」と受け入れていた、やはりやればできる奴なのかも知れない。

 

「ど、どう考えてもそれは正義とかそう言うのに反する気がするが」

「正規の書類による命令を受けてない非公然部隊が正義を語るのか?!」

 

 マギは本気で困惑した声を上げた。

 ダメだこりゃ。特殊部隊と言ってもお行儀のよろしいユキノたちLE系と何でもやろうの軍特殊じゃ思考が違う! 

 いや、概ね正しいのはユキノの言い分だと言うのは否定はしないが。

 

「だいたいね、みんなのうち不幸になるのは怪しい犯罪者と犯罪者じゃないか」

「いや、しかし全面抗争になんかなったら市民生活に」

「ならんよ、そこで正義の味方、シャーレとヴァルキューレの皆さんがご登場するんだ」

「えー……」

 

 それしか手段が無いし四の五の言ってらんねぇ。どのみちどっちも犯罪者だ!潰れても腹は痛まねえ! 

 そうと決まれば至急カンナ達を御呼出しだ。今宵12時マフィアが死ぬって伝えるのは楽しい仕事と思おう。

 何か納得はしてはいない様子のユキノだが、代案も無いのと、事態の制御失敗自体は容易に避ける事が可能なのは認識していた。

 どのみち暴走しそうなら双方潰すのは可能だ、一番制御が怪しいのが先生であるのが不安だとユキノは考えているのだが。

 

 

 

 

 ユキノは取り敢えず、それなりに目立ちそうで、偉そうな奴を捕まえる事にした。

 行動分析から直ぐに一人、適当にぶらついている哀れな奴を見つける。

 あとの手順は簡単だ、まずはそいつを簡単に拉致する。続けて別働のマギがM1918A4BARのショートバレルカスタムを連射し、見張りを数名なぎ倒してバイクで逃走。

 さらに対立ファミリーの事務所へ銃撃を加えてユキノが拉致して昏倒させた奴を捨て置く。

 これで双方は簡単に一触即発、カステーロは取り敢えず脅しとパフォーマンスとして鐘崎港の入口へ兵隊を集めた、続いてインペラトールPMSCも部隊の一部を展開する。

 逆にカルパチョ・ファミリーの連中は抵抗線を張って、慌てて武器を持って集まる。

 無論、普通ならこれはただの抗争事件特有の対立だ。

 

「さァーて、警官隊が来た以上はここからが俺の独壇場……」

 

 現状、睨み合う双方に違法な案件は無い。

 PMSCや、カステーロの兵隊と言っても、武器携帯の免許も使用も合法ラインだ、なにせ公然は私立探偵と民間軍事警備会社である。

 カルパチョ・ファミリーにしても警備事業者であるから、これも違法性はない。

 だがここで命令が活きてくる、命令者となるカポが消えた今、連中は非常に殺気立っている。

 周囲はヴァルキューレ警察学校の警備局機動隊三個中隊で封鎖、マスコミも来てはいるが遠巻きに見ていると言う雰囲気で、公安局の実働班20名とシャーレ一個小隊ほどが展開して待機している。

 

『Fox4よりゴールドイーグル。動いた』

 

 カステーロの兵隊はラインを探ると言う動きが強いが、カルパチョ・ファミリーはやはり予想通り短慮な手段に出た。

 即ち対立勢力への発砲である。

 そして当然のことながら、カステーロの兵隊も応戦を始めたが、PMSCの指揮官に囁かれて後退の構えを見せている。

 やはりカステーロは利益計算するタイプとして妥当な姿勢を見せた、政府へ押し付けて被害者として演出されたいらしい、読み通りで有難い事だ。

 

「強制執行に入る。検挙開始!」

 

 大楯を展開する警備局機動隊の包囲環と、前進を始めるM113装甲車に続くシャーレ隊員と公安局部隊が動き始めた。

 当然だが理事の側はこちらが動いたのを見て、銃を下げさせ始めた、この後のことを考えれば当然だ。

 理事だって港湾の警備事業へ食い込んでいきたいわけだ。

 そしてカステーロは座ったまま餅が食えるんならそれでよし、利口で何より。

 

「危害射撃に対して応戦する」

 

 銃撃と同時に、M113装甲車のガンナー隊員が宣言した。

 M113装甲車に据え付けられた砲塔から、KBA-B02 25mm機関砲が唸りを挙げた。

 シャーレの機械化大隊が装備するAIFVに近い改造型だ、渡航能力は装甲と火力強化で消えたが、ペイできる。

 巻き添え防止でレートを絞ってバンバンとセミオートマチックライフルによる射撃のように撃つが、25㎜砲は大半の生徒の戦意を喪失させる。

 続けて、倉庫に向けて車体を旋回させるとシャッター目掛けてM113装甲車が突進した。

 

「突入!」

 

 残存する構成員や投降した構成員らが次々、後続の警備局により御用となっていく。

 奥へと突入するFOX小隊と、アリウス系の隊員らが倉庫をさらに前進していく。

 大半の構成員はG3程度を装備したに過ぎない上に、防弾装備も未熟であるから、正確な射撃にあらがう術を有していない。

 抵抗者を制圧し、検挙者と確保書類らをカンナらが回収していくが、カンナが長い耳をぴょこっと横へ動かした。

 

「ん……何かカタカタ音がするが、気のせいか?」

 

 カンナが向いた方向では、木箱がカタカタと揺れ動き始めていた。

 隊員らがゆっくり近づき、蓋を開けると、そこに待っていたのは「自由!」と飛び出すカニの姿である。

 カンナと隊員らは流石に発砲はしないが、困惑したニコが『あー、現場(AO)にてカニさんが行進中』と報告した直後、倉庫街方面の扉をガンガンと何かが叩く音が響く。

 それに視線が向いた瞬間、大半の木箱からカニたちがリベリオンを始めた。

 足の踏み場の無い様な勢いでカニたちは隅々へ走り回ると同時に、扉を叩く音が激しくなった。

 

「なんかの歩行兵器か?」

 

 現場へ前進した先生はそう首を傾げるが、扉をブチ破って現れたのはドラム缶をハンマーめいて腕にした、カニのような何かだった。

 思わず全員が唖然とし、困惑した。

 だが続けて見た光景に全員が更に息をのんだ。

 

「……めっちゃいるじゃねえか」

 

 カニさんたちの、大行進である。

 

 

*1
鉄の結束で知られる欧州マフィアの代表格の一つ

*2
便利屋の件でアリウス傭兵に迷惑をかけた負い目がある

*3
シチリア式で「もう魚の餌にした」という意味




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