キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
カニに進化する。
──ロングスリーブTシャツに描かれた文字──
扉をブチ破ってきたカニ、恐らくカニ、カニのはずの何かは、明らかに倉庫街のある反対側からやたらに湧いて出て来ていた。
カンナと、現場の証拠回収記録中の姉の方の白河であるリッカが二人そろって「カニだぁ」と間の抜けた声をあげた。
「いやー、どう考えてもカニに見えねぇよ、
「脚が8本あって腕が2本、カニですよ」
「ハサミが無いでしょうが、ハサミが無いならロブスターもシュリンプでもねぇって!」
思わずそう言うと、カニを自称したい謎の何かはムカついたらしく、地面へドラム缶の腕部を叩きつけた。
ユキノがそれを見て「先生、時代はやっぱ多様性と言う事ですよ」と述べたのは、素なのかパニックなのか判断が付かない。
「性自認がカニは思春期でも言わないと思うし、言ったら行くべきは精神科だ!」
「そんなギュッ! と顰めた顔されても……」
憤慨したように何か赤くなったカニたちが、ドラム缶の腕部を振り回しながら突撃を開始した。
流石に腐ってもミメシスとかそれに類するものなのか、瞬く間の3連撃でこっちの隊員1名をぶっ飛ばしてきやがった。
「全隊員各個に撃てェ! 近寄せるな! 装甲車を中心に防御円陣!」
即座に指揮を掌握して交戦が始まり、恐らくカニと言い張る何かは大挙して突撃に入る。
M113装甲車が20㎜を射撃し、続けて車両の上に上ったミサキが「後方ヨシ!」と確認、直後にSMAWを撃ち込む。
ヴァルキューレ警察学校のM4やBCMを喰らいながら迫るカニを、M249の弾幕で追い散らす。
装甲車の砲塔上から車長が顔を出して固定式のM2で更に火力を付け足すが、5.56㎜弾がギリギリ貫通してるが、カニの腹以外あんまり平らじゃないから弾いてやがる。
ただそれでも、陣地転換したオトギとヒヨリの直射火力支援と、クルミとニコが火力を向上させておいたお陰でなんとかなっている。
いやー! .300BLKって凄いんだな! レジオンドヌール勲章のシュヴァリエくらいならあげたくなるぜ!
「えっらい数でわき出てきやがって!」
「装填!」
ユキノが即座に再装填し、横から迫ったカニを打ち抜く。
続けて、ユキノへ腕部を振り下ろそうとしたカニへレ・マットをぶち込む。
マスケット弾に良い所が一つある、装薬と弾丸のサイズのお陰で貫徹力はあるってコトだ。
ただ流石に防御円陣に突撃するのは損害がバカにならないが、こっちとしてもまずい。
すると、シッテムの箱に通知が来た、こんな時期と場所でかけてくるのは、理事だ。
『先生、今ソッチ見てるんだがあのカニは何だ』
「知るかよバカ! 俺が聞きてぇ!」
『えぇ……? と、取り敢えず沿岸にウチの浦項級が待機しているから、位置を指定しろ』
あの野郎なんつぅモンを連れて来やがったんだバカじゃないのか!?
だがなんだっていいこの良く分からん何かを根絶するチャンスだ! どう考えても人類の友には成れないだろ。
『射撃地点を確認した。デンジャークロース!』
此方へ向けて、浦項級がダルドの40㎜CIWSを地上掃射する。
区切り区切りのマニュアル射撃だが、流石に40㎜だ、カニを自認するバケモノが細切れにされる。
流石に艦砲射撃は考えていなかったらしくあるが、自称カニたちはいっせいに残存個体を纏めて海中へ飛び込む。
「なんっなんだよッ! アイツら!」
「おそらく、カニ」
「多分カニ」
バグったOSみたいな事しか言わないカンナとユキノに諦めつつ、海の様子を見る。
裏ではユキノが即座に「再装填を確認!」とやるべき事を指示した、マギが装甲車の予備弾薬から、ミサキのSMAWを再装填する。
「
静かになったのもつかの間、今度は大きな揺れがしてきた。
上空に展開したMQ-20から映像で様子を確認していたカヤが、無線で『あー、未確認……未確認の大型動体が移動中』と、当惑した声で伝える。
「どうすっぺ……」
流石にウチの隊員からも困惑が拡大している、そりゃそうだ摘発に来たら反応に困るバケモンが出たんだ。
俺の大陸軍だってこんなの出たら近衛軍団も困惑だよ! 吸血鬼とかドラゴンのがまだマシだ! *1
あんなカニが何喰ったら生まれるんだ? 水銀とかコバルトとかカドミウムか? 或いは鉛や硫酸やオキシダンか? そうはならんだろ。
「ともかく被害拡大や露見が困る、倉庫街へ突っ走れ!」
「了解! 装甲車前へ!」
運転手が即座に装甲車を進ませ、穴ぼこだらけの倉庫街を突き進む。
砲塔を旋回させ、注意を向かせるために射撃を命じるが、砲手が「先生! ありゃ一体なんでありますか?!」と尋ねて来た。
「目標……知った事か! 無照準でぶち込んで構わん! どうせ海だ!
機関砲のバーストを5点へ切り替えろ!」
「イエッサー!」
5点バースト射撃の軌跡が海へ駆け抜け、水面から姿を見せ始めてきたドラム缶カニの親玉は上面の表皮で機関砲弾をはじいていた。
はっきりと姿を確認したそれは、カニのような体格の上に廃材やらを背負った、言わばそう、カニの動く城。
嫌そんな訳があるか! ふざけんな明らかに20m級だ、というかケテル君よりでけぇじゃねえか!
この世に多脚戦車よりデカいカニが居てたまるか!
「照準ヨシ!」
「てぇっ!」
バヒュ! と音を立てて84㎜の榴弾が弧を描いて飛んでいくが、あの化け物はさもチャームポイントでございと鎮座する二基のCIWSで撃墜した。
ふざけんなアクティブ防護装置積んでるカニが居る訳ねえだろ、加減しろバカ。
「撃墜された?!」
ミサキが思わず驚愕の声を発する。
マギが再装填するが、このままでは意味がない。
瞬間、ユキノが咄嗟にこちらを見た。
「先生! なんとかあれに数秒で構いませんから、見えなくさせれますか」
「そう言う事なら出来る、アロナ! カヤ! MQ-20UAVを特攻、それと同時にオトギとヒヨリは目ん玉を同時狙撃!」
オトギとヒヨリの『了解』と言う声と、カヤの『いつでも突っ込ませれます』が聞こえる。
「開始」と告げると、まずカヤの操作するUAVが急降下を開始。
当然見上げた化け物は機銃で迎撃を図るが、身体上部を射角調整する為仰け反るようにしているから、下部の目を狙える。
オトギとヒヨリのシンクロショットは、当然高練度部隊として完璧に決めてみせた。
「GO!」
ユキノが飛び降り、一番近いクレーンへ駆けあがる。
そのクレーンにはコンテナが付けたまま、持ち上げてない状態である、なにせ摘発と封鎖で作業員を退避させたから当然だ。
最低限の安全配慮で持ち上げず放置した作業員は、クレーンとコンテナの固定はちゃんとしていた。
ユキノのやりたい事を理解した先生は、ミサキとマギに指示し、クルミとニコを降車させる。
数秒悶えていた化け蟹は、更に猛り狂ってこちらの装甲車を猛追する。
「来いよ化け物! 殺してみろ! 俺はここだ! 来いよ怖がってるのか!?」
咆哮に似たハサミの打ち鳴らす音が響き、化け蟹は突進する。
レ・マット拳銃を全弾撃ち尽くした後、インカムで先ほどの怒声とは真反対の静かな声で告げた。
「釣れたぞ。やれ」
『はーい』
瞬間、ユキノは澄んだ綺麗な声で返事をし、「リリース」と告げた。
クレーンによるコンテナ投擲攻撃は、流石に対空機銃程度では防げない。
ごんっ! と直撃した相手身体上部構造物を圧壊、ぐしゃりと音を立てたカニへ、側面から回り込んだミサキと弾薬手のマギが走り込む。
「てぇっ!」
開いた口内らしく部分への射撃は、咄嗟の防御で僅かに逸れた!
「しくじった! 再装填!」とマギが告げ、急いで再装填を始めるが時間が足りない。
「ニコ! クルミ! GO!」
必死に腕部を振り上げようとする化け物へ、クルミが突入し自慢の盾を光らせる。
本来、カニの視覚というのは良いものではない。
しかしこのカニは曳光弾や弾道、落ちてくるUAVなどを有視界で確認していた、そして目をやられた瞬間、コンテナが刺さった。
即ち夜間でも昼間同様と言う事だ、そんな奴にピカっとかませばどうなるか?
外れるのである。
「ほらお代わり!」
続けてニコが眼へドラゴンブレス弾! 更に相手の視界が妨害される。
再装填よしの合図とともに、ニコがクルミの後ろへ飛び込んで安全を確保する。
「てぇっ!」
続くミサキの射撃は、ちゃんと口内へ飛び込むと、目標体内で正確に起爆する。
体内が幾つか連鎖して誘爆し、機関砲弾の誘爆音と共にカニの様な何かは融解していった。
跡に遺ったのは、大量のカニだった小さな残骸たちと、くねくねと同じ結晶であった。
「目標沈黙を確認」
クルミと共に後退して来たニコやミサキ、マギらが合流し、取り敢えず連邦生徒会の保健室へ除染を要請しておく。
カニの死骸類は熱滅却措置が良かろう。
M2火炎放射器で一塊にしたカニの死骸類を熱滅却し、こっちの隊員で熱滅却をしたあと、化学汚染の疑いがあるとして洗い流して除染措置した。
実際問題刺激臭と言うか生臭い匂いがしたので、言い訳はしやすかった。
幸いなことに倉庫の一部には洗剤などが入っていた、言い訳はしやすい。
「戦闘に際して違法に隠匿していた火器類が誘爆、ま、そう言う事で手打ちかね」
コノカが現場の仮設指揮所で、コーヒーを飲みながら呟いた。
当然だが突然変なカニが出たなんか言えないから、監視カメラの映像を差し替えて、もっともらしい言い訳……多脚戦車辺りが海から出て来たと書いておけばよかろう。
クロノス辺りには「タコ人間」とか適当に書かせて放置すれば馬鹿らしくなるだろう、事件は良くある組織抗争の一部に矮小化される。
「事実を書いても売れねえからな」
先生の呟きに、ユキノは複雑な顔をして尋ねた。
「真実じゃなくても?」
「事実や真実を知ったとして、口当たりの良い部分だけ摘まんで消費するだけさ。
あいつらはミームを食って現れるって事だろう? 餌やりなんぞせんで良い」
ユキノの残念と言うか、悲しがる顔を見ながら、先生は「お前の責任じゃねぇよ」と返した。
「ユキノ、お前は現場の戦術指揮官だ。
即興で状況を考えて行動し、成果を上げる、それがお前の職責の範疇であって、お前の責任は事件のあとや、その始末には及ばないんだぞ?」
これ自体は本心からの意見だった、正直理解しきれないのは、連邦生徒会会長はSRTをどんな教育なされたのかである。
ユキノが事件後まで気にしていると言う事は、突入部隊にそこまでやらせたと言う事か? 明らかに常軌を逸した組織運営である。
ユキノが気にする範疇は、突入にあたって無駄な犠牲を産まず、速やかに混沌を沈静化する事だ。
そのために即興で対応したり行動したり想定する、法執行特殊部隊としてそれが責任の範疇である。
「ですがそれでは」
「その後の責任は全体を見る
なにせ状況と食い違う情報を渡すのは情報参謀の責任で、それを採用した参謀長が、さらにそれを信じた上級指揮官の責任だ。
これも支援部隊や上層部を頼る練習って事だな」
結局、指揮官の責任って具現化すると意志を以て情報から選択し決断する事である。
出来ないなら指揮官辞めろ、周りを道連れにする上に迷惑で自殺に付き合わせるな、それが軍で理解した事だ。
そう言う奴は部下の意見具申も敵として処理して何もしない、殺すか何とか解任するしかねぇ。
だから5人に1人は部下に殺されるのだ。
まして小隊長なんかが何を決断できると言うんだお前、大隊長ですら意思決定権なんか無いよ? *2
「ま、小隊単位で出来る事は幾らもねぇ。
ほれ、おめぇん所の地元の歌にあるだろ?
最後を決すは我が任務、騎兵砲兵位置につけって事さ」
「良く知ってますね」
「ユカリがな、気分が良いと歌うんだよ……キキョウもな……レンゲも甘酒で酔うと歌うんだよ……」
ユキノは納得した顔をし、そして言った。
「不肖、力いっぱい頼ります」
色気のある敬礼に、二ッと笑って答礼する。
「おう。頼れ頼れ。子は大人の脛を齧る権利があるのだ、こりゃいい権利だ、齧るが良い」
それで良いのだ、たかだか小隊指揮官ごときが責任と言われる時は他の最高階級者が全員死んでるとか、その下命が明らかに正しくない時にやるのだ。*3
だいたい上級部隊の援護も支援も欠いたら意味がねえ、独立部隊化された大隊以上を指揮して言う事だ、独立旅団くらいになるとこれが変わるんだが……残念ながらFoxは独立混成旅団とかじゃない。
「せんせー、ありましたー」
「あった? 本当か」
オトギがケースを抱えてやって来た。
「なんです?」
「いや、オトギが目標体組織崩壊時に例のガラス片のようなものを見たと報告してたから、ヒヨリと探させてたんだ」
「あぁ」
オトギから回収し、ケースを携える。
「30分後までに我々は状況を終了する。撤収準備!」
そう発令し、よいしょと席を立つ。
ある意味において今回の事件は治安の悪いキヴォトスのしょうもない戦いでしかない。
所詮はそう、ポケットの中の戦争でしかないのだ。
あの謎のカニ擬きはドラムバルカと命名すると、連邦生徒会会長から内示された。
「命名の意味とか所以はあるのか」
「個人的趣味と聞いています」
「あ、そう……」
連邦捜査部本庁舎地下の、クラフトチェンバーで頑張ってでっち上げた隔離収容室を見ながら、リン首席行政官はそう返した。
隔離収容室には防爆仕様で収容された謎のガラス片のような何か、今回も出て来たコレを収容している。
先の色彩戦に際して新設していた奴だが案外役に立つもんだ。
「鏡のよう、と言う事は分かるんですけどねぇ」
カヤは頭をぽりぽりと掻いて、不可思議気にガラス片を覗き込んだ。
やはり魚眼のように歪んだバースの自身ではなく、どこか別の風景が見える。
つまるところ、なんかと繋がってる疑惑がある。
「そう言えば会長殿はお元気?」
「私が週一回は休める程度に」
カヤにどれくらいよと視線を向けると「”前任者”より優秀ですね、超人名乗るだけはあると言うか」と皮肉った様な事を述べていた。
無論、皮肉りつつもカヤの意見は明確だった。
ぶっちゃけアレを交代させても良くならないんじゃないかという意見である。
「……なぁ、割と真面目な話だが、お前は何処までやる気だ?」
「何処までとは」
「”
リン首席行政官の目が見開き、こちらを見つめる。
真横からえげつない視線が、殺意すら混じってそうな視線が向いてるのを気にせず、ガラス片を見ながら呟く。
「カヤ、お前ならどうするよ」
「名分を気にするかどうかで変わります、明確に」
「小役人め……。甲乙で考えろ」
「気にしないなら中隊程度の特殊部隊だけで良いですから、今すぐでも。一人消すだけですし。
気にするなら色々考えなきゃいけません、準備にも兵力集中の名分も要ります。
確か聖園氏のクーデターでは夏季総合演習に合わせてましたが、こちらも似たようなものになるかと」
カヤの言葉に頷き「概ね同意だな、サンクトゥムタワーの安全問題と言い張って役員を全員移動させるなどして、戒厳を発令してしまえば良い」と返す。
リン首席行政官は何が言いたいか、良く理解していた。
お前の言う通り偽物である場合、社会はどう考えるだろうか。
先制奇襲攻撃は軍事の理論であり、直接表現のそれを許される場合、政治は既に意味を成してない証明以外の何だと言うのだ?
政治とは手順と段階を踏んでするゲームである、駒を動かすには手順が居るゲームである、盤面を蹴り飛ばしたらゲームではなくなる。
「それが許されると認識されたら終わりだろう、我も我もとそう言う手段に走り始めるようになっちまう、左右過激派が暴れ出す」
つまり詰みである。
国家システムとか社会システムとかは共通幻想に近い、機能しないと民衆が見限る速さは尋常じゃない、信用されない紙幣と同じである。
「やるにしても明確な実績がこうして出ている、排除するとしたら俺は明確に反対する」
「何故です」
「民衆の為に働く偽物は問題を放置する不在人物より社会に役立つからだ」
「今まで会長の手紙を使いながら良く言いますね」
「だから実力行動は常に実績と必要性と合法性を基にして来たんだよ」
リン首席行政官はしばし沈黙した。
カヤはさりげなく「そもそも、この風景は実在するんですかね」と尋ねた。
伊達に参謀職というのをしてないのだろう。
「……会長の写真同様、不可思議な不明の場所は幾つもあります。
私は恐れている事があります、この鏡の向こうは、我々のキヴォトスと別のキヴォトスなのではないかと」
「色彩の危機を止めたのは別のキヴォトスの先生だ、あり得ない話ではない」*4
リン首席行政官の顔は、訝しむような眼をしていた。
「私が一番恐れているのは、あの会長自体が、別のキヴォトスからにじみ出たのではないか、ということです。
そして疑っているのは、いつ、それが再度発生してしまうかです」
「なるほどね」
実際空間自体が歪んでるのはしばしば例がある、地下生活者のバカが良い例だ。
あのバカが余計なことしたせいで苦労していると、前に酒を捧げに行ったらクズノハ様がキレていた。
「まぁそれに関しては言ってもどうにもならん、お前自体が飛ばされる可能性もある」
「……まあそうですが」
「それと個人的に俺が一番恐れてるのはな」
「なんです」
リン首席行政官が、横を見た時、先生の顔は見た事のない険しい顔をしていた。
「”俺に関するロア”だ」
言わんとする事は理解していた。
政治的には二重権威という連邦捜査部、さらにそれが二重命令でごっだ返しとか、どう考えても偉い事になる。
今はただ連邦捜査部が事件に個別で対応している程度の認識だが、目ざとい奴が気付く可能性はないではないのだ、連邦捜査部に関するロアが出ないと何故言える?
実体を伴わない噂は笑い話だが、情報化社会の行き着く果ては実態を調べない人々の大量発生だ、必然、ロアになる。
「あーあ、下手にウチがらみのロアが出たら連邦相討つだな。
おぉやだやだ、内戦は戦果にならんし面倒だし……」
ヴァンデの時もなぁと言いかけたのを堪えつつ、取り敢えず告げる。
「良くも悪くも連邦捜査部は
問題はこの言葉が責任逃れで済まなかった時なんだよなぁと先生は呟いた。
会長にはこの欠片は報告していないのは、もしヤバい何かだった場合に備えていたからだ。
まあ幸い報告は俺の仕事だ、何もかも丸く済んだら「ぼくが報告書食べました」と謝る、報告責任は俺の仕事なんだからな、なんたって俺は指揮官なのだ。
ちくしょう、やはりこの仕事は俺に向いていやがる、つくづく楽しい仕事だよ。
先生が退室し、カヤは片手を上げた。
後ろに何処からともなくマギが立ち、にこやかにする。
「御用は?」
「貴女なら首都制圧に何人必要としますか」
「
「果断に過ぎると考えモノですねぇ……」
カヤはきれ過ぎると考えモノと思う半分、本番で泣きを見るのは絶対に”気に食わない”ので計画は立てる事にした。
何をするにしても事前計画が肝要だが、アリウス式は先生の言う通り政治的に問題だ。
全員ぶちのめして政権奪取は外聞が悪い。
「相変わらずですね、カヤ」
「起こりえない事を考える仕事、と要約したのは誰でしたか……まあ、そういうことです」
取り敢えず政治に考慮すると言う事を、この何処か抜けた相方に教え込もう。
カヤは決心してやるべき事を見つけた。
執務室へ戻り、書類を確認する。
出先でも処理できる仕事の類を纏めていると、ユウカが困った顔をしてやって来た。
「戻られていましたか、ちょっと困った案件が」
「なんだ?」
ユウカはどうしたものかと言いたげに書類を見せた。
カタコンベに潜ってしばらく失踪していたトリニティ古書委員会の、副委員長がアリウス自治警察予備隊の、第一管区隊に逮捕された。
罪状は
まずコイツが潜った時にはミカのクーデターとほぼ同じタイミングで勝手に潜り、資料持ち出した時は調印式戦であったらしい、空間が歪んでるのかオイ。
従い、法の遡及適用であるとここまでならお説教! で済むのだが。
「公会議時のユスティナ側議事録だァ!?」*5
「は、はい……しかも原本……」
「マズいよコレはぁ」
「ですから現場で拘束したミボシ
そりゃそうだわと思わず口に出る。
ユウカも困り果てる訳だ、しかもこれカタコンベで本人曰く「発掘した」と言ってるから、これユスティナが都合が悪いから隠蔽したんじゃねえだろうな!?
立派に公文書の盗難と主張できるしカタコンベはアリウスの司法権範疇と解釈できる、支配と操作権限がアリウスにあるからである、しかるに盗掘が追加される。
問題はアリウスにトリニティが隠蔽した何かを掘り当てた奴を、トリニティの奴がアリウスの資料盗掘して持ち逃げになりかけた訳だ、アカン爆発してまう。
「どうすっぺ……」
「ウイ委員長に連絡したら気絶しちゃいましたし……」
「そうなるわな」
「アツコ会長は”なんでどいつもこいつも秘密に深入りしたがるの! ”って拗ねてます」
「そうだろうなぁ……」
結果として俺に泣きつくのは正直正しい。
問題は俺も困る……。
取り敢えず回線を開いて、アリウスへ繋ぐ。
「あーもしもし、うん、マイアか! いや、例の案件なんだが」
『なんとか……なりますかね?』
「何とかしたいんだが……取り敢えず資料だけでも連邦捜査部の預かりと言う事で何とかならんか?」
『あー、少しお待ちを』
流石にマイアの奴も困っていた、生徒会本部付きと言う仕事の常である。
少ししてから、アツコが出た。
『先生、どうしよう』
「取り敢えずな、資料掘ったのはカタコンベなんだよな? だったら連邦封鎖地域からの掘り出しと言う事で、俺の方で回収する事が出来る。
現地PKOの隊員数名の指揮権を一時貸与するから、それで資料はアリウス駐屯地に搬入するか連邦名義で俺に送れ」
『分かった、マイア! 伝令!』
よしコレで後は古書委員会にお話しを通して内々の内に片付けるぞ!
今トリニティの馬鹿どもにこんな爆薬与えたら自爆するぞ! ただでさえ救援金スキャンダルと同人誌弾圧で民衆がちょっと怒ってるのに!
茶会制度の根幹を揺るがすタイプの議事録だったらマズい! 俺が介入する事でETO管轄でウイに修復させよう!
「よし、後は何とかなる」
ふぅと一息ついて、取り敢えずシミコに連絡する。
どうしていつもこうなるのだ。
願わくば平和が欲しいと言うだけだが、そうもいかんらしい、畜生ふざけているなこの世界は。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。