キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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副題:シャーレ連装六〇納入記


不忍ノ心

 

 

本格的な装甲部隊運用と準備が始まりかけた頃、シャーレの格納庫に入ると、オーバーホールに入る第一空中騎兵小隊のAH-64Aなどを見渡した後、唐突に106mm連装砲が目に入る。

豆タンクだの火葬機能付き棺桶など色々言われたが、今だに退役と言うと工務部のようなデモが起きる事が確実な上に、我々の数的主力で火力でも主力である。

アビドス以降でも火力不足に悩んだ実働部隊が、車両に限界ギリギリの魔改造を始めた結果、今日みたいな夜にユウカから持ち掛けられたんだ。

 

「先生、装軌式の戦闘車両を導入すべきです!」

 

 ユウカが悩んだ顔をして言った。

 

「急にどうした?まだ現場は上手くやって居る、何でも俺に頼らず自助努力で動く良い事だ、訓練も殆ど連邦生徒会から文句を入れられ無いだろう」

 

 試す様にそう尋ねた。

 

「そう言う問題で収まる段階を超えて居ました、これは私のミスです」

「2か月は分隊や小隊単位で火力を上げる方針だが……やはりやばいか?」

 

 ユウカの提言は聞き流すべきではない、それをよく知るがやはり気になる。

 

「重・中火器類も定数を割るから火力支援に対戦車火器自動擲弾銃とだったかを導入した、訓練も結局はそれの完熟訓練だ、こちらもそっちが出した予算計画で作戦能力などを考えるんだ。急に導入許可を出されたとしても此方もとても困る」

 

申し訳ないが、俺も急に必要になったと言われて臨時予算計画を出されても困る、こうなるとマンパワーや定数割れや型落ち等をどうにかしてもらった方が助かる。

鹵獲戦車もあるが、あれはアビドスに籍を置く上に、半分以上はグレーの戦力だ。

運用側も理想と言えるが、急に与えられたからと言って喜ぶことはできる訳がない、アビドスで思い知ったが内燃機関兵器と自動ライフル銃は専門性も高くなる、即座に渡されても箱だけや訓練未了で誤射は笑えない。

まして使い慣れない装備品では精鋭が無駄になる。

来月度予算は2日前仕上げたばかりだ。提出は明日の夕方。

 

「俺の初期案では連邦生徒会に承認されないと言ったじゃないか? だからこの編成を練り上げた、導入後の予算はどうする? それに急な計画変更を良しとしないとするお前がどうしてだ?」

「合同警備本部です。あれで半年以上の予算計画壊れましたよ! これどうして黙ってたんですか!?」

「一昨日届いた連邦生徒会からのご注文だ。嫌なら本案件に手を出すなと言われた」

「言ってくれて居れば、補正予算を通しましたよ!」

「通すつもりも無い連中相手に勝算は? 俺は勝算薄いと見たが」

 

 ユウカがムッとした顔をした、”私が出来ない事を出来るという女に見えるのか”という顔だ。

 恐らくやり遂げるだろうが、その先が面倒になる、ユウカというカードは今は切らない。

 

「当然あります、ですがその代わりお願いが……」

「何だ?」

「何とかして提出日を一日で良いので伸ばす交渉できますか?」

「簡単に言ってくれる、あの手の連中こっちの足元見てくるからなぁ……」

「お手数かけます」

 

 にこやかにユウカが笑う。

 

「徹夜仕事だな、カフェ・ロイヤルでも飲んできていいか?」

「あれ飲むんですかぁ? 私は下の書類室に予算計画書用の資料取って来ますので、ここで飲まないでくださいね?」

 

 リンやアユム相手なら楽だが、他の役員連中が一番ろくでもない。

 数日前に自分が言った事を数日後には忘れる様な日和見主義者共こういう時は良く動いてきやがる。

 これからの戦いを思いながら、道具を取るため棚に向かおうとすると、室内の空気? 匂い? が少し違う。

 それに応接間の電気は消さない、奥に寝室も別にあるからな。来客用の部屋でもある、応接間や休憩室と言う方が近い。

 コートの下から拳銃を抜く、最初の一発は即応で撃ちやすくしている。

 以前シロコが「紙巻でやるんなら薄紙で火薬と弾まとめたら?」と、紙製の薬莢に近い即応弾をこさえてくれた。

 現代の紙は薄くて燃えカスも少ないそうだから、確かにその通りだ。

 

「ヤバいよ、何か気づかれてない?」

「部屋の外の声からしてかなり怒ってますよ」

 

 少なくとも生命の危機は感じない、何というか聞くことがあまりなかった雰囲気の声である。

 この雰囲気はどちらかと言えば便利屋の馬鹿たち……だが連中らしいシリアスさの欠片がないから違うか。

 

「出て来い、獣のような奴は匂いで分かるんだぞ?」

「偉い人が忍者に言って、これに乗ったら皆殺しにするセリフだ」

 

 音と声のような物が聞こえる場所に一発撃ちこむ。

 俺の腕前だ、どちらかと言えば警報音とアロナを叩き起こすラッパだ。

 

「グワーッ!!! 痛い!」

 

 昔スズミから護身用で貰った閃光手榴弾投擲! オフィスに退避する。

 

「目がぁ目がぁ!!」

 

 侵入者に効いたようだが、ユウカが几帳面にオフィスの照明を切って居たのが仇になったな、視界が悪い。

 執務机にしまってる、手榴弾を投げ込むか迷うが、書類が吹き飛ぶ危険を加味してやらない事にした。

 それはそうと護身用装備を入れた引き出しを開けようとすると照明が付く、援軍? 

 

「イズナ参上です!」

「どうしてお前が居るかは警備責任者などに聞くとして、今度は何処に雇われた?」

 

 しょうがない、ありったけの煙幕弾を投げて走るか。

 机の上の飲み残しの水を使い、ハンカチを濡らして咥えた後ピンを抜く。まず一個、いざと言う時は押収品のサーモバリック手榴弾も……

 

「主殿! 待って下さい!」

「お前が助太刀とか言わないってことはそう言う事だろ! どこに雇われた? カイザーか? ブラックマーケットか? 陰陽部か?」

 

 アロナに強行突破の合図を出そうとすると、扉が破られ、警備部隊を引き連れたユウカが出てきた。

 警衛腕章をつけた隊員たちがP228拳銃片手に現れる。

 

「緊急検挙!」

「応接間に1、2人隠れている、急げ!」

 

 

 

 一番被害が少なかった、応接間に3人を正座させながら。カフェ・ロイヤルを作り飲んでいる。

 ユウカが結局それ飲むんだと言う顔をしているが、この状況だ、香りを含めて楽しめるこれでも飲まないとやってられん。

 

「それで? 何の用だ? どうでもいい要件なら、お前らんとこの治安維持の百花繚乱に引き渡すぞ、良かったな。忍者らしい余罪たっぷりだ!」

「百花繚乱は最近……「だまらっしゃい! 俺の堪忍袋は臨界点だぞ?」はいぃ……」

 

 イズナが涙目で「主殿ぉ……」と言って居るが、フーシェみたいに安心できない奴に言われても困る、応援してやるとは言ったが、テロ未遂を起こせと言った訳ではない。

 居たなぁ、あのにゃん天丸とか言うアホが、命乞いが無様過ぎたのですぐ思い出せる、シャーレ誤解伝説は奴から始まった、思い出したらぶん殴りたくなって来た。

 

 

 

 新進気鋭の組織はドサまわりから始まる、イベント警備の講習依頼を受けてシズコに会いにいった際に、騒動に巻き込まれた。

 イズナとの最初の出会いもその件だった、夢は忍者と言うので「そもそも忍者とは?」と聞いたら喜んで話してくれた。

 聞いた感想は「密使や伝令と同じような奴か、良いじゃないか」で、イズナは破顔して大喜びしていた、他人の夢は笑わないし、健全だ。

 密使や伝令、現代では特務部隊とかいうの、うちも欲しい、SRTは要するに訓練の良い部隊だが指揮系統そのものが怪しい、特務部隊の意味も政治的案件の意味が大きいのだ。

 イズナの話を聞く限り粗食に耐え、全地形対応で、情報や要人を狙い守るような存在と聞いて「そりゃあいい」と心底感じた。

 が、ここはキヴォトスである。

 

 アホな大人が子供を弄ぶカスな連中が多いところだ、魑魅一座雇って破壊活動してたバカがイズナを唆して操っていた。

 攻撃が妙に情報に詳しいと調べるために、一座の奴ら数名を捕虜にして丁寧にお話を伺うと、ころりとクライアントを明かしてくれた、奴らリテラシー教育受けてねえのか? そこまで義理も無いのが正しいか。

 

「子供と同じく俺も弄べると思ったかテメエ!」

 

 憤慨しながらヴァルキューレ警察学校の車両を借用、特型警備車改造のガス弾車両からCSガスを猛射してやった。

 いやあ、あれは良い気分だった。

 燻された害虫みたいに追い立てられる悪党の姿は頭痛くらいには効く、間違いないな。

 

 ガスマスクつけたうちの突入小隊で殴り飛ばしながら、シズコたちを連れてカチコミしたのだ。

 フィーナが眼を輝かせていたが、その後にウミカが花火投射機として多連装ロケット隠してたのを知ってたまげたものだ、あるんなら言えよ、事務所ごと粉砕したのに……。

 イズナが「これがフィーナ殿の言う”ヤクザ武装霊柩車カチコミ”ですか」と感心していたのも覚えている。

 

「で、何しに来た」

「そ、そのー。こちらを」

 

 警衛隊員にカバンの片隅を開くようイズナが頼む。

 他の2人はひっくり返って気絶している、驚き過ぎだな。

 ユウカが見ると手紙らしく、内容は割と普通な招待状……、ちょっと待て? こいつらそれ渡しに侵入したの? 

 

「いやほら、そっと置いたらカッコいいかなあと……」

 

 ミチルとかいうのが起きてそう供述した。

 

「いや普通に呼べよ……」

 

 侵入手段を聞いたら気象情報見ながら上昇気流を計算、凧で侵入したらしい。

 屋上にSAMでも配備するか、うん、ミストラルとかがよいだろうな。M2も置いて複合防空にするか? 

 

「次やったらお前ら防衛室からふんだくった203㎜使って強制送還だぞ」

 

 放してやれと指示し、招待状を受け取りつつ確認する。

 

「あちらさんに確認頼むわ、一応な」

「はあ。それが先生……」

 

 ユウカがタブレット端末を見せる。

 ”百花繚乱元装備品、一部売却予定”。

 

「……AFVまでありますよ?」

 

 斯くしてその時、シャーレの長い相棒との出会いも開始されたのである。

 

 

 

 連邦生徒会のUH-1を借用して百鬼夜行についた。これのお陰で書類提出の期限を延ばせる、渡りに船だ。

 案内役を刑務労働代わりに依頼したこの三バカ、絶妙にアテにならないが、シビリアン目線ではある。

 ただユウカが「モモイみたい」と唸っていた、誰だよソイツは。*1

 百鬼夜行陰陽部本館、荘厳な空間と威容を誇る古城を基にしたものらしいが、嫌いではない。

 警備や行きかう人々を見る限り安定しているようだ、年中革命の馬鹿とアンポンタンのゲヘナや絶妙に足並みそろえるのが下手な山海経とか、個性が強いからな。

 

「陰陽部部長は話術が巧みなんだという噂です、魂まで抜き取るとか」

 

 ツクヨがそう言った、あまり公然と出ては来ない類の奴らしい。

 かわりにカホとかいう副官にあたるのが実働でよく見るそうだ、傀儡なのかな? 

 そして奥へと通され、待つこと5分。

 代表、または部長の天地ニヤが姿を現す。

 服装は最早何も言うまい、修行部の連中でもうあきらめた、アコがおかしいのではないらしい。

 

「どうもどうも、私、この百鬼夜行のあれこれを取り仕切る……といえば聞こえが悪いなあ、うん、雑事その他をしとります天地ニヤでございます」

「同じく陰陽部副部長のカホと申します」

 

 丁寧なあいさつ、イズナから聞いた話によるとしきたりを破るとムラハチらしい、怖いねえ。

 こちらの礼儀で返しておこう、確かフィーナ曰く……。

 

「どうもご丁寧に。私は生まれはコルシカ、ちょいとばかりしなびた島から渡りに渡ってキヴォトスへ流れつき、なんの間違いか先生などとケッタイな仕事をしとります」

 

 映画と同じくバリトンボイスで述べてみた、意外とすんなりできたな……。*2

 ニヤは嬉し気に笑いながら「ええお客さんや!」と扇子を閉じた。

 

「諧謔の上手いお方は好きや、お話はお伺いしとります。どちらの要件からいきましょか?」

「どちらでも。もう片方は焦ってもどうしようもないわけだからなあ」

「まあそれもそうですわな」

 

 ニヤがカホにさり気なく促す。

 

「今回先生を御呼び立てした理由はほかでもなく、先生の進行なされているもう一つのご案件にも関わります」

 

 エデン条約だな、しかしよく耳ざといというか。

 カホが続ける、ゲヘナの要人が友好関係を深めるべく来たいと言うので、百鬼夜行としては万全を尽くしたいのだと。

 

「というわけで白羽の矢がシャーレにぷすっと刺さったわけでございます」

「それじゃ闇討ちですよニヤ様」

 

 カホが呆れて返し、ニヤが扇子で口元を隠す。

 書面も渡されたので拝見すると、妙に堅い文体で物語が書かれていた。

 

「これ間違えてないか?」

「あっ!」

 

 カホが慌てて取り換える、横から覗いてたミチルが「夢小説じゃん」と声上げていたのは分からない。夢の中で小説でも書くのか?

 

「動画で流したら忍術研究部取り潰します、先生も内容は忘れてください」

「横暴しゅぎるううう」

「勘弁してやれ、な?」

 

 忍術研究部と言うのは前回の騒ぎの後、功績とあれこれの司法取引とかで誕生した組織である。

 つまりまあ、陰陽部やシャーレとしては「やれば出来るこいつらを悪用されてもまずい」と部活としたのだ。

 主な活動は防災、防犯、迷子探し等である。

 和楽姫のイベント内容も聞く限りは商業的イベントだ、体感型イベントというのは大胆である。

 

「古戦場再現なら以前イベントを催したが*3、体感型とは大胆だな」

「次来るときは観光が良いですねえ」

 

 まったくだユウカ。*4

 では警備計画を練る、といっても緊急対応部隊を待機させる感じになるな。

 

 

 

 

 Focke-Achgelis Fa 284*5が百鬼夜行のヘリパッドに降り立つ。

 万魔殿専用のヘリコプターで、一言でいえばマコトの趣味か何かだ。

 手間がかかるものを専用にしてるのが権威の象徴の表れだ! という理屈らしい、普通に非効率じゃねえかな。

 ぞろぞろとゲヘナの儀仗兵が降りてきた、そのあとにゲヘナの要人たちが降り立つ。

 

「頭ァー! 右!」

 

 百鬼夜行側の出迎えも整列させている。

 陰陽部の部員たちだ。

 

「随分とらしくないところに居ますね先生」

「わ、先生」

 

 イロハとイブキが驚いている、前回は色々と助けてくれたわけだから、ある意味こいつらには貸しがあるのだ。

 待機室に案内し、マコトがニヤと話し始める。

 こちらも警備計画を確認しよう。

 

「ユウカ?」

「……あー、あの先生。あいつらって」

 

 指さす方向には、デコトラで何かを運び出さんとしている魑魅一座の連中が居た。

 慌てて待機室の方向へ走る。

 

「ミチル! お前ら警備はどうした!?」

「んえ? 和楽姫なんだからチセ殿じゃないの?」

 

 待機室に居たイロハが頭を抱える。

 

「いやそれが、マコト議長の圧力で今回やるのがうちのイブキに」

「んえ!? しょうなの!? ゲヘナの偉い人に連絡しないと」

 

 無言でミチルにイロハを指さす。

 

「いや、お前らが話してるのがゲヘナの偉い人だぞ」

「ドーモ、イロハです、よろしくお願いします」

「ついでに言うと、パンデモニウム・ソサエティーの議長はポンコツなのでイロハが6割ぐらい実権を持って居る、その意味が分かるな?」

 

 忍者がアイェェェ!!!! するんじゃねぇよ。

 

「合同警備本部長、これは政治的テロです! 我がパンデモニウム・ソサエティーの構成員が拉致されたのです。可及的速やかな対応を、但し何時もの十八番は止めて下さい」

「十八番?」

「……公務妨害を万能の言い訳とする数々の行為」

「与太者だけなら情けなどかけんが、要人が居るからなぁ、まぁ家はそう言うのが本職の隊員が多い」

 

 静かに激高するイロハに押されながら、確かに真っ当なシャーレのお仕事であるのは否定できない。

 外交問題になる前に断固として解決だ! 既にニヤは「エキサイティングのために公演はいつもと違う」と事態解決に動いている。

 つまり参加者たちが動いても許される。

 ドーンと爆発音が響いた。

 

 

 

 シズコ曰く祭りは勢いである、つまるところ火勢である。

 ウミカの感想はそれであり、妥協なき姿勢を図る真面目さが炸裂した。

 

「にゃんで軽戦車が出てくるにょおお!」

「アトラクションなノデス!」

 

 フィーナが笑いながら叫ぶ。

 お祭り運営委員会が今回イベント用に調達したハ号軽戦車「大会1号」である。

 デサントしてるフィーナに加え、運転手のシズコと砲手のウミカは息ピッタリだ。

 なまじイベント熟練者であるから戦闘員じゃないのにたち悪い。

 

「あれただのハ号じゃない!」

 

 流石に軽快に暴れ回るハ号、しかも改造品は隊員の軽火力ではかなわない。分隊にランチャー射手は必須と覚えておこう。

 

「だから装甲車両買おうって提案したんです!」

「なるほどな、ユウカ確かに正しい! 終わったら連邦生徒会と連戦だ!」

 

 路地裏に飛び込んでそう返す。

 辺りを見回す、どいつもこいつも平屋の1階まみれだ。

 だが何とかなるかもしれん。

 

「おい忍者たち!」

 

 ミチルとイズナとツクヨが作戦を聞かされ、この世の終りみたいな顔をした。

 だが知った事じゃない、やれ、忍者だろ! 要人救出くらいならいけるだろ! 

 別にバッファロー殺戮横断鉄道に乗り込めとか武装新幹線に乗り込めとか言ってない! 

 

「GO!」

 

 うちの隊員たちとユウカが飛び出し、SMGやARでハ号の気を引く。

 小銃に耐えうる装甲化された車両が直接砲を撃ちこむ、アビドス校舎戦でカイザーの歩兵隊が降伏したわけだ。

 

「逃がしマセン!」

 

 フィーナが機関銃を射撃し、砲塔が回る。

 主砲が轟き、どんと爆発が巻き起こる。

 ユウカがスカートのすそを抑えてるのを無視して第二段階発動だ。

 

「行け!」

「えー!」

「死んで帰れとは言ってねえだろやれ!」

 

 先にミチルとイズナを掴んで屋根に投げ、ツクヨを抱え上げ着地した2人に引き揚げさせる。

 ツクヨが謝って居たが、気にすんなと言ってやる。

 

 忍術研究部は暴れ回るハ号をみた、サイズは小さくても鉄牛だ、恐ろしいものである。

 しかし「忍者だろ!」と言われては退くことも出来ない。

 三人が屋根の上を走り出す。

 

「こうにゃらヤケクソォオオ!」

 

 屋根から迫る忍術研究部にフィーナが驚愕し、慌てて狙おうとする。

 しかし11年式はこういう機敏な機動に向かない。

 散弾銃を撃ちながらミチルが取り付き、ツクヨが梱包爆薬を渡す。

 ぼんと爆発してハ号が機関を停止した。

 

「あいたー!」

 

 シズコ達が満足げに出てきた。

 続く眠り姫の試練をイズナの機転と、イロハの「サツキから聞いた怪しげ催眠術」という暴挙染みた手段で突破したはいいが、イブキはまだ見当たらない。

 

「第三関門はこの私です」

 

 続いても修行部が出てきた。

 ミモリは心が読めるらしい、本当なのだろうか。

 

「ユウカさんの考えは……”この大人が更にろくでもない散財しないと良いな”ですか? なにをしてたんです?」

 

 何で分かるんだ。

 

「いやこれをきっかけに装備品拡張が進みそうだなと」

「流石に其処までじゃないと思うぞ」

「本当ですか? 事後承認させようとしたりしませんね?」

 

 なんで分かるんだよ。羨ましい、それがあれば俺は将軍共とタイユランとフーシェに悩まずに済んだぞ。

 

「先生のお考えは……」

 

 ミモリがむむむと顔を近づける。

 

「”噂に聞く百鬼夜行の75MSSRやR-30*6ロケットも欲しい”、ですか?」

「も!? も!? まだ欲しいんですか!?」

 

 その後、思考をフランス語変換したら出力できないからミモリに勝利した。レストア中のあれがバレると困る。

 汚いと思うけど卑怯とは言うまいな……。

 続くカラクリ屋敷の試練を、ブリーチングで切り抜ける。

 

「これ良いのかな!?」

「現代的火遁と言い張る!」

「いや無理じゃないかな!?」

「黙れナラク! 状況判断だ!」

「ひでえ!」

 

 ミチルの抗議もろとも鎧袖一触にしながら、カエデにかちこみを開始する。

 

「カラクリ爆破する人初めて見た!」

「急用に付き失礼!」

 

 フラッシュバンを輝かせ、イズナに制圧させる。

 カエデが気絶し、寝かしておく。次はまともに遊んでやろう。

 

 目標は神木展望台から逃亡、中央広場を抜けて陰陽部本館へ抜ける構えだ。

 

「なら打つ手はありますね」

 

 イロハが信号拳銃を打ち上げる。

 ゲヘナ・ツェッペリンから空挺降下されるイロハのタイガー! 弾着! 

 敵集団の隊列が乱れる。

 

『オオトリ3、AOに到着』

 

 展開してきた空中機動部隊が到着する、増強したてのUH-60Aである。

 輸送されてきた新設のデルタ分隊を指揮下に編入し、追撃に入る。

 伊達にSRTの3年生ではない、最短経路を制圧していく。

 

「ハンズアップ!」

 

 MP5Kを構えながら、デルタ分隊が大広間に突入する。

 あわあわと魑魅一座のリーダーがイブキを抱えて窓際へ逃げる。

 

「い、いいのか! 近づくとヤバいぞ!」

 

 ブラックホークの羽音が轟き、デルタ分隊の隊員が半包囲隊形を組む。

 分隊長がリーダーの位置を確認し、喉のマイクをコツコツと叩いた。

 

「にょわあああああ!!!」

「へ?」

 

 上から轟渡るミチルの5.1サラウンドバックの絶叫に、思わずリーダーも上へ視線を向ける。

 ごちん! と音が響き、魑魅一座のリーダーが倒れる。

 頭を抑えながら、ミチルは、真剣な、そして優し気な笑顔と共にイブキを抱きかかえる。

 

『ホイスト開始』

 

 イブキを抱えながら、ミチルが引き上げられていく。

 

「状況終了……なんでまたあんな滅茶苦茶やったんです?」

 

 デルタが検挙者移送を開始するのを後ろに、ユウカが尋ねた。

 

「うーん。なんというかな、……これは彼女たちの話であるべきだからかな」

「はあ」

「まぁなんだ、誇りと自信の話だよ、これであいつ等は胸を張って活動できる」

 

 離れていくブラックホークの背中を見ながら、イロハに迎えに行くよう連絡する。

 夕焼けが辺りに満ちていた。

 カホに「損害賠償は連邦生徒会によろしく、うち外局だし」と連絡し、中庭の縁側に座る。

 

「にゃははは、なんとも豪放と言うか」

「エキサイティングだろ? お前の望み通り」

 

 ニヤはすんと笑顔をやめた。

 

「バレてましたか」

「マコトの突然言い出した姫変更を理解してなきゃ出来んからなあ」

「あいたー! これは痛いところ突かれましたわ」

 

 イブキを搔っ攫うのが出来る奴はそう多くない。

 ニヤのように警備全般を知らない限り、だが。

 

「大事な時期に荒波立てんじゃないよ」

「にゃはは……あ、待って本気!? 堪忍してくれへん? あーれー!」

 

 堀にニヤをぶん投げ、カホを呼んで回収を依頼する。

 ぷかーと浮かびながら流れていくニヤに慌てたカホが回収しに行くのを後ろに、ため息をついた。

 なんともとんでもない話だ。

 

「めんどうを 起こした部長が 川に浮く」

「お後がよろしい様で」

 

 翌日、朝から陰陽部のチセちゃんの案内で格納庫に連れて行かれた。

 

「まあおおむねこんなもの、部長の進歩の度合いと同じく二歩と半分、二つ分け、もっとかしこく、買って頂く」

 

 電灯をつけながらチセがそう言い、カーキ色の車両の群れが姿を現す。

 チセが奥へ進み、管理人らしい黒猫の生徒と話し、カタログを借りてきた。

 かなり格納庫は広いらしい。

 くろがねを借りて、チセが運転する。

 ゆっくりと流しているので、カタログを参照しやすい。

 

「戦車もあるよー、強いのー、とくべつせーだよ」

 

 チセが横を示す。

 

「オイ車……って高いし重いじゃねえか! 火炎放射機付けてどうすんだよ?」

「ゲテモノ戦車は駄目ですね……」

 

 ユウカが呆れた顔をする。

 チセの「けちー」という声を聞き流し、次を見る。

 百花繚乱と書かれた73式装甲車指揮型を水洗いしている二人の生徒を横目に車が進む。

 

「次のおすすめはねー、これー、じそーほー」

 

 四式十五糎自走砲 ホロを指さしてチセが言う。

 150㎜砲は惹かれる何かがあるがオープントップの短砲身はダメだ。今のシャーレが求めてる物でも無い。

 

「アレはダメか?」

 

 99式155㎜自走砲を指さすが、チセが首を横に振る。

 

「カホがおこるー」

「そうかあ」

「あれもだめー」

 

 90式戦車を指さして言う。

 カタログには砲塔が角張った姿をしてるが、増加装甲で楔型になっている。*7

 

「キキョウ先輩が予算喰いのデカブツとか呼んでるけど、ニヤの趣味ー」

「いい趣味してんな!」

「ゲテモノじゃなくても戦車は駄目ですよ」

 

 偵察隊向けに丁度いいと、87式偵察警戒車は売ってよいらしく許可をくれた。

 それに砲兵用に82式指揮通信車を数両購入するのを決めた、ユウカはファミリー車両と言う点で安心させる。

 こいつにバイクが載せれるのは気に入っている、偵察分隊の足兼相棒になるだろう。

 

「これも買ってー?」

 

 書類を書いていたら、カタログから74式改とか言うのを売り込まれた。

 聞く限り爆発反応装甲に40㎜擲弾と良い事ずくめに思える。

 今後の納入計画に入れても良いかも知れん。

 

「市街地で民間人が居る環境で駄目ですよ!」

「ちぇー。カホとおなじこというー」

「当たり前でしょ!」

 

 一通り見て回ると、格納庫片隅に幕がかけられていた。

 アレはなんだと聞くと、めくってしまえとチセがめくる。

 埃が消えるのを待って見てみると、平べったい車両が出てきた。

 連装砲が特徴的なシルエットをしている。

 

「聞いてくる―」

 

 チセが車両掃除中の赤髪と紫髪の生徒に聞き込んでいる。

 戻ってくるとチセは「誰にも分かんなーい」と返した。

 

「じゃあ貰うか!」

 

 後日聞いた話では、陰陽部と百花繚乱どちらも保有していない何かだそうだった。

 良いのかとニヤに問い尋ねたら「怪談が装甲車くれるわけないがな」と返され、それはそうだとも感じ、バカバカしくなった。

 ところで車体前面に書かれた白い桜はなんなんだろうな。

 訓練で使ってないと付かない跡も有るし、世の中考えすぎないことが良い事もある。

 

 その後、とんぼ返りで書類を書き上げ、ニヤからの口添えとテロ防止活動と言い張って日数を稼いだ時間で完成した補正案でユウカはアオイに勝利した。

 噂によるとユウカが「ちなみに認めた方が予算安いと思いますよ」と、先生が秘密裏に計画してた一部書類──軍拡したいリスト──を見せたという話らしい。

 防衛室やSRTからM113FSVやACAV*8の移転が認められたのもアオイが「あの大人にガスタービンで動くおもちゃを与えるよりは安い」と、そう考えたからと言う。

 恐らくユウカやアオイ、そして先生はこの後に起こる事が分かっていれば、こんなものでは済まなかっただろうが……。

 

 

 

 

 あれから時は流れたが、未だシャーレAFV生態系で最大多数である。

 ヴァルキューレやアリウスも欲しがって居たし、ライセンス生産も良いかも知れない。

 調達品に紛れていた4連砲型もいたが、あれは過剰に目立つので姿を消した。

 百鬼夜行の売り込みだが……実は未だに続いている。

 

「せんせー。そろそろオイちゃん買ってー?」

「うるへー、手前の所で運用しろ。うちは博物館じゃない!」

「ねえ先生、陰陽部の金食い虫買ってくれない?」

「拡張性が無いし高いからダメ!」

 

 百鬼夜行の装備品、対空装備は好評なんだがなあ。

 高機動車は乗り回しが良いし尻に優しいと評判だし。

 重量級トラック類はミレニアムから購入したHEMMTがあるし、砲の牽引用にはゲヘナのmankat1トラックがある。

 

「ところでユウカ」

「はい」

「どうすりゃ93式近SAMで行進間射撃できるんだ?」

「そりゃ射撃指示員がドアから身を乗り出して」

 

 そうはならねえだろそうは……。

 ゲヘナから売り込まれたローランドや、トリニティから売り込まれたレイピアをコンペで打ち負かした短SAMが整備隊に渡されていくのを後ろに、ユウカが述べた。

 レイピアが惜しい所までいったが、装軌という点がマズかったらしい。

 

「ところでニヤさんが代わりに売り込んできたこの……K1戦車ってなんですかね?」

「知らねえよそんなの……もうM60ー2000で内定しただろう」

 

 電話が鳴る。

 

『せんせー! 忍術研究部に愛の募金を―!』

「なんだいきなり、内容次第だ」

『OH-1ニンジャ改を納入して航空作戦を……』

「ハァ!?」

 

 ミチルが送ってきた見積もりデータを見て驚愕する。

 OH-1のエンジン出力増強に加えてロングボウレーダー追加だあ!? 俺が徴発するぞ! 出しても良いが有事は家が接収するからな。

 未だに良く分からんところである、いや本当に。

 

*1
ある意味因縁の相手

*2
作画のせいだろ

*3
覇道進撃2巻

*4
メインストーリー5章に続く

*5
ナチ制作の第一世代ヘリ

*6
67式30型ロケット弾発射機

*7
10式の奴が装甲増加でついてる

*8
M113バリエーションはすさまじいことになる




カフェ・ロイヤルは専用の器具と角砂糖とブランデーなどが必要ですが、すごくおいしいらしいのでぜひ。
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