キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
員数外の人員、員数外の部活動
ミレニアムサイエンススクールのセミナーオフィスビル、通称ミレニアムタワー。
ミレニアムが誇る最高峰の高層ビルは事実上の伏魔殿、ダンジョンである。
その現代的ダンジョンの高層階の秘密の空間では、リオとヒマリの物理的セッションが行われていた。
理由は誰にも想像されなかった大勝利、つまり機械化連隊戦闘団規模の敵を完膚なきまでに砂漠で打ち負かした大人が原因だ。
元々リオ会長が軽く唾付けておけばいいと、ユウカにそれとなく手助けした事が大きく響きだした、エデン条約を前にミレニアムはある意味連邦権力と手を結んだのだという論調が生まれかねない。
「ハッキングに盗聴、今週だけで8件とはね」
「ゲヘナやトリニティは気が気でじゃないでしょうね、停戦交渉の破滅はミレニアムの一人勝ちに繋がるでしょうから」
静かに会長の従卒のメイドが紅茶の入ったカップを置く。
書類を机に置き、報告書の統計に目をやるとヒマリは辟易した顔をした。
今週だけで8件、侵入疑惑は3件、リオのせいとも言い難いのが困るのだ。
統計と分析ではゲヘナからのハッキングが3件、トリニティからの盗聴工作疑惑が5件、カイザーの情報工作疑惑もある。
ミレニアム東部発電グリッドで起こった電力サージは明らかに人為的工作だ。
「あの大人が来るそうですが、どうしたものですかねえ」
「ヴェリタスで数度ハッキングしたようだけど」
「貴女の上位互換の様な大人が現れたと成ったらそうでしょうね」
皮肉を言うなよとヒマリがやや拗ねた顔をした。
「その割には惨敗だったみたいだけど?二人ほど逮捕されたようね。逆探までされるとは」
「流石はあのオーパーツ、カイザーのサーバーの如く焼かれました。そして重要情報は紙で保管するタイプの様です」
「最大の戦果を私達の所に持ってくる意図はたぶん」
「単純ですよ。人がいないんです、適切な対応が出来る人が」
まあそうだろう、とリオはある書類を見せた。
シャーレからの協力要請の書類だ。
ヒマリは「知ってたんなら言いなさいよ」とやや不服な顔つきをしたが、ヒマリもある書類を出した。
エデン条約合同警備本部編成の命令書類だ、連邦生徒会防衛室役員の汚職に関しては彼女らもある程度触りだけ知っている。
もっとも、大概の事柄はリオはリスクとしないが。
「ともかく、要注意、それしかないでしょう。ところでこのサーバーラックは何処に置くんです?」
ヒマリはやや鋭く尋ねた、カイザーは今頃死に物狂いで隠滅しようとしているだろうが、危険物をどうするか。
リオ会長はやや考えて、適切な避難地域でも置くかと決めた。
あそこならそもそも誰も知らない、知らなければ何も出来ない。
すると、ヒマリの介助人がそっと監視カメラを見せる。
「会長、例の大人が頭部に投擲物の直撃を受けたそうです」
「え?テロ!?直ちに区画封鎖の用意を」
「……ゲーム開発部?」
ヒマリの首を傾げた声だけがよく響いた。
頭部が痛い。
何をされたんだ? 暗殺か? 死ぬにしてはまだ早い。ようやく足が付いてきた実感が湧いてきたのだから。
アロナの奴銃弾などは任せろと言ってたくせにこの体たらくか畜生め。
「どうされました? 皇帝陛下此処まで状況を引っかきまくった挙句に投げ出さるつもりか? 私もエックミュール公*1も今回は後始末を手伝えませんぞ? だがその心配はなさそうだ、お嬢さんこの暴走馬車を連れ帰ってくれたまえよ」
この正論でぶっ叩いて来て来る声は……
「任せてください! タイユランさん、私の可愛い後輩達の面倒と変な教育してくれた、この人は連れ帰りますのでご安心を。今更逃がしませんよ、先生、もう会う事は無いと思いたいのでここでお礼を、ホシノちゃんのことありがとうございます、では!」
「ありがとう、お嬢さん私はこの通りでね、ご安心を陛下。ここに来たものが居たら、貴方のことをお願いして送り返すので」
何か言ってるが、緑のツインテに蹴り落され落ちてる俺には聞こえん。聞きたいことは山ほどあったんだが。
なんだよあの女、人に電車内で仕事押し付けたヤツの親戚か?
低く音を立てて駆動する機械の音が聞こえる。
つけっぱなしのテレビからは『重要か?もちろん!不可欠か?イエース!エンジニア部はあなたの依頼を……』とコマーシャルが聞こえる。
という事は此処は恐らくミレニアム、だがこの部屋は?
「勇者よあなたのことを、ずっと待って居ました」
何だ、この声は。
さっきのいかれた馬鹿どもと違い、聞き続けたら確実に危険な会話ではなさそうだ、死んだふりしておこう。
というか本番でリテイクすんなボケ……俺は何を聞かされているんだよ。
試練と逆境でも勇気を捨てたこと無いぞ。
勇者よりふさわしい呼び名、第一執政、皇帝……『先生』
「知らない天井だ……医務室か? その割には汚れているが」
こんな医務室なら噂に聞く救護騎士団長*2なら今のアビドス校舎より大改築するだろう。
「あっ、目覚めた!?」
「気が付いたか? 君は運が良いな」
栗みてえな口しやがって俺の運勢は最悪だよ!
双子らしい二人の姿、羽織った制服の上着を見る、ミレニアムか。
「急に変な喋り方しないで、先生が戸惑ってるでしょう」
「へへっ、嬉しくってつい……先生、大丈夫? このまま目を覚まさないのかと思ったよ」
赤と緑のネコミミ、いや機械的だ、セリカの親戚か?
永眠一歩手前だった気がする、後で検査を受けに行かんとな。
「本当に良かったです。お姉ちゃんが窓の外に投げたプライステーション*3が偶然とはいえ先生の頭に命中した時は……このまま殺人事件の容疑者*4になってしまうかと思いました」
「その場合、容疑者ではなく犯人で、今でも殺人未遂か過失致死未遂だぞ……貴様ら」
「お姉ちゃんの代わりに謝ります。ごめんなさい、先生」
謝罪で済むならヴァルキューレもシャーレも要らないんだよ。まぁ緑色の方は分かってるらしい。
とりあえず、セリナのモモトークに頭部に重量物直撃して5分以上意識が飛んでた場合の対処を送っておこう。*5
「ふーんだ。そう言うミドリだって私が「もしかして先生に当たっちゃたかも!?」って叫んだ時、第一声は「プライステーション無事!?」だったじゃん」
「お姉ちゃんだってわざわざ部室まで引き摺って最初に言ったのは「後始末どうしよ」だったじゃん」
「なにをー!」
ミドリの方は卑しいなと思いながら、下手人の醜い罪の擦り付けあいを眺めつつ。
返信が即時に届いた返信には血が出てないなら脳内出血の危険があるので直ぐに検査を。
場所によっては即座に救出に向かうと書いていた、ミレニアムに居ると返したら、お勧めの病院を教えてくれた。先生行かない可能性があるので、今日中に病院の診察カルテを送ること過度な興奮は危険など説明もあった、カルテが送られない場合、団長に救護を頼むとも。俺のことを理解してるじゃないか。
向こうの話も終わったらしいな……
「先生手紙読んで来てくれたんでしょ!」
「他の用事もあったからな」
「うわっ、本当に!? じゃあ私達が送った手紙、読んでくれたんだ! もし読んでくれたとしても、本当に来てくれるなんて思ってなかった!」
来たことを7,8割後悔し始めてる。
今、俺が出してる雰囲気感じたら、周りが引き始めてるんだが、こいつら怖い物は無いらしい。
バカは無敵だ。
そうだ、手紙! アロナが直接出してきたミレニアムからの手紙、このスーパーAI様が出してくる、この手の手紙は大事件の始まりの気がする。
〈ゲーム開発部は今、存続の危機に陥っています。生徒会からの廃部命令により破滅が目前に迫っている今、助けを求められる相手は貴方だけです。勇者よ、どうか私達を助けてください! 〉
同じように切羽詰まってるはずなのにアヤネの手紙と比べると少し……いやちょっと必死さが足りない手紙。
ミレニアムサイエンススクールは知っている、我が偉大なる会計ユウカの母校、今大事な証拠の解析を任せている学園。多分街で聞いたら一番我がシャーレと友好的な学園と言われそうな程だ。非公式だが。
ミレニアムがアビドスの様になっていたら我が会計殿が即座に依頼を出すはずだ。
「私はシナリオライターのモモイ!」
「私はミドリ。イラストレイターで、ゲームのビジュアル全般を担当しています」
「あと今はここに居ないけど企画周りを担当してる私達の部長、ユズを含めて……」
「私達がミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部だよ!」
モモイがどんどん話を大きくしてくる、頭が痛くなりそうだ、今モモトークにこれをセリナに送ればいきなり真後ろに現れるかもしれないが。
廃墟に行こうと言いだしたので、安静にしながら状況の説明を聞いた。
「えっとね、まず私たちゲーム開発部は今までずっと、平和に16ビットのゲームとかを作ってたんだけど、ある日……急に生徒会から襲撃されたの! 昨日には生徒会四天王の一人であるユウカから最後通牒を突き付けられて」
興奮を抑えるようにモモトークには【急変】と書いていつでも送信できるようにしておく、悪いがその四天王、家の大首領殿だぞ。
うちの帳簿握ってるからたぶん最高権力手前くらいにはいる。
ただしユウカは権力欲が乏しいか、本質的には権力嫌いかのどちらかで危険性は薄い、多分後者だろう。
「パトロンや資本家相手に仕事しないで文句たれるとは偉くなったわねえモモイ、ずいぶん成長したわねェ」
「げ」
噂をすればユウカが現れた、今日は珍しくミレニアム制服なんだな。
まあシャーレも白い制服だから色合い変わらないけど……。
「で、このポンコツ何をやらかしたんだ」
「ちょ、なんでユウカに!」
「社会的信用の差だバカ!」
「バカっていう方が馬鹿だもん!」
呆れたユウカが書類でモモイの──スカスカでよく鳴る──頭を小突く。
「やらかしたんじゃないです、やってないんですよ」
「は?」
「活動と部員定数満たせてないんです」
「は?」
言葉が出ない、アビドス砂漠に埋めてやろうか。*6
ゆっくりと振り向く、双子は口をパクパクさせて怪物を見るような眼をしてる。
「なにもしてないと」
「はい」
「……廃部かなあ、そりゃ」
「そうなんですよねェ……」
ユウカがため息をつく。
不思議とユウカはそれを望んでいないと思えた。
「何してたんだお前ら、人の頭部に的確にゲーム機ぶつける以外で」
「なにしてたのアンタたち!?」
顔を青くしたユウカが声を上げる、アビドス砂漠みたいにミレニアムを戦場にされちゃあ堪らない。
肩を掴まれてモモイが観光土産の人形みたいに首を揺らされている。
見てて飽きないが関わりたくねえなあ……。
「そう、依頼の件なのですが」
ミドリが上目遣いで詰めよる。
「お願いします、新作ゲーム作る為に協力してください」
「……シャーレの業務内容に含む、含むのかなあ」
市民の願いは大概聞いてやるが、これは想定外だ、いやまあ平和ではあるが。
「お願いだよ先生! 廃部はやだあああ!」
モモイ俺に泣きつくな、鼻水が付くだろうが! 失せろバカ! 離せ!
首根っこ掴んで引きはがし、依頼内容を詳しく聞いてやることにした。
「Gバイブル」
「そう、それを手に入れたいのである!」
「手に入れてどうするんだ」
「完璧なゲームを作るのだ!」
「楽して作ろうとしてんじゃねえよ」
モモイが泣き声をあげているが知らん。
ここまで自業自得なやつ初めて見たぞ、7囚人のが納得できる。
ユウカが横から「まま、話は終わって無いのですし」とさり気なくフォローした、こいつ優しすぎないか。*7
「で、この前ヒマリ部長*8に協力してもらったんだけど」
ズビー! と音を立てて鼻水啜り、モモイが説明する。
つまり、探す道具をもって廃墟地帯へ行きたいと。
「らしいけどセミナーとしてはどうなのよ」
「ダメでしょ、危険地帯侵入許可出せる訳無いじゃないですか。連邦生徒会指定地域ですよ」
「らしいけど」
「ぞごをおどなのじからでなんどがああ!」
「鼻水付けるなコート仕立てるの高いんだぞ!」*9
初日の暴動鎮圧やアビドスなどで使った、連邦生徒会長の大権を使わずとも、連邦捜査部として動けば連邦生徒会指定地域でも合法的に動けることは俺もユウカも知って居るが、聞いてる限りそこまでするつもりは無い。
よそに封鎖地区作れるくせにあの暴動は何だ?
状況を纏めたい、ユウカを手招きして部屋の外で聞いて見る。
「どうしたんです?」
「奴らの話乗ってみようと思う」
「はぁ?」
「作為的に誘導されてる気がする」
「先生のそう言う感は鋭いですからね」
先ほど出てきた、ヒマリなる人物について聞いて見ると最近家にハッキングを掛けてくる連中のボスであり、聞いてるだけで相当の天才で変人だ。
俺の疑問をぶつけてみると、ユウカが呆れた顔でため息を付く。
「アビドス以降変な事件に巻き込まれて、用心深くなってるようですが、ミレニアムでそんなことがあれば私の耳には入りますよ」
「会長は随分な秘密主義と聞いたぞ?」
「それはそうですけど……あの人、口下手なんです」
「あの馬鹿共を餌に俺を使いたいみたいだ、乗ってみようと思う」
最終的に妥協して、Gブルだっけか、そういう奴を取りに行くことが決まった。
D分隊を呼んだが、全員「なんでまたこんなことに」と言いたげだ、捜査の一環だと言い張る。
分隊長の久留木1等SRT執行官は「なんでこうなる」と何もかもをはかなんでるが無視する! 一応要人護衛だぞ! 俺だけだがな!
何故か廃墟まで来てしまった。*10
荒廃した廃墟は崩落する危険が高く、戦闘は回避している。
さいわいセミナー武器庫から電磁手りゅう弾が借りれた、交戦状態になっても生き埋めは回避できる。
「タンゴダウン」
「ムーヴ!」
サプレッサーをつけたM14EBRを持ったマークスマンの能地が狙撃し、オートマタを倒す。
いぶかし気な顔をする北崎副隊長に、どうしたか尋ねた。
「このオートマタ変なんですよ、キヴォトスにこんなヤツあったかな」
「……刻印もなし、武器も違うな」
確かにオートマタのライフルは違った。
キヴォトスは火薬式なのに、こいつらは別の銃器だ。
「レーザー銃ってやつじゃない? ゲームで見たよ」
「まさか、個人携行の光学兵器がある訳無い」
擲弾手の
目的地は複合施設地下、それもかなりの大深度だ。
配線を細かに確認しながら、ケミライトで退路をマーキングしておく。
パンくずよりは目立つし確実だ。
「ホールド」
ポイントマンの左京がM1014を向けながら、片手を挙げた。
散弾銃の向く先に、巨大な隔壁がある。
ヒマリが貸した「超天才(中略)Gバイブル追跡レーダー」くんは、信号を激しく発信している。
しかし厳重な隔壁、厚さは軽く4Mありそうだ、コンスタンティノープル城壁みたいに頼もしい。
「開きそう?」
「戦車砲がいるんじゃないかな」
コネクターを探そうとした隊員が、配管に触る。
「ん?」
配管が柔らかく、微かに脈打つ。
北崎が無言で手を離し、試しにMP5A3短機関銃で突いてみた、配管に銃口が沈む。
「なんじゃこりゃあ」
確かに封鎖指定されるわけだ。
そのとき、突如監視カメラらしき半球体が動く。
レーザースキャニングを行い、スキャンの範囲がただ一人の大人へ至る。
『入室資格適当と判断。ようこそ、ナポレオン・ボナパルト』
「なんで知ってるんだ……?」
重々しく隔壁が開き、奥へと進む。
隔壁はやはり7層の複合式装甲だった、度し難いまでに厳重だ。
未来のエリゼ宮地下でもこんな厳重な訳ないだろう。
「コンタクト、前方、1名」
施設を進むと、左京が前方を指さした。
左京が困り顔で、あれはどうするべきか判断の是非を尋ねる、ポイントマンの左京はスケベで有名だが流石に困惑している。
「確かに、コンタクトだが……」
目の前に座っていたのは、全裸の少女だった。
要救助者? なんで? 封鎖地域に? スラム化してるわけない。
ブービートラップを警戒し、背中や腕を確認した隊員が安全と知らせる。
「クリア。ものすっごい美人」
「そりゃ分かるがな」
銘板らしきものがあったので、顔を近づける。
”ALー1S”、まるで製品みたいな打刻だ。
掠れ消えた部分に製造者や、製造年が書いていそうなほど無機質で機械的であった。
製品、まさかコイツか?
頭の中に胡散臭い黒服が過る、またなんかしたのか。
「あ、りす」
「多分アリスで良いんだと思うけど……」
隊員が手首を確認し、脈をとる。
モモイが自身の上着を軽く少女へ羽織らせた。
「脈あります、ぐっすりですね。滅茶苦茶健康的ですよ」
レーダーは、この少女に強く反応していた。
電源を止め、アリスを抱えて外へ出る。
「こちら06。要救助者一名あり。至急搬送願う。なお対象者は現在生命活動良好」
ミレニアムの病室へ搬送する様に、指示を出した。俺も一緒に検査を受け異常なしとの診察とカルテをセリナに送った、此処で救護の嵐は不味い。
ユウカは送り出したのを後悔した。あの大人の感は当たるとろくでもないことになる、先生が悪いわけじゃない。
知らん少女が増えて帰ってきたのだ、モモイが「うちで面倒見る!」と引き取ると言うのは良いんだがペットを拾って来たみたいに言われても困る。
ましてや戸籍が存在しない少女だ、こんな存在をどうするかユウカは習った事は無い。
そしてゲーム部の部室でクソゲーをやってるのもまあ良いんだが……。
「身元どうするんですかコレ」
「だよなあ」
思わず同意する。
身元分からん、戸籍はねえ、記憶もねえ、あるのはそこそこむき出しな負けん気らしきもの。
最初は服すらなかったからユウカに頼んで制服予備を手配させた。
「え、えっと、あの」
セミナー小会議室での会合、小さな小さな声がする。
「ユズ」
「誰だ?」
「あの双子たちの部長」
「どういう教育したんだ」
ユズと呼ばれる少女はかなり不安げな挙動をしている。
ハルカの方がまだ安定してんじゃないかとすら思える。
「と、とりあえず。私の所で預けてください。生活空間や、あまり問題が表面化しづらいでしょうし……」
「少なくとも部員問題は解決したな、うん」
「そ、そういうつもりじゃ」
「分かってる、大人の現実逃避の嫌みだ、気にしないで良い」
ユウカから「あんまり弄ばないでください」と注意されたので、それに従う。
今後どうしよう。
「セミナーに報告する訳にもいかないし、あの子たちの問題は解決しないし、どうしたものかしらねえ」
ユウカが茶をぐいっと飲み干し、呟く。
流石にセミナーへ「まあええやろ」で許可したら生徒増えた、なんて言えるわけがない。
言った日にはリオ会長が解雇通知出しかねないし、正直出されて当然だと思う。
「俺でも部下が似たようなこと言ったら正気を疑うぞ?」
「弱りましたねぇ」
しかし自身の生活その他もろもろがある、なんとしても波風立たせずやらねばならない。
そうユウカがキャリアと生活に関して不安を抱いていると、窓ガラスが大きく揺れた。
『エンジニア部部室が爆発した模様』
なんでそうすぐ波風立たせるんだ!
【次回予告】
無能、怯懦、虚偽、杜撰。
どれ一つとっても世界では命取りとなる。
それらをまとめて無謀でくくる。
仕組まれた作戦、仕組まれた地獄。
ユウカも怖いがノアも怖い。
脆弱なゲーム開発部の馬鹿、狭隘な先生の堪忍袋、充満する怒気。
まさに破裂必至の大動脈瘤。
次回「 Gブル?だったか、Gセイバー?なるやつ 」
怒涛のドミノ倒しが始まる。
ある意味ゲーム開発部無双