キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
どうやら俺とユウカが頭を抱えていた間に、ゲーム開発部はアリスの武器を求めてエンジニア部に出かけていたらしい、なんで一言申し付けねえんだバカ!
その結果が先ほどの爆発だったようだ、只の爆発なら俺達もそこまで狼狽しなかったが、普通じゃなかった。
アリスが使った武器が"宇宙戦艦搭載用レールガン"とかいうのだったことだ、厄ネタの匂いしかしない。
コトリが「正確には試製特大型大電力電磁投射砲」*1と呼んでいたが何言ってんのか分からん。
ウタハ部長は「まあ爆発は日常的」とにこやかにしていたが、その眼には何か考え込んでるインテリの思考が見える。
アリスは嘘を付けない、モモイは論外、恐らくウタハ部長はアリスの真実に勘づきかけている、ただの転校生じゃない事くらい読める。
ちらりと俺を見た、少ししてまた別の事を思案する顔になる、少なくとも言いふらす奴じゃないのは助かる。
「というかなんだこの大火力は」
「電磁投射型のタングステン弾芯だからね、理論的にはプラズマ化するまで熱して撃てる」
「……規制対象じゃねえのかそれ」
泣けてきた、俺がキヴォトスで知ってる身体能力最強格、ホシノにこっそりpak88を担いで立射できるかと聞いたら「黒服の実験より怖いことを急に聞いてくるねぇ、何してるのさ?」*2と言われた、回答は自分でも無理だと返されてその事件終わったら教えてよ。と言われた。
「ホシノでも無理そうだな」
「どうしましょう、こんなタイミングで……先生の言ってた計算外って大量に一気に来るんですね」
「真面に考えなくても、アリスは愛玩目的*3ではないと言う事だ、これ見てみろ、声に出すなよ覚えたら返せ」
シッテムの箱から書類を取り出す、アロナにアビドスで輸送コンボイで行くとは思わなくて……と言われすこ~し大喧嘩をした機能だ。
虚数から物が取り出せるとかずるいぞ。先に言えバカ。
「相変わらずでたらめなこと出来ますね、その端末。……分析結果不明?動力も?材質も?」
「ナノマシンと人工タンパクの表層以外分からん。持て余すなら家で引き取る、嫌われるのは慣れてる」
書類を箱に戻し、ゲーム開発部部室からまた何か声が上がる。
「あのゲーム開発部が変なことまた始める前に、部室行こうぜ、俺たちの人生が都合悪くなっちまう」
「そうですね……」
ゲーム開発部のやたら重く、建付けは悪い扉を開くと俺達を笑うようにこの馬鹿共はネトゲのレイドを始めていた、ゲーム開発はどうしたゲーム開発は!?
ひゃぁ、もう我慢できねぇと言わんばかりにユウカがモモイに掴み掛かる。
「あんた達舐めてんの、流石に私と先生でもミレニアムプライスは結果を操作できないのよ!」
「えっ!? ユウカ出来ないの、セミナー鬼の会計でしょ?」*4
やれるわけねえだろ、やれたとしてもやらないよ、絶対管轄違うだろうが。
多分あれ外部審査だろうしな。
「……俺達もゲームしないかユウカ、俺ピコピコ*5遊びたいと思って居たんだが、やり方がな」
「私もどうにでもな~れって気分になって来ました、これお勧めですよ」
二人で黄昏ながらおすすめゲームを開く。
ハートオブアーロン3・アーセナルオブペロロ*6とかいうゲームが出てきたが、ユウカが「これはダメね」としまう。
モモイがすかさず「百鬼夜行の嵐5」*7を取り出す、呪われてそうなヤツを出すなよ。
「先生とユウカが精神デバフを受けています! あのゲームをやる気です」
アリスの言葉を無視してユウカがボソッとつぶやく。
ひたすら兵員の飯と燃料と輸送の割り当てが続いている。根っからの財務屋だな。
「私のこのデバフ消えないと審査もノアが対応するわよ……この調子だと報告書出せないし、そこはこうするんですよ」
「偽装するにも白紙には何も出来ないからな、ところで多分これは余計病むと思うぞ」
ベルティエ辺りが「死んでもやりたくない」とか言いそうなゲームを横目に、別のゲームを探す。
アイドルマイスター2*8いやこれもなんか怪しいな、だってこいつらが持ってるし。
大メジャー*9とか書かれたゲームと一緒に仕舞い、空を仰ぐ。
「あっ、アリスそれブレスの予備動作! 危ない!」
「危険を察知しました、バリアを展開します!」
流石に妹の方は危機感を覚えたのか、あるいは何らかの心替わりをしたらしい。
「今は現実の方が危険だよ! ユウカを抱き込めたから安心って言ってたけど、ノアとか来たら終わるじゃない!」
「た、たしかに」
モモイの脳裏にノアの姿が過る。
全てを見通すようなあの視線、間違いなく粛清とかしてそうな雰囲気。
最近なんか機嫌が悪いという話だし、笑顔に圧が出てきたとか言う話も聞く。
まあ、リオ会長よりは希望があるか。
モモイは少なくとも希望は見出した、もうひとりやかましいのが居た筈だが今は良い。
「じゃあまた潜ろうよ!」
「お前らまだGセイバー諦めて無かったのか? 完璧な作品が作れるデータなんてあるわけ無いだろう?」
ゲヘナの野望を起動しながら俺は尋ねた、なんだよ強行偵察型白モップは、そこそこ強いじゃねえか。
セージツ・フィッシュ宇宙戦闘機なんぞで止まらないぞお、スズミン級宇宙巡洋艦でも来なきゃ無理だろう。
「当たり前です、そんなのあれば世の中の創作者が凄まじい奪い合いしてますよ」
「地に足付けてゲーム作れよ」
生産欄に赤モップJ型を大量に入れる。
量産の暁にはトリニティなどあっという間に叩きのめせるだろう!
「絶対、ウィルスソフトの類よそう言うの。あ、先生そのイベントは」
ピンクの悪魔*10が3ターンで16機撃破していった、ふざけんなよ。
ティナッツ級宇宙重巡洋艦まで撃沈された、俺の戦隊が滅茶苦茶じゃねえか。
「うわぁぁぁ、二人とも現実逃避しないで戻って来てぇぇ」
またこんなことでシャーレの隊員を借りるのは申し訳無いし、書類の都合と自己の未来のためユウカが付いて来てくれた。
ユウカのSMGもサプレッサーにレーザーサイトが追加されている、セミナーは案外武闘派なんだろうか。
「パンパカパーン! 太ももの鬼の会計ユウカと悪人面の敵か味方か分からない先生が仲間に成りました!」*11
クソガキどもが。
もはやここまで来たら意地でも大人の権威を見せつけてやるからな。
「「教えた方、後で名乗り出ろ……」」
「「「ヒィ!??」」」
悪いが俺もユウカも余裕が無いんだよ。
そんな話をしていると、赤い光線が飛んできた。
例の未知のオートマタだ、レーザーの精度は極めて低いし、レンズの問題で出力も低下しているらしい、コトリの解説はためになる。
ユズ部長にエンジニア部に依頼した特製擲弾を撃たせる。
「み、水?」
「正確には拡散した水蒸気、ミストだな」
「レーザー防御ですか」
やはり火薬式が一番かもしれんな。
アリスに射撃指示を出すが、アリスは視線をじっと別の方向を見ている。
「どうしたんだ」
「分かりません、でも、これは」
そう、アリスは例えた。
「followと書かれたNPCがそこにいるような感覚です」
記憶が戻りつつあるのか?
クソガキにあるまじき綺麗な膝撃ちでオートマタを排除した姉妹が、先に行こうと提案する。
我々は、確かにあまりにもアリスを知らなさすぎる。
もぐりこんだ施設はやはりというか、地下施設。
なんとアロナが地形記録してくれるおかげで探索は楽である。
モモイが「ウイザードの冒険見たい」と話すのを無視して、アリスは焦燥をあらわにある端末前に立つ。
『AL-1S、認証』
電子音が端末から連続して響く。
同じようにアリスからも大量の電子音が発せられ、否が応にもみとめざるを得なくなった。
彼女はおそらく有機生命体ではない、ナノマシンの肌の時点では分からなかったが、完璧に非人間存在だ。
おそらく究極的なまでに再現されている、自己の意識以外すべてが。
電子音の交信が終わり、端末の配線がスパークした。
「分かりました」
アリスが、眼を何回か閉じて言った。
「確かにGバイブルがあります、でも」
「でも?」
「電力不足で施設が機能停止するまであと2分です、何らかに移してほしいと」
「……携帯ゲーム機ならいけるかな」
モモイが強引にデータを転送させる用意をする。
接続したことで発声機能を借用したのか、携帯ゲーム機から『ご協力感謝します。なお容量確保でデータは削除します』と通知が入る。
この世の終わりと泣き叫ぶモモイを無視して謎のデータは転送された。
どう考えてもヤバいと思うのだが。
すると、天井の一部が開き、例のオートマタが展開してきた。
『排除。排除』
「なんか滅茶苦茶キレてる!」
「そりゃ怒る様な事しかしてねえだろ!」
セミナー電磁手りゅう弾を投擲し、ユウカが冷静に狙撃する。
転送完了の通知が出ると同時に全員が脱兎のごとく逃亡し、去り際にユズへ後ろへ射撃を命じた。
40㎜擲弾は確かに地下水が染みた外壁を削り、全てを飲み込んでいった。
「さあ逃げるぞ! デカい音を立て過ぎた!」
運動不足で腹が痛いと駄々こねる三人に呆れて、アリスに抱えるように命じる。
何ならモモイなら足首掴んで引き摺ってやったのだが……。
帰還した我々であるが、苦難は続く。
今度は「このシステム開けないよ」とヴェリタスに言われた。
「ふむ」
チヒロの説明はかなり簡潔としていたが要点は正確である。
G……ファイター? だったかは確実、そして恐らくIPからみて伝説的制作者の純正制作物らしい。
だがこれ以上は専門のシステム、通称鏡がいるそうだが、問題は現在ヴェリタスにそれがない、人も居ない。
マキはいるのだがハレとコタマが2日前にシャーレにハッキング・盗聴しようとしたのがバレて検挙された。*12
というわけで人員はお仕置き部屋、機材は生徒会が押収した。
「セキュリティ報告にあったな」
チヒロは申し訳なさげに謝罪したが、マキは乗り気であった。
「じゃあ取り敢えずパクられた二人出してあげてくんない?」
「仕方ねえな……」
あの二人は恐らく悪意ではなく、本気でやれるか気になってやっているタチだ。
無自覚なテロリストとも言えるが懲りはしただろう、機材の方だが、ユウカに頼むか。
「やばい……」
ユウカが珍しく大汗を掻いている。
「外郭封鎖区域での戦闘はなんだってノアから……」
「やっべえ」
汗が出てきた。
モモトークには『ユウカちゃん、外郭区域に関しての非公式な査問が必要ですか』と書かれていた。
どこまでバレた、いや悪くない、悪いのはそこのクソガキ、でもこのクソガキ何するか分からん。
胃が痛くなってきた。
SNSを開くとセミナー公式から『多少の都合上、数日セミナービルのセキュリティーを強化いたします』と通知がされていた、多分狙いが全部バレてそうなんだが。
アロナが申し訳なさげに、モモトークの通知を知らせた。
ノアからだ。*13
先生とユウカが青い顔して連行されていった、まるでダンジョンクエストでパーティー壊滅して棺桶引き摺る感じに。
すなわち、今後はある程度自分たちが頼りという訳か。*14
モモイはそこまで冷静に考え、そして混乱した。
あの大人より厄介なの出てきた! レベルカーブ加減しろ。
「取り敢えず、先輩たち回収しようか」
解放の命令書簡易で貰ったので、捕まったヴェリタスメンバーを解放した。
シャーレの隊員たちから「2度とくんな!」とコタマたちが蹴りだされている。
「むう、たかが盗聴くらいで血も涙もない」
「わ、わたしのアテナ3号が何が悪いと。たかがシャーレの鯖に潜っただけで血も涙もない!」
しばらく収監した方がいい気がしてきた。
事情を説明すると「え、セミナーにリアル凸して、ええのんか!」とやる気は出してくれたが、最近なんかに嵌っているのだろうか。*15
不安だ、大人も妹も生徒会も全員あてにならない気がしてきた、あなたたちのせいか。*16
作戦計画を練るとしよう、先生がノア先輩につるし上げられる前に。
セミナー小会議室、いまそこはよどんだ大気の沈殿物が満ちている。
上座にただひとり、長机の彼方にいるノア。
にこやかな笑顔のはずだが青筋がピクピクしている。*17
「何をしたかご理解ですか」
「心当たりが多すぎて……」
「ミレニアム外郭区画の件です、あなたがユウカちゃんにアビドスで変装させた件じゃありません」*18
「なんで分かるんだよ」
恐怖と畏怖に近い気分がこみ上げる、母親なら間違いなく「良い子だ」と褒めそうなくらい負けん気がある。
たぶんコルシカ人あたり手が早そうだけど。
机に木槌が打ち鳴らされる。
「ご集中を」
ノアは常ににこやかに言う。
「連邦生徒会指定の隔離地域、そこがどういう事かご理解成されてますか」
「いえ、上層部は何もしてませんから知りません!」
「なるほどなるほど。危険地帯標識を無視して越境はつい、うっかりですか」
「そうなるかと」
「二回もですか」
「三度目はないでしょうねえ」*19
ノアは楽し気に語る。
ユウカは先ほど開いた口から意識がログアウトした、ヘイローが消えてる。
「私はですね」
ゆっくりとノアが立ち上がる。
「現状リオ会長の代行兼、セミナーの実務担当なんですよ」
眼下にはミレニアムの地域が見える、遠くで誰かが作ったグライダーが飛んでいる。
窓ガラスに反射したノアの目は、僅かに開いていた。
「それもこれもリオ会長はよく出張するし、ユウカちゃんは何処かに連れていかれるし、誰かは危険地帯に潜るし、コユキちゃんは反省室で懲りないせいです」
「大変恐縮の二文字につきます」
「どうもありがとう」
厳かに振り向いて、ノアは言った。
「頼みますからウチで大騒ぎしないでくださいね」
無反動砲もロボもレールガンもなしだ、分かったね。
なるほど、シャーレの介入による混乱なんか望んでいないと、でも俺が混乱させてるんじゃない、元から混乱してんだぞ。
「言い訳しない」
何で分かるんだよ。
二人が退室し、ノアは小会議室から眼下の風景を見渡している。
あーあ言っちゃった、でもまあ良いか。
ユウカちゃんと久々に休日過ごす予定を外郭地域で戦闘起こして滅茶苦茶にした貴方が悪いんですよ。
「お呼びでしょうか」
ミレニアムでは不釣り合いなくらい似合わないメイド服を見て、ノアは軽く深呼吸して振り向く。
ミレニアムの実力組織C&C、その構成員のアカネである。
彼女含めC&Cは表向き普通の学園内部奉仕活動をしている、いや正確に言えば事実それをしている。
肉体言語といささかの火薬量で、という点以外。
「おそらく今晩。セミナーに襲撃が来るでしょう」
「あら大胆」
「仮想敵はゲーム開発部、そしてヴェリタスあたりでしょうか」
「あらあら、なお大胆、あの子たちそんなワンパクでしたか」
「悪い大人の悪い影響でしょうかね」
肩を竦めて、ノアは証拠品保管室が狙われてると概成目標を明確化した。
極論ではあるが、渡さなければそれでいい。
「ネル部長は現在いらっしゃらないようですね」
「はい、封鎖区域から何か変なオートマタが逆流したと水道局から通報されまして」
これも貴方の予想の範囲内? とノアは愉快そうに、自身の拳銃に装填した。
誰であれ、見知らぬ異邦人に良い様にされるつもりはない。
貴方の部下も貴方の部隊も貴方の指揮官としての座も取り上げてみました、ではどう出る?
貴方がふさわしいか、確かめてみよう。
そう、リオ会長。
全ては試験と理論と実践ですからね。
【次回予告】
野心とは才能の別名と冷たく嘯く。
そうかもしれない。
だが、野心には挫折がひっそりと寄り添う事を知るがいい。
このテストがそれだ、結果の全てが示す。
なるほど、忠告のつもりか?それとも…?
ふっ、騙されはしない!
毒蛇は毒蛇を知る!
出せ!出してみせろ!毒の全てを!
次回「 ヤンチャなセミナーの書記と遊ぼう 」
時に、傲慢な知識欲の別名はなんというのだろうか?
本日もう一回投降するかも?
感想ありがとうございました。