キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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固定翼機は、オーパーツの一つと言う事で初投稿です。


Acta est fabula,plaudite!(芝居は終った。喝采せよ!)
─ローマ初代皇帝アウグストゥス、臨終に際し─




賽は投げられた

 

戦闘は終結し、正義実現委員会が事実上警戒態勢を引き継ぐ。

 各分派及び団体は事実上屋内待機を命じられ、各団体責任者は今回のテロに関して情報協力を要請されるだろう。

 

「いやぁ、最悪な夜だったなぁ!」

「その割にはお風呂上がりの牛乳でも飲んだような清々しさ出してません?」

「問題ごとの一つが片付きそうだからな、まだまだ謎は多いが」

 

 新しい朝だぞ、希望の日だぞ? 

 無論全て平和だ万歳、とは思えない。各分派や団体から「事実上の戒厳だ!」と批判が出ている。

 それを「テロ攻撃の結果だ、午後には終わる」と殴って解決する姿勢を見せたらかなり批判は止んだ、やはり分からず屋で感情的な奴でも訓練された銃口は効くらしい。

 ミネ団長からは「衛生支援は出来る」と押し切られたから、シャーレ当該部隊の支援に要請を出させて解決させた。これはまあ、理解できる。

 

「不満気な顔をしてるが、俺は諸君らに黄金よりも素敵なプレゼントを残したぞ?」

「もしかして、時間ですか?」

 

 その通りだハナコ。

 お前の大嫌いな権威の勝利だ。いやあ、いい顔するね。でもまあ、前よりいい顔だ。

 吹っ切れた馬鹿の顔だ、あらゆる苦難を破る顔をするようになったなお前。

 

「ナギサは少なくとも俺達2人の、特に俺がとことんキレて見せたのが効いたようでセーフハウス移動が早まった」

「それで、クーデター側は計画が滅茶苦茶になったと言う事ですか」

「そう言えば、先生。何時の間にあれだけの武器弾薬にC4まで?」

 

 良い質問だアズサ。

 全員気になってるな、ご褒美に少し教えてやろう。

 

「30キロクラスのC4とMk19自動擲弾銃。持ち出せたのは少ないがあと3つ、見た限り最悪あそこで7日は籠城する量が」

「ちょっと、惜しいな。あそこで1週間も持久できるわけがない。交代人員、水や食料、資材も足りんよ、籠城は援軍の当てと反撃の準備があるからやれるんだ」

「なるほど」

 

 今度希望があれば、正規戦の補習もしてやるぞ。

 まあお前なら理解すればそれを扱えるだろう。欲しいが仕方ない、幸せに学生生活営んで人生楽しめ。

 かつて俺が与えることができなかったことだ。

 

「そして俺のもう一つの役職と正義実現委員会とのコネでな、ある意味お前のお陰。コハルお前のお陰だよ」

「ええっ!?」

「先輩達に可愛がられてるな、俺もお願いされたんだぞ? 答えるしかないよな」

 

 急に照れるな。こいつも表情が良く変わる。

 実際問題、コハルがもう少し賢しければ悩ましい問題だった。

 真面目実直のバカだから、全く疑わなかった。

 

「後、ハナコ。お手柄だ、セーフハウス割り出してくれたおかげで連中に全部先手が打てた。見たか、シスターフッドが来た時の全部終わってました感」

「うふふ……あそこからあんな動きされたら誰だって、たまりませんよねぇ。ええ、寸止めどころか営業終了は驚きますよねぇ」

 

 そして昨晩のお礼を一つ思い出す。

 

「ナギちゃんのあの顔見たか? お前えげつないなぁ、お前敵にしたくないな!」

「うふふ……先生もノリノリだったじゃないですかぁ。追い打ちと簀巻きにしちゃうなんて縛られたもの見るたびに、ふふっ」

「あれは保護対象が覚醒した時暴れない様に且つ、声を出して見つからない様に安全を重ねた最善だよ」

 

 二人で笑う。

 

「でも色々ありすぎて疲れちゃいました、早く休みたいです」

「良かったな、2日後に巻き込まれてたらそのまま試験当日だぞ? ここから一時間は猛ダッシュだ」

「あっ!?」

「第2回の時、何もできなかったからな。このくらいはやってやらないとな。さて帰って寝るぞ」

 

「「「「はーい」」」」

 

 良い顔だ、これで全部終わらせてやれればいいのだが……

 

 

 携帯が鳴り、ユウカに「この二日どんな睡眠サイクル始めたんですか!?」と怒られた。

 後、ヴェリタスに送った物のせいか「無理はしないでくださいね、シャーレビルで、条約締結見てますからね」と釘も刺された、よく理解してるなお前。

 本来ノアへの仕込みも言っておくべきなのだろうが、それを決めるのはノアだからな。

 

「さぁて俺も、もう少し頑張るかぁ」

 

 遅れたくせにパイは多めにとかは許さんからな。アズサとアリウスについての確認も多い。

 茶会の連中の身柄も家で抑えたい、医療騎士団の隠し事もだ。何かあそこも隠してる……。

 後、打つべき保険は使うだけ使う、暗闇の向こうで笑う悪魔め。引きずり出してやる。

 

 アルちゃんに依頼再確認しないとな、白紙小切手出して、好きな額を書いてくれってシュチュエーション好きだろうし、支払いはトリニティとゲヘナだから好きにできる。

 あのとっておきも修理と編成が終わったか聞きたい。ユウカにバレずにここまで進めたんだ、調印式のお披露目で飛ばせば事後追認の既成事実よ。

 久々に血が疼く、楽しくなってきた。やっぱり危機の中で悪足掻きするのは堪らんな、一度でいいから楽して勝ちたいけど。

 

 

 

 

「よかったね、トリニティ体育館の風通しが良くなって」

「良くないが?」

「家は校舎ハチの巣だよ? 蜂は飛んでないんだけどね」

 

 自称先輩は楽し気に耳を弄んでる。

 ここの連中、私で遊んでる。何を言ってもぐぅとしか返せない答えをぶつけてくる。

 最初ここに来た時、此処から始まる破局を説明をしたら「こういう言い回しが好きな時期ありますな」「私知ってますよ。中二病って言うんです、あの子もそんな時期だったのかなぁ……」と扱われた。

 自称警察長官はそこそこ面白い演目が終わったような顔だ。

 

「まだもう少し陰謀が隠れているかなあ、いやあ結末はどうなるか」

 

 そう言うと、この自称警察長官はタルト齧ってる。

 陰謀好きの警察長官ってなんだ? 世も末だよ、末だったね。

 

 ナギサロールを見た時は皆で笑った。

 こっちに遊びに来ればよかったのに、そうすりゃ私は少しは気分よく寝られると思う。

 ミカはすっきりした顔してたが、先輩ちゃんにしるこサンドと言うものを薦められたから、今度口にたくさん入れてやる。

 

 自称警察長官の「もし、調印式の武力攻撃だけなら悪手」と言うのを確認したら、タイユラン氏も「炎と灰から世界のルールを塗り替えた男に武力で挑むのは愚かの極みだ」などと言うし。

 ここから帰る前にもう一度私の問いに答えてもらおう。

 

「だが、アリウスも難儀だね、皇帝陛下が条約のカギを守る最強のイージスとなった」

「師、先生は、ベリサリウスなんですかね? アウグゥストゥスなんですかね?」

 

 自称先輩が分厚い本を見ながら尋ねる。

 

「ふむ、良い質問だ、先輩ちゃん。ミカをポンペイウスとするなら、ポンペイウスのクーデターは失敗し3頭政治は崩壊、役者が一時不在になってしまった隙をヴァンダル族が狙うが、ETOが成立するとどうなるかね?」

「ローマ収奪の機会は失われちゃいますね。ヴァンダル族、アリウスはこれに負けると本土で籠るしかないですかね? 北アフリカであるアリウスの本拠まで先生は絶対追いかけますよね」

 

 人の学園で歴史? の勉強しやがって。興味はあるので耳を傾けた。

 

「気の早い話だが、先輩ちゃんアド・デデキムの戦いを見てみなさい」

「はーい、孤立した王弟が戦死して最後の勝機を逃して、ベリサリウスは再編してゲリメルに勝利するんですねー」

「雑だがそれでよろしい、トリカマルムでベリサリウスは勝利しヴァンダル戦争の大勢は付く。その後ベリサリウスは凱旋式を受けるのだが、まぁよろしい、捕まっていたゲリメルはベリサリウスの上司の皇帝の満面の笑みを見て、彼はこう言うのだ "Vanity of vanities, all is vanity."と。すこし言葉はセイア君、聞いたことがあるだろう?」

 

 ゆっくりと振り向くとタイユランが「師と呼んでくれて構わんよ?」とドヤ顔で微笑んだ。

 ろくでもない奴しかいない、どうしてこうもおかしくなった。

 

 

 遂に試験は満了した。

 全員合格、これで落ちたやつが出たら、俺がアビドスに埋めてやる。TSCの初代と仲良く寝てろ! 

 

「諸君、合格おめでとう。これで駄目ならば、どうしようかと思ったよ」

「そう言えば、先生。これからナギサ様のとこに行くんですよね?」

「それなら、一緒について行っていいですか?」

「お前ら、補習部のスポンサー様に挨拶に行くぞー!」

 

 ミカとの面談中だったが、構わず映像込みで流した結果、面白い顔をしてくれた。

 ヒフミだけじゃなくて、放課後補習部全員に謝罪するのが筋だろが! 

 105mmを4門貰えた、感謝とお詫びなら仕方がない、ナギサは話が分かる奴だった! 

 ミカお前までも笑うんじゃない。可哀そうだろう、頭にトラウマと強行回収中に尊厳を口からこぼしたそうだが、インガオホー。自分がされて嫌なことは相手にしてはいけません。戦争以外ならな。

 

 帰りに条約式場である、古聖堂を探索中。準備中のシスターフッドに遭遇し古聖堂の案内をしてもらった、補習部の社会勉強と称して視察したが、広いカタコンベだ。

 これのどれがどこへ繋がるか誰も知らないらしい、勘弁してくれ、パリジャンはまだ記録してたぞ、遺せよ。

 後で古書館の主をまた逆さにでもしたら教えてくれるかなあ、と考えていたらシスターヒナタから怒られた、やっぱダメか。

 畜生俺よりでかいからってなんてやつ。

 

 

 

 

 合同警備本部で、トリニティ側とゲヘナ側の最後の打ち合わせが終わった。

 マコトは相変わらずアホだが、権力は無い辺り保身には長けてやがる、権威だけで椅子に腰かけてるぞこのアホ。

 シャーレの閲兵の時間も取れた。本当なら創設期から欲しかったが、あれこれ難癖付けた連中め。

 帰りにイロハにシャーレ側でとっておきの鉄道の用意ができたこと、最寄り駅でトランスポータを用意していることを軽く打ち合わせ、外に出る。

 外ではヒナが待っていた、去り際に二人から「最後に、ご無事で」と言われたが、縁起でもない。

 俺は平和に終わってほしいのだ。

 

 引き継ぎにシャーレビルに来たユウカとノアのコンビが居た。

 理由を聞くと休暇扱いでリオ会長が送り出してくれたとの事だ、ノアは何か起こるまで封緘書類は開けないそうだ。

 妙にリオ会長は最近、せわしなく動いているらしい。

 途中ユウカの靴紐が切れた、縁起でもない。皆からの気持ちと言う事で防弾チョッキを貰った。縁起でも無いことが続いているので喜んで受け取った。

 エンジニア部の特製、合成繊維の防刃防弾仕様らしい。

 

「余計な機能ある?」

「携帯決済機能以下18項目は棄却しておきました」

「安心したよ」

 

 人命第一で作ったから安心してほしいとの事だ。

 爆発は自分達の特権なので晴れ舞台で友人が爆発するのは見たくないとの事、いろんな連中がアップリケを貼ってくれてた、生きて帰るとしよう。

後ミレニアムの倉庫の奥にあったけど持て余していた、30mmを積んだM48をレストアして貸してくれた。30mm積むんなら105mm積んでてくれよ。

 

 最後にアルちゃんから会場近くで見てるから、ヒナには内緒にしておいてとの事なので関係者用のIDカードを渡してあげた。

 麻雀で勝ち逃げは許さないと言われた。

 白紙小切手は仕事があった時に書くとの事だ。

 別に何事も無ければそれでビュッフェでも行けばいいんだがな。

 

 

 

 閲兵式用の警備小隊や対外作戦部隊の選抜30人、観閲行進部隊として車両隊もつく。

 この日の為の軍楽分隊も初お披露目だ。懐かしの我が国歌、門出の歌のシャーレアレンジをノアに書いてもらった甲斐があった。

 最高の気分だ。曲名どうしようか? 

 兵器群はユウカに気づかれない様に、粛々と移動している。

 空中機動部隊主力の観閲飛行は予め書類に書かれ、GOサインが出ている、もう止まらんぞ。

 万一のトラブルに備え、なけなしマネーで揃えたAFV、M113とM577も展開するから指揮本部が使えなくなっても、そっちの判断で戦い続けれるだろう。

 

 最精鋭の分隊、D分隊も現地で合流後すべてが終わるまで一緒に行動となる。

 選抜オブ選抜の志願者を護衛の達人ネル部長に鍛えてもらった、こいつ等で駄目なら余程だろう。

 なおデルタ分隊はSRT時代からの選抜部隊らしい、FとDは精鋭だそうだ。

 アロナには203㎜級の飽和砲撃があっても耐えられるようにしっかり休んでもらった。

 俺も現地入りしてゆっくり寝よう。

 

 

 

 とっておきを眺めてイロハは首を振っていた。

 砲塔後部の張り出しは普段よりデカい、通信機材の都合だ。

 イロハは礼服だが、イブキにはドレスを手配した、ひとえに政治的判断だ。

 彼女は政治以外の為にそこにいる、そういう意思表示である。

 いつか彼女がゲヘナを統べるとき役に立つだろう。

 成功しようが失敗しようがイブキの将来の政治的失点にはならない。

 

「柄じゃないんですがねぇ……」

 

 戦闘能力と指揮能力を兼ね備えたとっておき、Panzerkampfwagen VI Ausf. B ティーガーⅡだ。これを引っ張り出すのは苦労した。

 戦闘用履帯も予備を含めて持って行く。

 直接は見たこと無いが、あの行く場所行く場所を戦場にしてそこで余裕の笑みでいる先生がここまで備えている。

 絶対碌でも無い事が起こる。

 現場待機の風紀委員長は自分が行くことを伝えていない、自分がついたときには全部終わって居て、我らが会長に煽られるのが最高なのだから。

 溜息を吐いて明日に備えるのであった。

 

 

トリニティの市街郊外、外郭近くの山道へ穴が開く。

 

「予定通りです。開きました」

 

トンネルの中ではゲヘナとトリニティの恰好をした分隊と、アリウスの白いBDUをつけた生徒たちが混在している。

FASTヘルメットを着用し、暗視装置を付けた錠前サオリが報告に頷いた。

 

「よし、灯りを消せ。機甲大隊は予定通り無灯火で夜行軍だ。我々は別ルートで行くぞ」

 

サオリは予定通りBTR-90をトラックへ載せる。

 

 

 その日が来た。

 シャーレ警備部隊、調印式警備の白河中隊長は内心かなり安堵していた。

 見る場所全て警備、警備、警備、全狙撃点は監視され、周囲はヴァルキューレが検問している。

 それにこの警備陣は数も質も高い、ツルギ委員長は到着次第後輩を確認して緊張を解しているし、ゲヘナのイオリという奴は状況監視のデータをリンクしてあれこれしている。

 目指す出世とエリートコースは近い! 

 

「お、先生だ」

 

 礼服の上に防弾ベスト、防弾ヘルメットを着けて先生が歩いている。

 いつみても役所丸出しの「合同警備本部」のテプラはどうかと思う、ヘルメットも白線一本で指揮階級感出そうとしてどうするんだよ。

 まあ、政治なんだろうけど。

 締結式まで、あと2時間。

 M577指揮装甲車は暇をつぶすに向かないなあ。

 どれ、少し無線兵を連れて歩いて、ちょっと偉ぶってみようか。

 へへ、なんだか偉くなった実感が湧く。

 

 

 

 ヴァルキューレ生活安全局、キリノは朝から混雑する市街地に内心人酔いしてきた。

 フブキではないがこれはてんてこ舞いだ、朝から検問、誰何、危険物調査、シャーレから専門家が来てるけどまだ足りない。

 それ故か、キリノは検問に近づく車両を見てもあまり違和感を抱けなかった。

 

「冷凍輸送?」

 

 書類とトラックを見て、キリノは首を傾げる。

 確かにデカいトラックだが、そういう予定があったか確認する。

 

「予定にないですよ」

「はあ、それがゲヘナの偉いさんが急に肉だのを」

 

 そう返してきた相手を見る、顔の良い綺麗な女性だ。

 長い青髪はリン行政官みたいだが、目が鋭い。

 キリノは書類をサインする前に、一つ気になった点を指摘した。

 

「あっ、シャーシがへこんでますね。重量過多か、老朽化ですよ。物積み過ぎじゃないですか」

 

 キリノは違反切符を取り出し、名前と免許を出す様に言った。

 相手は今出すと言って、近づいたキリノをドアでぶん殴る。

 

「至急至急! 不審トラック一台、検問を突破!」

 

 公権力だぞ! キリノがそう憤激しながらパトカーの無線を掴むが、後ろから飛んできたロケットランチャーが通信を打ち切らせた。

 

 

トリニティの某所、地下カタコンベから大型トラックが出される。

大型トラックが荷台を傾けると、乗員が降車し車両から離れた。

突如としてヴォ!と火を噴き出すと荷台から噴煙が溢れ、鋭い剣の様なデザインの巡航ミサイルが飛び出し、ブースターが勢いよく炎を吐き出す。

3秒後にブースターが燃焼終了すると、パージし、巡航モードへ移る。

 

 

同刻、サイレンサーを装着したAKSを構えてアリウスの工作部隊が連邦防衛室の事前重装備保管庫へ向かう。

トリニティの自治区だが、前政権の時代の遺産として幾つかこうした倉庫が作られた。大半はもう解体されたがトリニティのものは書類審議中で解体されていない。

保管庫を護っていた元SRTの生徒が「敵襲!」と叫び、機関銃バンカーのM240が唸りを上げる。

 

「排除しろ」

 

即座にRPGからサーモバリック弾が撃ち込まれてバンカーが爆破され、破壊工作部隊が保管庫へ侵入する。

工兵が背嚢から爆薬を取り出し、各所へ敷設し、退避完了と同時に爆破した。

 

≪連邦の事前備蓄基地が爆破されました、西部トリニティ弾薬庫は壊滅した模様≫

≪正義実現委員会と公安局の火器集積所は現在1個小隊規模の不明部隊と交戦中≫

≪古聖堂外周で不審者三名を拘束しました≫

 

 瞬く間に交戦・不審者との会敵は件数が増えていく。

 現状で少数浸透が多数だが、不審車両は何処へ消えた? そして、この緩慢な攻撃は? 

 

「ともかく、予備兵力はまだ動かすな。古聖堂から半径25キロ圏に非常事態を宣言しろ。」

『分かりました。』

 

 ユウカへの電話を終え、首を傾げる。

 作為的な何か、意図がある。

 釣りだそうとする何かだ。

 だが相手は本命を投入してない、なら締結が先だ! 

 

「締結を遅らせますか」

「テロに屈したと思われたいのか貴様」

「了解」

 

 イロハは呆れた顔でそれに同意した。

 そして、ヒナに対応を協議しようと指揮所から出た時、太陽の中から何かが来るのが見えた。

 あれは。

 

「C-130と……ミサイル?」

 

 バカいうな、誰があんなものを。

 だがあれは……。

 

 

 

 

 4秒後、巡航ミサイルは3発、正確に古聖堂及び警備本部を爆砕した。

 18秒後にはDU地区の送電線が破壊され、通信インフラは事実上沈黙したと言えた。

 深い情報無き闇、荒野の砂漠、そこへ後部ランプから降下するアリウスの総力を挙げた大博打が開始されようとしていた。

 

 

 

「あーあ、やっちゃいましたね」

 

 この世ではないどこか、ゲマトリアは事態の変化を特に感慨も無く受け入れた。

 各自は思想信条を別にしているが、今日ここだけは同じ気持ちだった。

 

 この切られた火蓋はどこまで延焼するのだろうか。

 

 珍しく、今日の彼らの予想は正しかった。

 最悪の予想だけよく当たるものである。

 

【次回予告】

 

降り注ぐ巡航ミサイル、舞い降りる空挺大隊!

欲望と秘密と暴力と陰謀、トリニティが燃える!

圧倒的、ひたすら圧倒的パワーが蹂躙し尽くす!

ささやかな望み、芽生えた愛、絆、健気な野心。

老いも若きも男も女も昨日も明日も飲み込んで走る。

炎、炎。

音を立てて古聖堂が焼け落ちる。

 

次回「 『先生』の居ない8月 」

 

不死鳥は、炎を浴びて蘇る!

 

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