キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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イタリアの様なエジプトなので初投稿です。

装備などは中東

3話までは出しとけって古参兵が言ってたんだ。

テストで加筆してみました。


4月 アビドス編 「アビドス遠征」
砂の海に沈んだアトランティスへ


 

「砂の海に沈んだアトランティスへ」

 

 

 砂に塗れたアビドスの国道をMRAPが進む、リペイントも軽く済ませたシャーレのコンボイだ。

 先頭車両ではEminem - Lose Yourself を流しながら元SRTの生徒がM81都市型迷彩を纏っている。

 被服類は制服は用意したが戦闘服はSRTの予備軍物品から調達したものだ。

 ユウカと引き抜いた生徒たちは腐らず新環境でも良くやってくれている、エジプトを思い出させるこんな砂漠の中でもトラブル無しで来れたのは彼女たちの努力の賜物であろう。

 何故俺達が砂漠をキャラバンじみたものを率いて進んでいるのか? と問われれば回答は一つだ。

「アビドス廃校対策委員会」この書いた人間の性格までわかる生真面目な手紙──なにせ具体的な不足物品の一覧があった──が届いたのは今から2日前、部隊編成を終え様々な街の問題を解決していた頃だ。毎日届き増えていく嘆願書類の中からアロナが見つけ、お互い不穏だと思いながら手紙を読み簡単に内容を意訳して纏めるとインフラの遮断された砂漠で包囲戦を受けていると言う物騒な一文だ。

 現地入りの前の下調べにちょっと漁るだけで出てくる「10億の借金」「2年以上生徒会長不在」などなどなど……。

 要するに一大事だ。

 直接行って状況を見なきゃいかんと対アビドス支援作戦<サンバースト>は開始されたわけだ。

 俺が前ユウカに冗談交じりで言った生徒会長の忘れ物と言うべき特大の厄ネタだろう、連邦生徒会はもう少し危機感を持て、不在で何もできていないは機能停止と見られるぞ取り繕え。

 というか現地政府であるべき生徒会すら怪しいのは無政府ではないのだろうか、人口流出までしているのはもう末期的だ。

 

「目標のアビドス校舎まで後15kmです、先生」

「おう。各車ここまで無事故で来たんだ、無事に済ませるぞ」

 

 口元をターバンで覆って砂対策をした運転手にそう言われ頭の中を切り替える。*1

 到着してどうするか? どこで誰がどう動く? 専門外の謎解きだが、砂漠ならそう言うのも丁度良いだろう。

 白い車体に「連邦生徒会特捜部」のゴシック明朝体で書かれたMRAPが数両に、物資を積んだ輸送警備車(ユウカと頭下げてヴァルキューレ警備局から借用した)のコンボイは、一路アビドスへの道と呼ぶにはかなり苦しい国道を進んでいる。

 先頭から数えて4両目の、マックスプロMRAPが指揮官車両で、上空に身内価格で買い上げたUAVがある。

 気球とは偉く変わったが、教材には「ECM」なるもので使えない可能性も書かれていた、物事は変わらず楽しようとすると難しいらしい。

 

「ALAIN*21-1より6へ、前方に不審車両!」

 

 先頭のMRAPがMk19自動擲弾銃を構え、ガンナーがにへらとした顔を戦闘に備えた顔つきに変わる。

 指揮官車の小隊長は”不審車両”を即座に車外カメラでタスクフォース指揮官、この場合は先生に見せた。

 砂漠の放棄車両にしては真新しい軽トラック、かなり使い込まれているが砂漠で放置されたにしては新しすぎる車両だった。

 無言で減速し迂回するよう命令する。

 

「3時方向、動目標!」

 

 それと同時に先頭車両の一帯が爆ぜた、IEDとして対戦車地雷が2枚重ねで起爆し、MRAPが揺れ、エンジンが打ち所が悪く停止した。

 3時方向から14㎜DShK機関銃が飛んでくる、忽ちに弾痕が刻まれ、窓ガラスがヒビが刻まれるが、ユウカの財テクのお陰で未だに戦力はほぼ無傷だ。

 

「防御円陣!」

「執行実包使用許可!」

「周囲シビリアン無し、交戦開始!」

 

 運転手と周りが叫び始め、先頭車両と輸送車両を庇うように防御円陣を組みあげる。

 護衛用の装甲車から兵員が降車、直ちに周囲に市民が居ないかを確認し交戦を開始する、素晴らしい対応だ、俺がして欲しい事をよく理解している。

 だが此処では誰も死なせないようにしなければならない、彼女たちは驚きを通り越すほど強靭だがそれ以前に子供だ、子供に戦闘させているだけでも自分に怒りを覚えるが、それは個人の感傷だ。

 上空から観測中のミレニアムから中古購入した無人偵察機システム(FFRS)がアロナとリンクし、準備もできた、指揮の時間だ。

 

「UAVからデータリンク来ました、敵はおよそ2個小銃分隊! 先生は隠れてて下さい!」

「群れてもダメなときはダメだ、お前達の邪魔にならない場所で待機してる」

 

 観測映像の敵をアロナが数えた、20数名だが組織的な動きは悪くない、恐らくヘルメット団とかいう不良だろうが……。

 動きを見るに2個分隊というより1個分隊欠の小隊と認識するべきだと確信した。

 脳裏で幾らかの戦闘がシミュレーションされ、決断する。

 動けるMRAPで即座に敵集団中央を蹴散らして統制を乱し、突撃で掃滅するのが一番被害がない、敵は動目標に対車両火器を使用しなかった辺り、命中精度が低いのは分かった。

 

「先生、後方から一人誰か来てます!」

 

 MICHヘルメットを着けた小隊指揮官の白河が叫んだ。

 

「何だ、自転車!? 馬鹿にしてんのか‼」

 

 正気じゃないよイカレテんのかと隣で毒づく護衛を横目に、拡声器を探す。

 気は進まんが、アロナにバリアの強化を頼み、メガホンを持ち車上に上り声を張り上げる。

 

「とまれ民間人! アビドス市民か? 戦闘中だ伏せてろ!」

 

 見て分からないのか、眼がおかしいのかと思ったが、速やかにあの”恐らく市民”は小銃を取り出した。

 切り札の選抜射手で構成された予備兵力の小銃班(ライフルチーム)を即座に警戒配置へ移す、ワカモの例を見るにキヴォトスではイカレた奴はイカレてる強さだと理解した以上、あれが”本命”かもしれないのだ。

 何か言ってるが聞きづらい、そして俺にも弾が飛んでる風切り音が聞こえるが、殺意も勇気も足りない弾丸に当たってたまるか、アロナと言うイカサマを使っていたとしてもだ、当たる奴が悪いのだ! 

 すると、あの少女はドローンを展開し、誘導ロケット弾を発射し一番右から延翼しようとしていた機関銃手たちを吹っ飛ばした。

 奇襲で火点を潰すのはいいが、火力の狙いどころは少し甘い、指揮班を狙うのが最適だ、しかし味方が増えたのはありがたい。

 

「突撃にィ、移れェ!」

 

 あとの戦闘は3分でおわった、予想外の増援で不意を突かれて士気が低下し、25㎜と40㎜を撃ちながらキャスパー*3が3両が逆襲しただけで士気崩壊して壊乱した。

 我が方戦闘員軽傷3名、敵性武装組織ヘルメット団は14名が病院送り(入院7日)で、残りは士気崩壊して投降した。

 気になるのは「こんなの聞いてないよぉ」と嘆くヘルメット団の言葉だ、誰かがコンボイの情報を流したのか? 確かに不良から見ればかなり良い獲物だろうが、規模がしょぼいあたり腕試しに利用されたのだろうな……。

 だが、どんな木っ端からでも何かのヒントは出てくる、その辺は連中に任せて俺のやることは……。

 

「よぉ、良い援護だ、だが停止命令を聞くなり戦闘参加の意思を伝えるなりしてほしかったがな、お前がアビドス生だな? 名前は?」

「ん……シロコ、砂狼シロコ、貴方たちは?」

「話に聞いてないのか、連邦捜査部『シャーレ』の顧問だ、先生で良い」

 

 次の襲撃の危険があるので、シロコの自転車も車両に積み込み、残りの道中を雑談をしながら話してると、目的地が見えてきた。

 土嚢とある程度の手製バリケードが敷設され、弾痕や爆発痕が見える辺り戦闘地帯なんだろう。

 運転手が「着きますよ」と言う声と、「ん! あそこがアビドス」などと後ろで会話が聞こえる。

 

『連邦捜査部シャーレだ、立ち入りよろしいか』

「連邦!? 嘘だァ、馬鹿言うんじゃないわよ」

 

 黒猫の様な生徒に窓から「誰だお前」と驚かれた。

 

「え、本当に来たんですか!?」

「ん! 連れて来た!」

 

 慌てて生徒がもう一人出てきた、眼鏡をかけた生徒だ。

 車両から降りて物資の受領書類を手に取り、校門前に歩くとシロコに責任者を呼んで貰い、サインの後に本当の目的を確認せねばならないと考えていると、フランスや戦地で散々感じた敵意の混ざった視線を感じた。

 双眼鏡を即座に手に取り、視線の元をたどると、体格は小さめ、髪は桃色、目の色……ではない、燃えるような感情が突き刺さる感覚を覚える視線を浴びる。

 向こうから聞こえる、シロコ先輩を返せーなどと聞こえるが、上のアイツが突っ込んでくれば今の戦力で勝てるか? エジプトの時のアイツの様な目ができる奴が弱いわけがない。

 

「ん……先生、説明に行く」

 

 シロコのこの言葉で、意識をシャーレの先生に戻せた、双眼鏡を覗いていたとはいえ先ほどまでの俺の眼を見られてなければいいが。

 

「ああ、すまないな、メガホン使うか?」

「大丈夫、先生が使った方が良い、行ってくる」

 

 そんなことを言うとドアを開けて跳ねるようにシロコが飛び出して行き状況を説明しているようだったが、そのころには屋上からの刺さるような視線は無くなっていた。

 しばらくして、校舎から出てきた3人に安全を確認してもらい俺たちのことを説明していると奥から気だるげな少女が、のそのそと大きい伸びをしながら出てきた。

 屋上で睨んできた少女だ、なぜこのような擬態をしているのか分からないが何かしらの情報を握っているのだろう、さて役者もそろったシロコも手招きしている、あいさつに行くとしよう。

 

「連邦捜査部シャーレだ。支援要請に基づいてアビドスの支援に来たんだが、不良生徒の襲撃を受けた際に君たちの学友が助けてくれてね。

 荷物は無事だ、確認を願うよ」

 

 異物を見るような目から外からの流れ者を見る目に代わった、一安心か、だが目の前の桃髪の小女からの警戒の視線は変わらない。

 それでも周りは補給が届いたことに関心が移ったようで。

 

「わぁ! 支援要請が受理されたのですね! 良かったですね、アヤネちゃん!」

「はい! これで……弾薬や補給品の援助を受けられます。シロコ先輩誘導ありがとうございます!」

 

『先生』とは何だ? ここに来た時から大人と言うだけで子供から不信感の目を向けられていたが、この役職と聞き納得してもらえると、周りの大人は畏れ子供は信頼を寄せてくる。

 ここの大人と呼ばれる連中のモラルは論外だが、だからと言ってこれは不審だ、逆に俺が警戒してしまう。

 だからこそ、俺にまだ警戒、いやこの場合敵意の視線を向けてる、この少女に好感度が上がってしまう、逆に言えば大人等によほど酷い目にあわされたか、連邦生徒会が嫌いなだけかもしれないが、確かにこの状態でこの手紙が俺の手元に届くまで何もしなかったと思うとその通りだ。

 だが敵意だけで復讐心までには至ってないのは幸いと思っておこう。

 

「先生! 校庭での車両修理の許可が下りたので部隊の一部は補修に移り、予定道理そのまま物資の搬入の手伝いに回ると言うことでよろしいですね」

「オウ、一部は警戒態勢だ、先ほどの件もあるからな」

「了解です、ではその通りに」

 

 後ろで牽引されていく車両を見送りながら、先ほどの少女が俺に近づいて来た。

 

「先生だったんだ~。よろしくー。むにゃ」

 

 気だるそうに眠そうな挨拶だが、眠気は演技でもなさそうだ、連日長距離行軍した歩兵の目と忙しい時の俺のデスクワークに付き合わせたスタッフの目だ、疲労を気力で持たせて居るのか? 相当ヤバそうだな。 

 まぁいい、物資の確認が済んだなら、サインをもらわねばならない。

 運んできた物資の量を見た3人が驚き、喜んでいるを見てると大型輸送トラックを借りた甲斐があったもんだ、俺とユウカの計算が間違って居なければ本格的な籠城戦でも1月は持つ量だ。

 俺の時代なら数年分の会戦基定数なのに個人が自動火器バカバカ撃てるせいでアホみたいな消費量だぜ、泣けてくるな! 

 マスケット銃なら大盤振る舞いしても180が精々なのになあ。

 

「へー太っ腹だねぇ、中身確認してもいい?」

「中抜きも粗悪品も入れてはいないが、自分で確認するのは必要だ。少なければ言ってくれ、最悪うちのヘリで緊急輸送する」

 

 桃髪の少女が確認して動き出した後、他のメンバーもトラックから荷下ろしされた物資を確認を始めた辺り彼女がやはり、リーダーなのだろう。

 検品中に聞こえた質も良いという感想。粗悪品ではないが早急に量を集める必要があったため、質は妥協したので文句が来るのではないか? と思って居たがそれでも質が良いと言われると、やはり借金やその他もろもろを確認したくもある。

 断言できるのは末期も末期と言うとこだ、道中の襲われ方も怪しい、まるで殆どアビドスの土地では無いみたいだ。

 嫌な予感がする、白河の奴に周辺警戒の用意をさせるべきか? 

『先生』としては宜しくない物思いに耽っていると検品を終えたあと、問題もなかったようで、眼鏡の少女が喜びと安心が混ざったような声色で。

 

「良かった、これだけあれば、カタカタヘルメット団からも学校を守れま──」

 

 聞きなれた音、性能は違うが本質は変わらない音、俺を『先生』から戦場に戻す音。

 うちの隊員のAR-15やコルトM727と、ヘルメット団とかいう連中の民生M4の銃声。

 

「じゅ、銃声!?」

 

 アヤネが窓を見ようとしたので、しゃがんでろアホと頭掴んでしゃがませる。

 需品・主計担当らしきお前が撃たれちゃ困る。

 例の少女は一瞬面白くなさげな顔をしたが、即座に顔を切り替えた。

 

「ひゃーっはははは!」

「攻撃、攻撃だ! 物資を奪え! 襲撃せよ! 学校を占拠するのだ!」

「ぜんしーん!」

 

 手元の無線からも『敵襲! おそらく3個小隊規模!』と声が聞こえる、今回と前回の捕虜の情報を束ねればもう少し敵の姿が見えてくるだろうか? 

 まぁいい『先生』に成ろうが勝たなければどうしようもない。

 敵襲を確認したアビドスの4人も自らの得物を迎撃に出て行った、5人と少ない物資で戦ってただけあって、いい動きと連携だ。

 

「私がオペレーターを担当します、先生はこちらでサポートを!」

 

 眼鏡の少女に呼ばれるが、ここであの連携に変に指揮を執り、呼び戻した後こちらの部隊と統合運用させるのは愚の骨頂だろう、前回シロコが俺たちのカバーをしてくれた、なら今度はこちらがやろうではないか、突撃する切込み部隊の支援も昔散々やった。

 

「白河ァ! 動ける車両は?!」

「1号車は修理中ですがそれ以外なら動けます!」

「2号車と3号車に2名づつ乗車、その後敵側面を突っ切って退路を潰してやれ! 相手が遅滞戦闘も取れなさそうなら、徹底的に追撃してやれ」

「「はァい!」」

「CP要員はドローンを飛ばせ! 戦況の確認に入る」

 

 それぞれが動き出した後、シッテムの箱を起動する。

 C4ISR(指揮通信管制及び情報索敵偵察システム)と、各隊員が装着したヘルメットカメラなどがリンクし、地形情報と照合される。

 

「アロナ、敵の通信端末あるならハッキング、その後CPの情報と統合する、眼鏡っ子はこっちに乗れ! 機材もこっちの方が整ってる」

 

 適度な速度でドアを開けながらでこちらに来るマックスプロMRAP*4に眼鏡っ子を載せながら、眼鏡っ子ではなくアヤネですと言う訂正報告を聞きながら、戦況の確認に入る。

 普段と違い、こう言う仕事はアロナは完璧だ。

 

「うへへ、先生が欲しそうな情報はすでに用意できてますよ~」

「重畳! 作戦開始だ」

 

 BARを構えてヘルメット団の機関銃手が支援射撃を始め、こっちのMINIMIガンナーを制圧しようとする。

 何人かのヘルメット団がM79で煙幕を展開、射界を塞いで校門前から突入を図る。

 

「突入!」

「其処退いて」

「えッ」

 

 ホシノが煙幕の向こうから、片目を煌めかせた。

 

 

【次回予告】

 

 大いなる偶然が奇跡の始まり。

 芽生えた意識は行動を、行動は情熱を生み、情熱は理想を求める。

 理想はやがて、愛に行き着く。

 愛はすべてに呵責なく干渉し、創造の嵐を育む。

 そして、放たれた雷は誰を打つ。

 

 次回「 アビドス廃校対策委員会 」

 

 必然たりえない偶然はない。

 

 

 

*1
口と目元の防塵対策を怠ると眼病や呼吸器官系の病気になるよ

*2
フォネティックコードのフランス仕様

*3
南アフリカ共和国が設計製造した、四輪式の装甲兵員輸送車

*4
移動指揮車両型

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