キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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Trip-Trap-Train

 エデン条約の戦いが終わり、しばし時が流れたころ。

 アリウス自治区の区画を連邦生徒会塗装の真っ白なM728CEVが進む。

 連邦生徒会から徴発した工兵戦車で、中央回廊に続いて聖歌隊休憩室の復興へ取り掛かっているのだ。

 不発弾や地雷の危険性、内戦で各勢力がばら撒いた負の遺産が遺っている以上、こうした車両にEODスーツは出番が多い。

 しかも地雷探知機と言っても空薬莢や残骸に金属片まで探知する、ある統計では地雷処理の時間の内90%近い時間は金属片との戦いと言われている。

 近くミレニアムに依頼した地雷処理ロボが来ると言うが……。

 

「休憩室への扉がありました、地下倉庫はまだ残ってるみたいです」

「りょーかい、立ち入りして確認だなあ。シスターにも確認頼むか」

「古書館の人も呼ぶべきかも知れませんね」

 

 シャーレ隊員とアリウス生徒たちがガスマスクとアーマーを確認する。

 腐りきった有機物に過去の内戦の死体で、地下は大概硫化水素のたまり場だ、腐敗ガスが生んだ青白い炎も珍しいものではない。

 それによる負傷者も数名出てはいるが、士気は高い。

 真実誰かの為になる仕事で、他の誰でもない自分たちが、自分たちでしなければならないからだ。

 

「せーの!」

 

 重たい扉を開け、埃が舞う。

 気密が保たれていたらしく、風が吹き込んでいく。

 内戦以前に封じられたらしく、荒らされた様子はない。

 記録官がカメラを回し、中を確認する。

 

「シスターを呼んでくれ、ミメシスにしちゃ可哀想だ」

 

 ライトが古びた骸骨を見つけた、過去のユスティナ生徒らしい。

 一番近かったシスターフッドのヒナタが到着し、略式で葬儀をする。

 死ぬにも死ねないまま死後の安息も無くミメシスにしてはあまりに切ない。

 

「ん?」

 

 資料確認していたアリウス生徒が木箱を開け、そしてそこに描かれたマークを確認する。

 ケースには、トリニティのマークが描かれていた。

 

 

 

 復興中のアリウス自治区ポルタパシス広場前、行きかう人々の雑踏を横目にイチカが居た。

 広場前はハイランダーの鉄道駅もあり人と物の流れが一番激しい、なにせいろいろ怪しげな露店市まである。

 

 

 最近苦労が多いイチカっす。

 ティーパーティへ荷物を運ぶから、荷物持ってる先生と駅で合流するように言われ、顔の広い自分に白羽どころか155mmが刺さったっす。

 この前の公聴会を奪って私物化して大立ち回りしたのを見て、ああやっぱりこの人やると思ったんっすよ! 

 まぁ、合同警備本部などで何度も会ってみると帰り道とは言え、私的にゆっくり話してみたい人ではあったので、渡りに船と言う事でまっ、なんてことないっすね。

 午前6時駅で集合、白で統一したレトロな紳士服*1で鞄を持った先生とフードを被った女の子が居たっす、傍から見ると旅の親子っすよね。

 

「……と、ここまでが正義実現委員会の話っすね」

「お疲れさん、一番忙しそうなのに迷惑かけるな」

 

 先生が気苦労が多いなと声をかけた。

 

「それなら……そちらのお連れは、アリウスの?」

「政治的には人質状態の秤アツコだよ、よろしくね」

 

 ぴーすぴーすと良く分からない雰囲気をしている。

 先生がざっくりと説明をしてくれた、要するに今回の移送物の受け渡し式もあり、彼女とナギサ様が出る事で政治的な意味も持たせれると。

 要するに公式な終戦なのだ、あまりに長すぎた戦争の、区切りという訳だ。

 

「はぁ……それはまた、先生その切符はまさか!?」

「一等客車のボックスだ、連邦生徒会の連中から毟った」

「「わあ」」

「下手に一般客車乗って大騒動じゃあマズいと言われたし、それに公用であるから連邦生徒会は文句を言えんのさ」

 

 会計は賢いと思うっす、この誰もが認める人間サーモバリック爆弾、高速鉄道大爆破に早変わりっすからね! *2

 高くても保険と思えば安いもんっすよ。

 というか連邦生徒会役員とかなら運賃無料の特権あるでしょうに……、そりゃ厳密に言えば先生は役員じゃなくて先生なんすけどね。

 

「欠伸出てるぞ、疲れてるのか?」

「おかげさまで、ちょっと寝不足っす」

 

 嘘ではなかった。

 馬鹿な反動主義や変ちくりんが暴動を画策したせいで夜勤があった。

 時計の針は先にしか進まないのになぜ戻したがるのだろうか。

 

「長丁場になるから、寝た方が良いよ。目的地まで3時間はあるから」

「一回ゲヘナ行き乗らないと駄目だからな、体力は残して置け」

 

 移動ルートは把握している、本来なら直通で行けるのだが、沿線で大型自走臼砲の弾薬庫が見つかり、ダイヤがおかしくなった。

 その為多少遠回りして、ゲヘナ経由の線から入る。

 しかし普段の先生らしくない感じだ。

 

「しかしまぁ、どうして今回は列車で? ヘリとか高速車両愛用してそうな感じっすけど」

「現地で俺が受取引き取りのサイン書く重量物もあるからだよ、それにミレニアムから買ったチヌークは慣らしの最中だしなあ。なんかリオが中古を滅茶安でくれたんだ」

「またなんで」

「わかんねえ。リオの奴は本当に良く分からん。悪意と言うより方向性が違うんだなあいつ」

 

 そう言いながら歩き始める。

 以前来た時よりどんどん露店が増えている。

 広場の待ち合わせ場所から出て、大通りを渡る。

 まだ行きかう車両は少ない、工務部の大型車両や資材輸送車両、シャーレの工作車両、あとは再編され出したアリウスの治安部隊。

 それも大して多いわけではない、恐らく3年か5年はかかるかもしれない。

 

「ああ先生ですか、予定通りですね」

 

 駅舎はかつてあった何かの庁舎を再建したもので、バロック様式に近い内装で作られている。

 今はさほど多くは無いが、いつかこの駅舎もラッシュや旅行客であふれるのだろうか? 

 イチカはふとそう思った。

 駅員がスタンプで判を押し、旅券を通した。

 未だマルスシステムや券売機が対応してないのでこういうところはローテクである、おかげで有人改札やヴァルキューレの交通警官も大忙しだ。

 

 

 

 30分ほど乗って、アリウス自治区の川三波駅で乗り換え。

 ハイランダーが推進してるA-Aライン高速鉄道路線計画のハブとして、ハイランダーが熱心に再建した駅で、周辺宅地まで開拓している。

 ある意味シャーレが政情を安定化させたお陰で一番得したのはハイランダーなのだと言える、というクロノスの論題はなんとも笑える冗談だ。

 駅員がメガホン片手に「ゲヘナ・トリニティ横断特急ブリッツ109号は8番乗り場ァ」と声を挙げている、発電機の不調で度々放送が止まるとアツコは嘆くようにつぶやいた。

 貨物車両の連結確認を終え、予定通り乗り換える。

 

「廃墟から建て直すのはやっぱ大変っすねえ……」

「牛歩に近いけど、でも進んでいる。悪い事だけじゃない」

 

 客室に腰を下ろして、アツコが座る。

 

「あと10年か15年もあれば、独立独歩でやれるんじゃないかな」

「独立独歩」

 

 思わず聞き返した。

 

「マスコミは情報を貪る、ボランティアと言っても善意を貪る、私が望むアリウスは廃墟でもないけどアイデンティティーも帰属意識も無い連中の遊びの砂場でもない」

 

 苛烈な事言うなあ、連邦生徒会が聞いたら卒倒しそう。

 ただ言わんとしてる事は分かる。

 

「そのためにシャーレと言う歪ではあるが公正な組織を使い、シスターフッドの眼を入れさせ、そして外部に開放路線を走るレッドウインター工務部と手を組んでいる、そう言う訳っすか。悪い大人の悪影響なんすかねえ」

「俺はまだ寄生虫の予防と対策を教えてるだけだが?」

 

 とんでもない政治的策略というべきか。

 こんな可愛らしい見掛けの頭の中にはただ一つしかない、自分が守るべき全員の未来だ。

 この子は、この子は恐らく。

 

「連邦生徒会も、トリニティにも付け込む隙を与えるなよ。今の俺の立場とこの前の公聴会が物語ってる」

「うん、連邦生徒会もトリニティも信じて無いよ、信用してるのは行動を持って証明して実現してくれたこの大人だけ。だから独立独歩の理想を遺そうと思ってる」

「下手をすれば、真っ先にそれと戦うことになりそうな、私の近くで話さないで欲しいッスね」

「どのみち人生も列車と同じ、終点まで行くしかないんじゃない?」

「まっ、終わり方は生まれ方より選べるからな」

 

 運命論と言うには少し違って聞こえた。

 どう進むかじゃないの? そういう言い方だった。

 車内のチラシを見ていた先生が、「お」と声を挙げた。

 

「流石特急だな、食堂車で飯でも食おうか、俺こう言うの殆ど経験なくてな」

「会計の人怒らない?」

「大丈夫、こういうのはアイツもアオイも何も言わねえんだ。俺がⅯ1エイブラムス頼むと烈火の様になるくせに……。半分ぐらい冗談なんだがな」

 

 普段何してんすかアンタ……。

 

 

 

 

 

 のんびり飯でも食おうとしたが、まさか移動の時点で耳目を集めるとはな……。

 まあ確かにイチカとかの制服は眼を引きやすいか。

 

「あれ、正実の腕章じゃん」

「どうして、トリニティがゲヘナ行きの列車乗ってるんだ?」

 

 不和というよりも首を傾げるような視線と雰囲気である。

 異物や見かけない生き物を見る様な、スペインでマムルークを見る様な、そういうものだ。

 ただ明らかにある瞬間から眼が変わる。

 

「おいあの白服……シャーレじゃねえか?」

 

 誰かが声に出した。

 そういえば今回はアツコは礼装だし、俺と同じく白服だし、俺も制服、いや今日は私服だし……。

 だが、なるほど傍から見ればシャーレ二人にトリニティ一人か! ワハハッ! クソったれ! 

 

「頭低くしてろ、歯を全部折られるぞ!」

「犯罪者抜き打ちの摘発じゃないか?」

「おいヤバいぜ」

「ああ畜生ついてねえ……!」

「きっとエデン絡みだぜ……」

 

 移動するだけで車内が騒然と化すのはいささか予想外であった。

 駅弁にでもしておくべきだったか! 

 歯を折ったのは俺なら勝てると踏んだバカの顔面に鉄パイプ食らわせてやっただけだ。

 長物使うのは久しぶりだったが、体が覚えているもんだ。

 

「パニックにしてどうするんっすか」

「おい、そこ、何の騒ぎだ!!」

「あ」

 

 車内巡察の乗務員がやってくる。

 

「乗車券持ってないのか!? そっちの大人は?」

「ほれ、最上級だ」

 

 連邦公用! と書かれた赤券と俗称される切符を見せる。

 キヴォトスの全土でも数千も無いものだ、期限を過ぎた赤券は偶に売られてコレクターが争って買うという。

 しかしながら乗務員の読み込み機が反応しない、乗務員が何か言いだした。

 

「……どうせゲヘナ行きの列車だし、乗ってる奴はまともじゃ無くて、うるさいから乗務員も気づかないから無賃乗車位許されると思ったんだろ……? 

 どうせ無法地帯だろうなんて考えで……白昼堂々無賃乗車しようってんだろ! もう限界だ! トリニティどころか連邦生徒会まで馬鹿にしてくるなんて!」

「おい! まて! トリニティはそもそもは自分たち以外全部馬鹿にしてるだろ!!*3

 

 思わず声を荒げる、やってもない罪をかけられたくなんかない。

 イチカが何とも言えない目で見てくる。

 

「全乗務員へ! 無賃乗車だ! 相手がなんだろうがぶちのめせ!」

 

 あちゃあと頭を抱える。

 そして、アツコが言った。

 

「あ、多分有人改札ですり替えられたんじゃないかな。有効期限内の赤券なら高く売れるでしょ」

「それかあああァ……俺としたことが」

 

 もう限界だ! 鉄道屋も信用できねえ! 

 飛び掛かってきた乗務員を、アツコが首掴んで腹に膝蹴りをぶち込んだ。

 開戦のゴングが鳴り響く。

 

 

 

 

 ものの数分でハイランダーの鉄道保安部隊を蹴散らした、流石にスペックオプス相手はダメだと思うっす。

 というか最初の数人は徒手空拳でやっちゃってるんすけど、大丈夫なんすか? なんか数名は泡が出てるんですけど。

 先生が「カニみたいで可愛いな。加減してやれ*4」と言って以降はテーザーガンとかがメインだったんすけど、それでも3人くらいはストックで殴り飛ばされていた。

 そしていま、爆発音と煙がして、誰かが出てきた。

 

「あれえ変だな、もうすこし綺麗に連結部が弾ける予定だったが……。あ、装甲材質変わったのかあ、なるほどそうか!」

 

 ……聞いたことがある声がしている。

 エデン条約の戦いで聞いたことがある。

 

「恩赦はもう要らないらしいなぁ? カスミさぁ~ん!!」

 

 先生がグラサンをかけだした。

 

「ヒィィィィ!! 待ってくれ、話を!!」

「辞世の句なら聞いてやる、17秒以内にな、無理なら車外に放り捨てる。良かったなぁ、列車から降りられるぞ!」

「いいの? 今中々速度出てるよ」

 

 アツコが呆れた顔をした。

 

「どうせ脱獄だろ? 俺達に片棒担がせようとしてる」

 

 カスミ部長を見ていると汗がだくだくと溢れている、図星らしい。

 なんでもETOの資料で見た話だと、他人を口車に載せるのが上手い類という話で、そりゃあ先生と相性悪いわけだと思う。

 本質的に暴走列車で他人を振り回す人間変動重力源や巨大恒星相手じゃあ、所詮三体問題のラグランジュポイント程度では敵わないのと同じである。

 

「と、というかだ先生! なんで此処に居るんだ!」

「公用だな」

「トリニティのカワイ子ちゃんに、アリウスのお姫さんまでつれてかい?」

「そうだな、一件増えそうだが」

 

 か、カワイ子ちゃん。

 チラッとしか知らないけど指名手配犯のワケが見えてくるっす……。

 唖然としている自分に狙いを変えたか、カスミが寄ってきた。

 

「まま此処は列車を降りるまで仲間といこう。ほら、握手」

 

 正直ご遠慮願いたい、相手を選ぶ権利がある、まして仕事でもないんだ。

 困り切った顔をしていると、楽し気な高笑いをしながらカスミ部長が言う。

 

「はーっはっはー! やはり汚いゲヘナの角付きと握手なんかしたくないか!」

 

 このガキ……! 

 いけないいけない、抑えなくては。

 

「まあいい! 信頼と尊敬は敵意と憎悪の中で生まれるとむかし漫画で見たし習うとしよう!」*5

「何言ってんだバカ、硫黄吸い過ぎておつむイカレたか? 俺がお前を突き出さない理由がないだろう」

「別にそうじゃない、ただ先生としても、そしてそこのアリウスのお姫さんも見過ごせない事情があるという事だ!」

 

 先生が次の疑問を投げる前に、放送が響く。

 

『ただいま最後部車両で爆発が発生しました、事故原因解明の為当列車は予定を変更し──』

 

 カスミ部長をぶち殺したくなる……いけない、満足気な笑みを浮かべている。

 

「実は実はそう! 食堂車の冷蔵庫部分を改造した檻に私をぶち込んでいたんだ」

 

 そのまま精肉にでもなってりゃ楽なんすけどねぇ。

 しかしながらとんでもない話だ。

 ”アリウスで温泉掘ろうとしてたら兵器庫見つけて武器密売の証拠掘り出した”とは……。

 

「お陰で待ち伏せ喰らって密輸武器ごとアリウスから連れ出されたというわけだ! いやあ酷い話だな!」

「日頃の行いじゃねえか? 冷凍されて口止めされてないだけ、相手は優しいな」

「先生いくらなんでも手厳しいぞ、私も拗ねる」

「拗ねていいし泣いて良いぞ、おひねりなら出してやる」

 

 会話のペースを崩されながら、カスミ部長が続ける。

 

「と、ともかくだ! 掘り出されていたのは見たところミラン対戦車ミサイルや、ジャベリンと言ったものの山だ。莫大な金が動いてるだろう、連中死に物狂いだぞ」

 

 すると、沈黙していたアツコが突然警戒態勢に入った。

 

「多数の足音、来る」

 

 ガスマスク、フード、LShZ-1+ヘルメット……。

 動きからしてバリバリのアリウス系だ、来ている戦闘服は青色で、パッチは鷹があしらわれている。

 確かアリウス生徒たちが一部は傭兵になったと聞いた、復員するより鉄火場で生きていたい人間は多い。

 ……いや待てにしちゃ装備が良すぎる! なんでこの人たちL85やAR-18なんか持ってんすか? ベストもJPCとかの値段張りそうなのばっかっすよ!? 

 

「武器密売と護衛でマージン得てたんだろうなあ」

「高く売れたのね……」

 

 アツコが呆れたような顔をした。

 相手のマーセナリー達もどうしようと言う雰囲気だ、故郷も無い傭兵とはいえ色々と感情はある。

 それはそれとして射撃ポジションはついている、あいつら防弾盾も持ち出してきた。

 しばしの間睨み合いがして、何人かが頷いて、首を横に振った。

 

「エンゲージ!」

 

 おっぱじめちゃった……。

 

 

 

 

 概ね1個小銃分隊ばかしを追い散らしたは良いが、流石にゲヘナと言うかあちこちで暴動と化している。

 流石にアリウス生徒のマーセナリー達もヤバいと後退したが、状況は寧ろ滅茶苦茶だ! 

 5両目の段階で暴徒を止めようとしたマーセナリーと保安部隊が重機関銃持ち出し、暴徒を滅多打ちしてる。

 

「なんであんなもん……」

 

 思わずつぶやく、分かっている、それだけ美味しい仕事なのだろう。

 これまで違法銃器は大量販売されてきた、それを根こそぎに溶鉱炉にぶち込みまくったのがシャーレだ。

 需要と供給が変動すればバブルが生まれる、世は正に大密売時代! ふざけてる。

 お陰で闇経済は大混乱、黒亀組なんか下部組織が幾つか潰れたとか言う。

 

 それによる報復で捜査中のシャーレ隊員が二人、事故に遭わされたが、ここからがなお酷かった。

 明らかな脅迫を宣戦布告と取った先生が強制執行部隊、つまり元アリウスの連中でブラックオプスをおっぱじめ、車両爆破、店舗爆発と”事故”が群発した。

 酷いのは事故が起こると即座にシャーレが現れ、そのまま48時間の限度ぎりぎりの尋問を開始するのだ。

 後は別件逮捕である、これで黒亀組は会計係や顔役を多数失い、滅茶苦茶になり、影響力が萎んでいった。

 だがリスクとリターンは比例する、犯罪戦争は終わる事が無い。

 こういう風に……。

 

「流石に12㎜以上は手に負えないな! はーっはっはぁー!」

 

 閉所で大口径機関銃は手に負えない、撃ちまくるのではなく、区切り区切りで撃っている。

 ランチャーも無い以上難しいし、煙幕も使いようがない。

 

「どうしたもんすかねえ」

 

 すると、カスミ部長とアツコが同じように車窓の方を見る。

 救援車を直結した電気機関車が全速で並走している。

 保安部隊やマーセナリーも驚愕と言いたげな顔をして、慌てて窓へ銃口を向けようとした。

 瞬間、激突が巻き起こり車内が浮き上がる。

 速度を上げ過ぎたせいで発生した無重力状態だ。

 

「わっ!」

「おー? おおお!」

「浮いちゃった」

 

 全員が驚愕と困惑の声を挙げる。

 一瞬、カスミ部長が「白なんだ」と声を挙げていた、覚えてろよこのガキ……。

 窓をぶち破ってゲヘナ風紀委員会が突入して来た。

 

『ゲヘナ風紀委員会だ! 暴力行為その他の不良生徒を全員拘束する!』

 

 風紀委員の銀鏡イオリっすね、合同警備本部の打ち合わせで何度もあったっす、向こうも「正実の仲正イチカが何でいるんだ!?」と叫んでいるっす。

 いやあなんでこうなった。

 

「先生何でここに、どうしてまたカスミなんかと」

「なんかと、とは酷いじゃないかイオリちゃあ~ん」

「やかましい!」

 

 瞬間、爆轟。

 とんできたⅯ136のHE弾が風紀委員たちを吹き飛ばす。

 慌てて遮蔽に入る。

 

「え、マジでどうなってんの!?」

 

 マーセナリー達が射撃をはじめ、暴徒たちがPPSHやMP40にナガン小銃だGew88だのを持って突撃していく。

 レミングスで大混乱になってる先頭三両を見ながら、イオリが尋ねる。

 

「なんっすか?」

「いままで、こいつ等先生の安全ピン何個外してる?」

「確実に、2,3個は飛ばしてるっすね」

「後、1~2回で噴火だな……。これでも昔よりは安定してるんだよ」

 

 天を仰ぐようにつぶやいている、見解は正しいと思う。

 

「乗務員が最初に火を付けたっすね! 後そこの指名手配犯」

 

 イオリさんも余裕が無くなってきたっす、自分も限界っす! 先生はため息つき始めたし。終わらせ方を考えてるっすね! 

 

「もうだめ、アコちゃんのバカァ! 何が楽な任務だよ、情報部は何時もこれだ!」

「うるせぇ! 巡航ミサイル降って来た時よりマシだろうが! 前線将校がピーチク泣くな、部下が浮足立つと前教えただろ!」

「先生は追い詰められてる方が強くなるんだね」

 

 ドーンと再び爆発音、今度は暴徒がマーセナリー達を吹っ飛ばしてる。

 流石に装備と人員の質が高くても押し切られるのは当然である。

 しれっと暴徒の輪の中に居たカスミが、戦闘が小康状態なうちに前進していた。

 

「なあなあイオリちゅわーん、さっき言ったよなあ? 不良生徒全員連れて行くって。この状況のほぼ全員だぞォ? しかも先生は君の味方かなあ?」

「何言ってんだカスミ、この大人滅茶苦茶だけど犯罪は作らないぞ、それに後で委員長に報告するだろうから……」

「おや? では先生の今の目的は……荷物を今日中にトリニティへ持っていくことだぞお?」

 

 イオリの眼が泳ぎ出した、なんかチョロいなアイツ……。

 するとあのクソガキの手に、はっきりとカバンがあった。

 

「あ」

「さあさあ、きみの願いはかなうぞお~、なーにちょっとお目こぼししてくれればだな、それでいいんだ。な? 正義実現委員会の……ニカちゃん?」

 

 はあと深いため息が溢れる。

 あのガキの長いぺら回しはまだ続いている。

 先生は「どうすんだこれ、一人で動かすのはまだ慣れねぇな」とタブレット端末弄ってるし。

 ……あーもうしょうがない。

 

「ごふ!」

「ぎゃうん!」

 

 戦闘員としては一番脅威なイオリを排除、続けざまに無警戒なカスミを銃身で突いてからストックでぶん殴る。

 簡単、ずいぶん簡単じゃないか。

 そうだ、最初からそうするべきだったんじゃないか。

 

「じゃ、みんなで地獄に行くっすよ」

 

 セレクターがフルオートへ廻る音がした。

 唸りを上げる自動小銃の心地よさ、気持ちよさが身体に染み渡る。

 ちょいと〆てやるだけで良い声で鳴いてくれるんだから全く。

 

「たった! 一つの! トラブルで! 見事に! 全部! しくじり! やがって!」

 

 念入りにあのチビガキ伸して、いやあスッキリ。

 

「あーあ、大概伸しちゃった……」

「粗削りだねえ」

 

 先生たちがやや困惑した顔をしている。

 失望と言うよりは予定をどうしようと言う顔つきだ。二人とも鞄は回収して退避してるし。

 

「……もうヘリ部隊呼んじまったよ、そこ危ないぞ?」

「楽しそうだったから声かけづらくて」

 

 へ? 

 窓の外を見ると、ヘルファイア誘導弾がこちらへ飛んできていた。

 わあ、こっちに来るミサイルって、電信柱みたいなんすねえ……。

 

 

 

 流石AH-64Eだ。無理して改修した甲斐があった。あんまりにもカスミをシバキ上げてるイチカが楽しそうで退避勧告遅れちまった。

 煽りまくってたカスミが悪いな! 舐めたなら殺してみせよホトトギスだったか? 

 空中騎兵は良い事だが、血の気が多い。ヘルファイアで開けた移動目標の穴にハイドラを数本撃ちこむ。

 良い感覚だ、俺が居るより奥の車両はオープンカーになったが、最後にチェーンガンで先頭車に圧をかけ、ヘリボーンでフィニッシュだ。

 

 イチカもイオリもカスミも車外に落ちなくて良かった。全員見事なアフロヘヤーだが、無事の証だろう。

 しかし、この二人前線指揮官にしては極限環境に弱いのは良くない。イオリは特にヒナの後釜の前線部隊指揮官だろうに。今度要相談だ。

 イチカもあそこ迄ボコボコにするんだからそのまま盾にするぐらいやればいいのにな。

 

 事件現場の指揮を取って、イチカが起きたら荷物持たせてナギちゃんの所に送るかぁ……

 後、俺から赤券取った奴は草の根分けてでも探し出して後悔させてやるから、今は喜んでろよぉ! 

 

 

 

 

 数時間後、トリニティ。

 

「それで列車をドカンパー、ですか」

 

 ナギサが苦笑した。

 無論笑い事ではない、笑うしかないだけである。

 当然である。

 

「んんん、どうしてそうなるかはともかく……まあ遺物に関しては修復すれば大丈夫です」

「へ……?」

 

 イチカが驚く。

 

「いえその、今回我々とアリウスの間で遺物の正当な交換式をするという事が重要で、破損無くは追加目標と言うべき……というか恐らく誰も、無傷な訳が無いと考えていたのです」

「密封されて、誰も明けれなかったから非破壊検査にかけて漸く中身を確認したからね」

「えー……」

 

 知ってたら言って下さいっす……。

「てっきり聞いてると」と謝るアツコに、報連相の問題かあと天を仰ぐ。

 相変わらず家は横の連絡がなってない……。

 

 

 

 

 

 

 翌日、トリニティ広場に礼服を着込んだシャーレとアリウスとトリニティの部隊が集う。

 シャーレの部隊旗には参加した大規模戦闘の数々が刻まれている。

 観閲が始まった。

 予定通りの交換式が行われ、そして、聖園ミカのシャーレ赴任が公表され、そして裏ではカスミがシャーレに拘束された。

 脱獄未遂は一度起こしたが、再びぶち込まれた。

 カスミが再び娑婆に出られるのは、色彩が到来するのを待たねばならない……。

 

 

 

*1
覇道進撃17巻122Pの服

*2
「先生高倉健説」

*3
あんたどっちの味方だよ

*4
論理感18世紀末がよ

*5
「原作版ナウシカ」





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