キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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227号温泉狂騒曲

 

エデン条約の戦いからしばし後……。

レッドウインター連邦学園、227号。

基本としてレッドウインターの基準で言う夏が来た、他の人たちには分からないが、レッドウィンター基準では夏と言う季節だ。

これ幸いと227号の二人、ノドカとシグレは冬に備えて薪を乾燥させる準備を整え、木を切っていた。

つい数日前にアリウス系生徒が生き倒れていたのを助けた謝礼に、URALの輸送トラックを貰ったのが役に立っている。

なにせ二人じゃ運べる量は大して役に立たない程度だ、それ相応に逞しい二人だがこればかしは機械のが優れている。

Beach Blanket Bingoを流してのんびり帰る事が出来るのは何より素晴らしい、可処分時間の増加こそ文明だ。

 

「あれ?」

 

ノドカが声をあげて、車をゆっくり止めた。

シグレは無言で銃を取り出す、以前助けたアリウス生が「クマ対策ならこれあげるよ」とMP-133 12ゲージ散弾銃とスラグ弾を2箱分くれた。

なにせノドカは前までちょいと育ちが良かったので今日日火力不足のPP-2000なんて使っているし、シグレはそう言いながらも40㎜擲弾銃だ。

 

「塞いでるねぇ」

 

倒れかけた木が道を──二車線あるか怪しいのを呼ぶのなら──塞いでいた。

まず人為的なものに警戒したが、周りがあまりに自然豊かの証拠たる自然の騒音に満ちていた。

小説や映画や漫画で「静かに過ぎる」とはそう言う点ではリアルなのだ。

無論優秀なスナイパー、例えばラビット小隊のミユや、良く擬装したマシロなどはそうした中に溶け込めるスナイパーであるし、アリウススクワッドが待ち伏せしてるのなら話は変わるが……生憎この二人はそんな連中との関わりなんぞほぼない。

 

「ロープで引き抜くべ」

「んだんだ」

 

適当な周囲警戒後、あほらしと二人がロープを取り出す。

ウラルに合わせてひっぱりゃなんでも抜けるだろう、へべれけの我が親友は車両を壊す奴じゃあないし。

ノドカは手早く準備を終えた。

 

「1-、2-、ウラーっ!」

 

力を入れて、足を踏みしめて一気に引き抜いた。

すると、ぼん!と栓を抜いたように木が舞い上がる。

 

「うそぉ」

「ちょいちょいちょおおい!」

 

2人が慌てて退避する。

どすん!とコミカルに道のわきへ突き刺さり、ノドカは虹が見えるのに困惑した。

 

「なんだろあれぇ」

「湧いてんねぇ」

「湧いても困るよ!」

 

役に立つんだか適当なんだか怪しい我が親友に困惑しつつも、ノドカは辺りを見回す。

何かが違った。

 

「ぬるくない?」

「漏らした?」

「そうじゃない!」

 

ノドカが顔を赤くして声をあげる。

 

「この水の話!」

「……温泉?」

 

そう言って、ノドカは「そういやそんな名前だったな」と思い出した。

単純にお湯の存在自体が縁遠く忘れていたのだ。

どうしたものか見つめ合っていた二人はやがて、出ちまったモンはしょうがねえ、入ってしまえ!と結論を下した。

なにせ、レッドウィンターにおいては悩む前にやってみようが尊ばれるのだ、考えなしともいう。

忽ちの速さに脱衣、入湯を始め、案外外気温の影響か程よい温度で、冷えた身体が温まる。

 

「あれれ、誰かいる?」

 

見知らぬ声に、二人は静かに銃を構えた。

辺境で物盗り企むような奴は大概死に物狂いである、舐めてはならない。

しかし、現れたのは明らかに野盗の類じゃなかった。

 

「あ、やっぱ誰か居た」

「誰です?事務局……じゃないですよね」

 

やってきた赤い髪の少女に、ノドカは尋ねた。

全身から強者の風格と、愛くるしさが出ていた、少なくとも邪悪とは程遠そうではある。

やがてもう一人、小さい背格好の生徒が出て来て、軽く源泉の湯を指で舐めると「よし作ろう」と宣言した。

 

「……あのー、誰ですかね?」

「あれっ、言わなかったっけ?」

「はい」

 

ノドカは頷き、その赤い髪の少女が名刺を渡した。

 

「……ゲヘナ、温泉開発部、メグさん?」

「その通り!あそこで建設指示してるのがカスミ部長!」

 

無論辺境たる227号は温泉開発部の話を知らない。

ノドカには政治屋事件欄の記事はまるで遠い世界だからだ。

 

「あの、学園間越境はどうかと……」

「カスミ部長の開発書類があるからこれでも読んでて!」

「え、えぇ」

 

ノドカが思わず面を喰らう。

開かれたパンフレットにはSDサイズのカスミやメグ達が書かれている。

でかでかと「ワクワクめちゃすご温泉大作戦<夏の嵐作戦>」とか書かれており、気合の入り様が感じられる。

そんなこんな話しているうちに、カスミとメグが走ってきた。

 

「な、なんです」

「危ないからねー、いったん離れてねー」

「はーっはっはー!いくぞー!ひゅー、どどーん!」

 

カスミがぽちっとボタンを押すと、Mi-6輸送ヘリコプターからぽろりと何かが落ちた。

落下傘を開いて何かが落ちて来たかと思えば、数分後、盛大に爆発する。

レッドウィンターの手入れがされていない山林は一発で木っ端みじんだ!

 

「な、なーにあれ」

「温泉開発部特製、BLU-82カスミスペシャルだ!」

「よーするに部長手製火器」

 

メグがにししと笑い、カスミは火力に満足気な笑みを見せた。

アリウス武器庫に転がっていたBLU-82 デイジーカッターの資料を基にカスミが手製で作った兵器である。

流石にデイジーカッターそのまま作るとヒナ委員長が怒るので火力は手加減している。

代わりに目的達成能力は芸術的だ、局所的にはODAB-9000すらびっくり仰天である。

終始唖然とする二人に、カスミは忘れてたと紙を取り出す。

 

「あ、そうだ。終わったら施設利用権や使用や営業権その他もろもろ引き渡すからサインくれ」

 

こんなのがいるゲヘナを纏めているのだから、ヒナやマコトなる生徒は肝の据わってる人なのだろうな、と二人は呆れかえった。

 

 

 

 

シャーレ本庁舎の生活雑務は基本、自己完結型だ。

階級上下関係なくである、やや例外は派遣参謀組くらいだ。

定期的に荷物取りにいくなどで交換されているし、それはそういうものである。

無論最高階級、つまり先生も例外ではない、湯船に手を入れ、歯ブラシ片手に掃除をしている。

 

「あとは、洗剤を入れるだけか、便利なもんだねぇ」

 

自分用のユニットバスの掃除を終えて、背中を伸ばす。

髭剃りだの、食事など暗殺を恐れ疑心暗鬼になるなら、自分でした方が早く済むし面倒がない。

そもそも自分の部屋の掃除でもあるからあまり人に任せたくなかった。

なにせ最初は人が足りないからこうなったのだ、庶務担当者なんか増やしようがない。

湯船に洗剤を入れて、ある程度自動にしておけば排水後の後の濯ぎも終わって居るはずだ。

朝飯になんかあったか、少し脳裏を探る。確か冷凍食品でもあったはずだ、共用冷蔵庫などにある乾麺は夜勤者が食べるから期待してない。

 

「先生、相談のメールですよ」

「朝食後の朝風呂はお預けか、誰からだ」

「工務部のミノリさんです」

 

なんだなんだ、向こうからクレームの来ることはしてないと思うが。

 

 

来客室でも良かったのだが。コンビニ前のベンチに座っている。

何故かいつもより”もこもこ”して見える

 

「緊急で何かあったのか?」

「その通りだ!227号の連中が」

 

何時もの連邦法違反コンビだ、今度は何をやらかした?

しかしなにも浮かばない、遂に密猟か、何か栽培し始めたか。

 

「我々にも内密で日帰り入浴施設を建てたんだ」

 

思わず目を剥く。

 

「まてまてまて、連中に作れそうなのは掘っ立て小屋とドラム缶風呂ぐらいじゃないか?」

 

日曜大工レベルを超えてるなら、マンパワーは何処から来た?

 

「温泉開発部だ」

「あらまぁ越境したか、メグの方は逮捕してなかったな。は?カスミも居た?この前引き渡したらこれか!」

「我々工務部はレッドウィンターでの大規模土木工事などは一手に引き受けてきた」

「そこまで聞くと大手ゼネコンだな」

「一緒にしてもらっては困るが、コンペも事後承諾も一切なかったのだ!工務部員がこの前大型建築物を確認するまで我々も知らなかったのだ」

 

頭によぎる違法建築の4文字、嫌な予感もする。

 

「独占などと言われかねないが、その代わり費用も一律で最優先でやって居るんだ」

「事務局との契約で向こうの連中との契約では無いのでは?」

「他所が急に立てましたと言われても何かあれば私達の仕事のミスと受け取られかねないのだ」

 

むがーっ!とミノリが両手をわちゃわちゃ振り回している。

たまにミノリはこうして子供らしくなる、

 

「危険団体が他自治区の要注意団体にに大型建築物を建設。これで行けるか?」

「言って間違えれば外交問題……いや確かにうちの議長はあそこと関係を深めていますが」

 

イロハが頭を抱えた。裏取りと越境作戦、人員は自ずと決まる。

 

「ユウカとイロハでいいか。」

「出来れば、出来得る限り内内で……」

 

事前確認代わりに、ユウカへ尋ねる。

 

「どうせレッドウィンターだから爆破解体なら、家がこの前運用可能になった203mm長カノンを叩き込む……は無し?」

「辺境だから試射に丁度いいと思ってるでしょうけどマズいですよ」

「話し合いをしないならこれが一番だ、ガサ入れして証拠確保の後が望ましいが」

「めんどくさいとは思いますが、それは楽をし過ぎでは?」

 

流石に駄目らしい。

ちぇ。

 

 

 

 

チェリノの生活はそこそこ自堕落である、為政者としての線は当然踏み越えていない。

いや無論、当然全ての進歩的学生たちの象徴、レッドウインターの偉大な指導者、全ての勝利の組織者、百戦百勝の名将、その他以下中略たるチェリノに不平不満を有する帝国主義的傀儡逆賊反動主義者など居ない、たぶん。

何らの大衆からの権力移譲も、監視も掣肘も抑制も監査もされず、滅茶苦茶な大権を渡された大人より投票率300%のチェリノの方が筋道は通っているのだから当然である。*1

そのチェリノの部屋の調度品は、意外なほどシンプルである。

窓際のチェリノの自慢のレモン畑、大きなヒゲ肖像画、細やかな花瓶が数点程度だ。

こうした理由は多いと散らかって見えるとしてチェリノがあまり喜ばない。それにチェリノ自身は物を並べるより人を並べる方が好きでたまらないのである。

 

「チェリノ書記長」

「ふえ?」

 

そんな執務室隣の仮眠室で、チェリノは目を覚ました。

昨晩どっかのバカが飛行禁止空域と時間を破ったせいで寝れなかった、トモエが起こしたことに「あれが起こしに来たという事は何かあったかな」とチェリノは思いながら尋ねた。

 

「なにかあったのか」

「はい、先生が。」

「先生がどうした、遂に連邦生徒会に砲弾でも撃ち込んだのか」

「いえそれはまだです。先生がお越しになられております」

 

チェリノはやや呆気にとられた、特にそんな用件は無い筈だ。

いやもしかしたらあった気がする、無かった気もする。

ただトモエが分からないという顔をしてるから、直近では用件がない筈だ。

 

「それが227号絡みらしく」

「またか!?」

「しかも他校の問題も絡んでおり」

「おいおいおいおい、おいらの知らないところで何が起きているのだ。」

 

全く以て正当性ある発言である。

その後、取り敢えず通せと先生たちを招いた。

 

「温泉?そんな馬鹿な、レッドウインターに雪と氷はあれど温泉は無いぞ、地質調査で出た事が無いんだから当たり前じゃないか」

「そういう常識が通じない連中なんですよ、しかもなまじ優秀なタイプで」

「ええ……」

 

チェリノは思わず困惑した、今度ゲヘナの行政と風紀に見舞いとねぎらいでチェリョンカでも送るかと思いつつ、イロハの話を聞く。

 

「というかおいらが許可してないから違法じゃないかそれ」

「違法ですね。」

「それにこれ、資料見たらこれ回線まで敷かれてないか?なんか心なしかおいらの部屋より豪華じゃないか?」

「多分そうですね」

 

チェリノは頭を抱えた、アホどもが余計な事をまた増やす。

呆れた奴だと思いながらトモエにヘリを用意させ、取り敢えず向かうかと告げた。

 

 

 

Mi-8MTVヘリコプター4機から構成される”取り締まり部隊”は、予定通り227号へ到着した。

眼下に見える温泉郷……というより複合施設じみてる気がする施設が見える。

思わず困惑してしまった。

 

「なんか想像よりデカくないか?」

「資料古かったみたいですね」

 

イロハが呆れたように呟く。

すると、温泉郷から青いBDUを着込んだ生徒が出て来た。

 

アリウス・マーセナリー(精鋭傭兵)?!」

 

ユウカがのんきに飲んでいた麦茶を噴き出した。

奴ら個人契約でも結構高い金を要求してくるはずだろ!どうなってんだ!

無論そんな事考えてる暇がない、マーセナリーが何か筒を向けてる。

 

「MANPADS!」

 

飛んできたSMAWが直撃、3番機が操縦席のある前部を粉砕されて墜落する。

コパイに「構わん、撃っちまえ」と指示し、23㎜ガンポッドが唸りを挙げた。

4基のガンポッドが吠え立て、機関砲弾の豪雨が地上を総なめにする。

 

「よし、上空制圧しながら降下」

「相変わらず火事場鉄火場になると元気なんだからこの大人……」

 

ユウカが何か言いながら続いて降下する。

マーセナリーは壊乱するわけもなく、粛々と後退して施設内へ入った。

 

「何です一体」

「あ、ノドカのアホだ」

 

チェリノが奥に見えた生徒に気付いた。

マーセナリーがノドカに何か説明している、ノドカは驚愕した顔でこちらにやってきた。

 

「先生!何ですか一体!いきなりヘリボーンするなんて酷いじゃないですか!地方自治権侵害ですよ!」

「要注意団体の違法活動取り締まりの広範な権限が我にはあるんだよバカヤロー」

「えーっ!失礼な!何も違法な事はしてません!」

「出迎えロケットランチャーは違法じゃないかね」

 

ノドカがちらっと横を見た、マーセナリーの指揮官は顔を逸らして口笛吹いている。

 

「おバカ!」

「いやぁ、クライアントから怪しい勢力は撃っていいと許可が出てたんで……」

 

なんとも非常にあほらしい会話だ。ノドカめ、ちゃんとROEを渡さないから。

 

「と、ともかく!私たちは何も違法活動なんかしてません!思う存分見て行って下さい!」

「建築物そのもんが違法だって話なんだけどな」

「しっかり基準満たしてますよぉ!」

 

すると、どこからともなくシグレが出て来た。

 

「まま、チェリノ書記長。このヒゲお饅頭どう?」

「お前賄賂渡すにしてもこう、雰囲気とか無いのか」

 

チェリノが呆れた顔をするが、シグレはニコニコとしている。

 

「ゲヘナ美食研、さらにトリニティのスイーツ専門家の協力を得た最高のお饅頭だよ。認めてくれたら上納するんだけどなぁ」

「お前なあ、収賄するにしても見えないとこでやれよ……」

 

呆れて何も言えない。

そうだった。ここはレッドウインターなのだ。汝一切の望みを棄てよ。

シグレはにひひと笑いながら、語りかけて来た。

 

「まあなに、違法な事はしてないのは本当に事実なんだしさ、ここはちょーっと、後回しにならないかな」

「お前悪い奴だな、現地勢力と熨斗を先に付けるのは良い手だけど」

「先生ほどじゃないよ」

 

抜かしおる。

さてどうしたものか、そうするとイロハとユウカが幾つか話し合い、うんと頷いていた。

 

「取り敢えず内部とか見ていきませんか」

「そうですね」

 

はしごを外された様な気分がする。

 

「そういえば先生は風の噂で聞くところによると風呂好きでしたよね!」

 

ノドカがワクワクとした顔で、詰め寄ってきた。

好きだが時と場所とあれこれを選びたい。

 

「好きだがお前の視線を感じて嫌なんだよ此処」

「そんな、機械越しじゃないと駄目だと?!」

「覗くなって話じゃあぁ―い!」

 

ノドカをぶん投げて雪山へホールインワンさせた、横じゃマリナとトモエが「普通逆だよな」と話している。

なんでワカモより度を超えてんだよ!

流石に風呂に入るのならここ以外の方がマシだ、アロナに軽くスキャンさせたが、ノドカのものと思わしきカメラとマイクの気配がある。

それとなくアロナに処分させ、資材の立て方を見る。

温泉開発部は建築においてはかなり優秀だ、雪国では地盤が大事と基礎を丁寧にしている。

だが輸送はどうしたのだ?それを考えると疑問が生まれる。

 

答えは案外、単純だった。

 

資材デポ、恐らく増築や修復用の置き場にあった資材には空中輸送用の器具が着いたままだった。

 

「アロナ、トランスポンダを」

『温泉いかないんですか?』

「誰がませたガキに裸見せるって言ったバカ、一人で入る方が好きなんだよ」

 

アロナがぶーたれているが、気にせず航空情報を確認する。

やっぱりだ、記録には無い飛行情報が出ている。

 

『あー、出ました。カイザーのアビドス作業中一機盗まれた奴です』

「盗まれたのあいつら……」

『なんでも砂嵐のなか輸送トレーラーごとパクられたとか』

 

あそこもあそこで苦労してんな、誰のせいだ誰の。

しかし機体が分かれば降りれそうな場所は察しが付く。

案外すぐ見つかるだろうと思っていたら、山からデカい爆発音が聞こえた。

何だ一体と温泉郷からチェリノたちが出て来たので、多分温泉開発部と言うと、イロハが慌てて「早く止めねば」とヘリへ乗り込んでいく。

 

 

 

メグは基本的に人を疑わない、カスミと同じく温泉開発に関して嘘はつかない。

そんなメグが告げたのは「つまりここの山をどかんとやって、レッドウインター全体を温泉とする」という壮大なテロ計画。

 

「アウト!」

「だめ?」

「だめ!」

 

イロハがぴこぴこハンマーでメグを叩き、メグもしょんぼりした顔をしてイロハへ引きずられていく。

 

「全くただでさえ外交関係が複雑化してるのに……」

「苦労してるんだね」

「貴女のせいですよ」

 

もちもちとしやがってなんだその頬は!とイロハがぴこぴこハンマーでメグの頬を殴打している。

案外パンデモニウムのいう事は聞くんだなと思いつつ、少し考えてみて「割とヒナの言う事も聞いては居たな」と思い出した。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

確保した温泉開発部の部員一同を何故か居たチナツへ引き渡し、マーセナリーにポケットマネーで囚人護送依頼を頼む。

ダブルでブッキングしているが先方が了承してるからOKしてくれた。

 

「なんだあノドカ」

「メグさんたちの話じゃ、温泉は枯れるって」

「そうだな、諸行無常じゃねえの」

 

ノドカは足へ抱きついて鼻水を垂れ流しながら泣き始めた!

 

「やだあああ!」

「やだじゃない!泣きつくな!お前のより高いんだぞ!」

「じゃあ営業継続許可下さい!」

「違法営業は事実そうだろ!諦めろ!」

 

駄々っ子と化したノドカを何とかしろとシグレに視線を向けるが、シグレは困った顔をしたままだ。

さすがに親友が幼児退行じみたことしたら思考が止まるらしい。

 

「あー、うん、先生。ほら、取り敢えず……営業許可を事後でも申請すればいいわけだよね?チェリノ書記長も事後裁可だけどしてくれたわけで」

「ぞうでずよおお!DUのでがいだでもののれんじゅうになにがわがるっでいうんでずがあああ!」

「だから鼻水つけんなって言ってるだろうがお前!」

 

膠着状態を打ち破ったのは、空からやってきたMV-22 オスプレイの登場だった。

 

「オスプレイだ」

「うちじゃねえな」

 

シグレと先生が見上げ、着陸すると見慣れた白い制服、青い髪の姿が出てくる。

連邦生徒会財務室長のアオイだ、後ろにはヴァルキューレの警官隊が続いている。

 

「はーい、各自動かないでね。」

「財務室長?なんでまた」

「貴方のとこの会計からよ」

 

ユウカを見る、いつもの電卓に数字がびっちりと並んでいた。

 

「資産価値と売り上げ記録、それに連日の客の数を概算で出しました。

 ノドカさん、貴女おそらくこれ、納税してませんよね?」

 

ノドカの顔が固まる。

実際そうなのである、そして古今東西問わず徴税吏とは無慈悲の極みなのである。

 

「ガサ入れるわよ」

「あ、あのー、お慈悲とかは……」

「計算の書き方とかはたっぷり教えていくから安心してもらって構わないわ」

 

そうか、うん、よくよく考えたら脱税だよな、チェリノも知らねえんだもん。

哀れな奴、そう思いながらパクられていくノドカとシグレを見送る。

 

「物件差し押さえ、資産価値調査開始!」

 

アオイらが突入していくのを横目に、我々も帰り支度を始めた。

なんというか、苦労したような、得るものが無いような。何とも言えないオチだ。

 

「やっぱ自分の風呂が一番だ」

 

風呂で喧嘩するのが馬鹿らしいんだ、うん。

少なくとも俺はそれでいいや。

*1
独裁権力そのものである




感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。

今年のナポ先の誕生日のお話について(傾向が気になるので)

  • 王道に水着イベ
  • 並行世界orIF編
  • 5章2部まだ?
  • 記念日なら2話連投して♡
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