キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
新章 ナポレオン ウサギ 政治の季節この組み合わせがもたらすものとは!
良く訓練された猟犬
5月某日。
エデン後の再編と再整備が始まった。
まずエデン条約機構、すなわちETOが正式に稼働し連絡官としてミカとイロハのシャーレへの着任が決定した。
で、さらに我々は拡大が決まった。SRT完全廃校の決定だ。
事実上我々が合併したことになる。ヴァルキューレも一部特殊部隊を編成しSRT生徒を引き抜いたが、うちへの対抗だろう。警備局はウチが嫌いだし。
「お帰りなさい、また呼び出しでしたっけ?」
「年度予算の業務が終わったとたん、家が全部ひっくり返してるからなぁ。ノア口頭筆記の続きだが」
上着をラックに掛けながら、手帳を持ったノアが駆け寄ってくると扉が開く
「やっほー!一日早いけど先生来たよー!どうしたの?引っ越し見たいな段ボール置いて」
「組織の大幅改定入ったり、人員の大規模受け入れ始めたから大騒ぎ中だよ。駐屯地も増えて大忙しだ。白河の奴がアビドスとアリウス行き来してるよ」
「2日に一度は先生呼び出されてますので、嫌がらせ、牽制、書類確認が混ざった奴ですし、向こうもパニックなのでは?」
「明日イロハが来るから、着任式はその時な。サオリ!そこの箱は向こうに頼む」
「何をやらされるかと思ったら、最初はこういう事になるとはな」
「いや、助かるぞ。ユウカが早々にバテてなぁ……今は書類仕上げてもらっている」
ユウカがどうもと軽く会釈して、作業に戻る。
ノアとユウカはあいつら体力があんまりある方じゃない、というかノアは更に運動音痴じゃないかどうなってる。
「えっと、口頭筆記何処から続ければ?」
「ああ、それではな」
書類を入れた段ボールを抱えながら、口頭筆記を行っている。
ノアも完全記憶と言っても体力は記憶じゃない、経験と適切な時間をかけた鍛錬だ。
機密事項が多い書類が多いのでマンパワーを増やせばいいと言う物では無い。
そして機能マヒなど出せば、付け入られること確定だ!俺は良いが周りがバテそうだな……
また電話が鳴る「代わりに出てくれて良いぞ、辞令はもう出てるからな」と言っている。
「はい、こちら連邦捜査部」
『防衛室から確認事項で……あれ?どちら様で?』
「本日着任した聖園ミカですが」
数秒ほど空電雑音が流れ、話が再開される。
「先生、防衛室から電話変われって」
「イタ電感覚で小出しに問い掛けしやがる!」
どうやら防衛室は連邦捜査部の縮小を論題に上げたいらしいが、上手く行って無いらしい。
受話器を握って「しかしですねェ、おたくはエデンの時に何をしてくれましたかなァ」と言って電話を切ってしまった。
生活安全局の街頭警官には弱いが、防衛室長や役員にはまるで蚊ほども気に掛けない。不思議な大人だとミカは思った。
理由は簡単だ。キリノやフブキなどの平警官は別の視点と情報を有している。駐禁切符を切りながら歩いている真面目な警官には敬意を払う。
「AH-64も砲もこれ以上の削減はさせねぇからな、逆に定数割れ満たさないならアリウスの兵器庫接収すっぞ全く……」
「チーフテンとか全部引き取ってくれても良いんだよ?今なら巡航ミサイルとハボックセットだよ!安いよ!」
シャーレ広報誌を丸めてアツコが「さあ買った買った!」と八百屋じみた事をしている。
そのあと遅めの昼食を取って居た先生はヴァルキューレに召集されていった。
「一日早めとはそちらも同じようで、ところで先生は?」
「ヴァルキューレに呼び出されたよ、……そう言えばゲヘナだと
「また、厄介な事聞いてきますねぇ貴女……」
そうした大騒ぎも1週間後には随分収まり、落ち着いてきた。
などという訳もなく、今度は金を握らせたか、世論工作へ切り替えた反シャーレ派が議会での戦闘を仕掛け出した。
テレビの向こうの先生に全員の目が向いてる、あの時の公聴会よりも凄いことになってる。
サンクトゥムタワーの議場ではやはり大騒ぎだ。
『貴方が身元引受人となるからアリウス生は問題無いと?ただの兵力拡張の言い訳でしょう。規定逃れの動員予備兵ではないのか!』
『元々連邦にすら加盟していない勢力である以上保護を要請された場合人道支援をするのは当然でしょう、学籍も何も与えないのですか!あなたはそれでも連邦の役員か!恥を知れ!』
トリニティの時もそうだが、この大人慇懃無礼に相手を怒らせるよなあとミカがクッキーを齧る。
自分の時みたいに取り繕うことも出来るのに……、そう考えながら隣のヒヨリへ一枚分けた。
『傭兵業を始めてシャーレの管理外に出てる生徒もかなり確認されています』
『日雇い傭兵アルバイトが違法とは聞いたことがありませんでしたなァ、DUをお歩きにならないので?』
『しかし捜査部が身元を引き受けているのに反秩序活動に加担した例もある!』
『キヴォトスで反秩序活動に手を染めた事が無い清廉潔白な学園がお有りですか?!歴史を御存知ではありませんから詳しく聞きたいですな』
『ぐ……、一人で100人以上の身元保証人とは新参の1外局の長としての増長、越権に他ならない!』
『連邦会長命令により小官はその大権を下賜されています、連邦生徒会会長の朝臣たる大人として必要な権力を行使しているにすぎません』
『だが捜査部には司法権や警察権はないはずだ!』
『あんたらの無策が生んだ混乱なんだよ!エデン条約だってあんたらが押し付けたんだ!宿題やってもらって文句たれるとか良い性格してるね』
何人かの連邦役員から笑い声が響く、交通室の役員が何人か肩を震わせていた。
議会は330人中反対198棄権28で事実上反対多数により、今回の弾劾動議は否決された。
事実上これで議会での戦いは終了したことになる。決議はそうそう出せないし、今回の決議では事実上シャーレ派が過半を占めつつある。
カイザーのアビドス駐屯地、ヘリパッドに降り立ったジェネラルはコートの砂を軽く払い落とす。
現地では新設したキルハウスで、サンクトゥムタワー制圧訓練が繰り返されている。
シャーレ本庁舎の資料もあるにはあるが、改装された情報が少なくまるで内容不明だ。
副官の中佐が敬礼し、連絡用の書類束を運ぶ。
暗号名バースデープランは現在進行中だが、それを知る人間はほとんどいない。
カイザー中央役員会の特殊作戦将校であるジェネラルもである。
ただ副官の中佐は、キルハウスの連中を見て何か察した様だった。
「あのキルハウスの連中は」
「そうだ、SOFチーム6だ。」
ジェネラルは耳の辺りを二回叩いた、副官は頷き、盗聴されてませんと知らせる。
高度機密である以上管理はしっかりしなくてはならない。
「キミは来てすぐだから知らんだろう、上の連中が決心したらしい」
副官が少したじろいだ。
アビドスでの大敗北が中央役員会に大騒動を及ぼしたのが数か月前、責任問題で大騒動になった。
そしてエデン条約、アリウス解放でカイザー中央役員会は腹を括り始めたらしいという事になる。
「いよいよ決戦ですか?」
「既に先週から方面隊司令部から作戦集団本部に改組された、中央役員会は今がチャンスだと言っているが、俺からすればアリウス絡みだろうと考えてる。先生の作戦指揮は我々の10年は先の進歩があるからなァ」
ジェネラルがなんとも困った顔をしながら続ける。
「既に中央役員会は特殊作戦航空連隊とカテゴリーA独立機械化旅団を承認した、今回のアビドス人事で無能な将校は交代させた、作戦部隊に必要なのは出来得るかぎり使える連中だ。」
副官はその言葉を聞いてなんてこったと天を仰いだ。
このままこまねいていてはアリウスの部隊まで引き込んだシャーレが敵になる、そうなったらもうどうしようもなくなる。
既に巡航ミサイルや野戦砲が危険物回収プロトコルでPKFに回収されている、使える様な事があっては非常に困る。
「その果てにあるのは血を吐きながら続けるマラソンではありませんか」
「聞かなかったことにしておくぞ中佐。我々はカイザーPMSCの
【カルバノグの兎】
あの条約締結から時は流れ、治安体制再編の下強行されたシャーレの増強。
迅速な展開と強大な打撃力、対する全てを絶大な衝撃と畏怖で粉砕してきた彼らは拡大を続けた。
会長失踪の混迷期が生んだ凶悪犯罪にたいして、時に正規戦争さながらの戦いを繰り広げるシャーレは度々世論の指弾を浴びた。
当面の敵である反政府・反シャーレ急先鋒のカイザーPMC、第三の武装勢力として警戒を強めるヴァルキューレ、そして解体を要求し始める連邦生徒会一部勢力。
峻嶮な正義の守護者としての賛辞が安定と警戒を求めて不安へと変わろうとしてる中、時代はまた移り変わる。
デスクの前で山積みの書類をこなしながら雑談する。
当該書類は連邦生徒会向けの説明や、報道向けの書類である。
「結果的に助かりましたが、まだAH-64の2機導入は許してませんからね? 導入がバレた後は修理と称して最新型にまで改造*1してくれて……トリニティから【譲ってもらった】L118は当然封印ですからね?」*2
えっと声を上げる。
「普段の演習場じゃ射程足んねえからホシノに頼み込んでアビドスに演習場作ってもらったんだぞ!?」
「はぁ!? 馬鹿じゃないんですか?」
「むしろ、俺達は何処に出撃するか分からんのだから、演習場は増やすべきだ!」
ユウカが「勘弁してくださいよ」と空を仰ぐ。
「こればかりは本能みたいなものでな……」
ユウカは大きくため息を吐いた後、最近新しいまともな趣味などが増えてようやく静まるかと思った先生の、野戦砲への異常なこだわり、エデン条約の際の砲兵諸元計算式の叩きだし方から見て外の世界で砲兵のエキスパートなのだとは理解できた。短期間でアレだけの諸元を算出したのは数学好きのユウカとしても尊敬できるレベルだ。だがそれとこれは話が違う!
人間的尊敬が出来ても組織人としてはダメだと思う。外での仕事、よく首にならなかったなと思う。
「まだ、何か隠してません? アリウスの皆さんの居住区としてのシャーレビルの改装費用は構いませんよ! あれはシャーレとしてやるべき事です、キヴォトス最高レベルの軽歩兵4名も入隊もまあいいでしょう。しかもシャーレ専属の部隊ですよ! これで足りないんですか?!」
駄目だ、ユウカがぐずっている。やっぱ戦車納入は無理かな。機動打撃部隊は欲しいのだが。
連邦生徒会に「これはー、特車だ!」と言い張ろうとか考えていたのに。
「戻ったぞ先生、ユウカ」
オフィスの扉が開かれ、サオリが帰ってきた。
アリウス生ではあるが、色々の理由を含んでシャーレ預かりでアリウス生、復員生活プログラムのモデルの一つとしてそのままシャーレ所属としてこのビルで生活している。
そのアリウススクワッドがいまアビドス砂漠演習から帰還してきた。
生活階層は機密である。
その隊長サオリがシャーレのM81都市迷彩の装備に身を包んでいる、最近は迷彩更新も考えている。
「おかえりサオリ」
「お疲れ様です、どうでした?」
「と言われても、小規模砂漠地域演習だ。直ぐに片付いた。この後エンジェル24でバイトがあるんだが」
「1時間は余裕はあるだろう、出動後は1時間の休憩時間を設けることは向こうも承知だ。そして明日は全員集合だ」
「だが、賞味期限が近いと言っても、食料やジュースまでタダで貰えるんだ、多少は……。ああ明日か、私達の正式編成の承認書類の完成は」
「肩を張るなって、そう言うとこだぞサオリ、まぁ俺も呼び出し食らってるからな。……コンビニ絡みで一番取ってんのヒヨリだろ?」
奴らを引き取ってから大分慣れてくれた。色々デリケートな連中だったが、骨を折った甲斐があったと言うものだ。
まぁ懐かれ過ぎて護衛を任せると偶に相手への威圧に成りすぎる点があるが。後、ユウカが俺に一緒に文句を言う仲間ができたと言わんばかりに、使って来る。
「先生、私達はそんなに頼りないか……?」なーんて言われると一気に負け戦だ、オフィスへの入室率はサオリが一番多いが他の連中も良く顔をだす。
アツコに今日も勉強を教えてやらねば。政治力学や統治などBDで教えれない内容が多くて困る。機械的に教えて革命が起きて生徒が火あぶりになってしまえば流石の俺でも夢見が悪い。
「他の面子はどうだ?」
「ミサキは訓練教官していたし、姫は食堂、ヒヨリは居眠りしていた」
「難儀だよな、勉強と練度維持、出動や業務。やることが多いからな」
「昔よりマシだ、生活環境も随分いい、すまないユウカ。もう少しデスクワークが出来れば」
「気にしなくて良いのよ、良く助けてもらってるし」
横目で俺を見るな俺を、サオリも最近また我儘を言っているのか? と言う目で見てくるようになった。
良い傾向だよ畜生! 聡い子だね。
感情の無い戦闘機械云々あるがこいつは感情が入った方が遥かに強い奴だった。エデン条約の時散々暴れてたのは見てたが、前の検挙でCQCでごろつきの群れを一瞬で叩きのめしたのは驚いた。
と言うか、この連中普通に強い、姫だの言われたアツコも病弱とか言ってたミサキも勿論ヒヨリもエリート選抜軽歩兵分隊なのは伊達ではなかった。こんな兵隊が居て、勝てないあの無能はなんだ?
自頭も良い。ものは試しで士官教育混ぜたら理解力もよろしい、その代わりに世渡り力は皆無だったが通常生活以外大体何でもこなせるぞ、こいつら。
一番良いのは面倒見が良い点だ、他の連中と上手くやれている。
四日前、エンジニア部へのお礼とシャバの見学も兼ねて同道させてミレニアムに行ったとき、C&Cと訓練した時は凄かったし、リーダーのサオリとネルの対決は凄まじかった。観客席お祭り状態だったぞ。
ユウカが「毎月やってくれないかな、滅茶苦茶儲かるのに」とシラフで言うくらいにはすごかった。
予定が空いていたら週1で演習やろうぜと言われて演習用の体育館が持たなかったので別の場所だろう。C&Cにこいつ等どうやって無力化したんだ? と聞かれたので重砲兵隊の集中射撃にエアバーストを添えてと言ったら、凄い顔をされた。
カリンが一番頷いていた。アイツとヒヨリの砲兵の対策は凄まじそうだ、ヒビキすまん、軽迫ではもう阻止できないかもな。
ゲーム開発部に別編成で一個分隊が増強された。顧問である俺の直轄なので司令部直轄部隊と言う扱いらしい、シミュレーション遊んで仕入れたな、知識を。非常時は臨時集成ゲーム開発部戦隊司令部直属分隊と言う編成図を貰った、アリスがワッペン4つ用意して支給していた。
アリスが一番物怖じしなかったが、面白い事にユズとヒヨリは滅茶苦茶面白い光景を作っていた。
まるでアリクイ同士の威嚇みたいであった。
そんなスクワッドを懐かせた方法? 後日時間のある時にでもな……
簡単に言うと生きる意味と場所、存在価値。俺が一番与えやすい物が彼女達が必要だったものだったわけだ。
だが、設立当初から随分ここも賑やかになった、感慨深い
イメージアップの為にシャーレ密着24時と言う番組に出たが、俺は大ボス扱いでユウカはシャーレ所属になっていたし、温泉開発部が飛びこんできたので逮捕までの流れがアクション映画だった。これでカスミも迂闊に家がすっ飛んでくる場所に温泉を掘ろうなどとは思わないだろう。
全員これじゃないと思ったが、視聴率は良かったらしく二回目の許可が来たので、一応内容を一度確認させてもらえるならと調整した。
長話だって? 家の最精鋭部隊だぞ、自慢したいんだよ。
ユウカも無自覚に肯定と褒めが多いので統一見解だ、ユウカもあいつ等への装備だと財布が緩いからな!
それに事件なんか起こらないんだから、こういう身内の話をしてもいいじゃないか!
「先生! この閉所戦闘想定工作車両ってなんですか!」
あ! M728の予算申請したのがバレた!
「サオリ任せた!」
「あっ」
何時もパーティだと俺も飽きるからな、今度元理事の面会にでも行くか!
その生徒は怒っていた、自分たちSRTを蔑ろにした政府へ、新たに権力を手にした大人へ。
無力で小さい政府はもはやあの組織を制御できていない、その結果はいまのこれだ。
もはや言葉ではなく実力をもって立たねばならない。
程よくシャーレやDUに近く、かつ拠点化して周辺市民を戦闘事態に巻き込まないで済む上に初動で通報されない場所。
資料を突き合わせて答えは出た。
子ウサギ公園。
「諸君! 用意できたな!」
昨日ユウカの怒りが冷めるのを待とうと離脱したら、アツコに見つかり無事捕獲、ユウカに説明。その後計画は否認となった。
こいつら撒けるようになる日はあるのだろうか、多分無理だと思う。
それぞれの返事を聞いた後。
車両に乗り込み連邦生徒会に向かう、ドライバーに「先生と分隊全員とは装甲車の方が良かったかもしれませんね」と縁起でも無い事言いやがった。
「まあ平気でしょ、あれでまだ生きてたし」
ミサキそう言うのはフラグだ、モモイが言ってた。
奴らは意外とこの世の真理を当てるんだ。
「しかし、シラトリも平和に成りましたよね、シャーレ付近5kmは銃声が殆ど無くなるんですから」
「代わりに、工務部がデモに来るがな」
奴らとは口喧嘩友達でもあるがな、最初に来た時討論会になったし、次やるなら自衛用以外で武器の禁止、近隣住民への配慮、ゴミを残すな、その他安全のため事前連絡しろと言ったら。
奇麗な正規書類で届け出、書類に場所づくりの時間込みでの申請だったので受けざるを得なくなった。
連中、開始前に近隣清掃して、デモして、デモ前よりきれいに清掃して帰るんだぞ。
「先生は権力の犬を辞めて我々と闘争に入らないか?」
ミノリお前は人を勧誘するな! 最近この辺の定例イベントに成り始めてるんだ、止めてくれ。アイツ凄いインテリだから討論も楽しいから構わんが。
後、分隊員をスカウトもNGだ
「あと、復員省でしたっけ?」
「社会復帰支援所だ、シャーレ公報を読みなさい」
シャーレ勤務以外を選んだアリウスの生徒の再就職先などの斡旋と炊き出しを兼ねたプレハブだったのにヘルメット団や不良生徒の復帰まで担当するようになってから、こんな渾名を頂いた、かなりの数を工務部に斡旋したせいか、プレハブも立派になった。
これに関しては見捨てるのもダメなので自立と自助への改善である。
「なぜ、我が工務部に此処まで人を斡旋してくる?」
と聞かれた折に
「工務部が労働者にとっては理想と判断した」と返し、大量の請け入れ歓迎の企業のクソボケ具合を見せたら向こうも納得してくれた。
まあ数日後、チェリノから「ふあんてー化工作してるのかカムラッド! 戦闘員増えてるんだけどオイラ夜も眠れないぞ!」と抗議された、安定してる時期が無いから気のせいだと電話は切ったけど。
「まぁ、連邦生徒会長失踪以前の平穏が戻って来ましたよ、いえそれ以上かも、おっと付きましたよ」
家の運転手はやたらお喋りが多い気がするが気のせいだろうか。
しかし、玄関でしっかりした制服を着たスクワッドの連中圧が凄いな、ヒヨリはちょっと着られている感があるがそれぐらいだ。
逆にサオリは男装出来そうなくらい似合うし、ミサキは威風がある。
アツコは
もはや言うに及ばずだ、何着てもにあうのはずるいぞ最早。
「先日連絡したシャーレだが……」
「お待ちしておりました。こちらのご用件ですね、では行政官がお待ちです、お通りください!」
目的階でリンが待って居たので、書類手続きやその他の業務の確認を行う、文字が汚いと本気で言われてくると本気で口頭筆記の事務官が必要になると思って居たが別の案件でのお小言の方が多かった。
「文字以外は完璧に出してくれるので、本当に厄介なんですよね、ここまで報告書出してくれる局も少なくて……」
途中から愚痴に成って来た、家の分隊員も見てるんだぞ、そういうとこはだな。
それはそれとして、苦労には同情する。
「リン先ぱ……い、いえ、行政官。少々ご相談が……」
「どうしました?」
「その、緊急の事案で……」
コーヒーを飲みながら、退出しようか? と視線を送る。
リンは構わないと制した。
止めろアユム。耳打ち方式は不味いんだ。
「えっとSRT特殊学園の撤去についてなのですが……一部の生徒たちが反発し、公園を占拠してデモを始めたとか……」
耳に入るが別に良くある話だ、エリート部隊には特に此処までSRTの看板に拘っていたんだ。無理もない、組織への忠誠だとサオリ達より上だろう。シャーレ所属後なら圧勝させる自信はある。
デモでもミノリたちよりマシだろう。あそこまで、凄まじいデモ隊を家が引き受けるんだ。これ以上デモ隊が増えても困るぞ……
「事前に準備していた部隊では、阻止が難しい様で……」
おおっと雲行きが怪しくなってきた、リンがこっちを見てきたぞ
「でしたら、ヴァルキューレの警備局に連絡を」
まだ取り繕えるらしい。アユムが飛び出して行くのを見て「仕事か、先生? SRTとは家の隊員の元所属先と聞いたが」とサオリがきた。
今はちょーっと不味いか? リンがSRT特殊学園の説明を始めてくれたが家で引き取って行ったんだぞ?
後、エリート兵を唐突に通常部隊に編入しようとするからだ。命令違反クラスの退職食らわせた後で再雇用と言う形にしたり、誇りを優先するような連中を迂闊に締め出すからだ……。分隊員ども、次にそういう講習お願いしますと言う視線を止めろ? ヒヨリみたいにジュース飲んで茶菓子食ってろ、そしてヒヨリはお前それで太らないのは変だろバカ。
そろそろ面倒ごとに巻き込まれそうなのでお暇しようとすると、アユムがまた飛び込んできた、畜生厄日だ。
やはり、警備の連中は全滅したらしい、一個小隊規模らしいが陣地を設営し弾薬が豊富な部隊なら、下手なお巡りさんでは無理だ。
サオリ、顔で我々ならもっと粘れるぞ見たいな顔止めろ。知ってるからな。
前置きで大事にしたくないと言ったぞ行政官殿! 代理だけど。
「……ヴァルキューレ警察学校の「公安局」に連絡を」
公安局で止めれるかねぇ、あいつらは対テロと言っても事前阻止や強制執行がメインでひよっことは言え、高火力装備の特殊部隊の陣地に突撃するのは専門外だぞ多分。
こういう時に使うのがSRTとかだろうが! 俺の目線と考えてることがバレたのか。
「連邦生徒会の問題ですが、シャーレも外局状態ですが、連邦生徒会です。そして元SRT部隊の隊員も多いですよね」
「まぁそうだな」
「彼女達が失敗した場合の後詰めもしくは、急行して説得をお願いします」
良い笑顔で睨むねぇ……ユウカの方が怖いしノアの切れた笑顔の方が恐ろしいがな!
ただ見捨てるのもかわいそうではある、説得は出来るかもしれない。
「立てこもってる生徒は? 説得なら顔見知りの方が良いでしょう? 名簿をいただけ次第、確認を行い適切な隊員二個小隊とこの分隊で向かいます」
「出来ればクロノススクールの記者が現場に付く前にお願いします」
「報道管制の権限は無いぞ、越権になる」
思い通りになればいいんだがなぁ……。
受け取った名簿を送り待機中の隊員から知り合い隊員一個小隊と捕縛用の小隊を編成し現地集合と言う事にして、連邦生徒会本部ビルを出動した。
「相手は?」
ミサキが聞いてきたので受け取った名簿を後席に渡す。
「狙撃手1火力支援オペレーター1ポイントマン1小隊長の4人だな、いざという時はECMも使う。どうだ? 行けるか? 」
「私達を誰だと思って居る?」
愚問だったな。
「衝撃と畏怖なんて訓練された連中にはあまり通じませんからねえ」
現地で合流次第狩りの時間だ。
目的地の辺りからまた爆炎が出た。
報道ドローンの映像込みで公安局員がやられていた。突入した小隊が計3個叩かれているらしい、連中事前にタレットを配置して待ち構えていたらしい。
やはりすこし遅かったようだ、初手なら報道が来る前に作戦展開ができたであろうが……。
行政官殿はこう言う事は苦手の様だな。
現場に付くと公安局で良く顔を合わせたりする、カンナが居た。テレビクルーに憤慨している。
これからもWin-winな関係で居たいが、良く迷惑かけてるし、たまにはお礼をしてやろう。
「よお、カンナ! 戦局はどうだ? あの副長はまた留守番か」
お早いお付きでと言いたげにカンナが敬礼して、タブレット端末を渡す。
「投入できる予備戦力が生活安全局のバカ共しか残って居ませんよ……」
「そう言ってやるなよ、確かエデン条約調印式の最初の侵入部隊を見つけたお手柄隊員も居たじゃないか」
「その後、見事に突破されましたがね」
そうは言いつつ、声は優しげだった。
サオリ、まぁこう言うのはこれからの働きで返してやろうぜ。
「一応行政官から、作戦への参加許可もあるが」
「どうも、受け取っておきます、挨拶の前に提出して欲しかったですが」
顔に疲れが出ている、公安局は忙しいだろうからなぁ……。
タブレット端末を見る限り半径1キロは戦闘区域と判断してよいだろう。
「当初の作戦は?」
「人海戦術で押し切るつもりでしたが、甘く見積もり過ぎました。連中IEDやらタレットやら何処から用意したんだか」
「反省出来てるなら次があるさ、本職とは少し違うだろうからな」
そう返しながら、ウチからの増援の車両が来た。
高機動車が大きなコンテナとアンテナを携えている。
「ECMは使えそうか? バラージはダメだぞ!」
広域ジャミングはアビドス砂漠くらい何にもないところでやるべきだ。
その為スポット、つまり特定周波数だけジャミングする。
ゆえに電子戦車両を用いてちょいと逆探、特定するために持ってきた。
作戦会議をしていたら、最後の増援が来たらしい、見慣れたおまわりたちだ。シャーレは生活安全局には受けがいい。
「お待たせいたしました! 生活安全局のキリノです! あっ! あなたはあの時の」
キリノが驚いた顔をしている。
「大丈夫だ、こいつらが犯人ならここが陥落している」
「あの時は済まなかった」
さっちゃん、迷惑をかけるって後が大変だろ?
「……もう終わってない? これ、もはや私達の出番じゃないでしょ。顔ぶれ見ても、傍から見ると数で威力偵察した後本命が制圧する絵だよね」
まぁその通りだが別にヴァルキューレの先遣隊を囮などにした訳ではない。
それに、ヴァルキューレの残存戦力にも用がある。
「この顔ぶれと先生の指揮があれば勝利は確実ですね! 早速出動しましょう!」
「カンナこいつ等はどうする?」
「とりあえず後詰めと言う事で、いざという時には盾にでもしてください」
よっぽど戦闘は当てにならないんだな、こいつ等……。
タブレット端末を確認したら、キリノは真面目だが射撃がドがつく下手であるとあった。
流石に俺も下手だが人質の頭に直撃はさせんぞ。
「じゃあ、俺が最初の降伏勧告をする。手筈通り」
時計合わせをして、作戦開始と宣言する。
「周波数特定しました、連中SRT時代の教範既定の奴です」
「帯域変更してるか?」
「教範通りにしてますがパターンが読めますよ」
ECMがスタンバイになった、概ね王手3手前だ。
公安局のご好意により車両を借りてスピーカーを入れる。
「えー、テステス、異状ないな? こちらシャーレである、諸君らは完全に包囲されている、確かに母校閉校は辛い事だが、諸君らが行っているのは犯罪だよ? 市民の皆様の迷惑になっているんだぞ? 君達の先輩同僚は色んな形で復帰している部隊旗を汚す前に投降しよう! 君達ほどの人間なら社会復帰に時間も掛からないだろう。今なら情状酌量も付くぞ! このまま続けてもテレビ屋さんの視聴率に貢献した後捕まって3面記事を飾って、バカなことしてるんだなぁと市民の皆さんに笑われたあとに、捨てられる新聞と一緒に忘れられちゃうんだよ? 虚しいと思わないかい? 降伏しよう? みんなで幸せになろうよ」
『ふざけないでください! 権力の走狗になるならノライヌのがマシです!』
呼んだらちゃんと返事が来た、偉い子である。
でも戦場で長話は良くないなあ……特に逆探される危険があるときは。
その後第一小隊の先輩方からの説得も続くが、あんまりにも返事がしてくるので位置が割れた。
報道ドローンを呼んでいる様だ、声明があるから降りてこいと言う。
「あっ、ミヤコだ。後ろに見えるのサキじゃない?」
「元気そうじゃん」
「元気じゃないとこんなことしてないでしょ?」
「それもそっか」
うちの隊員たちは懐かしいツラ見てのんきにしている、直衛の隊員まで画面覗いている。
報道カメラの位置を調整して、小隊長の少女ミヤコが咳払いをした。
「我々は大義の為に決起しています。連邦生徒会の無力さ、力不足を皆さんはご存じのはずです、そしてその隙を付き勢力を拡大する超法規的組織シャーレは性急に過ぎます!
彼らは、連邦生徒会、キヴォトスの正義の守護者としての地位を簒奪せんとしている!
そのために我々の先輩同僚はどのような卑劣な手段を使って戦場に駆り出されて居るのかは知りませんが、あまりに今のシャーレは変わりすぎている!
甘美な言葉に騙されてはなりません、ついには大軍拡を表面化させて行っています! 心ある市民の皆さん──-」
「カメラ止めますか?」
「面白いから良いんじゃないか?」
そう返したら「何言ってんだこいつ」という顔をされた。
「カンナ、やっぱりそう見えたりするか?」
「自覚無しなら、相当かと。向こうの主張の2割は同意しかけました。どうなんです?」
やさぐれてきたコイツ、とんでもない事言うなあ。
したくて拡大したわけじゃないんだぞ! 全部アビドスで捕まえたアホが悪い! ムカついてきたから今度ホシノをシロコとアリウスみんなで追い掛け回す演習やるか……。
「何も無かったらSRT特殊学園生徒の受け皿で重犯罪担当のお巡りさんしてるよ」
「ですよね」
二人でため息を吐いた後、無線機を取り出す。
「≪ピーターラビットのパパ作戦≫発動」
ドローンが落ちて停止する。
特定周波数帯を狙い撃ちにしたジャミング攻撃は一気にラビット小隊の警戒線を崩壊させた。
各所で無線ドローンは使用不能になり、有線式タレットやカメラの一部だけになる。
「げっECM! 市街地だよここ、電波法的に良いのかなあ」
「やはりシャーレは我々の存在を許さないようですね。サキ、警戒線監視を。ミユは射点変更!」
「おう。まったく少しやりすぎな気もするけどな」
サキはそう前線に確認に行こうとしたその時、モエのアンテナが砕かれる音がした。
弾着から1拍置いて、銃声が聞こえる。
サキは火点を概ね特定したが、信じられなかった。あれ対物狙撃銃、たぶん12㎜以上か?
「くそ! なんてもの持ち出しやがって!!」
「サキ! 構わず!」
「おう!」
銃声が近くなっている、敵の前線が上がったんだ。
数の不利を補うためのタレットやドローン、そして市街地戦闘だが、いまそれは全て足かせになっている。
サキは頭では分かっても、どうすればいいか分からなかった。
「うう……」
ふと視界に、ピンクの髪をした少女が映る。
シビリアン? ちくしょうタレットやドローンが消えて侵入をゆるしたか!
「危ないぞ! そこでなにしてる!」
「わんちゃん探してるの」
「わ、わんちゃん?」
サキは建物陰にその少女を移動させる。
教範では、作戦区域において民間人であろうと一律拘束だったよな?
サキが少女を観察してみる、私服であるが儚げで、サキからしても美人とはこういうものかと思えた。
もう少し彼女がしっかりしてれば、彼女がこの残暑の時期に”汗をかいてない”ことに気付けたかもしれなかった。
「わんちゃんって言うが、どんなわんちゃんだ? お姉さんが探してあげるから隠れてなさい」
「えっとね、青い毛並みで大きくて無口な甘えん坊さんかな」
「名前は」
「サオリって言うの」
サキは必要な情報を叩き込むと、外へ出ようとした。
まさか、小柄の少女が隠していたP228で首へ一撃突きをいれて、足を蹴飛ばして横転させるなんて思いもしなかった。
「ひゅっ!! かっ……はっ」
軽度の呼吸困難でじたばたともがくサキに、結束バンドをかませて制圧した後、回復体位は取らせる。
「わんちゃんはないだろ……」
「でも可愛いよ」
姫のやる事は分からないな、サオリはさじを投げた。
子ウサギ公園のCPにモエの声が響く。
「ラビット2バイタルロスト!」
「やられた!? サキが!?」
ミヤコの意識がそちらに移る。
それがいけなかった、ヒヨリとのスナイピング中のミユを誰がカバーするのか? と言う点が抜けていた。
アリウスは教訓を生かした、大体の事は火力が解決する。
『クラスター!!』
ミユが狙撃地点ごとミサキに粉砕される、公園の縁側の一部が吹っ飛ぶ。
「うわランチャーじゃん! うちらも無いのに!」
モエが羨まし気にそう叫ぶ。
閉校以前から人員を引き抜かれたSRTは、保有重火器の大半を接収され、現在は個人携行火器しかない。
タレットやドローンも元は実弾射撃標的で、これを訓練弾から実包に変えてるだけだ。
「コンタクト!」
ミヤコの視界に誰かが動くのが見える。
だがミヤコは撃つのを一瞬躊躇った、あいつら私服じゃないか?
それを見たミヤコは、ふと脳裏をよぎる。
『IFFや敵性勢力は制服や姿のみを認識している』という点、つまり、機械には彼らはシビリアンである。
「便衣兵!?」
それがアリウススクワッドの本業である。
「一人、いや2人居たはず」
怪しげな所に閃光弾を投げる。
受け、なし!
ブラインド射撃で制圧を試みるが、煙幕手りゅう弾が投げられる。
「バニタス・バニタータム……」
サオリはミレニアム製赤外線スコープをつけたライフルでミヤコの大まかな影を捉える。
バースト射撃をミヤコは飛んで回避したが、花壇が粉々になったのを見て驚愕した。
「奴ら50口径使ってる!」
「正気じゃないねえ……」
初撃は辛うじて回避したミヤコは相当な腕だと確信した。
こんな技はSRTの教範にはない、汚すぎるやり方だ、ただ相手を打ちのめすための徹底された暴力!
「噂のA分隊! 戦う意味も理由も持たぬシャーレの走狗が!」
パララと軽い銃声を立てながら、モエを後退させる。
ちくしょうホローポイントじゃコンクリが貫通しない! 連中強装か大口径なのに!
「後退します! 現状は不利です!」
スナイパーの火点から見るにここら辺は死角! ミユの位置から見て、撃てる角度からこれは確実だ。
その判断の答案用紙はすぐに帰ってきた、ヒヨリが放った20㎜HE弾が胴体上半身を直撃する形で。
「えっ」
一瞬動きが止まる、ミヤコが動いた瞬間、右腕にサオリのライフル弾が直撃した。
思わず銃を落とす、モエの制御装置が低い駆動音を立てて機能を停止し、車両の音が聞こえる。
この青い向こうの隊長格はRABBIT小隊で挑んで勝機があるかどうかの練度だ、格闘戦の装備以外は殆どない。
咄嗟にナイフを抜いて近接戦闘へ入ろうとするが、サオリはあっさりと拳銃を抜いて射撃した。
グロック18のフルオートをもろにくらい、ミヤコがよろける。
「まっ、まだ終わってない!」
「おやすみなさい」
狙いをつけ、近づいていたアツコがテーザーを打つ。
フェイントに気づいたときには意識を刈り取られていた。
「作戦終了。捕縛次第帰投する。新しい決めゼリフが居るな……」
サオリは端末を確認し、IEDの遠隔操作を確認すると全て動作停止させた。
ミサキが「遠隔以外のもあるんじゃないの?」と確認しているが、サオリは多分無いと思いつつ確認に向かう。
さすがに教範通りだ、ミヤコのポケットにはIED設置箇所が書かれていた。
……昔の自分達なら、多分別の個所で襲撃して増援を絶とうとしてただろうなあとサオリは思った。
彼女らの敗因は手口が割れた事や装備の有利不利ではない。少数活動の利を活かさず、大軍と張り合う道を選んだこと。
「結局こいつらも私たちと変わらんな」
サオリはそれがアリウスの敗因とも理解していた。
戦闘は15分程度でカタがついた。
恐らく一番走り回らせたのはヒヨリである、一撃撃ったら別の個所に狙撃地点を移させて、シメまで待機させた。
ミユが優秀なのは理解したが、撃ち返して来るなら確実に位置が分かる。
「良い仕事だ、サオリ。公安局と生活安全局の皆さんも驚いているぞ」
「あらあら瞬殺だね瞬殺、アクション映画みたいだったよ~」
「逮捕に向かわないと!」
輸送警備車が停車し、ヴァルキューレが護送車へ投げ込む。
全員ヘイローが点いて無いのを見て、フブキが「うひゃあえげつない」と呟いた。
「さっちゃん決め台詞に悩んでるなら、光よ! って決めてみたら?」
急にそういうネタは止めて欲しいとサオリは思った。
やはり姫はよく分からない、サオリは多分これからも、と心底感じた。
「容疑者全員確保!連れていけ!」
カンナが護送車を発進させ、武器弾薬類の回収を命じる。
「俺達もブービートラップと重火器や爆薬回収して撤収する、後で尋問官と護衛のこいつ等連れて公安局行くからな」
「はい。お疲れ様です。では、また後で」
カンナが敬礼して、キリノ達に規制線と証拠撮影を命じる。
「それでは!」
「おう、また屋台で何か紹介してくれ」
携帯を手に取り、ユウカに電話する。
「ユウカ? 大型トラック3台ぐらい使う重火器押収したぞ、……当たり前だ証拠品だからな、封印処置で良いよ」
戦いの後の大掃除も大変だ。
ところでお前ら、いつから私服になったんだ。
「買ったんだ、代金はおつり含めて置いてきたぞ」
「創意工夫が得意になったなお前ら」
後アツコ、ノートにその何か、変なSMG持って回転する絵はなんだ? *3
ミサキが困惑しているぞ。
「しっかし、あの武器弾薬。どこから運び込んだんだあいつ等」
ブリーフィング時に確認して違和感が多ければ、泳がせておくか。
ラビット小隊制圧される”シャーレ”珍しく今回は損害が低い”と大勝利。
そう題されたタイトルの記事へのコメントは概ね好意的であった。なにせ久々に物的損害は100万程度で抑えて、花壇に土を詰めなおす写真が上げられている。
ネットニュースを見ながら、カヤはどうしようかと思案に耽る。
表向き存在はぼかされている旧アリウスの特殊部隊、しかし公然たる秘密である。
この前も闇市を摘発し、ミレニアムの近くの封鎖区域にも現れたと言われ、またある時はアビドス砂漠で走り回っている。
最近はそこらの不良学生の中でも「ブギーマン」扱いだ、ぺろ……何とかグッズ転売で出てくる闇市の破壊者と同レベル扱いである。
「そんなに強いのか?」
影の中から声がする。
「シャーレが強いのは分かる。優秀な後輩たちを効率的に投入している、勝利は必然だと言うのは分かる」
「……」
「だがそれほどまでに彼女らは強いのか?」
「公開された資料では、アリウスの特殊部隊あがりだそうです」
カヤは資料の束を渡す。
・錠前サオリ
主に白兵戦技にかけて卓抜した技術を有する分隊指揮官。
格闘、体躯、射撃、更にストーキングなど各種技能成績に優れる。
現在正規士官教育カリキュラム受講中。
・秤アツコ
分隊内ではポイントマンを務める。
助言やサポートを得意としながらも、優秀な白兵戦技能を有する。
アリウスの生徒会長でもあり、勤務しているのは「出稼ぎ」も兼ねている。
現在社会学や政治学を受講中。
・槌永ヒヨリ
分隊内では狙撃を担当している、主に対物狙撃銃を使用しているが、狙撃銃全般を運用可能。
ただし本人が基本的に「外す危険が無いから」と大口径狙撃銃を好んでいる。
言動がネガティブではあるが、常にふてぶてしく戦うので、サバイバル技能は随一。
現在コンビニ勤務もしているが、よく居眠りしている。
ただし計算ミスは一度もしていない事から数学的思考が得意と思われる。
・戒野ミサキ
分隊火力支援射手、基本としてはMANPADSを運用しているが、全般の小銃も使用可能。
高い肺活量からランニング等*4の成績が高く、予備弾を自身で携行して活動している。
現在迫撃砲及び擲弾筒の追加教育受講中。
勤務外でたびたびミレニアムの部活と何か活動している。
なお、さらに1名人員が居たが、任期満了に伴う退職により日常に帰還した為記載はしない。
「感想は?」
「私たちとは別の類の特殊部隊だな、遊撃戦と機動を根幹に据えている」
その言葉は、かなりの深刻さが滲んでいた。
本来のゲリラ・コマンドとしてはかなりの脅威だ、しかもアリウス生まれ。
彼女らは本質的に異なる律で生きてきた、それゆえ彼女らは縛る箍は存在しない。
「あら、貴女がそこまで言いますか」
「ああ、彼らは腕っぷしだけで暴れるただのゴロン坊じゃあない」
ワカモのことか、カヤは理解した。
「あらゆる汚い手段を使おうと遂行する意思があり、しかも、微塵も悪いと思わないだけの強靭な意志力がある」
「貴女達なら、勝てますか?」
沈黙。
「まあ、貴女が噛みつかれたら逃がしてやる事は出来るだろうな」
それを聞いて、カヤは頭を抱えた。
まずいぞ、あの大人。なんてものを手に入れやがった! なんとか審議会に掛けて野砲の使用を制限させたが、これではまずい。
一番まずいのは、あいつらが秘密作戦を得意とする事なのだ。
いつ、カイザーと繋がりがバレて奴らが……。
子ウサギ公園で活動しているという事は、端からあの小隊はシャーレと結託してたのではあるまいか。偽旗作戦、それくらいやるだろうあの大人は。
カヤの恐怖は確実に敵意へ変わろうとしていた、怖い敵は排除するしかないのだ。
流石にボナパルド先生は市民公園占領した後重火器持ち込みとトラップ張るのは許さないよ。
今年のナポ先の誕生日のお話について(傾向が気になるので)
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王道に水着イベ
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並行世界orIF編
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5章2部まだ?
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記念日なら2話連投して♡