キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
最近ここすきを見るのが楽しみになりました。
みんな大好き防衛室長本格登場回
取り調べ記録:容疑者 空井サキ
担当者:秤アツコ
【所属は?】
「SRT学園1年、空井サキ」
【SRTは閉鎖されたと記憶していますが】
激昂。
取り調べ担当者が制圧。
警務隊が続行の是非を問うが、担当者が続行を宣言。
【転属拒否は、何故?】
「SRTは、シャーレみたいなところと違って、厳格な規則がある」
【市街戦する規則?】
「うっ……それは其方もだろう」
【組織による法執行と暴力は違うと社会学で習ったけど】
容疑者、なにか言おうとするが沈黙。
以後黙秘。
取り調べ記録:容疑者 風倉モエ
担当者:戒野ミサキ
【じゃあ、取り調べやるから】
「ちなみにこれ長い系?」
【あなた次第じゃないの……】
担当者、記録開始を合図。
【で、投降しなかった理由は】
「SRTを出ていくのがやだから」
【そんなに学校が好き?】
容疑者、ぐいっと身を乗り出す。
「いやそれがね! ガンシップでしょ、対戦車火器でしょ! あとMSSRでしょ! こんなのシャーレにないじゃん!」
【……巡航ミサイルや野戦砲がそんな好き?】
「うん!」
担当者、記録官の方を見て続行の是非を問う。
記録官、取り調べ終了を提案。
取り調べ記録:容疑者 霞沢ミユ
担当者:槌永ヒヨリ
双方長い沈黙。
取り調べ記録官、カンペで【早く頼む】と指示。
【え、えーと、名前は?】
「か、霞沢ミユ……1年生……です」
再び長い沈黙。
取り調べ記録官【頼むから】と請願。
「わ、わたし、これからどうなるんでしょうか……もしかして、ごうもん?」
【つ、辛いですよね。苦しいですよね……お気持ち、分かりますよ……】
容疑者、泣き始める。
暴力等は無いため心情的不安からと思われる。
「し、知ってることは全て喋りますから……」
【えっとじゃあ、なんで公園を?】
「へ、編入が怖くて」
【怖い?】
容疑者、号泣。
「変な砂漠連れて行かれたり廃墟潜ったり地下を走ったり……」
担当者、タオルを要求。
「変なところで忘れられてひっそり終わるんだ……」
容疑者再び号泣、見ていられない為中止。
取り調べ記録:容疑者 月雪ミヤコ
担当者:先生(特定機密事項により本名開示を拒否)
【よお!】
担当者入室、苦虫を噛み潰した様な容疑者。
「よりによって貴方ですか。誰であろうと、言う事は変わりませんが」
容疑者、息を整える。
【落ち着けよ、おい、茶はいるか……ここコーヒーしかないんだったな】
「心替わりでもさせようとしているのですか?」
【じゃあ転属拒否の理由を聞こうか】
担当者、椅子に腰かける。
「SRTにはそこにしかない正義がありました」
容疑者、延べ8分間にわたる発言。*1
【なんとも泣ける浪花節だな、しかしその正義は民間市街地でアクティブシューターをする事なのかね】
「デモンストレーションです。事実貴方達は抗議を公権力で踏みつぶした」
【非武装化と中立化だ、最近は表現規制が激しい、シャーレはコンプライアンス重視だぞ】
容疑者激昂するも、突如押さえつけられる。
【エンジニア部の光学迷彩だ、サオリがずっと居たんだが、気づかないだろう? 視線が多いからな】
「卑劣な」
【お前がスカートから針金抜こうとするかもしれんからなあ】*2
担当者、取り調べ記録官に続行を宣言。
「SRTには本当の正義がありました、主義主張ではなく道理に基づいたものが」
【アビドス砂漠行ったりエデン条約締結したりアリウスの生活を改善した事もか? これは正義じゃないのか?】
容疑者、沈黙。
【学園間の利害でもなく正義の為に活動する、なるほど、じゃあシャーレはどう正義じゃない?】
「それは……」
【廃校と企業買収の脅威と戦い、エデン条約締結のため平和を守る元同級生や先輩は正義じゃないのか?】
容疑者、号泣により取り調べ記録官から【中止!】のカンペ。
取り調べが終わった、自分への暗殺者の尋問はしたことあるが、あれほど陰謀論を食らうとは思わなかった。
護衛を兼ねてたサオリを抑える方が大変だった。
最後の「何がバニタス・バニタータムよ、虚しいのはこっちなのに」辺りで余計殺気が上がった気がする、次はヤバイの食らわされるぞ?
副尋問官ヒヨリは向こうのスナイパーと生き生き喋ってた、羨ましい……。
「そう言えばカンナ、あいつらどうなるんだ?」
「一定期間の拘禁の後、本来であれば再度ヴァルキューレへの編入を薦める手はずだったのですが……。連邦生徒会からの要望が強いため、そちらで処罰が下されるでしょう。事件の被害が大きかったこともあり、重いものになりそうです。最悪の場合、どの学校ににも編入出来ない状態に……」
政府級の面子潰したらそうなるよな、断頭台も銃殺隊も無い分温情とも言えるが。
カンナと雑談していたら、後ろから声がした。
「では、私が代わりにお答えしましょうか」
聞きなれた声だ、テレビでよく見たな。
「初めまして……ですね、先生」
防衛室長だかのカヤだ、普段何してるか全くわからない。
カヤは室長ではあるが実際会う事は殆どないので、恐らく傀儡室長なのだろうと考えている。
「いや知ってるぞ」
「おお、やはりご存じでしたか」
「連邦生徒会広報の方でしょう? テレビでよく見ております」
満面の笑みでカヤに握手する。
カヤは少し意外そうな顔をして、嬉しげであった。
「キヴォトス連邦生徒会所属、防衛室のカヤと申します」
「ああ、防衛室広報の方で?」
「テレビ写りが良いせいで勘違いされてるようですが、防衛室長のカヤです。行政委員会の中における、安全保障周りを担当しているものです」
すげぇ、皮肉が通じなかったぞ、よほどのバカか狸だぞこいつ。
「ではご挨拶を兼ねつつ、少しだけご説明しましょうか」
もう知ってるとは言えない雰囲気で説明してきたので、聞くことになった、コトリでも、もう少し相手の雰囲気考えるぞ? あれでもミレニアムだし、頭いいからな。
最後に防衛室の話してたが、お前がもう少し真面に仕事してれば俺はハナコからの誤解も陰謀論も食らわずにすんで、カンナも休暇が増えてるよ!
シャーレの担当が恐ろしいことになってるよ。
しかし、大馬鹿にしても狸だとしても、何か企んでいる。
「ですが、防衛室長殿ご安心を。今のキヴォトス最強の特殊部隊は家のA分隊です。ラビット小隊は経過観察などで監視しておきます」
「……そうですね、彼女たちはFOXほどじゃないでしょうし」
「FOX?」
それを問うと、カヤは咳払いして「あまりお時間を取らせてはいけませんから、ささ」と出口を示した。
カンナだけが、残暑じゃない理由で背中が汗に濡れている事に気付いていた。
釈放の報せは唐突であった。
装具品類の殆どは返還され、半ば唖然とした顔をする。
ロビーに出た時、アリウスの生徒たちが「晩御飯はオムライス大盛りが良いです!」と主張しながらバスへ乗るのが見えた。
「敵とすら……思われなかった……!」
ミヤコはぎゅっと唇を噛み締める。
渡された書類には「今からでも遅くない、原隊へ復帰せよ」と添えられていた。
悲しみを抱えながら子ウサギ公園へ帰還すると、なんと根こそぎ物資が消えていた。
医療品や水はともかく、武器弾薬はほぼ底をついている、回収されたのだ。
「罠も全部持っていかれたなあ」
サキは見るも無残というべき警戒線を確認している。
モエは『オフライン』の端末を見て、愕然とうなだれている。
遺されたのは、テントと食料品などの一部物資のみ。
端末には「行政命令によりシャーレが火器弾薬を押収しました」と書類が一枚残されていた。
また、メモ書きには「飯に困ったらシャーレ1階のコンビニへ」と書かれていた。
監視カメラに見慣れた連中が来るのが見える。
「ん……あいつ等来たんだな」
「家のオフィスビル人員拡張のせいもあって、弁当も食堂も有りますからね後少し移動すれば1日1回の炊き出しと飲料水配布、フードロス削減も兼ねてますからね」
ユウカが特に気にもせずに、書類をどすんと置いた。
確かユウカはこの制度をフードバンク、と呼んでいた。
これをやると不良学生のかっぱらい等が大きく減少したし、民間企業から食料損失やイメージ回復で大きく貢献している。
ただどのツラ下げてカイザー経営のコンビニが申し込んできたのかと言いたくもなった、食品衛生法違反したら別件逮捕で乗り込んでやろうと思ってる。
本当に来やがったよ、原隊に戻れと言う意味を込め、百鬼夜行の雅な尋問、スシ・トーチャリングに肖り横で屋外弁当で弁当食ってやっただけなんだが。
多少は気合はあるんだな。
ちなみにやり方はこの前セキュリティ講習に来た作戦参謀の「ちょっとした座興」で聞いた。
今日はソラじゃなくて……サオリの奴がヒヨリの代わりに代打してたのか。
「げっ、あの時の青い猟犬」
「店長に廃棄弁当譲渡の手続きを頼まれてるだけだ」
サオリはいつもの仏頂面である。
まあたまにシャーレのカフェでメイド服着たりするアツコとかよりは安心なのだが。
「笑いに来たんですか!!」
「何故私がお前らを嗤うんだ?」
その一言で黙らせてしまった。
まぁ、サオリなら大丈夫だろ、一応インコムで現地の声は聴けるようにしているが、基本はサオリに任せよう。
士官のプログラムの現地住民との対応の応用だ。
俺は元SRTから聞くことが多いFOXという名前が気になる。
ワカモにでも直接聞けば良いんだろうが、問題はあいつまた脱走してる、連邦生徒会よ、それでいいのか。
伝手は多い、総浚いして情報は自力で集めるかぁ。
「とりあえず、75%OFFの弁当がおすすめだ。アレだけ弾薬を持って居たんだ。予算ぐらいあるだろう?」
サオリはアリウス時代の工作時にも予算は渡されたなあと思いながら、棚に補充用の弾薬箱をしまう。
ソラが小柄なのでこういう作業は見ていられないから代わりにしている、サオリも実のところ世話焼きだ。
「うっ……皆今幾ら持ってる?」
「拾った5円なら」
「ポケットに10円」
「無い」
すげえ、休職扱いの俺よりひもじいじゃん、15円しか無いってどういうことだ? 拾った金は交番にだせよ。お前ら治安部隊だろ。
サオリを見ると特に驚かず、ああ無いのかと受け入れている、そういえばお前も似たような経験あったな。
「15円だと駄菓子ぐらいしか買えないな……
廃棄弁当と言うが賞味期限が特定時刻で切れて店舗に置けない商品だから先生も我々や給料前の家の職員も良く貰って食べてたりするぞ」
リーダーであるミヤコだったかが驚愕している。
「先輩や貴女達の様な精鋭ですら……おのれシャーレ! だが塗炭の苦しみでも我々は耐えれます! ねっ、皆!」
「特上焼肉弁当とかあるじゃん!」
「お惣菜やおかずもこんなに……!」
「プチパフェ……」
向こうの隊長への信頼など言うのは無さそうだな。恐らく促成部隊か、そう思えば私は恵まれていた方なのだな。
司令部要員もこちらに移行してから凄まじく好転した。先生もヒヨリの我儘でも「しょうがねぇ、今空いてる店探してそこ行くぞ。好きな物を食って良いぞ」と言ってくれた。キヴォトス最強の特殊部隊と啖呵まで切ってくれた、答えないとな。
それはそれとしてヒヨリは卑しいなあと思う、まあ文句はないが。
「あっ、ミヤコじゃん、昨日ぶり!」
完全オフのうちの隊員が何人か現れる。
「1年の新人が先生直轄の指揮下のA分隊と2個小隊相手で15分粘れればエリートだよ」
「どうしたの? お昼一緒に食べる?」
同期と先輩には恵まれている様だな。おっと、炊き出しと飲料水配給の事も説明しておかねば。
飢えることは無いと言っても、ここの建前で廃棄と付けてるが期限切れ弁当争奪戦の難易度は高いが、そこはお前らのタフネスで頑張れ。
お前らの戦利品は生活に直結するぞ。
だが、インコムからの対応を聞いてるだけでも、随分対応が良くなってるぞ。先生嬉しいよ。後ユウカも。
しかし、あいつ等文無しかよ、昨日の第一小隊などに夜間など監視と言う名の見守りは行っているから、無茶はしないと思うが。
本屋とかでバイトしろ、俺はそうしてたぞ……給料はアレだったが。
やっぱ紙幣が当てにできないのは駄目だな、インフレもデフレもカスだよカス、紙幣が100分の1とかどうしてそうなるんだバカ。
「先生、またユウカから逃げたの? 止めたほうがいいよ、砲兵とは強みは違うけど私達も当てにして」
いつの間にか机の陰からひょっこりとアツコが顔を出してる。
基本的に悪戯っ子であるから、本質はムツキと変わらない、何なら前オフで遊んでたな。
「アツコか、いや昨日の防衛室長の態度や散々家に横槍入れてくる防衛室が動いてるようでな。情報収集だよ」
「へぇ、そう言う事もするんだ」
警察や外交官がどんな書類を渡してきても、ゴシップ記事も漁ってでも得れる物はあるんだぞ。
実のところ秘密なんて殆ど無い、公開情報の中からどう選択するかだ。
ちなみにシャーレの機密情報の殆どは「我々がそれをどう評価しているか」という点が機密なのである、カイザーとか特に見たそうである。
「どんなに偉くなっても、そこは変わらんぞ。最後に精査するのは自分の頭と目だ。ユウカが俺のあれこれを見破るのもそう言う事だからな」
「じゃあ、今日はそう言うところを教えて」
「なら付いてこい、お前ら見つけたのもこう地道に情報当たって行った成果でもあるからな」
まぁ、やることが多いが、悪くない仕事も多い。
ユウカが満足げな笑みを浮かべた。
「あー、予算確認完了! お昼にしようかな!」
「ユウカお疲れ、これから飯か?」
ユウカがお茶を飲み、一息つく。
「ええ。アツコ達も、大変でしょ。次はゲヘナで風紀委員と演習でしょ?」
「その辺の調整は済ませてる、私達の任務は種類も多いし、とにかく演習でも良いから自立思考を徹底しろって」
「戦闘から戦略までそう言うところは先生凄いから、後規模拡大のペースがね、分かってはいるんだけど貴女達の予算は安心して置いて!」
私は前線勤務は専門じゃないから、この子たちが全力で戦えるようにして置かないと、しかし次のマッチはどういう想定でやろうかな……。
エンジェル24が昼飯時の洪水が捌けた後、ヒヨリがひょっこり戻ってきた。
本屋の袋がALICEバッグから見えている。
「あっ、リーダー代理ありがとうございます、埋め合わせはするんで……」
「分かってるんなら、出勤してくれる方が助かるんだがな。今回は例のウサギが来てたから、タイミングは良かったが」
変わらんなあコイツ。
ヒヨリに何とも言えない表情をしながら、サオリはエプロンを脱ぐ。
「どうだったんですか?」
「アリウス時代の我々ぐらいだな、生活環境だけだと」
「それは、苦しそうですね、辛そうですよね……」
組み手の相手まで申し込まれたが、私一人で休憩の間に出来るだろう。
昔と違うのは、休息を取らない方が怒られるところだったな……。
休日か、取り敢えずランニングでもするか。
やはり、防衛室の企みを暴く道の一つは、あのウサギ共の動向観察だな。
押収に際してだが、一つ疑問があった。
”武器弾薬が何故持ち出せたか”である。廃兵院に落ちてたと言うのにはおかしい。
正規装備の訓練資材を1年生が持ち出せるか? SRTの装備品は概ね防衛室が再分配した一部以外はリンが重装備保管庫へ収容した。横から口添えしてゴリ押しに近い事をしたが、正解だった。
「先生また企んでるね、予算じゃなくて本気の謀略戦の」
「謀略と言うほどじゃないぞ、調べる手札も人員が増えたから本命に集中できる。お前達のお陰で大分楽になった」
アツコがゆらりゆらりとしながら、楽し気な顔をする。
「で、ウサギは定期的に俺が見に行く。護衛はお前か、サオリに頼もうと思ってるが、隊員を二人ほど連れるかな。お前達がゲヘナでの演習を終えたら見に行く予定だ、ついて行かなくて大丈夫か?」
「うん、そう言うのも私達の罪と向き合うと言う事だと思うから」
そう思えれるならいい成長だ、元理事に面会ついでにFOXと連邦生徒会について聞いてみるか。
後、ミカの事もあるな、あいつの弁護もしてやらねば。借りがデカいからなぁ……。
ちなみにゲヘナでやるのは本格的ゲリラ・コマンド対策訓練である。
後方浸透攻撃作戦の演習だ、目標はマコトの帽子の上にペロロ人形を置くこと、副次目標に要点破壊と書類奪取だ。
要点破壊と書類奪取とは具体的にはイブキとお絵描きノート奪取である。
これを持ちかけた時、ヒナもアコもイロハもOK出してくれたし、イブキが先輩の頭にペロロさんが?と驚き、イブキの「イブキも訓練頑張るから」と口説き落とせば簡単に落ちた。
ミレニアムとはC&Cとの分隊戦演習だから趣が違う、特殊部隊の戦いだからな、シュチュエーションも違うようだ。
冬の始まりの頃にはどれほど状況は変わるのだろうか?
向こうだと、2年位先の状況も考えねばならなかったが、今は数か月先だけで済むのだから良いものだ。
FOXがどんな精鋭であろうと勝てるように実戦経験を与えてやらなければ、ホシノ、ヒナ、ネル、ヒナの小隊と戦うぐらいの準備は居る。
カヤさぁん、業務怠慢の料金はお支払いいただくからなぁ……
チヒロに頼んでいるカイザーのサーバー、あれが開くと大分楽になるんだがなぁ。
公安局にも目を入れたいが、向こうはそれに対しての防御が本業だ。なかなか上手く行かない。
そもそも多分公安局もこちらに手と目を伸ばしてそうだ、すくなくとも私服が何人か張り込んでるのは知っている。
2日後の大演習の結果を見て、ヒナには申し訳ないが喝采を上げた。
サブ目標コンプリートはならなかったが、マコト会長の頭にペロロ人形を置いて、無事全員離脱成功させたらしい。
ヒナからは「良い薬、家の足ばかり引っ張ってるとそういう目に合う」と言う口実が作れたようだ。
帰還後はちょっとしたお祭りであった、正面攻撃以外の作戦能力の提示。
砲門数は増やせないので。自走化による作戦展開能力でユウカと調整している。只反対ではなくユウカもきな臭さは理解してくれている。逆に言えばユウカがOKを出してくれれば絶対通るレベルなのだ。
ノアも手伝いに来てくれる、セミナーの双璧には頭が上がらない。
「先生そろそろ、子ウサギ公園でウサギの経過確認に行く時間だ」
「今日の護衛はサオリか」
「私だけではない、上や別の場所から他の部隊員も見ているぞ? やはり同期と後輩は心配の様だ」
何時ものドライバーの雑学や世論などを聞きながら、現地に付くと、言い争いをしている。
「モエどうしてお前が焼肉弁当を持って行くんだ!」
「いいじゃん、サキだって先輩からお持ち帰りシューマイ弁当貰ったんだから」
食いものの取り合いの様だ、誰がもやし弁当を食うかの戦いだ。
「アリスクだったらどうする?」
「そもそも弁当が見つかるケースが稀だったな」
ミヤコが仲裁に入っていく、俺に陰謀論ぶつけて来なければ良い小隊長なんだよな。
なんでも陰謀とか言いだすと横乳出るからやめた方がいい。
「唐揚げ弁当だとよ」
「一人2種類とって最後に誰が2つ目にもやし弁当を食うか押し付けあってる様だ」
「まぁ、挨拶に行くか」
不毛な議論を終わらせてやろう。
「よっ、ウサギ小隊の諸君楽しそうだな!」
全員が目を見開いた、良いツラしてるじゃん、元気で結構。
4人に負け惜しみを食らう、別に今度はヒヨリのコンビニ飯の美味しい食べ方実演しても良いんだぞ?
もしくはカホから貰ったミドモ饅頭か、ミレニアム製分子合成饅頭とか。
「討議だとよ、サオリ」
「みんなで分け合えばいいだろう、誰かに奪われるわけでもない」
実感籠ってるなあ。
「……情けないとこをお見せしました」
本当にな!
「ですが、特に問題があるわけではありません。食料の問題も、廃棄弁当と同胞達からの物資支援で当面の問題は解決できました。やはりSRTの絆と同胞愛は消せるわけが無いんですよ! シャーレ! 貴方たちの謀略も潰えましたね!」
こいつ等会うたびにポンコツ具合が上がってないか?
ちなみに支援内容は全部知ってる。
「作戦の為なら、私達は何だってやる、もはや先生が居なくても私達はこのまま……!」
こいつ等顔色悪くないか?
風邪でも引いてたら困るし同期先輩も悲しむだろう。
近寄ると思いっきり威嚇された、だがミヤコが無意識にホルスターに手を伸ばそうとした。
「あ」
全員が嫌な予感したと思ったとたん、サオリが足に蹴り入れた後よろけさせて腹に膝ぶち込んだ。
しばらくミヤコの食欲は湧かなそうだ、多分小隊全員湧かないかもしれん、他の監視要員が慌てて応急処置を入れている。
恐いな、この制圧の速さは。しかしなんでまたと理由を聞くと体臭問題だった……、少なくともミヤコは体臭は大丈夫だろう。胃酸まで出てる。
「はぁ、将校や特殊部隊がそんなのでグチグチ言うな。将校は作戦室に入れば作戦が終わるまで殆ど外に出れず、おい、サオリ。長距離長期間浸透作戦だとどうする?」
「作戦開始前に衛生面での沐浴があるくらいだな、長期作戦中である場合2週間近く森に籠る事もあるだろう」
「だ、そうだが? お前達の先輩達も5日ぐらいは普通に」
それ以上はダメです! と隊員に止められた。
アビドス砂漠で砂風呂やろうとしてただろお前ら。
「そこまで嫌なら銭湯なり好きに行け!」
「食料を買うお金も無いのに、銭湯に行く余裕があるとでも?」
「公務部にでも日雇いで雇ってもらえ!」
「SRTは副業禁止だぞ!」
このポンコツ特殊部隊(笑)め……
「自活しろ」
「そんなこと出来るか!」
ええ……。
「シャーレのシャワー室使わせてやるからそれでどうだ?」
奇人かサド侯爵なみのなじりを受けた、もう一回この青い猟犬けしかけてやろうか? ああ?
なんだよ、議員煽るのを兼ねて嫁の下着顔に貼って寝てた話とかはしてないだろ!
「お前らの先輩や同期が使ってるとこだよ! こいつ等だって偶に使って居る」
「偶に?」
「お前らと違ってA分隊は精鋭でありシャーレビルに住んでるのもあるから、バスルームぐらい用意してるに決まってるだろ? 人を何だと思ってる?」
負傷時の感染リスクとか考えると綺麗な方がいい。
「信用できない大人」
「へん……変な大人」
「ノーコメントで」
「猟犬の飼い主」
2度目は学べたようだな。
「とにかく。それはそれで解決策を考えますが、しばらく先生はこの公園に近寄らないでください」
「市民様の公園占拠してるくせによく言う、強制退去させても良いんだぞ?」
「やはり本性を!」
「おう、対象法言ってみろよ、テロみたいな案件ならまた出動するぞ」
全部却下だ、ボケ共!
「さっちゃんならどうする?」
「材料を集めて作ったりしないのか? 湯の用意が難しいか」
「これだからゲリラ・コマンドは!」
「いや、内戦期の経験だ。結構楽しいぞ、夜にやると明かりで狙撃されるから昼に入るんだがな」
サオリの言葉で黙ってしまった。
彼女はまだ「まあ昼にうろつくと狙撃が多いから時間の効率がいいんだ」と話している。
「昨日、教範チェックしましたよ、我々とは全く違う特殊部隊だと」
「戦いを挑む前にするべきだったな」
強みを活かすべきだったのだ。
立てこもり犯への戦術強襲なんてアカデミーで何度習ったと考えてるんだ、ちょうど良いからアリウスを投入したが、正規部隊でもどうとでもなるのだ。
「ドラム缶の風呂でも入ればいいんじゃないのか? 百鬼夜行の連中に聞いたぞ。底で火傷しない様に板を入れるみたいだが」
提案の後に散々罵られた、知ってるんなら最初からやれよ……
しかも、強奪の話してるし。民間人の資産をではなく廃棄予定物を回収、普通に貰えよ……
こいつ等が、ドラム缶を接収する企業ねぇ
確認して、悪い企業ならお膳立て、優良企業なら事前に話通してそれっぽく仕込んでおくか。
出動していきやがった。
「おーい、今日はノアか。こう言う事があってな。この区画の企業の詳細を見てくれないか。迷惑かける、自覚してるならか? これだけは仕事柄な」
浴槽を奪うから「ニンジン」ねぇ……
「サオリ、本当に済まないが、家の隊員率いてあいつらの面倒見てやってくれ。お前も士官以上を狙うならいつも特定の部隊だけで動けるわけじゃない、お前へのテストだ。俺はアツコと後ろで見てるよ。後、化学薬品系のドラム缶ならそれとなく止めてやれ」
「任せてくれ、それくらい余裕だ、ついでにラビット小隊の試験もしておく」
仕事だ! とサオリが顔を上げた。
良い顔するねぇ、近衛古参兵思い出すよ。
調査の結果やっぱり、お行儀のよくない企業だった。
ブラックマーケットガード雇ってるんじゃないよ……。
今度監査を入れるようそれとなく資料をカンナに伝えておくか。
≪ピーラー作戦を開始する。コメンスオペレーション。≫
『了解した、行くぞ』
シャーレの通信車は完璧にウサギの会話を捉えている。
規定周波数だからしょうがない、暗号化も概ね記録されている。
「先生なんで私は待機なの?」
「後方だからこそ、見える物もある。観戦だけじゃないよ。いざとなったら、サポートに回るんだからな」
「一緒に、第2小隊と彼らの撤退路確保の検討だ」
「3つ用意してある」
地下と海路と地上か。
ところでアツコ、建設クレーンからラぺリングしてマコトの部屋の窓割ったのは本当か?
先生もなかなか無茶を言ってくれるが、預けられる部隊も精鋭だ。全体の練度向上も兼ねてるのか、或いは非公然作戦訓練か。
M24狙撃銃を展開したスナイパーと、観測手兼ねた自分をヤードの事務所屋上に配置する。
「突入を開始した模様」
「よし、収音マイク」
ふむ、ポイントマンに先遣偵察、これが出来ないと困るぞ。
概ねの動作は悪くない、所謂新人臭さが抜けてはいないが、グリーンズではない。
……そういえば彼女ら、青い制服だから文字通り尻も服も青いのか?
「っていうか、ミヤコ、何でお前が普通に指揮をしてるんだ」
「……RABBIT2、作戦中はコードネームを使ってください」
「ちっ、それは正論だけどさ……。ってかそれより、なんでお前が指揮してるのかって聞いてるんだよ」
この時点で先生なら落第点、帰投命令で別の部隊を投入してるだろうな、私も拳骨に行きたいぞ。
一番アテにしていい分隊内で揉めてどうする、他の分隊員もあきれてるぞ……。
「こちらアルファ1。HQ聞こえるか? 任務続行の可否を問う」
「通信良好だ、凄いクソボケ口論始めたな」
つまみがいるかもしれんなとスナイパーが呟く。
「リーダー、コントじゃないから笑っちゃだめだよ」
「HQからアルファ1へ。作戦は続行」
「了解。交信終わり」
サオリはそう言って無線を切った。
何だかんだ、アリウス改編後も姫は私がリーダーで良いと言ってくれた。この辺りを考えると作戦に関しては上も全権委任と考えてよかろう。
「文句言ってる子、教範と現実のすり合わせが出来なくて、私に倒された子か」
『アルファ2。コンタクト。R3』
Rとは要するにライフルマン、歩兵である。
『やりすごせ』
中々難儀な任務になって来たぞ、先生!
こんなのに15分かけてしまったのか私達は!? 電子制圧込みと移動時間が大半だが、もう少し短縮できたかな。
アツコが全滅は時間の問題かなと、チームに待機命令を出す。
「先生はどう思う」
「戦闘前に部隊長を決めてない時点で落第だが、敵は教科書を読む時間を与えない、こう言うのならまだ良いが、砲兵の制圧射中に教科書開けると思うか?」
「むりだね、細かい命令出すには先生みたいな戦場全体を支配できる指揮能力か、個々の判断力が必要」
それに長話のしすぎかな、声は案外よく響く。
アツコは「そういえば手話教室、受けがいいんだよなあ」と思った、案外こういうのも役立つものだ。
2人の話は良いとしても、相手が教科書通りに動くわけ無いだろ! クソボケッ……伝染ったか?
素人さんはなにするか分からないもんだ、たまにシャーレもヤケクソのスケ番に手を焼かされる。
『エンゲージ?』
『ネガティブ』
不許可だとよ。
雨が降りそうだ、ついてないな、天気予報にはなかった。
「に、逃げても良い……!?」
「高いところ! とにかく高い所に行って!」
「教範によれば、狙撃の基本は「視野の確保」高いところに登れば、多分殆どの状況で……!」
サキという生徒、思考が停止しているな。
なるほど高所に上るのは結構、で、高所の風は風速何Mだ?
「待ってください、サキ。あのタワークレーンは狙撃には高すぎて───」
鴨にされる。
それに見晴らしがよすぎる、制圧射撃で瞬く間にスタンして、排除される。
『アルファ1申し訳ありません。私達の後輩が』
『そう言うのは後で良い』
虚しいと言うよりままならないのだな先生……あっ。
乾いた銃声が轟く、会敵しやがった。
勤務中に飲酒してた奴が吐こうとして不意遭遇したらしい。
『こちらアルファ1。HQ。うさちゃんが見つかった』
「交戦を許可。制限付きで射撃を許可する」
『交戦開始』
サイレンスウォーかぁ、重車両が来ませんように……。
銃声を聞きつけて警備が向かっている、数はあまり多くない。
動きからして近所の不良の抗争かなにかと考えているのが丸出しだ。やり過ごすという選択肢が湧いたらしい、ウサギたちは隠れている。
『引き揚げていくつもりですね』
小雨がやる気を奪ったらしい、大半のガードが詰め所に帰ろうとしてる。
ただ、二体を除いて。真面目で結構だが、いまは困る。
『あ、サイレンサー落としてる』
拳銃にサイレンサー付けようとして落としたようだ。
ガードは訝しみながら近づいている。
『ドラム缶を撃て』
消音器のついたM24が1発放たれる。
ガードが異音に振り向き、化学薬品と書かれていたのを見て帰っていく。
……労働や安全規則無視が丸分かりじゃないか。
幸いそれ以降、会敵はしなかった。
退路選定は悪くない、ただ凝りすぎだ、予備案に転用できる余地がないな。
「こちらHQ、そちらの痕跡は敵も味方に見つかって居ない。良くやった」
事務所から降りて、コンテナから跳躍して敷地外へ出る。
そのまま指揮車と合流、機材も喪失なしだ。
「リーダーも皆もお疲れ」
「アツコをあいつ等のお目付けに直接付けた方が良かったかもな」
「多分、指揮系統が余計混乱して、私一人で作戦を行う事になると思うよ。私、あのポイントマンの子に良くは思われてなさそうだし」
HQ要員の疲労と呆れが理解できる。
上空のスキャンイーグルで観測中だが、作戦域離脱が遅い。
山狩りされちまうぞ。
「SRTの実力を見せるつもりだったのに、シャーレに見られていたら大恥だぞ……」
「ところでミユは何処に居るの?」
「一緒じゃないの? GPS反応重なってるし」
「あの馬鹿……無線機をバッグに入れたままじゃんか!」
しっかり見てるし、先輩方もう居たたまれないような顔してるぞ……。
というか装具の確認忘れてたのか、新規養成組なのは分かるが不安にならないのか?
アズサは単独でトリニティへ行ってたぞ、まあ色々やったらしいが。
いざとなればあのスナイパーを拾いにあそこ迄進軍かぁ……。
「こちらHQ紙はあるか?」
『こちらアルファ1。あるが、どうするんだ?』
「かぶって楽しいドラム缶とかなんとか書いてどうにか気づかれない様にこのカンペを読ませろ。それしかない!」
『こちらアルファ1。……実行する。失敗時のフォローは任せる』
ええいままよ!!
だがもう一つ良い手がある、さっき狙撃したドラム缶をもう一度狙う。
『ドラム缶……』
気づいてくれ……。
気づいた! 話し合ってる、被った……、やっちゃったよ、本当に被った。
幸い夜目は聞くのかフルーツ飲料系のドラム缶を確保していった。
『アルファ1。うさちゃんは仲間を回収。撤退に入った』
くそっ、泣きたいのは私達だよ。
狙撃手を回収してウサギは撤収へ入る。
『こちらアルファ2。うさちゃんが見つかりました』
『アルファ2へうさちゃんは?』
『離脱中、ドラム缶を被り撤退中』
ごろごろと転がり、ついには飛んだ。
景気よく舞い上がったドラム缶は、フェンスを超えて外に出る。
「撥ねられたら笑えないな」
「大丈夫、ちゃんと監視してる」
アツコが安全第一と書かれた看板を持ち出す。
ああ、うん、道路封鎖はそれでするのね……。
これでドラム缶お釈迦にしてたら許さんぞ!
「こちら、ラビットネスト、うさちゃんは巣に帰った。水浴び開始!」
今日は帰ったら、飯食って風呂入って寝よう……。
なんだかもう疲れた……。
願わくば今回の作戦で得た教訓をちゃんとデブリーフィングで確認してくれ。
状況終了……
【次回予告】
変わる、変わる、変わる。
この世の舞台を回す巨獣が、奈落の底でまた動き始めた。
天地がきしみ、人々は呻く。
舞台が回れば、吹く風も変わる。
昨日も、今日も、明日も、硝煙に閉ざされて見えない。
だからこそ切れぬ絆を求めて、褪せぬ正義を信じて。
次回「 高級牛肉 」
変わらぬ正義などあるのか。
覇道進撃の暗殺者への尋問でも近衛古参兵の方が切れてたり。
アクションとかである、NPCの道を作ったりするミッションありますよね。
感想は最新話で無くても好きな話のとこで構いません。
各章で戦闘内容も違ったりが多いので。
今年のナポ先の誕生日のお話について(傾向が気になるので)
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王道に水着イベ
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並行世界orIF編
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5章2部まだ?
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記念日なら2話連投して♡