キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

41 / 148
ゲーム開発部が何か企んでいるので初投稿です


8月上旬 パヴァーヌ2章 「友情と栄光と低予算のロマン」
ミレニアムの一番長い日 前編


 

 

 

 そうだ、今日はミレニアムに行く日だ。ついでに、不本意ながら顧問をやっているゲーム開発部部員の呼び出しのお陰だ。

 定期確認と装備の整備などやることは多い、会長の仕事量を増やすと言ったが、残りの一人のあれは何だ? 

 俺の知り合いなら、とんでもないギャンブルに使われること請け合いだ。

 次やったら、ティーパーティ接待用のウサギ狩りの目標にさせて貰おう。*1

 

 おしゃべりドライバーの話を聞きながら、ミレニアムに到着する。

 ミレニアムに行くときは家のスクワッドを連れていくことにしてる。

 主要な部活から連れてきて欲しいと言われているのだ。人気者だ、エンジニア部には「動き回る人物に合わせる装備などに良いらしい」C&Cの部長は身長が小さいから……と言う訳だ。

 ゲーム開発部は家で使えるモーションアクターじゃないと言われた。*2

 

「あっ! 先生とスクワッドが現れました!」

「元気にしてるか? アリス低出力連射モードもいいだろ?」

「あいつ等元気か。いや元気じゃないと逆に怖いな」

 

 サオリが抱き上げようとして苦労する、見た目相当に扱ってやれるのはアイツぐらいだ、おかげで良く懐いている。

 じゃぁ、エンジニア部行くかぁ、ヒビキが体力を付けているか確認しないとな。砲を扱うなら体力が要る。

 アツコの服の作成を対価にしたら承諾してくれた。

 

「素体が良いと服も輝く……!」

 

 ヒビキが尻尾を回転させながら、イメージ図を描いている、ヒビキが興奮するのも良く分かる。

 前エンジニア部に砲兵の話をしてやったら感銘を受けていた、ゲテモノが出来たとしても砲兵の布教が出来たとしたら嬉しい限りだ。

 次にチヒロに進捗確認とクローバーとその前後の作戦で押収した証拠も渡さなければ。そして多分待ち受けてる、防衛室との戦いに備えて家の電子オペレーターの技能向上の講習もだ、モンエナ箱で送れば良い奴は居るんだが、チヒロには愛飲してほしくないので、ギフトカタログを送ろう。

 会長はどうして俺とユウカのやらかしを暴こうとしてくるのだろう……そんな怒るのか?

 そろそろ和平にしてもいいんじゃないのか、その後ヒマリカート*3で遊ぼうぜ。

 今日はユウカの方が出迎えてくれる、こいつの後輩分は手伝ってやらないと流石になぁ……*4

 

「じゃぁ昼前にゲーム開発部部室集合な」

「了解した」

 

 

 

 

「ふぅ、とりあえず私達の最低量の仕事も早く終わるわね、変なもの入れる人が居ないお陰だけど」

「おかげで、予算申告偽装見抜く力が上がったと言う事で、トントンと言う事で」

「二人とも楽しそうですね、そろそろお昼ですよ」

 

 最近この二人が逞しくなりすぎて困って来た、この2人の権利を羨むやつが増えているが、少なくともシャーレでそれを言う奴は居ない。*5

 

「おーい、モモイさん、この前資料も送ったんだ。次作は大丈夫だよな?」

「ここクリアしたら、取り掛かるから待ってー」

「おねーちゃんそれやって前電源落とされたでしょ?」

 

 こいつ、この前ユウカに予算通してもらえず俺に泣きついてきたが、俺でも出さないパーフェクト申請書だった、鼻紙にしてゴミ箱にダンクシュートしなかったユウカは我慢強い。*6

 

「掃除してるの貴方達、先生に予算申請書全部投げたのは覚えているわよ?」

「ゲーム開発とゲーム機保有の部室が雨漏りは不味いだろう……」

 

 そのゲームはオートセーブなの知ってるんだぞ? と目線を送ると座布団3枚持って来た。

 

「さっ顧問様、会計様、書記長こちらにどうぞ……ミドリ接待宜しく、私はお茶菓子と飲み物用意するから」

「えっと本日の要件は、次回作の構想とそれに掛かる予算と時間日程の調整を……」

 

 ミドリから一番大事な要件を纏めていると奥から

 

 カルビスは指一本でいっか、部関係者だしね、お菓子はまだ半分残ってるポテチで良いかとか聞こえた*7

 ティーパーティーに研修で送ってやろうか? またナギサの面白い顔が見れそうだ。*8

 

「難しい話はここまでにして接待の時間です、へへっ」

「一番大事だろ……」

 

 カイザーでももう少し詰めるぞ。

 

「あっ、この前皆で行った水族館の写真飾ってるんですね」

 

 ノアが反応したのは臨時集成ゲーム開発部戦隊とアビドス組も誘って団体割引で行った水族館の写真だ、シャチのショーで最前列に居たモモイがずぶ濡れになりかけてたので、防水着を被らせて電子製品を預かっていて良かった。

 煩かったので俺とユウカとノアで謝り倒したんだぞ……楽しかったけど。

 水生生物完全図解は高かったが私費なので怒られなかったし、ホシノが欲しそうにしてたので、クジラのぬいぐるみセットで買ってやった。*9

 

「待たせた、エンジニア部が離してくれなくてな。後、映像作成部にモーションアクターも頼まれてな」

「お疲れ、モモイさんモーションアクターと設定考察班チームにも接待が居るんじゃないのか?」

「サオリぶんたいちょーは家のゲームだと持て余す動きをなさるから*10……お茶入れてきます」

 

 ウサギと出会う前に「最新の流行りを確かめるためにも3Dゲーム作ろう!」と言ってきたのでモーションアクターをサオリに頼んだら。

「スタイリッシュアクションは家の部だと持て余すなぁ……」との事だ、シナリオライター殿の思い付きでグラフィック班が卒倒する悲劇は避けられた。

 

 因みに初心者で慣れていないと舐めて格ゲー挑んできたので、撃退してやった、お前の手癖は理解してるんだ。

 ボードゲーム好きも多かったので、今度原義の意味のウォーゲームでもしてみるか……とやってみるとこれが中々面白い。

 

「粗茶と菓子でございます」

 

 俺とユウカの方がお前らの心臓握ってるんだが? そう言えばこいつ、ノアのカルビスも濃いめにしてたな……。

 

「もう一戦、もう1戦」

「しかたねぇなラス1だぞ、ラス1」

 

 ダイスを振りながら、紙切れの上のユニットを動かす。

 

「なんだかんだ言ってお姉ちゃんに甘いよね先生」

 

 これが終わったら企画会議だぞ。

 企画意義だったが、俺が言う前にサオリとアツコの指摘でつぶれる企画を出すな。

 先生が出すような強いボスがいっぱい出てくるやり込み系は? 

 

「それこそ、サオリにモーションアクター頼むような、グラフィック必須だろ。どんなに安くしても」

「ミレニアムプライスどころかミリオン売り上げ狙えるの作れよ」

「拝金主義者め!」

「ボランティア活動じゃないだろ! お前らの活動」

「第一次企画会議を始めても宜しいでしょうかモモイさ~ん~?」

 

 ユウカのお陰で企画会議はしっかり進んだ、さすがノアとユウカだ。

 前回48時間制作に参加した連中はある程度意見を述べる権利があると思う。

 第2回目も楽しみだ、シナリオライターはもう少し後だな。

 メインデザインが決まった後にやろうな! 

 

「じゃぁ、先生はアリスちゃんとアイディア探しお願いします」

 

 雰囲気に一番慣れてないサオリを護衛に連れて外に出る、ミサキは部室と同化してゲヘナの野望トリニティの逆襲を遊んでいた。

 

 

 

 ミレニアムとゲヘナ境界線まで歩くことになった。

 スミレ部長と長距離歩行の話やC&Cの2人が私服だったり、「サオリはジョブチェンジしないのですか」と聞かれると「私は戦闘中にジョブを変えるジョブなんだ」と答えた、ここら辺組織性の違いも出るよな。

 あのメイドはある意味非公然作戦部隊だが、荒事や濡れ仕事はあまり好んでいない。

 カリンに口止めされたが俺は何も聞いてない、いざとなればアカモップ様から通達があるでしょう。

 ネルがアリスを探してるそうで、大層驚いていたが、撤退を宣告されて退却した。

 その後も行く先々で可愛がられてるアリスを眺めながらサオリへ呟く。

 

「あんな子があのようなスペックを持ってるんだから驚きだ、持ち上げれば納得できるが、体捌きを覚えればミカと唯一インファイトができる子になるだろうな」

「そうならないようにするのが俺達の仕事だ、その為に俺の護衛とか言い訳付けてお前達も連れて行けるようにしてるんだ」

 

 また進むとエンジニア部と出会い、朝の話の調整と、光の剣の話をしたり、サオリがまた試供品評価を頼まれていた。

 エンジニア部はかなり受けが良い、想定外の動きや現場の意見は恐れていない、失敗は恐れても好奇心は恐れない。

 

「こ、これは」

 

 エンジニア部の倉庫に並んだ大量の見慣れぬ筒を見てアリスは声を上げた。

 

「ああ、それね」

 

 ヒビキがあんまりおもしろく無さげに言った。

 

「量産型レールガン、つまりアリスの剣の量産型だよ」

「これは主人公機の後に来る量産型というやつ!」

「概ねそうだね、軽量化されて電源はカートリッジ交換式」

 

 ヒビキはよいしょと担いだ。

 傍目から見ると対戦車火器のように思える。

 

「でも良い経験にはなった、いまアリスちゃん用のフィードバックと改修案を」

 

 そこまで言ったところでウタハが差し止めた。

 誕生日までひみつ! と慌てて止めた、良い奴らだ。

 その後慌てて誤魔化す様にコトリがお使いを頼む。

 

「お使いクエストですね」

「長いけど、良い装備がもらえる奴だな、勇者の剣より使いやすい武器が手に入ったりな」

 

 その後散歩を続け帰りの電車駅に着くと、ある意味見慣れた影が居た。

 

「見つけた、チビ」

「俺の事か!?」

「何で先生なんだよっ、サオリより高いじゃねえか!」

「いやちとむかーしの俺の周り、基本平均175クラスばかりでな、良く言われたもんだから、つい」

「巨人の群れみてーだな、その空間」*11

 

 何の用だと確認したら、アリスとゲーセンらしい。

 アリス、人をチビや小さいと言うもんじゃないよ、大変失礼だ、百鬼夜行だと忍者にブレー・ウチされるぞ。

 

「私への用だと思ったが……」

「ここやゲーセンでお前とやりあうと迷惑が掛かりすぎるだろ!」

 

 至極ごもっともであった。嫌がるアリスがサオリの足と俺のコートを掴むが、一緒に行ってやると言う事で場を収めた。

 

「良いかサオリ、この手のゲームのクレーンは弱くて碌な物が取れないんだ、欲しいものがあれば店員と交渉した方が良い」*12

「なるほど」

 

 アリスとネルの対戦を横で見ながら、ゲーム献体への評価をしてたり。

 ダンスアクションやガンシューティングは流石だった。俺は台パンする自信があるのでやらない。*13

 

「そこの営業妨害コンビ! 眺めてるならこっち来やがれ」

「先生、サオリ。チビ先輩が返してくれません~」

「ネル幾らでも付き合わせて良いぞ」

 

 小さいって言うなって俺は言ったぞ。

 

「よぉし、サオリお前も一緒にやろうぜ!」

「行って来いよ、そう言うのも大事だ」

 

 どうなっても楽しくなるだろう。

 

「先生はどうだ?」

「俺、台パンやりそうだからやめとく」

「おっ、おう……そこは良心あるんだな……」

 

 楽しい時間はアカネが来てお開きとなった。ゲームは一日一時間。

 

「先生は一日3時間は遊んでる時あるが……」

「ケースバイケースだ」

 

 機密漏洩だぞサオリ。*14

 

 

 

 

 アリスのメイドリアリティショックは治ると良いな、最初家の隊員が言って居たが良く可愛がられる物だ。

 隊員の受け売りではあるが。

 お前の冒険でもあり俺の旅路でもある、なぁに俺がくたばるまでは付き合ってやるよ。

 

「先生、そろそろ釈放してくれないか?」

「マキが見つけたロボット見たいんだが」

「お前らそう言うのは、事件のフラグだからやめとけって、部長の許可取れ許可!」

 

 ヴェリタスの常習犯をシャーレの反省房に叩き込んで釈放要求を聞いてるとさんざん言われて、深いため息をついていた。

 

「確認した後また戻っても良いから、一時釈放ってことでお願いします、保釈金代わりにハックツール作るからさ」

 

 何かしでかしてもまずそうなので、仮釈放して同道して見物に行った。

 ヴェリタスの部室で待ってたマキに誘われてみると。

 

「すっごいあれなデザインだな? 家で引き取って粉々にする?」

「やめてよ、大発見なんだよ!」

 

 アレだこれだと叫んでいたら、ゲーム開発部が入って来た。

 

「例の物見せてよー」

「あっ先生だ」

「検閲と現場検証中だ。退去しなさいー」

 

 チヒロにこれ以上仕事を増やすのは申し訳無い、独房に帰る時間だ、馬鹿ども。

 

「横暴だー」

「ミレニアムの自治権内だよー」

「お前ら二人の立場を忘れたか? ただの犯罪者だよ。お目こぼしはそう何度もされんぞ」

 

 お前らこんな怪しいロボ5つ良く拾って帰る気になるな。

 そもそもだが危険物だ、こういうのはろくでもない。

 

「あらゆる非破壊検査効果なし! つまりなんも分からんのだから」

「コメディかと思ったら急にホラーになったような……」

 

 モモイの言う通りだ、こいつが言うんだかなりヤバイ。

 破壊検査にしても専門家を招集してやらねばならない。

 

「面白いロボットなら最近シャーレの付近に転がってな、そっち見に行こうぜ、なっ」

「ヒッピーじゃんそいつら、言動が面白くて無害なだけで」

 

 デカルトの所確幸が最近家の庭でうろついているが、一度アリスクの凸を食らったのもあり、変なことするより俺に媚を売っておく方が得と考えたようで良く絡んでくる。

 空き缶100個や空薬莢20kgで食堂の無料券1枚と交換と言うと怪しいなんちゃって清掃集団にはなったが、今度は不良から自分達の後、付けて来てこまるから何とかしてくれと言われた。

 ゴミのレートをデノミするべきだと思う。

 

 

 馬鹿なこと考えていたら、電源も無いポートも無いと来た、ふざけんな! 

 溶接機かなんかで物理的に作れと言ってやったらまたブーイングを食らった、俺が悪いのか? 

 うるせぇ解体してから考えろ、5個もあるんだぞ! と返したら「砲弾もそう扱いたいのかバカ」とハレから真面目に批判された。

 そう言われると途端に納得がいった、確かにそれはヤバいな。

 すると、アリスがその機体へ手を振れた。

 低い駆動音が響く。

 

『セミナー管理室だ! 電力使用量が跳ね上がってる、お前ら何始めた!』

 

 壁の電話機から慌てた役員の声が聞こえ、コタマが端末を確認する。

 

「分かりません! ハッキングや電子攻撃の類ではないのは確かです!」

『だが区画電力が30%も……ああなんてことだ、50……80……まだ伸びている!』

「電力路の閉鎖は」

『いま用意してる!』

 

 駆動音が停止した。

 ただならぬ沈黙。

 冷や汗が出た、側面に敵が現れたと言う連絡を聞いたクラスのヤバさだ。

 チヒロが非常警報を起動させる。

 

『非常警報が発令されました、全人員は速やかに退去してください』

「先生! 貴方のスクランブル部隊を! ……どうにかなるか分からないけど」

 

 ゲーム開発部を避難させろと隊員に命じ、ヴェリタスの人員が速やかに必要機材を確保して退去する。

 

「アリス! 早く!」

「……コードネーム「AL-1S」起動完了」

 

 アリスが不可思議な輝きを放つ。

 外からセミナーのLAV-CPが走ってくる音が聞こえた。

 瞬間、紫色の爆轟が轟いた。

 

 

 

 リオ会長は非常警報を聞いて直ちに回線を確保させた。

 電力使用量と”異常存在”の信号を確認したのは最悪の事態であった。

 

『現在セミナーの部隊を投入して状況を』

「無いよりは良い! 増援も投入する」

 

 眩い輝きが貫く。

 会長の執務室の窓から、紫色の爆轟がそそり立つのが見えた。

 数秒遅れて、爆発の衝撃波がビルを揺らす。

 

「展開中のC&Cは!?」

『衝撃波、電波障害で連絡不能! 詳細不明!』

「直ちに区画に熱滅却とクオーツ単位で分子分解する用意も進めなさい」

『はい!』

 

 リオ会長は深く椅子に座りこんだ。

 あまりにも予想外だ、今までにない事例である。

 シャーレの輸送ヘリが該当区域での作戦活動をする事を許可し、作戦部隊展開地域を連絡する。

 何とかなると良いが。

 

 

 

 ブラックホークが降下し、緊急展開部隊とミレニアムが派遣した展開部隊が合流する。

 流石にリエゾンしているだけあり、連携はスムーズだった。

 半径数キロが爆発の威力と衝撃波で吹き飛んでおり、シャーレの隊員ですら困惑している。

 当たり前だ、ここはミレニアムである。

 ゲヘナではない。

 

『第3班前へ!』

 

 大きな筒を抱えたセミナー役員たちがミレニアムのチヌークから降下し、前進する。

 明らかに戦闘部隊だ、救助作業の雰囲気ではない。

 確かに異常だが、ミレニアムでここまで破壊を起こすヤツは過去ほとんどいない。

 

『対象捕捉!』

『スイッチを3秒間のホールドにセット!』

『エイム!』

 

 射撃号令、隊員はレーザー双眼鏡で狙う方向を見た。

 崩れ残った部屋の痕跡がある場所に、見慣れた少女がいる。

 あれはアリスだ、間違いなく! 

 だが撃つつもりだ、どういう事だ。

 

「射撃待て! 状況はどうなってる!」

『撃てェい!』

 

 9人分のレーザー照準で補正された新型レーザーは、一斉に目標へ、アリスへ飛んでいく。

 しかしそれを、展開したシールドが受け止める。

 あれはユウカさん、いやコトリさんの奴だろうか? アリスちゃんにそんなこと出来るわけがない、あの子は。

 

『キルできず。第二射で目標のシールドを飽和させる! 撃てェ!』

「おい!?」

 

 続く第二斉射。

 これをアリスは片手をむけ、エネルギーの光線を吸い込む。

 ミレニアムから展開した緊急展開部隊は唖然としている。

 

『なァ……』

「嘘だろ」

 

 そしてアリスは彼女のレールガンを構えた。

 

『退避ィ!』

「総員退避!」

 

 飛んできたレールガンは駆け付けたLAVをまるで濡れ紙のように両断し、避難が完了したビルまで貫通した。

 弾体がかすめた衝撃波でブラックホークが浮き上がり、ひっくり返る。

 

「おい! 状況は」

 

 漸くネル部長が駆け付け、アリスを指さす。

 思わず腰が抜けた、あれほどの力がある存在を、受け入れるのはたやすい事ではなかった。

 

 

 

 眼が覚めたら周りがみんなドカンパーだから驚いた、アロナバリアがあったのと、サオリが直前に庇ったおかげで助かった。

 1番爆心地に近かった、いや爆心地にいたモモイをシャーレの医務室に担ぎ込んだが、余程当たりどころが悪かったのか意識不明だ。

 何かうなされている、ヴェリタスの2人には再収監を見逃す代わりに大きな貸しを作ってやった、次のカイザーと防衛局との戦いに動員してやる。

 モモイの持ってたゲームが急に起動したのは記録上間違いなかった、ネル部長がアリスをぶん殴って地に叩き落とし、強制停止させたお陰で被害は抑えたらしい。

 あれヒマリが探していたんだよな、アイツが黒幕か? 連絡すらないし……。*15

 

 アリスは現在シャーレの対爆施設で証人として管理している。

 記録官は「何日も飯も食わずただ恐怖に震えている」と面会を拒否したと呟いている、だがミレニアムの対応は早すぎる。

 それに緊急展開部隊は「レーザー砲装備部隊が出た」と報告している。

 証言や資料が足りないので、アリスと話し合うことにした。

 

「先生」

 

 サオリ大丈夫だ、此処で怯む方がクソ野郎だ。

 話を聞くどうやら自我は無く「セーブデータ」があったかのようだと言う、クラッキング? ますますヒマリが脳裏をよぎる……。

 その予想はある意味正しかったのかもしれない、ミレニアムの生徒会長、リオ本人が来たと連絡を受けた。

 

 ”AL-1S(通称アリス)の引き渡し要求”を携えて。

 

「どういうことだ」

 

 面会を謝絶されたゲーム開発部メンバーが、先生やサオリの後ろに隠れる。

 話を聞いて本館勤務中のユウカもやってきた。

 だが分からないのは、AL-1Sの名前を知っていることだ。

 

「連邦生徒会の命令書も得てきたわ。本学園破壊及び戦闘のテロ容疑者引き渡しを要求します」

「まだ捜査が済んでいない、暴走の危険を加味しシャーレが預かるべきだと助言させて頂く」

「お心遣いには感謝します。しかし本案件は”専門家”が居ます」

「ヒマリか?」

 

 重要参考人と書かれた資料を提示する。

 

「同じような結論に至ったようで何よりよ、先生」

 

 リオが珍しくイントネーションを柔らかくする。

 

「話の内容が見えてこないんだが」

 

 リオは襟首をただし、言った。

 

「今回案件についての私の不手際は申し訳ないと思っているわ、まさか監視網をすり抜けて第三種接触するとは予想外だった」

 

 ゲーム開発部とユウカが驚いている、リオがこのように話すこと自体が珍しいのだろう。

 

「そしてそれに先生が巻き込まれたことも」

「会長は……会長はなにを言っているんですか……」

 

 深い絶望を滲ませて、ユズが尋ねる。

 

「古代の”存在してはいけない葬られてしかるべきものの話”よ」

 

 くそ、スフィンクスで砲撃練習をしたバチが当たったか、アビドスで借りは返したと思ったのに! 

 先生が無言なのを対照的に、リオは話を続ける。

 

「あなた達が見た通りあれは容易く文明を破壊する力を有している、チヒロが緊急警報を鳴らし、先生が非常警報を伝えたお陰で爆発に際して死者は出ていない」

 

 その言葉を終え、リオはアリスの方を見る。

 

「あれはね、どんな可愛らしい見た目をしても、ユズ部長の様な背丈をしても、ヒマリ部長のような顔をしても、ましてサオリ分隊長のような身体をしてようと本質は超兵器そのものよ」

「承服できません!」

 

 ユウカが声を上げる。

 

「現時点ではあまりに不確かな情報ばかりです」

「不確か? 少なくともシャーレは活動の中で見て来たでしょう」

 

 リオはぱちんと指を鳴らして、ホログラム資料を映す。

 ビナー、ケセド、ホド、デカグラマトン。

 そしてヒエロニムス不完全体、アリウスで発見された未使用の巡航ミサイル、封鎖区域のドロイド、例の謎のロボット、教会のステンドグラス。

 

「”一度もそれを疑問に思わなかったのかしら”。”異常を通り越した強権、強大な武力、忽ちのうちに一切合切を解決する大人”」

 

 映像資料は見慣れた”ゲマトリア”、そしてカイザーの発掘調査資料へ移る。

 一部解読したカイザーPMCの資料には”超古代兵器の痕跡”が各所で存在していると映していた。

 

「”トリニティとゲヘナの和平”。”アビドスの廃校阻止と発掘調査阻止”。”アリウス戦役”。貴方の仕事は……まったく以て素晴らしかったわ。ついにはAL-1Sまで見つけたんだもの」

 

 映像には廃墟に潜るシャーレ分隊や、封鎖区域の掃討作戦、デカグラマトンの遺産の軍需工場破壊作戦が映る。

 

「まさに、スペシャリスト。色彩招来の儀式すら阻止したものね」

 

 リオはやや恐縮したように言った。

 

「貴方は貴方のやり方で世界を救おうとしている。砂漠の戦いも廃墟の探索もエデン条約もアリウスの解放も防衛室への強いフックを手に入れた事も」

「ち、違うよね、先生! 先生は……」

 

 ミドリは泣きそうになりながら尋ねる。

 ユズは無言で、その場に崩れ落ちた。

 ユズ部長やユウカには確かにこの理屈は筋が通ると理解できていた、全て辻褄があう。

 

「そして貴方は、AL-1Sすら管理しようとした」

 

 リオが命令書を渡し、移送を命令する。

 

「確かにそれは理想的でしょう。でも、私は悲観主義なのよ」

 

 彼女が世界を滅ぼす前に、私が措置する。

 そうリオが言った途端、あのやかましい声が響く。

 

「う~だうだ煩いんだよこのクソバカがァ~!」

 

 モモイが点滴用の移動補助具で滑りながら現れる。*16

 危ないからやめろ、また昏睡したいか。

 

「ごちゃごちゃうるさいじゃい! アリスはアリス! よく分かんない設定盛っても破綻するだけでしょうが!」

 

 普段のてめえのゲームじゃねえかそれ? 

 それは言わない程度に大人であるから、黙っておくが。

 

「あら、元気そうで何より。爆心地に居て生きていられたのは不思議の限り」

「スーパーモモイはめげない、しょげない!」

「そして書類を書き換える?」

 

 モモイが言葉に詰まった。

 

「まあ、あれは許すわ。アリスの性能を図るテストだったけど、代わりに変数たる先生が見れたし」

 

 隊員がドアを開ける。

 

「来なさい、アリス」

 

 アリスが顔を挙げる。

 

Do you Hate hurting other people(誰かを傷つけるのは嫌い)? なら、そうできる」

 

 こくりとアリスは頷く。

 サオリが動くか? と尋ねるが、分が悪い。

 完全な違法行為はいま出来ない! 誤魔化すのは不可能だ。

 公的書類と正式な認可なしの実力行使は敵対勢力に露見したくない。*17

 

「じゃあね」

 

 見慣れないメイドが、リオの乗るストライカーの後部ドアを閉めた。

 

「……偉い事になってしまった」

 

 シャーレの権力無し、アリウス投入も難しい、かろうじて現地戦力が使えるとしても相手も悪い。

 そしてなにより、リオの真意を確かめる必要がある。

 後者はリオへの回線で判明した、対象当該機の機能停止が一番確実だと。

 

「どうしようユウカ」*18

「どうしよう、じゃないですよ!止めなきゃだめでしょ」

 

 ユウカの言葉が、シャーレの執務室に溶けていった。

 

【次回予告】

 

暗黒の過去から届いた、無名の司祭からの誘い。

謎の香りに包まれた、絶対権力の甘い味。

そこには、欲望を満たす全てがある。

神への誘惑に、あらゆる野心が魅せられる。

 

次回「ミレニアムのいちばん長い日 後編 」

 

神の意を受けるのは誰か。

 

 

 

*1
お誕生日おめでとう! 

*2
ドット系の限界ミドリは悪くない

*3
最近の人気はダブルダッシュ

*4
普段手伝って貰って負担強いてるのでちょっとは負い目がある

*5
あの仕事量見て同じこと言えんの? 

*6
この先生はやるタイプ

*7
後輩にやったらいじめを疑われるぞ?

*8
これがメイドイベント? 

*9
ここまでして暴走するバカはおらんだろ

*10
明らかに態度が違う

*11
擲弾兵とか凄いぞ、180が最低ラインだ

*12
店によって異なります

*13
台バァンとかしそう

*14
逞しく育ちました

*15
日ごろの行い

*16
絶対真似しないでください!

*17

*18
クソレア光景であろう




善意的に高評価されてるゆえに、撃たれる手が最善手。
タイムリミット付きだ。

今年のナポ先の誕生日のお話について(傾向が気になるので)

  • 王道に水着イベ
  • 並行世界orIF編
  • 5章2部まだ?
  • 記念日なら2話連投して♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。