キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
ロココ様式のこの部屋での会話もひと段落した頃。
「と言う事だ、皇帝は案外無秩序をとても嫌う、機嫌は悪いだろうね」
”生徒たちはどうなるのかな? ”
彼の問いにタイユランは「彼の武器は寛容、とだけ」と返した。
そういう話がまとまりつつあるとき自称警察長官がポップコーンのおかわりを取って帰ってきた。
「ひゃぁ、過信した凡人が狂うと恐ろしいねぇ! ロベスピエールもバラスも選択しない最悪手だ!リヨンじゃなくパリの中央にそれを打ち込めばすべて台無しだからねぇ!」
「弾道弾をシラトリぶっぱって正気じゃありませんよ!? アビドスの何倍人口居ると思ってるんですか!?」
二人が高い声(歓声と悲鳴)を上げる。
「ジャコバンでも使わなさそうな手だねぇ、粛清で不満分子を消すのとは訳が違う。子ウサギ公園ではなく、シャーレビルが弾道弾で狙われてるそうだ」
”どういう事!? ”
「反転して恐怖になっただけさァ」
タイユランはふと思い出す。
「そう言えばきみ、スタン・ヴォイエンヌイって分かるかい」
”たしか、戒厳令か”
先生の言葉にタイユランはそう翻訳されるのかと頷き、言う。
「ポーランド語でね、実はそれは英語の意訳なんだよ、正しい意味と違う」
”じゃあなんていうんだ? ”
「戦争状態」
先生は頭を抱えた。
届いた封筒を開けたユウカは卒倒しかけた。ヘイローも点滅している。
差出人不明の郵便は夕方に到着した。
「どんな、恐怖の手紙だったんですか?」
イロハも顔が青くなった。
「もう、皆どうしたの? ゲヘナや会計ちゃんが読めないくらいの手紙って、わぁお……」
ミカはお姫様なので辛うじて、テープを再生できた。
「私も弾道弾耐える自信はないじゃんねぇ……*1」
テープを聞いたユウカは最後の力で、これを先生にアリスクの子に頼んで最速で、後対爆バンカーに避難誘導を出してほしいと言い残した。
ユウカは本気でキレていた、いまなら戦艦購入も通るだろう程度に。
軽く軽食でも食うかとカツサンドを三つたいらげているサオリに、若いなこいつとコーヒーを飲む。
公安局長は一時帰宅した、一人の時間が、いま彼女に必要だ。
すると、持ち帰りでサンドイッチを買おうとしている見慣れた連中を見つけた。
「おっ不良警官共どうした?」*2
見慣れた二人が振り返る。
キリノとフブキが「よっす」と片手をあげた。
「ここらで一休みですよ、生活安全局もお払い箱と言うか対応外です、会計科まで動員しろとか何考えてんですかねあのひと」
「早退みたいな物だよ、街頭警備で負傷手当貰うのはうち等の仕事じゃないしねえ」
呆れたもんだと笑っていると、爆発と銃声がまた聞こえる。
サオリがドアを開けてみると、近くのフードコートが爆炎をあげていた。
煙の中からステンガンやスターリング短機関銃を乱射するヤンキーが現れ、Mk2手りゅう弾をぶん投げた。
ズドーンと爆発音が響き、FNC小銃を構えた治安部隊オートマタが腰だめの水平射撃で応戦している、うちなら誤射警戒でやらないやり方だ。
『テロリストの爆発により本施設は封鎖されます、皆さま一列に並んで検問を受けてください』
「またテロですか」
「ドーナツ喰う暇もないや」
相当情勢不安は最悪らしいな。
カヤのアホ、人海戦術で夜まで足止めすればいいものを。
なんなら自分から堂々と出てきて話し合う雰囲気を作ればよかったのだ、ワカモ以外なら話せるだろ! 仮にそれで死んだら諦めろ*3。
すくなくともバラスはアホだがそれが出来た、度胸はあったからな。
「キツネが三匹」
サオリがにこやかに外に手を振る。
投降か? もしくはなんだ?
話があるなら聞いてやるから、連れてこいとサオリに頼む、お冷にしておこう、嫌な予感がする。
サオリを撒く気力もなかったようで、狐3匹を連れてきた。
「よお、防犯パトロール以来だな」
「ご無沙汰してます」
「稲荷屋お前のとこの、家の会計にも受けが良かったぞ」
「ありがとう、ございます」
前合った敵意に近いものすら感じなくなっている、そしてあれから随分やつれている。
一番、俺が話しやすい稲荷屋に問う。
「どうした? 稲荷屋一人足りないし、全員憔悴してるぞ」
「あはは、私はニコ、こっちはクルミちゃんで、後ろに居るのがオトギちゃんです」
「要件は?」
「家の小隊長のユキノちゃんが……」
そろそろ矛盾に耐えれなくなったか、そして友人をそれに巻き込んだ罪悪感。
ま、いいかげん見切りをつけて投降しても良いだろう、司法取引でもしてやる。
「今ならある程度は便宜も図ってやる、小隊長はカウンセリングが居るかもな」
通夜みたいな雰囲気に成った、テーブル席に、「見つけた」とアツコが飛びこんできた。
「どうした息を切らせて」
「先生不味いよ……」
お前まで顔が青い、水飲め水*4
アツコから受け取った手紙とテープを再生すると、テーブル席ご一行はこの世の終わりみたいな顔になった。
「タイムリミットは?」
「早くて明日の12時……」
ジェネラルの通報が早くて助かった……、まだ辛うじて準備が打てる。
あのボケナス、手紙に諸々の証拠を送付しやがったが自分の失点は隠してやがる、司法取引を狙うのはうまいな。
「スクワッドを全員招集しろ。ユウカも連れて行く!」
「どうしてだ?」
「数字に強い奴がこの手の作業に必須だ、前に詫びで貰ったヴェリタス謹製のハックツールがあっても限度がある……」
テーブルに2万乗せる。
「中座失礼、これで好きに食べてくれ、狐諸君、友情でサイロに向かうは結構だが、その結果起きた後を考えておいてくれ、想定される威力の弾道弾だと出る死傷者の数、死んで逃げる卑怯者では無いと私は最後に信じている*5」
カンナに電話をかけ、そして携帯を閉じる。
今回、シャーレではなく、あいつらが日の目を浴びねばならない。
手紙に送付されていた場所へ向かう。
インペラトールPMSCはシラトリ区港湾地区に本社がある。
海上警備がメインのこの会社らしい立地は、人目に付きづらい。
元理事が「俺の会社なんだけどなあ」とぼやきながら会談室へ通す。
そこではカイザーのジェネラルが、ソファーに腰かけて待っていた。
「おい、ジェネラル! カイザーは今回に関しては妨害は無いな? あったらサーバーのデータぶちまけるぞ*6」
こくりとジェネラルは頷く。
USBを取り出し、ノートパソコンにさして情報を開く。
「この件に関しては、カイザーグループとしては邪魔はしない」
少なくともカイザーの末端部隊が一部だけだ、全て片付いたら連邦生徒会の部隊は投降すると言質を取った。
「最後の情報だがな。弾頭は実は色彩対策で二段起爆式のサーモバリック弾頭にしている。俺はお前に賭けるぞ。それではな」*7
「忙しい奴だなお前」
「敗軍の将ではあってもやることが多い」
ジェネラルは私服のロングコートを着込み、キャップ帽をかぶる。
軽く香水をふりかけ、彼は退室した。
表向きジェネラルは愛人の確認へ向かった事になっているのだろう。
ジェネラルから渡された情報を専門家*8、つまりチヒロ部長*9とウタハ部長に見せたら「こんな時間に何て物を見せてくれるんだ」*10とキレられた。
気持ちは分かる。
子ウサギ公園地下サイロの弾道弾はMIRV*11とか言うのになって居るらしい、通信先に専門家のウタハ部長とチヒロ部長をお呼びして性能を説明してもらおう。
要約すると8発の弾頭は6キロトン級の爆発力を持っている、カイザーは面制圧用の戦術ではなく戦域型兵器として800m半径にばら撒く様にした。
目標はシャーレ施設であるから空中ではなく地上炸裂だと思われるが、どっちにせよ近隣市街地は20キロ半径はドカンパーだ、爆風で窓ガラスが散弾と化すだろうし、被害は大きいだろう。
「203mm地中貫通弾で穴を開けれんか?」*12
「論外、地下施設で推進剤ごとこれが吹っ飛ぶのが見たい?」
「わあお」
作戦会議室は”極秘”の看板が扉にぶら下がっている。
正門前のカイザーはジェネラルのコネで退却した、死にたくないだろうから当たり前か。
お陰でチヒロ部長とウタハ部長を物理的に呼べた。
「よし。事ここに至って動くぞ、ユウカ、久々に前線送りだ」
作戦会議室の視線がユウカに集まる。
「潜るんですか? 私も? ミサイルサイロに?」
「数字の専門家が居るんだ、アリスクにしてもウサギにしても不安要素は潰す」*13
「先生は?」
「俺はこのバカ騒ぎ始めた奴に引導渡してやる」
既にカンナに話は通した。
「シャーレ本部ビルは?」
「ゲヘナとトリニティのトップが守っててくれるんだぞ?」
ミカとイロハがだから呼ばれたのか、と空を仰いでいる。
「あははは、ナギちゃんさよならのお電話かも……」*14
「イブキ私が居なくなっても元気に過ごすんですよ……」
今回の作戦のもう一つ軸も紹介する。
「SRT学園のラビット小隊です」
「えーと、同じく呼ばれたデカルトです。なんで?」
デカルトは本気でなんでだよと考えていた。
有臼清掃と書かれたトラックが某所の施設から出る。
実はシラトリ区地下には無数の通信や配線、電線ケーブルの保全トンネルがあるので、目にも止まらず地下を動くことは可能だ。
「噂に聞いた地下迷宮まで拝むとはな」
サキは車内でそう呟いた。
ミヤコもこうしたシャーレのブラックオプスの一端を見て、正直ワクワクしている。
思想はそれはそれとして、かっこいいなとは思っているのだ。
「な、なんで私が清掃員に」
「おめーが一番らしいからだろ」
運転席のデカルトへサキが返す。
少なくともA分隊は清掃ってツラじゃあないよなあ、サオリ分隊長たちはどうみても別の意味に見える。*15
「間もなく到着」
車は停車し、全員が降りる。
カイザーのセキュリティが数名、子ウサギ駅を塞いでいる。
サオリとデカルトが近づく。
「おいシビリアン。立ち入り禁止だ」
「はあ。マニフェストここ、わかる? おーけー? ヴぁにたす?」
全開のアリウス地方方言でサオリが許可説明書と命令書を見せる。
明らかにカイザーの治安部隊が「関わりたくねえ」という雰囲気を全開にして、困り果てる。
「ああすまないね。この子クソ田舎の文盲なんだ」*16
デカルトがIDを提示する、正規IDだからばっちりだ。
しかしデカルトのIDを確認していたカイザーの治安部隊がまじまじとデカルトの顔を見る。
「あ、こいつ前に職質から逃げたアホだ!」
「え、わたしシビリアン! 無害無害!」
「クソボケ―!」
囲んで殴られる、なんたる無慈悲。
横をするりと気にせず全員が通過する。
薄情者おおお! とデカルトは嘆いたが、役目は果たした。
目立ちまくるお陰で子ウサギ公園駅管制が制圧され、部隊はやすやすと地下サイロへ入れた。
「ひ、ひどいうさぎたちだ」
『カルバノグの兎だ、諦めたら?』
先生はご愁傷様ですと付け加えた。*17
アリウス分隊と離れ、ラビット小隊は別々の作戦行動に出る。
別れ際にサオリは「お前達なら出来るさ」と応援してくれた、勇気が湧いてくる。*18
地下通路の情報はジェネラルの資料が正確だったお陰で、迷わないで済んだ。
恐らく展開しているFOXの最も有利な閉所地下施設CQB、先輩たちの土俵だが、それでも信じてくれた。
「待ち伏せるとするならエレベーターまでの通路、そしてエレベーターか、モエ」
モエを呼ぶ、駅長室で捕らえたカイザーを監視しつつ、有線接続でシステムを確認している。
「カメラは諦めてほしいかな、先輩方ご丁寧に切ってるよ、用意周到~」
ミヤコはやっぱり? と肩を竦めた。
カメラやセンサーのない状況下、活かすは勘だけ、自分の得意なフィールドを最大限強化する、良いご趣味だ。畜生意地が悪い。
ただ逆に手は読めた、そういう状況なら。
”前方へ射撃用意”
サキが手話でしゃべる。
全員が即座に射撃体勢へ移行する。
「ようこそ、ってあれ!」
小隊三人とプラスでユウカが全力射撃する。
遊撃戦を仕掛けてきたクルミとオトギが来るだろう場所へ滅多打ちがされる。
やはりそうだ、戦力が乏しいこの状況で大胆に遊撃戦をする。
「フラッシュフラッシュフラッシュ!」
クルミがシールドのフラッシュを点火する。
バン! と眩い光がするが、ミユが息を止めて、狙う。
ミユが放ったライフル弾はクルミの頬を霞めた。
「うっそなんで分かる!」
「ちっ」
2人が後退していく、やはり狙撃で制圧する腹つもりだったらしい。
「FOX4および3と会敵、前進を継続する」
『りょーかい』
モエは多分次は待ち伏せか、と考えた。
となると、やる事はひとつ。
『空調全開行くよぉ』
送風機が空気循環で最大出力を開始、轟音が反響する。
音も匂いも使えない様にした、さてこれで待ち伏せ精度が下がるな。
ミサイルサイロのエレベーター前半円通路は一本道だが、いまや送風が全開でまともな音波探知は出来ない。
オトギが待機しているが、狙撃支援するにしても弾道がぶれるだろう。
クルミはしくじったなあと考えた、後退するか、それとも待ち続けるか。
「仕掛ける?」
『連中こなれてきてるからねえ、しかも員数外がいる』
あの2丁持ち短機関銃、そしてミレニアムのマーク。
あれは噂のミレニアムの特務部隊ではないだろうか、銃も確かにMPX、とするとどうするべきか。*19
「待つしかないわね」
『同意』
が、電源が落とされた。
いきなりの暗闇、視界も耳も奪われる。
雑音交じりの声が聞こえる。
『主電動機が強制停止させられた。予備電源へ切り替えるまで押し返してくれ』
ユキノの声だ。
ゆっくりと歩みを始め、何かが転がる。
「9バング!」
眩い閃光が連続して煌めき、9㎜の連射がクルミの盾に飛び込む。
間違いない、これはあの。
ばんと音がして非常電源が回復する、目の前の敵へUMPを猛射し、オトギの狙撃を待つ。
後方から飛んできた50口径がそのミレニアム生徒へ飛び込み、するっと通り抜けた。
「しくじったホログラム!」
前線へ飛び込んだユウカとサキが全力でクルミの側背面を滅多打ちにする。
ユウカの手に握られていたのはKP-31、ミヤコの武器だ、ユウカとミヤコがすり替わっていたのだ。
「くっ」
オトギがバレットを構えるが、飛び込んでくる二人は撃てない。
数を減らそう! ユウカをまず狙う。
しかしユウカの回避は理屈ではそうだが中々向こう見ずな飛び込みで回避される。
「なんで避けれんのよ!」
実は知られていないが、そもそもユウカはワカモの暴動鎮圧に参加した経験がある。*20
ミヤコは幾つかの作戦参加を見て、奇想天外な事を考え付いた。
誰にとっても想定外をやろう、そう思いついたのだ。
オトギは死角に入られたと理解し、移動しようとするが、あまりに遅すぎたし、身を晒し過ぎた。
「はーい」
静かに呟いてミユが放ったライフルがバレットのスコープをぶち抜く、ブルズアイ! ミユは落ち着いて狙える限り射撃は最高クラスだ。
これでもうバレットは役立たずだ、アイアンサイトを使うのも片目をやられている状態では精度は低下するし、脅威ではない。
ニコは二人がやられたと報せを聞いて、そういうものかと確信した。
後輩はいつの間にか自分を超えたらしい。
エレベーターが動いていると聞いて、ニコはやや警戒した。
まさか無策? いや違う、絶対に。
じゃあアリウス、堂々と来るわけない。
じゃあなんだ。
ニコは囮役と考えた、確かに常識的判断だ。
恐らくブリーチングで突入してくるに違いない!
『地下、オペレーションルーム』
爆発が起き、ニコは当たりくじと確信した。
確かに当たりくじだった、エレベーターに背を向けていたニコへ、クルミから奪ってきたシールド持ちミヤコが居たのは予想外だが。
「ひとのものを」
「クレイモア点火!」
盾に張り付けたクレイモア8個が同時点火され*21、飛び出す散弾の面制圧がニコを吹き飛ばす。
えげつない数の散弾が壁を埋め尽くしてるのを見て、ミユとサキはミヤコが実はサディスティックな性癖を持ってるんじゃないかと真剣に心配し始めた。
ユキノは事態がまさかこうも変化するとは思えなかった。
ラビット小隊がこうした既存の概念に囚われない戦いをしてるのは、全く予想外だ。*22
月雪ミヤコ、小隊長として彼女は立ち塞がるすべてをはねのけてきた。
ラぺリング降下で降下した全員を連れて、管制室へ向かう。
正直なところユウカが降下できるのは驚きだが、不思議ではない。*23
『聞こえるか。月雪小隊長』
放送が聞こえる。
ミヤコは管制室のドアを見つけ、爆破準備へ入る。
『残念ながら君たちの負けだ、私はあのミサイルを自爆させるボタンを握っている』
全員の手が止まる、モエは『それ押す! よこせ!』と興奮しているが。
「押せばいいじゃない」
『は?』
ユウカの声が響く。
「え、だって押したら、ミサイル飛ばないんでしょ? 勝ちじゃないの?」
『おいまて、ここごと吹き飛ぶんだぞ』
ユキノは困惑する、ミヤコは意図を理解した。
「うん。でもそうしたら確実に勝つのはあなた達じゃないわよ? 復興された後に適当にテロ阻止の英雄を偲ぶ慰霊碑立てられて、忘れられるでしょうね」
どういうことだ、分からない、このシビリアンは何を言っている。*24
ユキノは慌てて言葉をつむぐ。
『だ、だが、分かっているのか? お前も死ぬんだぞ』
「ごちゃごちゃ煩い! 貴女達はただのテロリストです! 分からずと逃げ! 正義に沈滞し! 市民生活の全てを妨げている」
管制室のユキノは後ろの天井が爆ぜるのを感じた。
そして、管制室の扉が吹き飛ぶ。
「SRTの正義は」
「テロとは交渉しない」
二つの方向から飛んできた狙撃がユキノの腕を直撃した。
続けて、アツコの吶喊が入り膝裏を蹴って倒し、叩きつけるように頭を抑える。
「クリア!」
「制圧」
ユウカがため息を吐き、二つの特殊部隊を見る。
突入タイミングを図る為の時間稼ぎ、全くこのミヤコとか言う子は滅茶苦茶だ。
正直いって吹き飛ばすんじゃないかとひやひやした、寿命が縮む、横領都市で白兵戦やった時以来だ。
「……はじめから分かっていたんだ……いずれこうなると……」
ユキノが呟く。
「だがこれで終わる」
「といかないんですよね、苦しいですよね」*25
がちんとヒヨリがUSBを差し込んだ。
『ジェネラルの権限により全作業は中断されました。全要員は安全確認を行い推進剤を排出してください』
「最初から私たちの勝ちだったんですよ、ユキノ小隊長。ニコさんたちの手により、最初から飛ばないように細工されてたんです」
ミヤコはそう、しっかりと告げた。
FOX小隊は交戦継続の意義無しと判断、投降した。
「……サーモバリック弾頭で始まって、これで終わりか」
ユキノは何処までもふざけた話だと言いたげに呟いた。
ヴァルキューレに連行されていくFOXを見ながら、デカルトはようやく解放された。
フブキやキリノが書類を書き留めている。
「今回の事件はどうなるんです?」
「公式にはヴァルキューレが解決したことになります」
ミヤコがにこやかに笑い、缶ジュースを渡す。
「じゃあ、あなた達はどうなるんです」
「そりゃあ特殊部隊の宿命ですよ、誰に知られることもなく、です」
そうかなあ、デカルトは考えた。
すくなくとも市民がそれを覚えている限り、貴方たちの事を忘れたりはしませんよ。
連邦生徒会の前にシャーレと書かれたMRAPと、ヴァルキューレの輸送警備車が止まる。
威嚇射撃が天井に轟き、忽ちに玄関ホールが制圧される。
カヤは電話を警備室へ繋ぎ、どういうことだと尋ねた。
「シャーレはともかくヴァルキューレですよ! なんとかしなさい!」
『それが、残った防衛室の人間は逃亡か降伏を……』
カヤは電話を閉じ、ジェネラルを呼ぼうとする。
「ジェネラル! 役に立たない……早く出なさいよ!」
だが、全館放送でジェネラルは想定外の声を告げた。
『連邦生徒会内の全部隊へ。戦闘を中止し撤退せよ。ご苦労であった』*26
「あのキツネ!」*27
電話を叩きつけ、どうすべきか考える。
拳銃を抜いて、取り敢えずバリケードを作ろうとするが、どうするべきか分からない。
予定通りならシャーレは吹き飛んでいるはずだ、どうなってる。
「ヴァルキューレ公安局だ! 出てこい!」
扉の前から声がする。
カンナ! あのわんころ! 裏切ったな!
感情任せに拳銃を打つが、扉越しの当てずっぽう、しかも小口径だ。
「カヤさぁんピザの配達に参りましたぁ」*28
カヤはその声を聴いて、力なくへたり込んだ。
カンナが踏み込み、公安局の実働部隊と先生が現れる。
「内乱のほう助、破壊活動、情報漏洩、その他の罪で逮捕する!」
「あ、貴女だって! ジェネラルだってそうじゃないですか!」
先生がにこりと笑い、言った。*29
「知らんのか? 実行前に自白を司法機関に送ると罪に問われないんだぞ」
「そしてジェネラルは実行前に司法取引で自白しました」
カンナが付け加える。
カヤは全てを失った。
その後、暴動の数々は再び沈静化された。
人々は原因が突き止められたことに満足したし、満足して生活が苦慮しなければデモや政治に関わらない。
ミノリも大人しく兵を引いて、帰るべきところに帰り、また革命している。
ようやくDUは安定を取り戻した。
ヴァルキューレはこの1件で名声を取り戻した。
ともかく正義は成されたし、仕事もした。
シャーレは今回の件では一部特殊部隊が助力という些末な一文だけを公式記録とする事になった。
市民からの信頼を取り返し、ヴァルキューレは今日も活動を続ける。
シャーレにとってはかなり丸く済んだ結果であった。
何故ならシャーレは公式には「もはやそれしかない選択肢で遂に動いた」訳だし、悪質な前例は作らなかった。
力に任せた政権交代は厳に慎まれるべきであり、過剰な権威や権力の集中は避けるべきである。
先生は完璧にその政治目標を達成した。
ミヤコは激怒した、やはり邪悪な大人と確信した。
先生が政治的に完勝し、表向きにはヴァルキューレへ花を持たせてするりと隠れたので、やはり先生の陰謀だと確信したのだ。
確かに事前にあれこれ察していたのは事実であるから、先生はこれに関してシラをきる方針である。
カイザーのジェネラルは社内政治を駆け抜け切った。
自分ではなく別の奴にクソを押し付け、カヤを選定した奴が悪いと逃げ切り、会社を守る為止む無く身をささげた男になった。
政治動物としては彼は優秀であったのかもしれない、しかし優秀そうに見えたのが悪かった。
目立ち過ぎてまたキヴォトスへ送られる羽目になった、他に居ないからである。*30
デカルトはやはりというかしぶとかった。
今回の件で名が売れたので──彼は市民勲章を授与された──それを活かして実録本を書こうとしたのである。
上手い事事実を混ぜて書かれたそれはそこそこ人気になったのだが、「荒唐無稽」と実録扱いされなかった、現実がおかしいため、しようがなかった。
それはそれとして売れたのは事実だから、印税は入った。
ある意味彼も願いをかなえたのかもしれない。
なお彼の本に登場する”小隊”のメンバーはたびたび同人誌が出るくらい人気なのだがそれは別である。
連邦生徒会へ帰ってきたリンはため息が止まなかった。
特大のクソを遺して去った奴は一人で十分だ! *31
リンの嘆きは流石に誰にも言わなかった、言えるわけないからだが。
【次回予告】
人を巻き込み、人に甘えて、闇雲に走る。
美を弁えず、結果も知らず、ただ暗黒の水道を行く。
追って追う。
全ての法を 踏み越えて。
疾走る心の 赴くままに。
次回「 退く事は我知らず 」
出口が見えない。
助けてくれ、アビドス3章終了後にEDF6が来るんだ。
今のラビット小隊夏イベのチャレンジに狐小隊居るんだ?
次回『百鬼夜行編』
「身共は百花繚乱の解体は認めませんわ~!」
「またかよ」
どんな話が見たい?傾向を見たいだけです
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モブ回
-
一部の連中を原作と交換してみた
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上を踏まえた掲示板回
-
空飛ぶモンティパンソン回
-
あの世でもこの世でも無いとこの連中回