キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
次の目的地へ向かいながら、作戦会議をする。
「見届け人になるのは良いんですが? どうするんです」
「どうしようかねぇ、手袋投げて始めるんなら撃ち合い切り合い殴り合いでも構わんが」
「エリートと言うのは事実だと思う、まだ技術はないが銃器の扱いなどが丁寧だ、好感が持てる
だが勝算は薄いだろう、優秀だが新人で勝てると思えない」
「俺も分隊以上の戦闘なら何か言えるが個人戦技はなぁ」
「見てくださいよ、あの雰囲気絶対言えませんよ」
戦闘技巧の予測は容赦出来ない、泥臭い戦いや搦め手も得意では無いだろうし、多分やらない方が混乱しないから勝率が上がる。
基礎訓練は並み以上にされてるのが良く分かる、体幹も良さそうだ、だが全ての動作が堅い、若年将校って雰囲気だ。
ユウカの言う通り水を差すのも駄目だ、本人が満足するまで付き合うしかないな。
「どうされたのですか? みなさま方?」
「ああ、このクロレラ味茶が気になってな、土産に良いかな?と思ってな」
「いま先生達が見ているコーナーはキキョウ先輩が二度と買って来るなと憤慨されたゲテモノが多いので、この芋ようかんと栗饅頭がお勧めですの!これに合うお茶も」
ゲテモノが多いので、この芋ようかんと栗饅頭がお勧めですの!これに合うお茶も」
ゲテモノなのか……。
隣にあるミドモ饅頭はユカリは何も言わなかったが一箱買った。珍品買うのも旅の醍醐味というが、まあ良かろう。
木刀もあった、中々悪くない、後で持ち手と鍔を付けて腰に差すか考えるが、ユウカが呆れた顔をした。
「何してるんですか、幼年生や中等部じゃないんですよ?」
「これでも習った事はあるんだがなぁ」
少し動いて、ユズやモモイが遊んでたゲームじゃないが、横振り、斜め、突きとやってみる。
「思ったより体が覚えてるもんだな」
「身共が知ってるのとは型が違うんですのね」
「またトンチキな芸を……」
荷物が増えて困ると言う理由から残念ながら棄却された。
無念である。
「ここからはユカリ快進撃の始まりですの~!!」
「あー……、そもそも聞きたいんですけど、百花繚乱紛争調停委員会ってどのような組織で?」
「俺も気になる、他校にも似たような組織はあるが傾向は違うからな」
ユウカの質問を聞いてきょとんとしてたが、すぐに理解して百花繚乱紛争調停委員会について機嫌良く説明してくれた。よっぽど思い入れがあるんだな。
それにあまり外部の人間と話した事が無いのも分かる、敵意や警戒ではなく娑婆にあんまり出てないだけだな。
内容は、正義実現委員会や風紀委員会に近かったが、どちらかと言うと警察に近い。少なくとも家みたいに荒くないが、訓練を聞いていると個人技能重視の様なので不在状態の副委員長や委員長は確実に強者だ。
兎の連中が、狐の連中に勝てた要因の一つである精神状態の不調を突くくらいしか、勝機は無いだろう。
「ええ。「大預言者」から問題児の逮捕や教え導く役割を託されたのも事実ですが……身共たちが一番大事にしているのは、罰を下したり導くことではなく「仲裁」です。連合内で発生する対立のほとんどは両者に非があります。なので、お互いの思いを汲み取って懸け橋となり、納得できるように仲裁する……それが、身共たちの役割です」
「装備拡張と訓練用の予算要求するどこぞの誰かさんに毎晩寝る前に聞かせたい言葉ですね!」
「何でこっち見る? うちも停戦と平和維持の使者だよ。アビドス砂漠とアリウスとかで実践したし、この前もDU安定化で協力したぞ、茶会の3人の不和も仲裁したと言えないか」
「ショック療法でぬけぬけと……」
流れ弾はさておき、逆に下手に諦めたりする方が怖いな……。
ユカリの昔話を聞いてると、俺も幼き日のことを思い出す、いや思い出してもろくでもねぇ幼少期だな。*1
正直アリウスの連中と幼少期の苦労話で盛り上がれるの駄目だろう、まあ親父が何考えてるか分からんが息子の事を慮ってくれたし、母は強かったが。
まったく、あの母親はキヴォトスでも生きていけそうで怖い、なまじ面倒見が良いから困る。
「恩人であり憧れか……はぁ……」*2
「サオリもどうした?」
しかし、一年前は積極的に動いていたであろう組織がこうなるとは、事件の顛末メモして、風紀委員会に問題提起文として渡すのもいいかもしれんな。
ユカリの話を聞いていると、ふと脳裏を過ぎった”生まれついて自由を得られなかった王”が唯一自由であれるような場所であるように聞こえた。
話が通じそうならしっかり口添えしてもいいかもな。
「こ、こほん! ともかく身共は今の百花繚乱を放ってはおけないと強く思ったのです! またあの頃の様な、百花繚乱を取り戻したくて……」
「まぁ、良いじゃないか。やる気はあるようだしな」
「えり~とである身共の手で「継承戦」に勝利し、委員長としての資格を手に入れてみせますの!」
先生とユカリの話を聞いていると、思いだすことが沢山あるが、ユカリが「大預言者」から継承される「資格の証」と言うワードで先生がまた不機嫌になって居たので、また「王権神授かよ……」と言う呟きは聞こえて無いことにした。
また「王権神授かよ……」と言う呟きは聞こえて無いことにした。
ああ、ばにたす、ばにたす。
「証って銃か? 王冠・王笏・宝珠とかじゃないんだな、キヴォトスらしいとも言えるが」
「大預言者クズノハから受け取った「幽霊を捕らえることができる銃」ですの!」
「ミレニアム生として突っ込みを入れるのが定番なんでしょうが、先生は幽霊も吹き飛ばせる野戦砲! とか言うんでしょ?」*3
ぴゅーと口笛吹いて誤魔化す。
寺だか宮殿だが分からんが、高台から見るとあの大桜が良く見える、燃えたら凄そうだし、えらく燃えそうだ。*4
「しかし、シャーレは3人いるが百花繚乱のメンバーに心当たりはあるのか?」
「身共の力になってくれそうな方……二人ほど心当たりがありますわ」
「予想すると、多分その先輩か?」
「はい! 一人は百花繚乱の切り込み隊長、レンゲ先輩。もう一人は寡黙な参謀として活躍されていたキキョウ先輩」
その二人はナグサ副部長が行方をくらませた時に、一番腹を立てていたそうだがこの解散令を聞くにどうせ嫌な予感がするぞ……。
ユカリが歌を歌いつつ目的地に連れて行くが、家の手前に張られていた紙はなんとも旅の進捗に不安をきたす内容だ。
青春を取り戻しに行って来る! しばらく帰ってくる予定はない!
なにがどうなってんのか分かんねーよ、どういうことだよ、しかも通常営業。
これを破いたり燃やさなかった辺り、随分丸くなったなキヴォトスも、いやここの治安が良いのか?
「いやそれはそれとして具体的な連絡先とか書いておきなさいよ!!」
ユウカがキレていたが理由は分かる。
ミレニアムはその辺しっかりしてる、あいつ等がそれをしない時は俺かユウカから逃げてる時だ。
なんでもレンゲ自体がたびたび娑婆の生活にあこがれを感じていたらしい、青春時代か、俺にはさっぱり分からん。
「青春ってなんだ? 同級生に揶揄われながら本を読むことか?」
「私の青春の6割強はばにたす活動で使ったな」
「会計、破産……」
シャーレのメインメンバーに真面目な青春はないな! 自分だけのコルシカまた作るか? いや、いいや。今の自分の居場所があるのに、それは空虚で虚無だ。
ユカリの思い出を聞いていると、ユウカがサオリに求める青春を求めているのだろうが、”生まれついて自由を得られなかった者”が初めて手に入れた自由が楽しくないわけがないだろうに。
案外、型通りの生活が人を救うケースもあるのだ。
ありふれた青春ってなんだよ、俺達が聞きたいよ……。無計画だしもう一月ぐらいで戻って来そうでもある。
ユカリが過去に「青春を送るなら、やっぱり文化系だ」と述べていたと言い、「文化系舐めんな!」としばらくユウカがキレた!
ミレニアム、スミレ部長の部以外だと野球とトレーニングが同じ部に纏められてるもんな。
あれはあれで焦げ臭かったり油臭かったり、別の方向の問題児が多いが。
ユカリはやはりなにか歌ってる、楽しい頭してんなあ、しかし兵隊のボヤキみたいな歌が多い、士気大丈夫か?
カホに用意してもらった部活リストを確認するに、数はあまり多くない筈だ。
どたばたの後、文科系の部活の扉を開ける。
「カホ氏からのリストによるとクロレラ観察部だそうです、クロレラ……?」
ユウカの解説を聞くに、要するに凄く小さい藻のようだという。
「この手の部活ってミレニアムに無いよな」
「家は、機械科学がメインですからね、クロレラなどは生化学とかの方向になりますね」
「簡単に言うと?」
「ヒマリ部長を車椅子や補助具で助ける方が機械工学、生化学だと健康優良児を目指せるようにする……凄く雑ですが」
ユカリ! レンゲ先輩をお前が見た感想とかじゃなくて身体的特徴や口調をだな、猫耳つけて喧しい金髪とか、ウサギみたいなメット被った陰謀論がMG42位出る奴とかじゃないと通じないぞ!
見掛けの説明をすると「全国大会を目指して朝まで頑張るぞ! まずは体力作りから」と飛び出した奴がいて、恐らくそれだという。
そいつが入れる文化部ってゲーム開発部か? 確かに体力勝負だったが。
クロレラ観察は全国大会と言うより学術発表だろうからな、資料集めなどに体力は要るが、間違いなく絵にかいたような体育会系には向かない。
「そう言えば、最近百鬼夜行の食品にクロレラを見るが流行ってんのか?」
「研究成果発表先です、全国大会があるかは知りませんけど」
そして将棋部、フィットネス落語! かるたバトル。
褒めるユカリ! 移動中歌うユカリ! わけわかんねえよ、軍歌なのに歌詞暗いんだよ!俺なら訂正させるぞ。
リストを見終わるころ我々は疲れ果てていた……ユカリに対抗して帝政軍楽集を歌ったせいだとは思わない。途中でサオリが「私にも歌わせてくれ」と言ったせいだ、多分。
「しかし、そのレンゲは何処に居るんだ?」
「この冷抹茶いいですね、最近コーヒーとかチョコばっかり徹夜で食べてたから」と言うユウカを聞きながら観光できてると安心できたが、事態はあまりよくない。
「それにしても皆様、レンゲ先輩に対する印象が……」
「こんな忙しい時期に体験入部連発されたら、そうもなるさ」
「妥協なき姿勢ですわー!」*5
「そうきたかあ」
このデカいコハル何とかしてくれ。
レンゲだかキキョウだか知らないが、これを大人しくさせろ!
何か楽し気に軍歌歌ってるし
「さぁ、次は何処に行くか……」
「先生……はっけーん!」
修行部のマスコットが飛び込んできた、抱き着きをすかさず、サオリが抱き止める。
おお、ここまで余裕があるサオリが居てくれて助かる、この手の飛び込みには優しくチャッチ。
荷物などで片手がふさがってるから助かる。
さぁて、突撃腕白ガールの次はだれだ?
「危ないですよカエデちゃん」
修行部のカエデと来たら、後ろに居るのは修行部の二人だ、名前は穏健だがバリバリの自警団活動をしてるかなり武闘派である。
横に何時もの面子と、ユカリが居なければ百鬼夜行の奇抜服装部に。どうなってんだここは!? となっていたこと請け合いだ。
エイミみたいな体質が百鬼夜行には多いのだろう、コトリとエイミで感覚がイカレているユウカはそう判断した。
スカートをちゃんと履いてるだけで約一名よりはマシとはなんなんだろう。*6
「ええっと、先生……? こちらの方々は……?」
ユカリが大人しくなったが、こういう方法じゃないんだがなぁ。
途端に大人し気な美少女へ変容するのを困惑しながら説明する。
「あの方々は修行部、こっちに居るのがユカリ。双方仲良くするように」
それぞれの目的は修行だが、内容が違う集団だ。そして自警団的な組織でもある。
しかし百花繚乱は百鬼夜行では相当有名の様だ、自警団としては文句も言いたくなりそうだが、そういう気配も無い。
そしてカエデよ、あの様子だと立派なレディはまだまだ遠いな、アスナでもう飛び込んでくる奴は間に合ってる。*7
「身共はユカリと申します。お会いできて光栄ですの! 修行部の皆様のことは、よくお話を聞いておりますわ。いつも街の自警団として活動されているとの事で」
ミモリは謙遜しているがこの状態で十か月やってんだ、誇っていいと思う。
そしてこいつ等も、お祭りの準備か。相当力を入れてる様だ、総力を出しての祭り……最高存在の式典?
いやあれだと、あの大樹燃える気がする。*8
「灯篭祭りの期間中は、街中のいたるところに灯篭を灯し……」
「お祭りの最後に、灯篭流しをするの~」
ユウカが聞き入りながら質問を混ぜてメモしている、陰陽部の時そう言う状態じゃなかったからな。
「送故迎新……未来を願い、辛かった過去の記憶を灯篭に込めて川に流す……」
「いいわね~、そういうお祭り。家は花火大会が多すぎて。静かなお祭り、風流ってやつよね!」
ツバキが言うに色彩の時以来百鬼夜行は、どこか暗い雰囲気が続いてたそうだ。物資や交通統制、強制退避勧告ほぼ有無を言わさず押し通したからなぁ。
こう言うタイプの言う暗い雰囲気だから相当なのだろう。突然に未知の敵との総力戦をやるから協力しろと言われたらそうもなるか、よく聞いてくれたとも言うか。
カヤはシラトリの暗い雰囲気を無くすためにあのお祭りを開いたのか!? *9
「もう少し落ち着いたらアリウスでも祭りをやっても良いかもしれないな」
そう考えれるのは良い事だ、将来目標の一つだ。
俺達から見ても祭りを行う決意は素晴らしい、最近だとシャーレを見ると避難経路の確認を始める奴ばかりで。
最後の締めで、巫女が踊って奉納? をするらしい。
チセではないらしい、そうしているとユカリが大人しくなった。
「逃げだした良家の娘、百花繚乱の再興、20年振りの誰も知らない巫女の登場」
「情報が揃って来たな、先生」
「今度は、相手の情報があれば良いんですけどね」
「宇宙にミサイルサイロの次だ、海底でも探すか?」*10
そんなこと俺達が喋って居ると、大人しくなったと思ったユカリがまた元気になった。
「素晴らしい心構え! えくせれ~んとですの!」
修行部を押し返し始めた、エネルギーは凄いなこいつ! あふれ出るパッションが重騎兵みたいな女である。
ミモリは頼むからフラグが立つようなこと言うのは止めてくれ。
そんでそうなると誤魔化すユカリ。逆にそれ目立つ奴だぞ?
「先生はどんなお願いをするの?」
「決戦兵科の完全充足と全部隊が目標練度達成後実包使用の大規模訓練……ではなく、シャーレの誤解が解ける事かな」
凄まじい目線が飛んで来たので第二目標にしておこう。*11
「まったく、油断も隙も……サオリ?」
「先生、ユウカ。武装集団が来る、頼むぞ」
即座にサオリが街角に飛び込み、先生が碌なこと言わないからに違いないと、ユウカも近くの椅子を倒してバリケードを作り戦闘態勢に入る。
さっさと終わらせて観光に戻ると決めたユウカは荷物は先生に任せた。*12
「ほら、皆!敵来るわよ、戦闘態勢!」
逆に向こうが私達の行動を奇妙に思ったせいか、少し行動が遅れた。
先手を許してしまった!
「見つけた! 百花繚乱め! この間は良くも好き勝手やってくれたな!?」
「テメェらイブキ攫った、与太者一座じゃねぇか!」
見慣れない狸、いやアライグマかなんかの耳と尻尾の奴がいた。
天狗・オーメンの変人集団はこの地域の不良集団である、まあテキ屋やカツアゲが精々の子悪党である。
正直社会の闇の煮凝りの様なヘルメット団よりマシとも言える。
あ、思い出した、百花繚乱の参謀からDU地域などからの流入の対策の嘆願書が届いてた、ノアが驚く達筆と古風と形式にミカさんが「
本庁舎の攻防で紛失した後にクーデター騒ぎで優先順位が下がってつい忘れかけてた。
後で確認して置こう。
「ゲッ、シャーレの先生!? どうしてここに!? あと魍魎一座だ!」
「似たようなもんだろう、何の用だ、回れ右するなら今の内だぞ?」
噂の与太者一座と先生の口論を聞いていると百花繚乱の羽織を着た人にボコボコにされたらしい。
服が同じだからやっちまえは大事故の元だからやめた方が良いと思う、そう言う部隊がメイド服だったりするケースがあるわけだから誤解に繋がりかねない。
サオリはもう、背面から襲撃掛けれる準備をしていた、ハンドサインも送っている、そう言う事ばかりに慣れちゃダメなんだけどなぁ……。
今回は巻き添えや貫通で損害を生まないようにサオリは9㎜仕様のAR-15である。
「ハンドサイン確認、こちらの反撃から一拍遅らせて強襲」
しかし、ユカリの啖呵は背面の物陰に居るこちらにも聞こえる、随分怒らせたようだ。
先生が与太者一座と言うのもよく分かる。
無関係者を巻き込んだ、暴動と無秩序は先生がかなり嫌う行動だ、初めての出会いの時で良く知ってる。
しかし、ファイルを見る限りそこまでするほど困窮していないと思うのだが。
向き合うしかない、生活に余裕が無いとこういう事を感じることも無かっただろうな。
まあそこまで深刻でもないから良いのだが。
「身共は百花繚乱のえりーととして! あなた達を倒してみせますの!」
「良い啖呵だぞ、与太者一座より良い出し物だ、援護してやる、好きに暴れてやれ!」
ブチギレた連中が小銃やランチャーを構える。
「「「魍魎一座って言ってるだろうが!」」」
「改名しろ! ボケ!」
「コケにしやがって、この人数を相手に勝てるかな?」
「逆にその人数で勝てるのか? 人数の集め方からして三下与太者感上がってるぞ!」
先生の煽りもあって敵の目線は向こうに集まっている、さてあの人数だ。手加減はできないが、悪く思うなよ。
脳裏に突入計画とコースを練る、味方の射線を塞がない様にしなくては。
ん? 乱入!? ユカリと同じ羽織、聞いた特徴と一致する、今回の捜索人1号だろうか。
堂々と走ってきて乱入してきた辺り、自信はある感じか。
「アタシの青春活動を邪魔する気なら、この不破レンゲが相手になってやる」
「……レンゲ先輩!?」
「捜索目標確認、与太者排除して本題行くか」
「ああっ、や、やっちまえ!」
先頭が戦闘開始、私も一仕事に行こう。
戦闘はかなり一方的であった。
後方から奇襲された相手のリーダーらしきアラタが驚愕してる間に、レンゲに突入され、ユカリがアラタを狙撃して指揮崩壊が起きたところにサオリが突入したせいで相手の戦列は忽ち霧散していった。
修行部もビックリのスピード解決に、カエデは「惨いまでの1ターンキル」と呆れた声をしている。
「お疲れさん、セナが見たらウキウキしそうな光景だな。サオリ、その狸インタビューするからキープな」
「了解」
アラタが完全に伸びている、ヘイローがちかちかしていたが、今消えたからマジで意識飛んだか。*13
「そんな与太者何か知ってるんですかね?」
「この与太者一座は百鬼夜行のヘルメット団の元締めみたいな奴でな、後ろに居る奴らの尻尾は掴めるかもしれん」
「アビドスでのこう言う活動がカイザーの尻尾掴みましたからね」
ぺちんと「捕縛」と書かれた紙を貼って拘束しておく、悪ガキは3日くらい外泊経験して頭冷やせ。
「修行部の皆様の流れるような連携と……すごかったです! シャーレの皆様は場慣れしているようで、そして! さすがはレンゲ先輩! 素晴らしいご活躍ですわ!
「あれ…………ユカリ?」
レンゲはどうしようと困惑している。
眼や口調もやや上ずっているし、泳いでいる。
「あなたがちゃんと連絡先書いて居てくれれば、私達はこんなに歩き回らず済んだんですよ!!」
ユウカがバチバチにキレておられる、コワイ!
修羅場を潜った数はそこらの治安維持部隊に負けない家の会計だぞ!
向こうも初対面ながら押されている。
流石のユカリもこれにはタジタジだ、圧凄いよな。書記の方は笑顔で圧を掛けてくるが*14
「今度から気を付けるからさ、な!」
「次同じ事したら、お覚悟を」
その間にインタビューしたら、百花繚乱に一泡吹かせてやりたいと言ってたが、「アホな夢見てどうすんだ」と言い、
小銃は刻印付きで弾薬も普通の市販品だ、歯や足先も確認したが薬物もしてない、極めて健康なバカである。
その辺の茶屋で協力の礼を兼ねて、全員に飲み物奢ってやる。
その裏でレンゲが青春などを追って百花繚乱を抜けている理由を話し始めた。
「アヤメ委員長が姿を消した日から……いつかはこうなる運命だったんだよ」
「そう言う時って、今日から自分がトップだ!ってならない?俺外でも此処に来てからもそう言うノリばっかりだったんだけど」
「いや、そう言う事しちゃ駄目だろ、私でも分かるぞ!」
レンゲの言葉にかなり驚愕した。
キヴォトスに於いて下剋上や暴力による体制転換を肯定しないとは何ちゅう文明人。
「お前良い奴だな、好きな物注文しろ」
「えっ、本当に居るのか……?」
「変なとこで言うと拗らせた奴に闇討ちされるから気を付けろよ」
ホシノに似たようなこと言ったら、アビドスで行方不明にされそうだ。*15
一口お茶を含んだレンゲがユカリに向き直り話始める。
「委員長は確かにすごい人だ……だが、あんたも含めてみんな、いつ委員長が居なくなってもおかしくないとおもっていただろう」
人となりを知らんからまず俺の常識では、そんなのを委員長にするなよと言いたい。
居なくならないような工夫もあったんじゃないかと思うのだが?
組織で個人頼りはダメだと正論を述べたのが今までの中でリオしかいねえぞ、しかもあいつ、あれはあれでアホの子だし。
一番気性の荒い突撃隊長がこれなら、良いとこのお嬢様が多いのだろう。
「座を受け継ぐべきナグサ先輩は、残されたアタシたちには目もくれず委員長を探しに行ってしまった。あの時点で百花繚乱は終わってたんだ」
”生まれついて自由を得られなかった者”が家との看板に挟まれながら、正当な理由で治安維持組織再編頑張ってるのにそう言うかぁ?
助け舟は出してやろう、今回普通に平和に終わるのでは?
「一つ二ついいか?」
「なんだい?」
「どちらかが思い詰めてたとか、二人に直接聞いたとか?」
ユキノみたいな真面目な奴が退役した後どうしようかという奴だ。
行き場が見つからないと此奴も不味いケースだな。
「シャーレの先生だろ? 空が赤くなった日のこと覚えてるか?」
「久しぶりに出し惜しみ無しで暴れられて、楽しかったから覚えているぞ。それは置いておいてもあの時の協力は助かった。君達の組織の強みが良く出ていて助かったんだが」*16
「ええ……やっぱやべえ所だなシャーレは、あそこ迄しっかり指示出して貰ったらキキョウも楽だったと思うよ」
ユカリはユウカ達に任せて、二人でお茶を片手に空を見るとじっとりと暑いが、それでも紅葉の間からの木漏れ日が次の季節を感じさせる。
「いや、臨時の指揮系統再編は置いておいても、それが出来てるだけ大したものだろ? 俺も空が赤くなる前クーデターで攫われるし、その間司令部は機械化旅団や前衛の空挺に襲われてた、こいつ等に何もできなかったぞ?」
ぐいっとお茶を飲んで、一息つく。
「それこそ、自惚れるなよ。作戦参謀含めて実働部隊3名で何ができるって言うんだ? アビドスは出すなよ、ここが向こう見たいに全部砂に飲まれるみたいなことになってから言ってくれ」
レンゲはあの頃はまだ3人じゃなかったと返した、どんどん指揮不能・機能不全から離脱者が出てあの頃にはそうなったらしい。
まあ無理はないと思う、基本的には群体でもよくある話だ。
「先生と言うかシャーレの指揮で上手く行きすぎちゃったんだよ。百花繚乱が居なくたって問題は解決した。百鬼夜行に百花繚乱は必要ない。そう……あのとき百花繚乱が居なかった事で証明されてしまった事実がこれだ」
「半機能不全であれだけ動けるなら解散されると家も困るから、解散は止めてくれない?」
「帰ってこない委員長を待ち続けて苦しむ必要も……確かに言葉にすると私も頼りにしてたんだなぁ」
ホシノに効きそうな事を良く言うなぁ、その後どうなるかは知らんが……。
「じゃあなユカリ。お前はお前なりの幸せがある。平和に暮らせ」
今度は俺へ喧嘩売ってんのか?
自分が正しいと思ったら、ひたすらにまっすぐ突き進む。
いつだって自信に溢れていて……その気になれば、何だってできると思っていてさ。
本当に───自分を曲げないヤツだ。
「それは自分にも言ってるんだろ?一旦帰って自分の荷物整理してみろよ。諦めから思考が止まると幸せどころか胸張って道歩けなくなるぞ」
「なんで、先生詳しいのさ?ちょっと怖いんだけど」
「今までの経験とここに来てから見てきた物のお陰かねぇ」
「じゃあ、その前に継承戦やっておこうか?」
先人として2人にアドバイスをやろう。
「信じ突き進み続ければ、灰になるか世界をひっくり返せるんだ。人生悲観するには20年は早いぞ」
「「それはやり過ぎ(ですの)」」
挑んだユカリはやはりというか、完敗していた。
当然だ、ユカリはどちらかというと中衛で、レンゲみたいなのと組んで最大限の効果が出る。
なにより経験が足りない、錬成過程未了の促成では難しい。
戦闘終了後に「あんたはそもそもアタシたちと違うんだ、別の部とか探しても良いんじゃないか?」と述べていたがそれが出来るほど単純じゃあるまいだろうに。
”生まれのせいで自由を得られなかった者”に何たる暴言だ!
何がこれ以上自分が話せることはないだ! 謝るぐらいはしろよ! 本人もそう言う余裕が無いのかもしれないが *17
今回は俺の在り方に喧嘩を売られた気がする、最後まで付き合ってやるよ。
「弾頭と装薬は装填されたわね」
「あとは誰が雷管を叩くか……」
どこからか嗅ぎつけたらしいユカリの使用人から、引き止めが入るがこうなれば大人の権力だ。
公務活動でもあるので介入は困るとお話しするしかない。
というか真面目な話ここで実力組織が空白になると非常にまずい、アラタみたいなアホは存在しても大した害を生まないが、アラタより駄目な奴の方が世の中多いのだ。
「連邦捜査部シャーレの先生です、陰陽部からの依頼なので家名で捜査を妨害されると物凄く困るんですよ」
「あのシャーレが……」
このくらいで青くなるなよ、弾道弾3発降る可能性が有るなんて言ったら胃から中身が引っ繰り返りそうだ。
「確かに夜も遅くなってきました、家の方が心配するのは当然でしょう。また明日改めて捜査のご協力を。お家のご都合大いに結構ですが捜査へご協力いただければ火種が燃える前に火を消せるかもしれませんので」
ため息交じりに次の仕事を始める。
二人の姿が見えなくなった、つくづく色々絡み合うのは得意じゃない。
ついでに夜間の観光案内も頼みたかったのに!
「家名やら歴史やらが出てくるとこは苦手だ」
「そういう場所が絡むと大体最後吹き飛ばして解決する癖に」
「建物ではなく市街区画2~3吹き飛ぶ試算が出たと送っておくか?」
サオリが頑張って気づかいしている。
「それ送るなら百花繚乱継承戦と今回の捜査に伴うある程度の委任も加えておくか? 吹っ飛ぶ都市区画が1つに収まるかもしれんと」
ため息を吐きながら返してしまう、サオリも今回疲れてるんだなと察してくれた、お前の成長を見れて先生嬉しいよ。
「脅迫では?」
「本音は?」
「何も渡さずアドリブ対応して爆発しても文句は出ないのでは?」
とりあえず、屋台で何か食べて雰囲気楽しもうと提案したら異議なしだったので、夕食代わりに移動する。
飯が終わったら、お土産第一便は送っておこうと言う事にした。
ユウカが焼きそばを手繰りながらつぶやく。
「どこもかしこも、衛生は保証されてないのに通常価格より高めって風情を考えなければ、アレですよね」
「ここでそう言うのを話すのは無粋だと思うんだが……」
サオリがタコ焼きを飲み込んで手提げかばんを掴む、戦闘態勢に入った。
俺達も警戒に入る、要人護衛用の防弾カバンだ。
与太者一座に百花繚乱の生徒が襲われていると聞いて、見に行くことにはした。
ただ囲もうとしてるのを見て、なんとも言えない気分になった。
「今日はずっとお前を探し回ってたんだからな! 昼は人違いのせいで数名病院送りとパクられたし……今度こそ逃がすものか!」
与太者一座が焼き鳥食ってる、真っ白な百花繚乱の生徒と思われる少女を囲んでいる。
串の数からして100くらい食べてねえかアイツ? 焼き鳥好きすぎるだろ、加減しなさい。
「お前ら! 囲め! 今度こそ逃がさないようにな!」
「よお、半日ぶりだな与太者一座」
「げっ、シャーレ!?」
その言葉のせいで野次馬が倍以上距離を取り始め、屋台の店主が頭を抱え商売道具だけは抱えて退避した。
ついでに焼き鳥食ってた百花繚乱の生徒も目を開いてた。
なんだよ、うちを暴力集団かなにかと思ってるのか、隊員の素行の良さじゃキヴォトス随一だぞ。
「どうする? ここで昼の続きと行くか?」
「ちょ、ちょっとタンマ!」
アラタの奴が両手を振って要求する。
ためしにとサオリへ、ユウカのMPXを渡させてわざとらしく装填させる。
昼の残りから順に奴らは尻尾巻いて逃亡に転じた、人混みで戦闘なんかしたくなかったから尚更ありがたい。*18
件の百花繚乱の生徒にカマをかける。
「御稜ナグサさんですか?連邦捜査部の者ですが。少しばかりお時間よろしいですか?」
「えっ!?捕まるようなことはしてないと思うんだけど」
反応から見て正解だったようだ。
だが確かに機能不全になる訳も分かる、ナグサは半身が不具に近い状態な上に、重圧を感じて完全に鬱手前だ。あれだけ好物とは言え焼き鳥食えるのならぎりぎり大丈夫だが。
「今の私が戻っても美人系マスコットになるぐらいしか役に立てない」
しかも言動やユカリの話を聞くに休むのも頼るのも下手糞ときた。なんだここ、最近精神病んでる奴が多すぎるだろ……。
セリナあたりに精神科作るべきか話した方が良いかもしれない。ホシノといいヒナといいミカといいユキノといいなんで武力組織のエリートみんなこじらせて壊れそうになってるんだよ!
ここ最近のアリウス連中が一番安定してるかもしれんぞ! アツコがラ・マルセイユーズ歌って居たのは別の意味で驚いたが。
残りの一人も絶対湿度高そうだ、冬の始まりも近いのに湿度高いってなんだよ!
次は俺もお叱りが来そうな相手だ。
「この案件と例の案件で弾け飛んでの破談が怖いんですよね」
「弾薬庫近辺に火が付き始めたと言う感じの怖さだな、首筋がチリチリする」
「後は誰かが火種をつけるのを待つばかり……」
逞しいのか麻痺か肝が太くなったか分からない事を言いながら、二人も続く。
明日もどうなるかわからんな……。
【次回予告】
鉄が軋み、鋼が鳴く!
コンクリートとプラスチックの戦場に、砕け散ったガラスの雨が降る。
理非はどうあれ時は来た。
その存在が、不退転の状況で試される。
激しくも
哀れ空しい 句読点
撃ちてし止まむ それぞれの秋
次回「 会心の友よ来たれいざ 」
これが大人の戦闘だ。
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。