キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
第56話
とある茹だるような熱い夏の日、まだ空が赤くなるなど思わなかった頃。
「人々は溶けかかったアスファルトに己が足跡を刻む様に歩いていた、……酷く熱い」
「サキ、お願いですから”青い眼鏡”のネタは今はやめてください」
「全滅オチだもんな」
子ウサギ公園ではいつものようにラビット小隊がやはり居た。
エデン条約に際しての火器使用に関する諸議会への報告を終えて帰る道中、このクソボケ共に因縁を付けられた、ふざけるなと返したい。
家はエビじゃなくてハゼとか魚の方だ、甲殻類は専門外だ!
「ザリガニとか川エビでも釣って食ってろ!」*1
「シャーレの陰謀です、間違いありません、それこそ密漁してハゼの餌にでも使ってるのでは? 聞くところによるとF作戦なる秘密計画が」
バンとフォルダーが提出される、なまじミヤコがただの馬鹿じゃないから読みやすいのがたち悪い。*2
前回のアビドス組を巻き込んだF作戦は、作戦中にヴァルキューレ海上保安局の
なおこの件に関してユウカに「やっぱ俺達も自前で水上戦力」と申したら、サオリのベオウルフを取り出しかけたので以後言及してない。
「捜査部が密漁できるか! 漁業権とってるわい!」
エンジニア部と組んでの漁業計画を練っているがなかなか難しい様で、海底探査ロボでも作らないか?*3
と言う話でユウカに凍結されたはずだ。
漁業目的で調達したSTRB90*4はお慈悲により許された、使用火器の大半が他と共通してるのが理由だそうだ*5、正論である。
「それにエビなんて夏場は傷みやすいだろ? 全員食中毒で入院したいのか?*6」
ミヤコがやや陰謀論交じりであるが、海老だけないのは事実だと主張を続けている。
確かにそれはそうである、ない物は無い、不作という訳もない。
「つまりこれはシャーレの陰謀、シーレーン確保の野望、間違いありません」
「そうか知らんかったわ」*7
「隠し通すのなら暴いて見せます!」
ええい、分かった。調査に行くぞ、現地でのあれこれも不安だ、兎の抑えも居る。
護衛も欲しいと成ると……ユウカ、サオリ、アツコ、この3人のうち2人は欲しい。
色々外と言う奴も見せてやりたいし、ちょいと都会から息抜きさせてやるか。
「アツコ! ユウカ! 夜戸浦村に行くぞ、調査はウサギが勝手にやる。アツコは俺の護衛、ユウカは計算」
ユウカも事情を説明すると理解してくれた。
確かに食品取引にゆるやかな影響が出ているらしい、まだ備蓄在庫が多いのと急激に消費されないから一部だけだが。
「この2人で出撃ですか、まぁ今回は」
「先生、ウサギは水着らしいけど、こっちは?」
「素潜りや、水中工作用になるぞ? 可愛らしいのは今度な」*8
今度、屋内プールでも連れて行ってやるか。
そもそもコイツら泳げるのかと言う疑問もある*9
。俺は泳げる*10
合流地点に30分前待機。
奴らに遅刻してマウント取られるのは腹が立つ、予定時刻10分前。
タイガーストライプの上着を羽織ったアツコが水面からぬるりと顔を出す。
「映画でも見たのか」
「”Apocalypse Meow”の物まね」*11
前にうちの隊員とそういや映画見てたな……、滅茶苦茶長かったと思うけど。
今回アツコはジーパンにタイガーストライプの上着、ブーニーハットのスタイルだ、お転婆なお嬢さんという雰囲気である。*12
武器も普段と違いCAR‐15に溶接でつけたM203だ、消音器と4倍スコープもあるが価格は控えめ装備である。
「先生、ウサギ来たよ」
高性能アツコボードとは言え暑さの対策は難しいので、今回はは殆どしまわれて居て欲しい。
逆にユウカは白いシャツに普通の作業着用ズボンで、海が近いので銃も変えてM76にしている。*13
因みに俺は黒いテンガロンハットにデカいグラサン、黄色いスカーフを首に軽く巻いて薄い青の作業着上下のスタイルである、間違いなく先生と思うまい。*14
「流石シャーレ。5分前集合どころか10分以上前集合とは。ですが、早すぎるとそれはそれで迷惑と言われるらしいですよ」
「ミヤコの奴あいつ等5分前集合だろうから、10分前に着くって昨日からな」
「意地っ張りは双方みたいですね、行きましょうよ」
目的地へ向かうには河川哨戒艇(PBR)から行く。
調達したUH-1で途中まで空輸してぼとんと落とし、後は船だ。
たどり着いたのは、曇り空の漁村だ、俺の知ってる漁村より遥かに発展してるからか、寂れてると言う気はしない、灯台もあるし。
それに人気がないとも思えない、生活感がありすぎる。
「じゃあ、俺達は金の流れでエビを追う、お前らは聞き込みでエビを追う」
「了解です。捜査部の実力見せてもらいますから」
一旦二組に分かれ、聞き込みに入る。
「俺はレッド・フック・エクスプレスが黒だと思うがどう思うよ、ユウカ」
ユウカは確証も無いので発言はしなかった、こういう点で極めて冷静なのが長所だ。
「ノアに確認記録から当たっておいてもらえ」
「もう依頼してますよ……にしても」
ユウカが空を見上げた。
雨が降りそうな空が気に入らんな。
「先生はこの嫌な空気気にならないんですか?」
「全然。嫌な空気ってなんだよ、湿度高いだけだろ」
死臭もしないのに、どうしたんだこいつ等。*15
幾らか聞き込みをしたが、どうも要領を得ない。
村人は何か迷信的だし、不漁と言う割に聞き込みに行ったレッドフックの社長は慌てた様子がない。
なんとも滅茶苦茶だ、釣り人の白熊が一番白い、ダブルミーニングかなにかか。
「深きもの? ペロロジラの新種か? ヒフミ教授呼んでオキシジェンなんたらでも使わせろ、飛んでくるぞ*16」
爆雷撒いて帰りたくなって来た、エビも大量に取れるだろ。*17
現地のヴァルキューレ警察学校の話もいまいち無関心だ。
頭のイカレた地元の住民を手懐ける士官学校首席の特殊部隊の大尉とかならともかく、これじゃ良く分からない。
「先生がめんどくさくなってきた顔になって来たよ」
「あの不良中年が投げやりになって来たから、いたずらっこモードは止めてねアツコ」
現地住民相手には民心を買うのが一番である、いくつかの壊れていた機材を直す。
表向き我々は「DUのちょいとした会社」の交渉班だ、資本主義の為にそういう慈善活動を行うは必然である。
サキはあまり慈善を取引材料に使いたくないらしいが、文句は言わない、理由はどうあれ善行ではあるからだ。
腐っても特殊部隊、機材関連の取り扱いはきっちりこなせている。
逆にアツコは現地資材で直せる方法をヴァルキューレの生徒や漁師に教えていた、語り口や態度が柔らかいせいか、素直にみんな聞いている。
途中からラビット小隊の連中まで聞いてメモしていた、この素直な真面目さがもう少しあればなあ。*18
「そういやそう」
焼き魚を振る舞ってくれるというので、食堂でお世話になっていると、白熊の釣り人が言った。
「最近深夜の岩礁に赤い光が出るんだ、なんだっけ、鬼の岩礁だったか」
「赤い光」
漁師の親方に「ささ」と焼酎を注ぎながら、詳しく聞いてみる。
怪物が居るにせよ、何にせよ、漁師も知らないと来た急展開だ。
カメラの写真を見ると、確かにぼやけたシルエットが出ている。
「そりゃあれじゃろ、再来の船じゃないかの。むかしおばばが話してくれて夜トイレに行けんくなってな」
画像のシルエットを詳しく解析できるか? とユウカとモエに伝えてみると、すんなり上手くいった。
後で聞いたがこの熊吉、動画投稿者らしいがそのせいでカメラは良いのを購入してたらしい。
霧が濃いのもあり、明確な姿ではないが船は艦橋の位置、マストの配置、その他の配置がある程度わかれば種別できる。
ユウカのタブレット端末に「既知」と分析データが出る。
「艦影確認。GS-13型……レッドウインター製のMUNA級ですね……ところどころ改造されてますし、舟艇運用まで出来るようにされてます」
高解像度の画像によれば068型揚陸艇が積まれている様だった。
レッドウインターの船舶*19とは珍しい、足が付きやすいだろう。
海洋トランスポンダーの照会をヴァルキューレの生徒に頼むと、あの船はトランスポンダーを切ってるようだと返された、明確かつ重大な法規違反である。
サキを見る。
「お前、
「ああ、水着もその時の奴だな」*20
「深きものは分からないが、隠れて法律違反してこそこそする奴はバチが当たるべきだと思うんだ。そう、”突然軸と舵が爆発するとか”な」
白熊以外の顔が「面白い事になってきた」と変わる。
あんちゃんは何を言ってるか良く分からない様子だ、ピュアだなあ……。*21
「そりゃあなんとも」
親方がにこやかに言う。
「恐ろしい出来事だ、トイレに行けなくなりそうだな」
にやりと笑い、親方へ言う。
「愚問だとは思いますが、そういう異常事態が起きたら親方たちは捨て置けませんわな」
「当たり前だ、海の男は後悔しない様に生きる」
「そりゃなんとも。船乗りらしいお言葉」
つまり現地で何が起ころうと住民の支持も取り付けた。
湾口閉塞にならんようしなきゃいけないが、何とかなるだろう。
逆に言えばそれ以外ならよしという事である。
ユウカ、悪い事言わないからやっぱ俺達もハープーン*22くらい……だめか?
「よし、突入部隊を編成してヘリで事態収拾用の増援を運ばせろ。速戦即決でいくぞ」
「危なくないかの?」
「
夜とともに総攻撃だ。
空井サキはヘリの機内で装具の最終確認をする。
ヴァルキューレ警察学校海上保安局から借りたSSTの隊員は元身内も多く、いくつか装具を貸してくれた。
ミヤコの言い草ではないが、同期や先輩の縁はありがたい。
「目標まであと5分!
空気を激しく震わせる震動、UAVの分析であの船がほど近いブラックマーケット地区の港湾に荷下ろししてるのが確認された。
素晴らしい、心の底から遠慮なくぶちのめせる!
月をバックにユウカとの交渉の末に調達したUH-1ヘビーホッグとACH-47を伴い、更にヴァルキューレ警察学校海上保安局の船舶を調達してきた。
最早逃げ場など存在しない、奴らの首をギュッとしてやろう。
≪ロメオフォックストロット、シャルウイダーンス!≫
スズ先輩が攻撃開始命令を出した、Stoner 63A小銃を装填する。
心理作戦開始、音楽が流れる。
聖歌集625番(Christus vincit, Christus regnat,Christus,Christus imperat)とかいう歌らしい。
歌詞は古代語で良く分からん。
「なんで聖歌なんだ!?」
ヘリの機内故に大声でミヤコに尋ねる、人柄は良いのは分かるが底知れなくて苦手で話辛い、ミヤコくらい聞き上手ならよいのだが。
ミヤコはフラックジャケットを確認しながら返した。
「”正義は勝ち、とこしえの平和と命と救いあれ! ”だそうです!」
「”戦争と平和”ってわけか! はッ笑えない!」
思わず苦笑した。
これから何するか理解して流してんなら、間違いない、やっぱぶっ飛んでるよ。
前衛のガンシップが攻撃コースへ入った。
≪恐らくは彼は怒りを放ち、汝ら途に滅びん。交戦開始!≫*23
シャーレ空中機動中隊、ヴァルキューレ警察学校臨検移乗隊、SRT。
前代未聞の
夜のブラックマーケット港湾部、夜空に突如フレアーによる灯りがともされる。
空を蹂躙せんと響く轟音! 耳を叩きつけるエンジン音! 響き渡る放送!
きいんと高いマイクの音がして、”あの大人”の声がする。
≪連邦捜査部シャーレだ! これより法執行を開始する!≫
レッドフックの社員たちは聞き覚えがある声と、単語で何てことだと声を上げた。
「深きものよりよほどヤバいもんが来たじゃねえか!」
「自業自得ですよボス! もうダメだァ!」
「黙って戦え! 戦闘準備!」
船体後部の擬装を解いてZSU-23-2を展開、対空機関砲を指向する。
ヤケクソで射撃が始まり、夜空に東側系特有の緑色曳光弾が山なりに飛んでいく。
狙われた先頭のAH-1G──ユウカにアパッチの代わりに数的主力兵器として調達──が左へスライドし、ガンポッドのミニガンが唸りを上げる。
地獄から現れた猟犬の様な唸り声をあげながら赤い曳光弾の豪雨が浴びせられ、忽ちに船体後部が沈黙した。
ACH-47が20㎜機関砲ガンポッドで港湾管制を制圧射撃し、MANPADSを制圧、予定通りLZへ降下を開始する。
ミヤコ達も降下して船舶へ突入、SEALとして水中から突入したヴァルキューレ警察学校SSTも突入を開始する。
「船を出せ! 早く!」
レッドフックの社長が慌てた声を挙げ、船室の通信機から指示する。
しかし軸がイカレたらしく航行不能だと返され、機関室も繋がらない。
≪機関室制圧された!≫
≪後部甲板機関砲沈黙!≫
≪港湾管制室応答なし!≫
クソ! どうして!
社長がその大きな機械的身体を動かし、慌てて自前の武器を探す。
何とか逃げ出さねば! 奴ら平気で砲弾を撃つ! PMSCだろうと容赦なく叩き潰す狂犬だ。
≪こちら艦橋! もう奴らが≫
通信機が爆発音、悲鳴の声を遺して途絶した。
自分用のカスール拳銃を見つける、金装飾でごてごてと輝いている。
何を間違えたんだ、密輸は上手く行っていた、お陰で俺はこの港のキングピン(大物犯罪者)になれた。
「ち、ちくしょうたかが連邦捜査部なんかに」
震えながら弾薬を装填する、何発か落ちた、ローダーを使うという発想も抜け落ちている。
「ボス! 降伏しましょう!」
G3A3を持ち出してきたオートマタが提案した。
周りのオートマタも「それが良い」と同意するが、良い予感がしない。
連中ROE*24が存在してんのか? という疑問もそうだが、あからさまなまでに見せしめだ。
「無理だろ! 聞いてくれるわけねえよ!」
船内水密扉が爆破され、40㎜擲弾がバリケードへぶち込まれる。
M60E3機関銃を制圧射撃し、続けてミヤコ達が突入する。
「クリア!」
バリケードを超えて船室へと向かう。
船舶は多少改造されているが、船内は概ね変わっていないようだ。
ただ船室まわりの華美さが密輸ビジネスの底知れない深さを語っている。
蹴りで船室の木製扉をぶち破り、奥に居た社長の腕を射撃、続けてストックで殴り飛ばして制圧する。
「キャビン制圧! 目標1確保!」
片足で拳銃を蹴飛ばす、454カスール拳銃? 悪趣味な塗装だ、実益性がない物を。*25
大火力は使いこなせる熟練者が使って意味があるのだ。
「ち、ちくしょう、お前ら連邦のイヌか! 物を売るのがなぜ悪い!」
「無許可だからでしょ」
手錠をかけてパイプにつなぐ。
インカムを確認すると概ね他も制圧を完了したらしい、ブラックマーケット地区港湾部根こそぎ摘発だ、さぞ色々出るだろうな。
状況終了の連絡が入る、ヴァルキューレのAAV7から事後処理部隊が上陸を開始している。
港は盛大に大騒ぎだ、太陽が出る頃にはシャーレの”禁制品処理部隊”のM67火炎放射戦車が揚陸、密輸品の記録と一部証拠品を残して滅却作戦を開始している。
クロノスの報道陣が続々と陸揚げされる法執行部隊や大量に連行されていくオートマタ達の行列を映している。
まるで宣伝映画だな、ミヤコが呆れた様にカメラを見た。
「カメラを見るな! 見るんじゃない! もうちょいこう緊迫感を顔に出せ!」
付き合いきれん、立ち去ってミユ達と合流しようとする。
シャーレ勤務の先輩、スズ隊長を見つけた。
「”先生”は何処ですか?」
「今到着します、空中指揮官機から降りてきますよ!」
LZの砂浜に轟音を伴いながら”シャーレ”と側面に書かれたCH-53E<スーパースタリオン>が降りてきた。
噂じゃ通信機や電子機材を積んだバリバリの移動指揮所らしい。
テンガロンハットから三角帽に変えた先生は慇懃無礼極めたような動作で被りながら、幹部にビシバシ指示を飛ばしている。
今少し健全な心があれば、このような大人がSRTの支援に居て欲しいのだが、そんなもん多分この大人には無い。*26
「ヒヨリ! カードだ!」
「はい」
アリウスの子のリュックサックから出させたカードの束を先生が取り出す。
スズ隊長とヴァルキューレの生徒が敬礼し、損害報告をしているが、特に気にした様子もない。
恐らく本気で戦闘で損害が出る事は”慣れている”のは分かる、無能が原因でない限り、あの大人は損害についてはとやかく言わないのは知っている。
事実我々の演習に対する講評は完全に中立的な意見だった、AAR(作戦後報告書)の講評もそうだ。
「スペードの3、スペードの2、ダイヤの4.しけたツラばかりだ!」*27
気絶した連中にカードを振り分けながら先生がしゃべる。
何してるんだとヒヨリさんに尋ねてみた。
「先生が摘発作戦で時折やるカードらしいです。心理作戦です、衝撃と畏怖のためだそうで」*28
それ体の良い吊し上げと何が違うんだか。
ヒヨリさんの言葉を聞きながらカードを一枚手に取る、シャーレ公式トランプカードだ、裏面が黒地に白文字で連邦捜査部と書かれている。
トロフィー気分なのかと思ったが、違うだろう、多分予告状やタギングみたいなものだ。
すると風を切る音がした。
「迫撃砲だ!!」
近寄ってきたサキが叫び、先生以外が伏せる。
爆発音が響き、スズ隊長が「先生危ないですよ!」と声を上げると、より大きい声で返す。
「俺が居る場所が一番安全なんだよ!」
それをいうと、足にくっついていたヒヨリを首根っこ掴んで離した。
「お前護衛だろうが! 俺の陰に隠れてんじゃねえよ!」
「えへへ」
「無線機貸せ!」
無線機の受話器を渡し、ひっつかんだ先生は声を上げた。
「コブラで300m東の山を吹っ飛ばせ! ヘビーホグで焼き払って整地しろ!」
迫撃砲チームが狙いをつけだしたらしい、近くに落ちだした。
バゴンと轟音がして揚陸したてのヴァルキューレのMRAPが横転した。
にもかかわらず相変わらず伏せる気配がない。
「先生危ないですから伏せて!」
「黙れ! お前に大砲の何がわかる、軽迫撃砲でビビってプロシア軍がぶちころせるか!」
「分かりましたからしゃがんで!」
スズ隊長、苦労してるなあ……。
するとヴァルキューレの生徒が制止するのを聞かず、不良生徒が数名負傷しながら走ってきた。
警戒して小銃を掴んだら先生に片腕で跳ね上げられる。
「銃を向けるんじゃない非武装だろうが! MEDVAC(医療輸送)のヘリに乗せてやれ!」
4機編隊、フィンガーフォーで隊列を組んだコブラとヘビーホグがロケット弾を掃射、迫撃砲陣地を制圧する。
「良いぞドンピシャだ! 見たかバカタレ、大砲は俺がキヴォトスで一番専門家だ!」
まるで小学生みたいな無邪気さだ。
お気に入りのヒーローの活躍を見て興奮する子供の様な動きと声でカウンターバッテリーをしている。
なんであそこだと分かるのか、サキが尋ねた。
「周りを見ろ! 観測手が入れる山なんかあそこしかないだろ! 初弾から微妙に南にずれてた! 観測しながら撃ってる証拠だ!」
「なるほど」
そのまま先生たちは地区南部でまだ一部掃討未完了と聞いて、制圧しに行ってしまった。
アツコさんを見つけ、声をかける。
にこやかに水筒を渡された。
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
迫撃砲の射撃が止み、揚陸作業がまた再開される。
「成功おめでとう」
「協力のお陰ですよ」
これは素直な気持ちだ。
根こそぎの一斉刈り入れ、それがシャーレの手柄になるにしても、SRTとしての自分に誇りを持てた。
利権や収賄に屈せず、あらゆる手段を用いて徹底的に狩りつくす。
正しく
「うん? 先生はあなた達の戦果だって言ってたよ」
「はい?」
「最初に気付いたのはあなた達だからね」
帰還用のUH-34に乗り込みながら、笑みがこぼれる。
「私たちの戦果じゃありませんよ、SRTは”公式には如何なる関与も記載されない”んです。特殊部隊の性です」
アツコは楽し気に大笑いして、「そう」と見送った。
功名心ではなく、名誉でもなく、己の行為に自負と責任を。
それがSRTとしての大事なことだと、あの大人を見てそう感じた。
まったく、あれで良識とか善性とかがあれば良い将校だと思うのだけど、ああいう大人困るんだよなあ。*29
作戦が成功して数日がたち、DUに戻ると留守番をしていたノアが困り果てた顔をしていた。
なんでも作戦成功の翌日、起きたら”海水のついた足跡”を残しながら、冷蔵庫まで歩いた誰かが居たらしい。
EODチームを伴いながら冷蔵庫を開けると、何故かくさやや高級海老、魚が入っていた。
「……侵入者?」
サオリが首を傾げる。
しかし監視カメラや警衛は十分いた、そもそも外部から足跡を残しながらシャーレに入れる訳がない。
「……そういや深きものは礼を尽くすと報いてくれるらしいぞ」*30
「まさかあ」
バターで焼いた海老は、ほんのり火薬が香っていた。
ー完ー
こんなの水着イベじゃないわ!ベトナム戦争物よ!
どっちも似たようなもんだろ!
対応用Twitter作りました、本作タイトルで検索してください
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。