キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
アビドス砂漠での騒乱劇が始まる少し前……。
治安体制再確立と防衛室への介入、刷新された連邦生徒会の治安体制は裏社会に大きな圧力を掛けていた。
度々行われるタスクフォースによる闇市の摘発、カイザーの影響力低下による武器取引停滞、復興と相対的繁栄への流れで表のシノギがデカくなり裏社会を棄てる者……。
人的資源の供給源たる不良学生に見放されつつある中、裏社会は不景気が押し寄せていた。
迅速な展開な強大な打撃力により立ちはだかる全てを殲滅するシャーレ、指揮系統と装備や訓練改編でその広大な組織力を再編させたヴァルキューレ、強大な権力は容易く裏社会を覆していた。
それはとあるギャング連合が終焉を迎えようとするのに十分と言えた。
便利屋68、彼女らは金次第で大概の事を成し遂げる集団である。
迷子の猫探しからカウンターテロまでをやる彼女らは、以前にシャーレ相手に干戈を交えた事もあった。
そんな便利屋はいま、アビドスの片隅、ゲヘナとの境界線近くのマンションに居を構えていた。
緊張するな、そう自分に言い聞かせながら一見普通のマンションへ入る。
8階建てマンションだがほかに住民はいない、壁に刻まれた弾痕が生々しい威圧感をしていた。*1
意を決してベルを鳴らす。
……鳴らない、あれ、壊れてるのか?
便利屋の依頼が入るころ、シャーレの本庁舎。
珍しく真面目しくさった顔の先生が何か考え事をしていた、無論大概ろくでもない事を考えているのだろう。
ユウカは気にしなかった、前から強請ってた特科車両隊創設*2と名目辺りか。
「ユウカ、オペラと料亭のどちらが良いと思うかね」
おっと予想外がきた。
ユウカが困惑したのを見て、先生は言う。
「いやな、アツコへの教育だがこの先そういう事もあるよなと思ってな。」
それを聞いてユウカは安心した、この大人は間違いなく生徒の為を惜しまない類なのは良く知っている。
真面目な事を考えているのなら良い事だ。
「会談の場としても多いでしょうからねえ」
「そうなんだよなあ」
予定表を確認する、先生のスケジュールは多少調整が効くだろう。
この先生仕事も早いし組みなおすのも早いんだが私より無茶な組み方するんだよなあ、倒れる気配も無いから恐い。
先生は良い感じの衣装を用意してやりたいんだが、知り合いにそう言うのが強いのが居るか?と尋ねた。
エンジニア部の中に趣味で服装を作る奴が居たな、そう聞くと先生は携帯を手に取った。
「ノアが記載しといた健康診断記録、あれも添えておいてくれ」
動きが相変わらず早い。
「しかしまたいきなりですね」
「ん、まあそう。リンちゃんから”あの子たち大丈夫?”と言われちゃな……保護者としてはな……」
そう言って書類が見せられる。
BD制作の依頼、うちらしくも無い依頼だが……そういう事なのだろう。
分隊はなんで集められたか首を傾げていた、あまりいきなり呼ぶことはしないから不可思議だった。
「諸君らはコマンドではあるが、特務でもある、そしてこれからの学生生活で役に立つから、今回はオペラの楽しみ方を教えてやろう」
相変わらず訳分からない大人だなあと思いながら全員が聞く。
つまるところアツコやサオリや皆の生活の為でもあるというのは理解できたが、いきなり言われると困惑する。
アツコが尋ねた。
「先生経験あるの?」
「ああ、ヴァンデミエールの13日もオペラを観劇してた。その後暴動があって大砲でちょいと暴徒を吹き飛ばしたけど」
全員が呆れた顔をする、なんだよ、当時の交際相手が居たとか遅れて参加したのをしらばっくれたとか言ってないだろ。
頭の中にカメレオンみたいなツラした警察大臣が過る、カンナが狂犬ならあれはフェンリルかケルベロスだよ。*3
「揃った様ね」
ユウカが現れる。
各自ドレスとかに関して希望を述べるよう聞いている。
「前の採寸はこれ用だったの?」
ミサキが尋ねた。
「うちの特務である前に学生だからな。いろんな服は持っておくと良い、色々使えるだろうからな」
珍しく二人とも上機嫌だな……、ミサキはやや面喰らった気分になった。
「大丈夫よ、この先生はスリーサイズとかより身体能力や健康面しか見てないから」
「虫歯は許されんぞ?身長と体重は場合に応じてだが基本的には」
「デリカシーどころか徴兵担当見たいな見方ですよソレ」
呆れた会話をしている二人に予算とか大丈夫かとサオリが尋ねる。
「予算も連邦生徒会から下りましたよ、しかし似合いそうで羨ましいわね」
「一応何かの作成だっけか。ユウカはスーツじゃないのか?」
「あれは仕事着ですよ、先生の服と同じで」
「つまり同じでは……?」
野戦服と礼服の差がない時代の奴はこれだよ。
ユウカはダメだこりゃとため息をついた、正直なところ先生は礼服にシャーレの青いコートを着ているのが絵になるから困るのだ。
大人の魅力というより、全身から出ている覇気と呼ぶのが近かった。
嫌ってはいない、デカいヤマに対して右から左へ物や人を動かし状況を解決するとき、ユウカは心の底から喜びを感じているのも否定しない。
問題はこの男は常に計算外という事だ。
数日後、DU郊外オペラハウスにルノー製アルカナ アントラクトが停車する。
シャーレの公用車で大衆車らしい見た目を維持しているが、シャーレらしく防弾仕様のみならずカスタム仕様である。
見た目以外別物とすら言えるかもしれない。
白い礼服にケピ帽をしたD分隊が降車し、ドアを開ける。
出来得る限り穏健なフリをしつつ要人護衛の実地訓練も兼ねている。
このオペラハウスはホテル複合の高級ホテルだが、以前から度々犯罪組織との話が出ている。
ホテルが黒いというより、程よく都会から離れており大物犯罪者が来るのだ。
無論警備を雇っている、ブラックマーケットガードではないエージェントたち、”胡蝶蘭警備機構”通称MLOと呼ばれており、以前にシャーレに研修に来た事もある。*4
雇い主も金を惜しんでないのは調査しなくても明々白々な装備を配給している、数少ないアリウス生を雇えた企業である。
「ようこそ」
消音器内蔵型MCXを吊るしたエージェントを後ろに、従業員が確認する。
するとサオリがやや驚いた声を挙げた。
知り合いでもいたかと聞くと「便利屋の連中がいる」とサオリの言葉に、一瞬理解を拒んだ。
便利屋!?何でこんなとこに居るんだ。
アレが出るという予定は無い筈だ、オペラハウスに便利屋の連中が来るはずがない。
いや正確に言えばカヨコとかアルは来るかも知れないけど、ハルカやムツキが来るか!?
「社長、不味いね。先生がシャーレの特務を勢ぞろいで連れて来てる」
カヨコも予想外と言う顔をしていた。
アルは顔からして「なっ、なんですってー!!」の声が聞こえそうな顔をしている。
あいつ等何しに来てるんだ?高そうなドレス迄あつらえている辺り何かこう社員慰労のあれか?
裏業務の囮にはされても闇の深い仕事はやらない、読みやすいけどこういう時は良く分からん。
「先生がそう言う服着てると本当のアウトローって感じよね」
お前ら笑うな!昔より良いだろ!
「俺達はオペラを楽しみに来たんだよ、”お前らの仕事”は邪魔しないから静かにな」
グラサンをずらして言う。
楽しい社会科見学の予定なんだぞ、頼むからぶっ飛ばすなよ。
本当にオペラ始まるのか?終わるまでここ無事だと良いなあ。
ホールへと入り、アル達を呼んでレストランへ入る。
邪魔はしないというが、何をしているかは知っておきたい。
「それが……ドン・アランチーノは御存知よね?」
「マフィアのボスだろ?」
「今いるのよ……ここに……しかもシャーレが絡むの」
「え」
俺が知らん話が出てきたぞ。
話を聞くにギャング連合も最近は衰退して来たらしく、闇市が各所でしばかれているせいで、アランチーノ自身がここのスイートに亡命状態らしい。
そして遂にアランチーノは「司法取引してむしろシャーレに匿われた方がマシ」と考え出したらしい。
賢い選択肢ではある。
「で、その……アランチーノが護衛に私たちを」
「苦労してるんだな」
Tボーンステーキを食べながらサオリがそういった。*5
ひと通り話を聞いて、アルちゃん御一行分の食費も軽く出しておく、金で恩義が少し買えれば安いものだ。
兵隊気質は変わらんと言うべきか、食事をすぐに平らげたうちの分隊員たちには美食の概念はやや難しいかもしれない。
俺が言えた話じゃない、カブトムシの幼虫齧る奴よりはマシと思おう。
「先生」
ミサキが後ろで歩いていくスーツ姿の連中を指さした。
「あいつら殺気だってる」
「セキュリティ連中か?」
「なら変だね、むしろ封鎖しようって雰囲気」
あーあきな臭くなってきた。
連中はエレベーターホールからエレベーターに乗る気らしい。
速度から見てスイートへ一直線か?
「アルちゃん、飯食う暇もなさそうだぞ」
「え?」
そうは言いつつアルちゃんは慌ててエレベーターホールへ走る。
会計に多めに金握らせて「失礼」とレストランへ出ると、セキュリティのエージェントたちが動きを変えた。
「ただいま清掃中です」
「スイートのお客様がお呼びなのよ」
アルはレストランを出るまでにマインドセットを終えていた。
それを見ながらサオリとミサキに「お前らちょいと舞台裏の確認よろしく」と指示をする、もうオペラは諦めるしかない。
アツコには出演者控室の確認を命じた、馬鹿め、オペラハウスで待ち伏せは前にされたし、やり返した。
サオリを伴いエレベーターホールへ近づくと、アイコンタクトしたエージェントたちがスーツジャケットの下からMCXを取り出して射撃を開始した。
「なんでこうなるのよおおお!」
アルが咄嗟に遮蔽に飛び込み、カヨコが即座に背中から拳銃を抜いた。
スーツ姿のハルカが即座に防弾ベスト代わりにアルを庇う位置に移動し、それに紛れてムツキが突入する。
間違いなくエージェントどもは何か訳アリだ、MCXの射撃が開始されサオリがP226を速射してエージェント二人を排除する。
「やるう」
「まだ来るぞ!」
BRN-180自動小銃を構えたエージェントが続々と走る音が聞こえる、アル達をエレベーターに乗せ、事態を調査しなければ。
なんでこうなるんだよこの街は、おちおちオペラも見れやしないよ。
エレベーターで最上階のスイートルームへ直行した便利屋は、初手からBRN-180を構えたエージェント達の待ち伏せを受けた。
300ブラックアウト弾をぶちかます連中は珍しい、豊富な資金力を物語っている。
ムツキがひょいとフラッシュバンを投擲し、ハルカが前進する。
「フラッシュ!」
エージェント4名は通路左右に散開、ツーマンセルの2セットで相互援護する。
「全然効いてないわよ!?」
アルの問いにムツキもやや申し訳なさげにした、腐っても元アリウスである、アンチフラッシュや対ガスの基礎は受けている。
ムツキは即座にプランを変更、P-90を掃射してM67手りゅう弾をカヨコが投げる。
すかさずアルが狙撃、手榴弾が起爆する。
「クソ!」
続いて爆発に紛れて突入したハルカがエージェントに射撃、続けてカヨコが片方のツーマンセルを排除する。
しかしカヨコに対し撃たれたエージェントが殴りを入れようとする。
即座にアルが狙撃、エージェント頭部に命中させる。
「ありがとう」
「油断も隙もないわね……」
カヨコに依頼人を確保しようと促し、便利屋は前進する。
目標の部屋で交戦中のエージェントを横やり入れて、ハルカが制圧しにかかる。
2人倒したが即座に後衛のエージェントがハルカへ射撃、足を踏ん張ってハルカが耐える。
続いて左右へリーンしたムツキとカヨコがエージェントへ射撃、逆に制圧した。
「アランチーノ!居るなら返事しなさい!」
「間に合ったか!」
アランチーノが顔をソファーの陰から出す。
「エージェントは恐らく何かしらの理由で裏切ってるわね」
「クソ、なんという事だ」
アルの言葉にアランチーノが悪態をついた、カヨコが「下にシャーレの連中が居る、いっそ今行く?」と尋ねる。
「どうしてシャーレが居るんだ!」
「恐らく不幸な偶然ね」
「ついてない!」と声を挙げるアランチーノに心から同意しながら、アルは下へ向かおうと部屋の扉を開ける。
エレベーターが無機質なチャイム音でエレベーター到着を報せた。
「あら」
扉が開き、GLOCK18を構えたエージェント達が現れる。
一斉に射撃が開始され、咄嗟のアルの射撃で二人エージェントが倒れるが、まだ6人は見える。
アルが射撃している隙に部屋から依頼人を逃がすが、LBVベストにマガジンを6つ仕込んでBCMの16インチライフル*6まで持ち出したエージェントまで現れる。
明らかに警備エージェントという装備じゃない、何処からそんなもの調達してきた。
「どうするのよ滅茶苦茶相手キレてるじゃない!なにしたの貴方!」
「わしも知らん!」
ドン・アランチーノがKimber Solo拳銃で応戦、カヨコの装填をカバーする。
クアッドリロードしたハルカが近づいてきたエージェントに応戦、バードショットからスラグに変えたので流石に一撃である。
「社長悪い事言わないからピカテニーレール*7今度からつけなよ」
「いやよ!これわざわざ削り出し木材にしたのよ!?」
「じゃあ予備の武器携行しなよ、アウトローだって最近は予備持つでしょ」
ムツキが近づくエージェントに空手の応用で制圧せんと組み伏せ、P90の掃射で黙らせる。
弾が切れたムツキはそのままTTI TR-1自動小銃をエージェントから回収した。
レーザーサイトにグリップなどの装備品はサオリの銃に近い構成で無駄を削ぎ落した感がある、ムツキは即座に使用することにした。
「カバーユー」
ムツキが射撃し、ハルカを後衛にしつつ階段へ向かう。
幼馴染の銃器に関しては後で話し合う事にしよう、うん、やはり予備は持つべきだとムツキは思う。
PSG-1の長銃身で屋内戦はダメだよアルちゃん。*8
サオリが動きやすいからとスカートの端を切って、破いたそれでポニーテールにしてしまった。
外の連中に連絡をつけようとしたら、先にエージェントの連中がバスから降車してきやがった。
バイザー付きヘルメットにMTVベストのバリバリの戦闘装備、カイザーグループのボケナスの戦利品隠してたなお前ら!
道理で俺達諸共やっちまおうとやる訳だよ!というか良い装備してんな本当に!
なんでシャーレ突入部隊カスタムに近い自動小銃持ってんの!?
「多分防衛室の汚職の残り香じゃないか?」
「調達した装備の一部辺りか?クソ、俺のモンを……」
PTR 9CTを倒したエージェントから調達し、サオリが更にエージェントを一人排除する。
正面エントランスからFASTヘルメット着用し、コヨーテブラウンのSDS RBAVベストを着用した部隊が侵入する。
カイザーSOFの装備にかなり近い、戦利品が有効活用されてるらしい、クソ、デカルトのアホならともかくこいつらは洒落にならん。
「構成員一人5点エージェント一人200点重装備は300点だ、稼いで行け」*9
サオリが突入し、続けて確認を終えてきたミサキが側面から攻撃する。
戦闘の鉄火場に現れるあたり俺を心配してというより「多分ここ」と言う理解を感じる。
「便利屋連中と戦うのはアビドス以来だな、今回は頭数でも完全劣勢だが……」
便利屋は初見では無いが、撤退の達人だ。
放っておいても何とかなるかもしれないが不安である。
Kimber Warriorを側面からヘッドショットしたミサキが、よろけるだけなのを見て「全然効いてないじゃん」とため息をついた。
即座にマガジンを変え、サオリとタイミングを合わせて突入。
ヘッドショットでよろけたすきに壁に押し付け、脇と首の”構造上非装甲箇所”に銃撃を撃ち込み続けて昏倒させる。
続けて奪ったBCM自動小銃でサオリとミサキが射撃しながら後退、流石にシャーレ突入部隊並みの連中が戦列組んで前進されると本当に洒落ならん。
≪お、繋がった。先生まだ生きてる?≫
「ハレルヤ、天使の声だ」
≪元気そうだね。≫
アツコの無線機が繋がる。
警備室を抑えたらしい。
≪屋外のD分隊が駐車場3階で待機中、先生其処までいけそう?≫
「こっちより便利屋連中がマズいと思うぞ、そいつらを確保させてやれ。」
≪あの子たちもう駐車場へ前進中。≫
相変わらず逃げ足早いなお前ら!正しいけど!
というかヒヨリは何処だ!
≪退路確保支援に回したよ≫
「そうか、なら適時そちらの管制で動かせ。」
≪りょーかい。≫
先生の方言で「好きにして良いよ」の意味である事を、アツコは良く知っていた。
駐車場へ向かうには大ホールを通る事になる。
正面入り口からその周辺は先ほどから馬鹿みたいな銃声がしている、恐らく先生たちが暴れている。
依頼人の事を考えるに一番不適当だ、アルちゃんの脳裏には「時間くらいなら稼いでやる」という先生たちの姿が見えている。
無論真実は違う、そんな気はあんまりない、というかピンダウンに近い。
戦いつつゆるやかに移動しているのだ。
「今のうちに駐車場へ!」
便利屋は駆ける。
エージェントの動きにキレがなくなってきた、警備室が制圧されたせいだ。
奪った銃の弾薬も限りがある、アルは出来得る限り戦闘を避けた。
大ホールの両開きの扉を開けると、Spike's Tactical Compressorを構え、オニの意匠が施されたフェイスシールドをした重装のエージェント達が現れる。
「なんでこう毎回変なのが来るのよ!」
単発射撃中心でライオットシールドを構えつつ前進する重装エージェント達に、アランチーノが「あいつら元百花繚乱だ」と拳銃で応戦しながら話した。
アルも一応新聞や公報を読むタイプなので、最近まで百花繚乱が活動停止していたのは知っている。
「え、なに、じゃあアイツら元軍属と法執行機関で突入部隊編成してるの!?」
「そうだよ!」
「そこまでキレるのおかしくない!?」
「わしが握ってる秘密がそれだけヤバいんだよ!」
アルにアランチーノが叫び、片手を挙げて重装エージェント達がスクラムを組んで強襲歩へ移る。
「奇数そのまま射撃継続、偶数再装填」
正に百花繚乱の射撃術というべきか、単発射撃なのに綺麗に的確な射撃で遮蔽から動けない。
アルはハルカとムツキに手話--以前に聴覚に難がある依頼者が来たので猛勉強した--で合図し、カヨコにアランチーノを庇わせる。
重装エージェント達が何かを引き抜く音がした、いまだ。
ムツキが取って置きのC4爆薬をぶん投げ、天井へぺたりと張り付く。
「対ショック!」
即座に隊形をテストゥードから散開陣形へ変更、盾持ち隊員が上へ盾と注意を向ける。
止んだ僅かな隙にハルカが突入する。
「死んでくださいいいい!!」
ハルカの突入により12ゲージのスラグがもろに至近で直撃。
忽ちに3人が高級セラミック防弾パネルがぶち割られる。
フェイスシールド内で嘔吐しながら倒れていた相手に追撃をいれて制圧、続けてハルカが排莢口から装填してもう一名の頭部を直撃させる。
フェイスシールドが割れてよろけ、続けて援護のアルとムツキが制圧した。
「陣形再編」
重装エージェントの残り5名が隊列を縮小、PM-9短機関銃でハルカを制圧射撃する。
しかしアルのFMJ弾が支援に入り、続けてムツキが投げたC4を忘れたころに点火する。
爆風が巻き起こり、爆圧がもろに直撃。
頭を振りながら重装エージェント達が構える。
「まだ動いてる」
ムツキがやや引いた声をした、並みの相手じゃ無いのは分かるがここまでか。
流石に全員ではないが3人残っている。
2人がSpike's Tactical Compressorで射撃し、ハルカに残る一人がとびかかる。
「ハルカ!」
慌てて顔を出したアルの頬を射撃が掠めて飛んでいく。
爆発で脳と視界と銃器が調整ずれで当たり難いとはいえ、基礎命中が高いとあまり変わらない。
カヨコがアルの動きを見て即断した。
「社長!」
サイレンサーを外したカヨコが重装エージェント二名へ射撃、カヨコのカスタムH&K P30L拳銃デモンズロアが火を噴く。
独特の機関部の轟音と唸り声のような不協和音が鳴り響き、二人の動きが鈍った隙にアルは自身のPSG-1をぶん投げた!
「あがっ!」
よろけた隙に銃床で喉へ殴りを入れ、続けて排莢口から装填して仰け反る相手の顎へスラグをぶち込んだ。
装填口近くの緊急用予備弾からクアッドリロードで装填し、残る二人を倒す。
「クリア」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。アル様の銃が」
ハルカが悲し気に曲がったPSG-1を拾う。
しかし、アルは満足げな笑顔を浮かべる。
「うふふ、これで依頼解決よ!報酬で直すわよ!」
手段や道具に拘泥してはアウトローは務まらないし、勝てばよかろうである。
陸八魔アルには、そういう根っからの野望と、善良な心とインテリさが共存できる心の余裕が常に存在していた。
そうしたカリスマが彼女には存在していた。
「”サクラ4突入する!”」
「あ!」
駐車場からまた重装エージェントが現れる。
時間をかけ過ぎたらしい。
「どどどど、どうしようかしら」
今度の重装エージェントはCQC装備型なのか20式小銃をフルオートで射撃する。
残弾なし、打つ手も思いつかない。
脳内陸八魔最高指導会議に浮かぶ「わ、わへい」の提案、却下!受け入れてくれそうにない!キレた先生相手のがマシ!*10
しかし徹底抗戦も難しい、自分が囮になるか?
「あう!」
重い銃声がして重装エージェントが倒れた。
≪えへへ……なんだか違う人たちが駐車場にいますね……≫
話と違うんじゃないですか姫ちゃん。
ヒヨリが拝借したバレッタM82で次々狙撃する、相手に大きな隙が出来た。
「今よ!」
隙を突いて駐車場へ走り、命令で待機していたD分隊が回収する。
それと同時に、緊急通報で駆けつけてきたコノカ副局長とシャーレ空中機動部隊*11が突入を始めた。
40分しないうちに先生たちが確保される。
「あの、先生ちょっとお時間よろしいですか?オペラ見に行ったはずですよね?」
帰還後のユウカの第一言がこれだ、こっ酷く怒られた俺じゃない今回ばかりは濡れ衣だ、許さんぞ!陸八魔アル!*12
かつての防衛室やブラックマーケットのあれこれの利権の残党や、新興勢力が絡んだ事件はこうして幕を閉じた。
捜査したところMLOは「エデン条約と色彩後の闇市場価格高騰やFOX小隊向けの備品をくすねてた」と供述しており、つまり「事業ウハウハで調子に乗ってたら親元ぶち殺されて慌てて大惨事」になったらしい。
大人しく警備事業とかの表看板だけしてりゃあよお……。
「いやあ馬鹿は居るもんだなあ」*13
証拠とアランチーノの証言、財務記録から有罪が確定した。
ちなみに最初の武器密売の元手はアリウスの片隅の兵器庫発見かららしい、あのボケ死んでも迷惑かけやがる。
そして、戦闘に際してぶち壊されたアルちゃんの狙撃銃だが……。
「直すだけで良いのか?うちのガンスミスに依頼しても誰も怒らんよ。今回お前はうちにそれだけ貸しをこさえた。」
正直なところ、小火器を4人前更新してもユウカも怒らないだろう。*14
しかしアルちゃんの目はいつになくキラキラとしていた。
「”これだから”いいのよ」
それを言われちゃ弱いんだよなあ。
アルちゃんはPSG-1を手に、うきうきで帰っていった。
「良いんですか?言わなくて」
「良いんじゃないかなあ、後悔させたくないしな」
実は新造したようなもんでフルカスタム仕様だから多分前より高いなんて、知らない方が良い。
まあ多分アルちゃんは使ってるうちに勘づきそうだが。
力で舐められずに居たから、根治療法に根負けしてきた連中も増えてきたよと言う回でした。
アルちゃん大手柄3か月無罪
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。