キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
ピラミッドの戦い226周年アニバーサリです。
1798年、夢一杯でエジプト遠征を決行したボナパルド先生は、ギザのピラミッドが見えるカイロ近郊でマムルーク軍と激突し勝利します。
この前後にアビドス3章これは何か伏線が?
S,S,D,D,(何時もと変わらぬクソみたいな日々)
別に選挙などで慌しくなるのは連邦生徒会だけでは無い。
総決算も控え始めてきた、我が社としても系列企業は大きく利益は後退してしまうだろう……。
ジェネラルは移動中のベンツの車内で頭が痛くなった。
カイザーコーポレーション自体も役員会の時期が近づいて来ていた、今期は大荒れに荒れるだろう。
プレジデントもすっ飛ぶ可能性すらあるだろう、シャーレとか言う組織が生まれ、あの悪魔みたいな大人が来てから、大体の事業が赤字を吐き出し、PMSCに至っては大赤字だ。再建と対シャーレでかかる費用を試算させたが、それのせいでまたジェネラルは意識が軽く飛びかけた。
そもそも軍事部門が黒字を出せていたのは、需要と供給、大学園や連邦生徒会すら手が出しづらい強さと言う箔があるからこそ出せていた利益だ。
その箔を剥ぎ取り自身の装飾に変え、誰もが無理と笑ってたことをひっくり返したあの男のせいでもある。
お陰で軍事部門とその武力の紐づけで成り立って居た部門は焼け付き始めて居る。
というか我が社のPMSC部門が精鋭を悉く溶かしてしまい、普通に人事的に大問題なのである。
いきなり会社から8700名近い人員使えませんとか起こしたら代替人員どうするんだよという話である。*1
機械化旅団と航空連隊だから猶更洒落にならない、装備品はほぼ全損だ。
後退は……いや言葉を飾っても意味はない、あの崩壊と壊乱でほぼ装備品を喪失した。戦車大隊は壊滅、電子戦部隊や兵站部隊まで失った。
なにより兵員は完全に意欲を失いつつある。*2
モラルの低下は意欲を低下させ、仕事の質を下げ、規律は緩む。
低い士気が規律を緩ませて装備品は転売される、カイザーの装備品がまた闇市に流れる、難癖をつけられ制圧される……補充も足りない。*3
「向こうが師団規模になれば此方は軍規模で戦力を要求される、まだアビドス戦役やイーグルクロー作戦の損失も回復できていないのだぞ……」
アビドス支援作戦<サン・バースト作戦>、我が社の最初の大敗北となった<デザートストーム作戦>、そして失敗した我々の<イーグルクロー>。
シャーレは立て続けの勝利で最早完全に手が付けれる気がしない、エデン条約とアリウス解放の<不朽の自由>作戦と<永遠の自由>作戦、色彩襲来に際しての<オーバーロード>作戦、数々の勝利がある。
俺は将軍であっても軍政家だ、向こうはバリバリの野戦軍専門家、それも教科書に載るレベルの規格外と戦争するのは御免だ。*4
しかも次の仮想戦場はアビドス砂漠! 化外の地の更に辺境、完全に地図まで作られたであろう根拠地の基地は2度の大襲撃でボロボロ。
現地民はすべて敵、そして連邦生徒会からのこちらの影響力はかなり掃討され、事実上基地は放棄された。
そして役員総会での手柄にプレジデントはアビドス砂漠のお宝か再建途中のサンクトゥムタワーの何方かを求めるであろう、そしてどちらもあの男の縄張りだ。
あの男、財布に手を入れられるのは死ぬほど嫌いな男だ、間違いなく大惨事だよ。*5
「せめて、砂漠は捨てたいところだが……」
向こうも仮想敵とは言えキャノンボール的な加速度の軍拡は困るだろう、捜査部としての本業もあるのだから。*6
面子を保てるうちに、軍縮の季節かもしれん*7、少なくともプレジデントと仲良く失脚はごめん被る。
まだ俺が悪いわけじゃないし。
「まもなく目的地です」
大丈夫、まだあの男は魔王(ザミエル)ではない。
ジェネラルのボケナスからの秘密交渉の会談の要求がもたらされた時、それは意外にも早く承諾された。
アツコ*8はやや驚いたが、先生が「そうだな、外交交渉の社会科見学に来い」と言い、なるほどと理解した。
シャーレ公用車ではなく、”アリウス製パン”と書かれたバンで本庁を出る。
元々アリウス製パン大隊の面子が立ちあげた会社で、そこそこ売れているし、おいしい。
シャーレのカフェにも色々卸している。*9
「クロノスの尾行はつけてませんな」
助手席から声がした、最近は張り込みも多い。
敵対視はされてないが、ヴァルキューレからの警戒はされている、正直必然である*10、連邦生徒会の外局機関がこんな組織になるなんて誰も予想しなかっただろう。
お陰でヴァルキューレ公安局の私服が常についてるし、ゲヘナやトリニティもいる、まるで工作員博覧会だ。
先生の姿はどちらかと言えばヤクザ的*11で、お陰で移動中にブラックマーケットのガードから頭を下げられた、まあ間違いなく偉い人なのはそうなのだが。
喧嘩を売る相手を探して毎日生きてるような連中が、みんなして畏れて頭を下げている、なんともおかしな話だ。
この人は喧嘩屋じゃなくて戦争屋だというのにね。*12
会談場所はシラトリ郊外のレストランだった。
入ると向こうが先についていたらしく、重役を2人ほど連れてきている。
あれは他のグループの頭クラスか、かなり本気だな。
「君一人と言う筈だと聞いていたが」
ジェネラルがユウカとアツコを見て言う。
「またガスは嫌でね、専門家を呼んだんだ」
「それが出来れば苦労は無いよ」
ジェネラルが嫌そうに言った。
彼の提案はアビドスの借金を債券に変え、債券市場に売るからそれを買って欲しいという事だった。
成程自分達は身銭を切らないから面子を守りつつ賠償金を払うと言う事だ。
それにアビドスが多少深刻じゃ無くなれば、我々が表立って活動する根拠も減る。
「それをしてお宅首にならんか?」
「総会でつるし上げられるよりはマシだ、それに今なら軌道変更できる。我々は企業でね。軍拡競争はまっぴらだ、ついていけん」
ついに営利組織が破断限界の恐怖に苦しみだしたか。
金属疲労の様に組織が耐えれるか不安に苛まれ出したらしい。*13
正直本音を言えば「いやでーす」して破綻させたいが、それをしたら行き着く果ては変わらん。*14
真面目な話、このキヴォトスは恩知らずと記憶や歴史あやふやの連中が多すぎる、まともに統一政権が成立しない以上良い道ではない。
従ってシャーレの組織の命題は「全体の正義と秩序の為にある存在」であり、キヴォトスそのものにナショナリズムを生む統一された共同の偶像である。*15
軍拡の果ての武力組織ならヴァルキューレと防衛室潰す方が早いし楽だし謂れがありすぎる。*16
「それには同意します、家は”捜査部”ですから」
ジェネラルが「どの口が」と言いたげな顔をした。
ただどちらにせよ、停戦は必要だ。
それにそれ以外でもアビドスの負担は減らさねばならない、ユウカもアビドスの債権の45%、つまり3億と少しなら行けると事前に保証した。
「先生が強請ってる装甲化部隊より安いので構いません!」*17
などと言われちゃ呑むしかない、それに債権も極めて低利子という形にするのにも同意した。
正直無効化としても良いが、契約と手続きで問題になるし、むしろ権利者が我々の方が管理しやすいだろう。
会談もある程度ひと段落付き、握手を交わす。
滅茶苦茶ジェネラルは嫌そうな顔していた。*18
第2回交渉で草案が出来た、耳ざとい奴らは三回目の最終交渉で噂を聞くことになった。
当たり前だ、三回目の交渉は”公式にカイザーがシャーレ本庁へ自ら訪れた”のだから。*19
頭が回る方々は、逆に自分達が幻覚でも見始めたのかと、自らの正気を疑い始める始末であった。
一部は新しい大厄災の前触れではと身構え始めた。
だが、選挙などにこれで専念できると皆が胸をなでおろし始めた。
「先生、ナギちゃんあのニュース見た時椅子から引っ繰り返ったんだって。セイアちゃん*20からはあの砂漠で何かあったらたまらないから、邪魔する奴は全て引き倒すんだミカとか言われちゃったり」
「家は変わりませんよ、風紀委員会の方とマコト議長が凄い騒ぎになったそうですが」
ミカとイロハの反応は概ね世間の感想であった。
ちょいと洒落にならん勢いでぶん殴り合いしてたから、そらそうもなろう。*21
≪リオ会長は今回のシャーレとカイザーとの停戦に関して”我々としては平和と安定化を願う”と公式見解を示しています≫
テレビではミレニアムの公式会見が流れている。
リオ会長からは「政治と戦略は専門家の考える事だから期待はしておく」という反応で、アビドス債券購入や土地購入はむしろ資金提供したいとまで言われた。
何が埋まってるか分からんから、専門家が必要になれば呼ぶよと返した。
「本格的な装甲小隊入れたりして、正規コンバットチームを旅団戦闘団(BCT)にしようとしたんだがなぁ」*22
スズが食堂でテレビ見ながら、ざるうどんを啜りつつそう言い、書面制作していたユウカの手が止まった。
しかしそのまま作業に戻った。そのまま機嫌のいい声で言う。
「まぁ、そんなこともしばらく無くなるんですがね、良かったですねこれで”捜査部”を編成できますよ」
今までなんだと思ってたの。うちは最初からそうだよ?
部隊も「捜査と介入の為の必要最低限度の兵力・手段」だよ、間違いないね!
連邦生徒会での公聴会も概ね歓迎ムードだが、アユムのそれと真逆にアオイ室長は訝しむ目つきをしていた。*23
なんならリンちゃんも「本気か?」という目つきで、今まで反シャーレだった役員なんて脳が理解を拒んでいる。*24
まあ一番驚いてたの元理事だけど。
「お前に停戦とか講和と言う単語が辞書にあるのか!?」
「うるせえよあるよ! 一時期は平和の使者と言われたわ!」
「一時期な辺りが特に悲しいなお前」
なんて野郎だコイツ。
その後もカンナからは「講和破りとかするんです?」と言われたり、ミヤコに「次はどんな企み事ですか!」と乗り込まれた。
「私には分かりますよ! これはこの隙に連邦生徒会を掌握し独裁の正当化を」
「しなくても選挙で勝てるわ!」
「本性を現しましたね!」*25
デカルトに空いた予算で対爆シェルター拡張や炊き出しを日に2度に増やすことを要求されたりした。
一番面白かったのはマコトから真面目な声で「うちへの介入は望んでない」と言われた事である、お前の椅子は狙ってねえよ!
斯くして運命の日がきた。
朝が来て、予定時刻が近づいてきた。
アビドスも随分変わったように思える、ブルーシートが増えたり木材板張りが増えたりしたとかではなく、空気の話だ。
校舎周りはプレハブの仮駐屯から、ちゃんとした建物になり始め、コンクリートのヘリパッドが生まれ、水道が帰ってきた。*26
校門正面の立て看板の「給水支援段階的縮小」がこんなポジティブに感じられるとは。
奥空アヤネは自身に深い充足感を感じていた。
先生は未だに良く分からないけど、少なくてもシャーレの人たちは常識が通じる。
3週間ごとの交代で配備されてくる訓練生の1年生たち、給水支援部隊の人たち、根拠地を構えたシャーレ航空部隊。
なんとも変わるものだ。
「砂漠の熱砂では多種多様な理由で銃弾は狙い通りにならない、シロコさんの実演を見るように!」
射撃場でシャーレ1年の新人が砂漠戦の基礎を教育されている、演習によく来る彼女らはとても素直だ。
真剣にシロコ先輩の話を聞いている。
……変わったと言えばシロコ先輩もそうか、なんか前に見た便利屋の社長さんみたいなコートしてるし、戦い方が更にマッシブになった。
個人的に根の素直さは変わったりしてない、昔と比べて感情が良く出るようになったと思うけど。
昔は顔にすら出なかったらしい。
「おはようございます!」
「お、きたきた!」
セリカちゃんがワクワクとした顔をする。
みんなも期待を膨らませている。
「いやあ、これでここも倒壊しなくて済むんだねえ……」
ホシノ先輩の呟きが耳に痛い、あの大人にしても台風にしても最近滅茶苦茶になりすぎてる。
未だ対策委員会会議室の壁は板張りのままである。
「どうどう、停戦まとまるんかなあ?」
「平和になるのかなあ」
シャーレのアビドス駐屯部隊の司令部要員も見に来た、端末を視聴覚室へ移す。
全員が全員期待や不安感を抱いていた、シロコ先輩も戻ってきた。
「始まります」
債券市場に売り出しが始まる。
大半のファンドマネージャー達は固唾を飲んで静観の構えだ、結末次第で株式市場がどう変わるか分からないから見に来た連中が多数派である。
最終的に40%をシャーレが、5%をアビドスが買う。
事実上権利の半分をカイザーは明け渡す。
「あれ!?」
数字が予想以上に跳ね上がる。
おかしい、事実上この市場取引は官製談合だ、誰が絡む。
そもそも誰がこのアビドス砂漠の権利を高値で買うというのか? 更に言えばその土地も人がまだいる地域じゃないのだ。
かつて計画されていた砂漠横断鉄道の残存区域やそこらだ、購入しても意味はない。
愉快犯や何にしても、利益がない。
しかし債権は暴騰して300%を超えた、30億? どうしてそうなる。
「どど、どうなってるのよ!?」
「わ、わかりませんよお」
セリカちゃんの問いも答えれない。
間違いなくその30億、いやいまや40億を超えた金額で別の土地買う方が間違いなく儲かる。
資源無し、インフラ無し、価値無しの砂漠地帯の権利、地元住民と救援を企図するシャーレ以外誰が買うのだ!
【債権は完売されました】
端末の表示が冷たく告げた。
試しに購入者記録を開く。
「”セイント・ネフティス”?」
ホシノ先輩とノノミ先輩の顔が曇った。
ジェネラルは何故だと絶句した。
頭を掻きむしりながら制帽が落ちるのも気にせず自分の私室を歩き回る。
誰がどうして! なんで!
どこの馬鹿がこんな事を!
「ただちに誰の差し金か調べろ! ネフティスめ、腐ったミイラ同然の斜陽のクソ企業が!」
ジェネラルの怒号を受け、副官が恐る恐る言う。
退院明けの彼にも悪いニュースであった。*27
「あ、あの。プレジデントが」
「なんだ」
「……アビドス砂漠に遠征すると」
「サイケデリック(イカレてる)」
なんであんな砂漠に関わる、棄ててしまえ、そのような物。
そもそも未知の何かと言うが、幸せには決してならんだろ。
スタンドアロンで制御不能な兵器はナンセンスだ、無価値の極みである。
説得しよう、いま止めなければならない。
プレジデントの呼び出しにジェネラルは走った。
「来たかね」
いつになくプレジデントは上機嫌だ、理由が有るらしい。
「ジェネラル。君はゲヘナの雷帝を知っているかね?」
「いえ、あまり。確かマコト議長の前任と記憶してますが」
「そう。かつてゲヘナの擬人化の様に暴れた女だ」*28
プレジデントはホロ映像を映す。
「それがアビドス砂漠にあるらしい」
「まさか」
ジェネラルは胃が痛むのを感じた。
ジェネラルの危機感知センスが128DB級の唸り声をあげる、嫌な予感。
そうこれは、俺の指揮所にHARM*29が飛んできてるような嫌な予感!
「ネフティスの間抜けはまんまと乗せられたよ、ジェネラル」
大丈夫、大丈夫、まだ巻き返せれる。
「つまりネフティスをダシに火中の栗を掴もうと言う訳ですか?」
「理解が早いな、流石だよ」
クソ! 行きたくねえ! 押し付けられない様にするには……。
「ですが、今の我々の余力は乏しく……我々の戦力はあまりに少ないのです」
「大丈夫だ、ジェネラル。お前に新しい兵団を与えよう。我が社の再編した補充要員たちだ」
書類を見せられる。
まて、経歴が色々おかしい。
「これコンビニ店員まで混じってませんか!?」*30
「我が社の総力戦だ! ここで巻き返すぞ、なーにあの大人はネフティスを盾にすればやり過ごせれる、君が前回そうしたようにな」
滅茶苦茶言いやがって。*31
ジェネラルが衝撃を受けた無言を肯定として、プレジデントは言う。
「これでアビドス砂漠問題もケリがつく」
ジェネラルは命令書を受領した。
ただ彼にはそれが自身への処刑命令書の様に感じられたのだが。
あんな砂漠で終わってたまるか……! 俺は生き残るぞ……! 会社と心中するくらいのお給料は貰ってねえんだよ!
起きる撃鉄、回るリボルビング、詰められた弾丸。
火薬は満載、弾頭は規格外、その弾薬の名は先生。
アビドス砂漠は巨大な不発弾、筋さえ問わねば何でもある。
次回、アビドス第三部、本格開催。
次回も、ジェネラルと胃痛に付き合ってもらう!
【次回予告】
嘆くな!迷うな!悲しむなっ!
無駄だ、無駄だっ!君達に喜怒哀楽など不必要だ!
そんなつまらぬ物、対象があるから生まれるのだ。
そォうだ!そんな物は生徒会の谷底に埋めてしまえばいい。
次回「 Comrades in Arms 」
小生が手助けをしてあげよう。
外伝とか挟んでも持たせられる自信が無く成って来ました。
PC版EDF6も出るからね、許して許して……
テンポ重視とアビドス1,2章ほぼ一括投降したのがまずかったかな?
次から不定期かもです。
本作Twitterはタイトルで検索してください
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
-
どっちも知ってます。