キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
シャーレの装備が比較的高価なのも局地戦対応にしてるからもあると思います。
そんなこんなで初投稿です。
爆煙が晴れ、誰かに抱え起こされる。
眼を開けると、もう一人のシロコが居た。
今にも泣きだしそうな、悲しい子犬の様な眼をしている。
「心配すんな、生きてるよ……」
昔ツーロンとかでも至近弾でこんな風になったなあ、そう思い起こしながら立ち上がる。
随分風通しが良くなられている、シャーレ開庁以来のユウカよりも付き合いが長かったウォーターサーバーなんて欠片もありゃしない。
結構気に入っていたんだけどなアレ、形あるもの何時か崩れるのか。
辛うじて残っているは防爆対応金庫、あと俺の机。
V字状に発生した誰か・何かの干渉が助けてくれたらしい、誰かは薄々分かる、あいつのカードが起点だ。
代わりに額縁内部でカードが崩れていた。後で直すか
「良い日に壊れたと誇られる日にしてやる、お疲れさん」
あいつ俺に貸しを二つも作りやがった、なんて野郎だ、困るぞ。国王にはしてやらないと。
タブレット端末を起動、あいつらを呼び出す。
「借りが出来たな……アロナ! プラナ! 今生きてる厚かましい奴は居るか?」
『無事です、ですがアロナ先輩がダウンしています』
「やっぱりお前がオリジナルで良いんじゃないのか……?」
プラナに聞くと成程、”起きた事は変えられない”を”起きてないガス爆発”に変えられたと言われた。
ヒューム値やら何やらが歪んでるとか、説明はされたが全く分からない。
『リアリティアンカーを調整中。修正作業を継続中。ヒューム値再修正。プログラムをリブート。エラー』
プラナはひとしきり調整と確認を終えたらしい。
『現実改変の影響で現在先生はアロナ先輩の保護から外れています。推定:ゲマトリアの干渉』
「随分クソを煮詰めて固めた唾棄すべき性根のゲマトリアが居ると言う事か、対策が面倒なだけの卑怯者が」
洗面所に行き、水をためて顔を突っ込み、咆哮する。
水と吠えたことで頭が冴えた。プラナとクロコ*1が困惑している。
そういえばお前らの知る先生はしないのか、もう少しあいつは弱音を吐いたり切れても許されると思う、背負い込み過ぎだよ、いずれ壊れるぞ?壊れたからああなったのか?
「どうしようもないぐらい、クソみたいな目にあったらやった儀式みたいなもんだ、湯船に飛び込みたかったが今回は略式でな」
あの時あの思いをさせてくれた、腹立たしいが認めよう、ネルソンは7つの海を制した国の化身のような男だった、ブリュイは無能の臆病者では無かった。
プロイセンの野郎もどうしようもないロマノフの忠義者も、小ピットの野郎もパシャも卑怯じゃ無かった。
己が命を博打に賭ける、それはベアトリーチェにも出来ていたのだぞ!
都合悪いときは部外者気取って関係ないツラばかりか。ゲマトリアはカスが多すぎる、こんなクソどもがのさばるからキヴォトスはおかしくなる。
モグラの様な下種よ、俺はお前が居ることを、見ていることを知ったぞ。
「見ているのだろう! 下種! ここは……お前が俺を見て居るならそこはどんな場所でも俺とお前の戦場だ! 弱さは卑怯の正当化にはならんぞ! ようこそ、この総力戦に。お前にはもったいなさすぎるダンスホールだが、踊ろうじゃないか」
『……先生?』
「意思表示とテクスチャだ、奴らにはこれが効くらしいからな、大人同士の持てる札を全て使った総力戦で奴の色を塗りつぶす」
ふぅと一息を付き、プラナに確認するとあの手の技は乱発できないらしい。
『契約の箱への危害検知。制約を限定解除。システム”ペレツ・ウザ”を実行中』
「つまり何を意味してんだ、わかんねえぞ」*2
『今の私は無敵です。普段の2倍は強いです』
「おーけー。もうそれでいい」
そういやコイツもアロナ何だった、アホがうちのアロナなら天然ボケがこいつだ。
育てていた月桂樹から葉を一枚むしる。
偶には階段で降りよう、プラナとゆっくり話すのも良いかも知れない。少し時間が経っていた。
ラビット小隊のサキとミヤコが確認で上がってきた、珍しく真剣な顔をして大丈夫か聞いてきたので、面白くて笑ってしまった。
「いやなに、お前らもいい顔をするようになった」
「はい?」
「真面目な正義の味方のツラだよ」
ミヤコ達は揶揄ってるのか分からないと困惑している。
後処理を依頼して、付いてきたクロコと階段を下りる。
「各部隊は”俺は未だにしぶとくいる”と伝えろ、所定のプロトコル通りだ」
『……了解しました』
「あらゆる意味で、死んでやるわけには行かない相手が出来たな」
まぁ聞いてくれよプラナさんにクロコちゃん。
「何だかんだ言って俺も色々怯えて自決用の毒を持ったり、飲んだこともある。死にそびれたが……」
死にそびれた時やひもじい時の苦しさや友人を自分のミスやいろんな要因で死なせた辛さや色々独り言のように話していた。
「だが、殺されても殺しても意味のある相手だった、だがな、ここまで殺す価値もましてや殺される価値の無い生き物は初めてだ」
食堂のある階に着いた、随分歩いた気がする、いつの間にかクロコは消えていた。
周りが心配してくるが手で制す、水を一杯頼んだだけだ。
またユウカに怒られそうだな。書類どうすんだとか、アリウスは遺骨どうするか? の心配ぐらいか、イロハやミカはどうだろうか? イブキやセイアじゃ無くて良かった、心配するだけ無駄とか思われてそうだ。
ん? 俺死んでも安心はされてもあまり悲しまれないのでは?
ヒナは勧誘されなくて済むとか、ホシノは様子がおかしいのは何時もの事だし、どうせ死ぬんなら先輩の代わりにとかだろうか?
過ぎたことで心を惑わせるな、今を未来を考えろ。大人の男の人生に後悔は不要だが、奴に殺されるのは看過できん。
『……貴方も私達の先生とは別の形で慕われてると思いますよ』
「何か言ったか?」
『いえ、特に』
あのグラサンを付ける、気分を変えろ。今は先生は休業だ、今回俺の心を煩わせた連中を引き潰す。
奴も皇帝としての俺は聞いていても理解はできていないだろう。月桂樹の葉の匂いを嗅ぐ、そう言えばアツコが月桂樹の花言葉を教えてくれたな。確か「栄光」「勝利」「栄誉」だったか、花には「裏切り」「不信」、葉には「私は死ぬまで変わりません」「先生によくあってるよ、でも花の方は捨てれると良いね」と言われたな、そして丸くはなったが、この性分は死んでも変わらなかったようだ。*3
シャーレビルメインオフィスの階が吹き飛ぶの一報を聞いたミカは、伝令の肩を掴み凍り付いた笑顔で反応した。
型破りで破天荒とは彼の事を言うのだろう、自分の心の暗雲を吹き飛ばしてこれからの進み方を考えさせてくれた大人、普段は自分の事を差し置いて人を爆弾扱いするくせに肝心なところで、お姫様や今回送り出す時でも頼むぞ勝利の天使さんとか言う癖に。
「犯人は誰なのかな? 同じぐらいにはお礼をしないと!」
イロハはマコトやヒナと打ち合わせ中にそれを聞いた。
「はぁ……これなら打ち合わせ場所変えておけばよかったですかね……」
最初の出会いから色々あった。面倒事は振りまいてくる、人使いも荒い癖に絶対に出来ない量は渡してこない。
本人はそれで昔えらい目にあったとか言ってはいたが。
そして、虎丸についてあそこ迄聞いて、はしゃいでた大人も初めてだった、サボり癖を理解してるくせに良く褒めてくれたし良く頼ってくれた。
根拠の一つがアレほど愛車を整備できる奴が手を抜くわけ無いだろう? シャーレに来たらお前は大公だよとは冗談だと思うが……ついでに生活範囲も広げてくれたあの部室は賑やかさを求めるときには良いサボり場所だ。
「これだけ人を使って自分だけ早退は許しませんよ……」
意外と自分もあの大人に魅せられて居た様だ、憧れはしないが。
「イロハが……切れているだと……!?」
「近くに怒ってる人が居ると多少は落ち着くのね」
人の勤労意識を此処まで起こしてくれるとは、良いのを食らわせてやろう。
ミレニアムで必要な物をアリスちゃんと電源車も欲しいとか言って居たので、手続きを終えてコーヒーを飲んで帰ろうとしたユウカは、それを聞いた時カップと中身を落とした。
熱いコーヒーが足に落ち、広がる。
頭が真っ白になり、周りが騒ぎになって居るが気にならない。
コユキが私の顔を見て怯えてた気がする、ノアが拭く物を持って来て拭いていてくれる。
だから、何時も護衛などを置いておけと言ってきたのだ。
恋とかロマンチックな関係じゃない、隊員が言う通り親や兄弟に近い、年上とは言え異性相手に半年でこんな関係になるとは、随分居心地は良く愛着も出来たのであろう、会長が早く行ってあげなさいと言ってノアに手を引かれている、サオリ達は知っているのかな? 秘密行動中だし……
教えて変に動くと逆に怒られそうだ。
株主総会当日、午前6時。
アビドス学園の校庭が燃えていた。
炎上するUH-60DAP*4が校舎を照らしている。
「何が起きている!?」
虞雷(グライ)アタル中隊長が声をあげ、息も絶え絶えなアヤネが、ホシノ先輩を止めなければと指さした。
クソ! 何が悪さをしたという、本庁は吹き飛ぶし、ノノミ先輩は昨晩から行方不明だ。
何が起きているというんだ。
だが少なくともやるべき事は分かる、ホシノ先輩を止めねばならない。
目標は生徒会室へ向かっている、完全装備を身に着け、ベテランレンジャー達を集める。
「本当にやるの?」
「止めなきゃやばいよ、時間稼ぎでもいい」
12人のシャーレ隊員がアビドス校舎の通路を進む。
教育隊の連中はいれてない、居るだけ無駄だ。
がらんと音を立てて、髪をポニーテールに纏め、防弾着を着込み、ヘルメット着用の”ホシノ”が出てきた。
「両手を挙げて床に伏せろ! 最終警告だ! ”あなたを撃ちたくはない”!」
「……もう手遅れだよ」
「We've Got Hostile! ROE無し! キルオンサイト!」*5
瞬時に訓練の積み重ねで思考が変わり、叫ぶ。
あれはもう”敵性勢力”だ。
最悪の敵性勢力、恐らくこれまでで最強の。
先手はホシノがとった、連続した拳銃の全力射撃が隊列先頭の隊員へ襲い掛かる。
ただのベレッタ92じゃない! 強装薬のFMJだ、隊列最先頭の隊員がよろけて膝をつく。
「お?」
しかし隊列最先頭が撃たれるのを承知でした縦列隊形だ、6人の隊員がリーンで左右に分かれて全力射撃を行う。
7.62㎜の装薬強化型AP、砂漠専用遠距離用弾薬だ、並みのシールドは貫くし、そうでなくても衝撃に耐えれない。
だがホシノはガンと盾を打ち付け、全力で射撃を盾で受けている。
「奇数射撃継続! 偶数擲弾!」
M67手りゅう弾を握りしめ、5名の同時投擲が行われる。
爆発! 続いて奇数番が装填し偶数番が射撃する。
まだやれた訳じゃない、手を緩めてはならない。
しかし射撃していた偶数番隊員の足が次々撃たれる、射撃のペースが狂った。
「なんで見えて」
続けて左側面から射撃、1301の真鍮スラグ弾がぶち込まれる。
隊員のヘルメットがぶち割られ、窓へびだんと打ち付けられるように飛ぶ。
「後退後退! 射撃は続けろ!」
”敵”の狙いは我々の撃滅ではない、なら狙いは移動!
ホシノがCARシステムの構えで、慣れたアビドス校舎を進む。
シャーレの”高度訓練履修者”を出し抜いて爆発の煙に紛れてトンズラのつもりではあったが随分狂った。
彼女らは建物内、私が破壊できない建物内というのを即座に判断したらしい。
つまりCQC戦闘の連続によって私を足止めする。
3階生徒会室から2階へ階段を降りようとしたら、即座に待ち構えていた予備のベテランレンジャーが三名出てきた。
「コンタクト!」
無警告射撃、やっぱ本気か。
即座に階段の陰に隠れるが、コンクリートを貫通している。
1301に数発装填する、とっておきだが仕方ない。
ベレッタで足を撃ち抜いてよろけさせ、体勢が崩れた所で1301を射撃する。
「ぎゃう!」
一人に付き二発ずつ、HE弾とドラゴンブレス弾を叩き込む。
花火の様にパンと煌めき、オレンジ色の火薬で輝く炎が灯る。
手すりを飛び越えて二階へ降りると、司令部付きの将校らしいシャーレ隊員が拳銃を構えて突入してきた。
最先頭を胸倉掴んで逸らし、腹部と頭へベレッタを撃ち込んで制圧、続けて別の将校の足先を撃ち抜き、体勢を崩した隙に頭を撃つ。
後ろから先ほど制圧したベテランレンジャーの一人が装具を棄てて掴みかかってきた。
振り向きざまにベレッタで首へ突きをいれてよろけさせ、二発頭へ叩き込む。
「チーム4会敵!」
「まだ来るか」
アビドス校舎に居るベテランレンジャーは確か18名、全部ここに注ぎ込んで足止めする気だ。
スライディングで足を絡めとる様に動いて相手を倒し、首へベレッタを連続射撃する。
昔と比べてシャーレ隊員も防弾が進歩したな。
隊員の無線機を使い、ホシノは言った。
「アビドス生徒会副会長として、正式に今回事案のシャーレの介入を拒否する」*6
そう、これは私の戦争だ。
最初から私だけの戦争だ。
アビドス駐屯のカイザー部隊に、Ka-29TB*7ヘリコプターが近づく。
機体舷側にはカイザーPMSCと書かれている、海洋迷彩の塗装からリペイントもされていない。
ドアを開けてカイザーのオートマタの中では異色の装備をした面々が降り立つ。
ジェネラルは頼みの綱、求める限り最高の駒を見る。
飛び切りの”社員”だ。
彼らは常に期待を裏切らなかった、カイザーSOFの中でも最高の分隊。
「カイザーSFG、チーム6」
彼らは普通の装備ではない、小銃はカスタムされたデザートテックのMDRであるが、何より異色なのは彼らの姿である。
”彼らはテープなどで袖口などを完全に封じていた。”
「ブリーフィングを開始する」
ありとあらゆる手を尽くした、後は祈るのみか。
ジェネラルの耳には移動を開始したマガフ*8ぺレフ*9との移動音が響いていた。
副官が情報将校からの報告書を手渡す。
「なに? 確かか?」
「高高度観測中のUAVが傍受しました、ホシノは”正式に今回事案の介入を拒否”しています。シャーレは公然に動けません」
「よし! だが迂闊にシャーレに仕掛けるなよ、狙いはネフティスとホシノだ!」
ツキが向いたか破滅の前触れか。
ジェネラルの脳裏で「その賽を振るべきか?」と尋ねる誰かがいる、振るのは俺じゃない、今回の我々はあくまでも第三勢力だ。
情報将校から別の報告が入る。
「低気圧が発生しています、気象状況悪化の可能性があります」
「どうなってるんだよここは、まあいい」
俺の出世と安穏を阻む奴を叩き潰せばいい、俺にはそれが出来る。
シャーレも先生もホシノもネフティスもプレジデント*10も利用してやる。
火薬庫に火縄を投げる馬鹿に災いあれだ。
OV-10が着陸したのを見て、アヤネは声を挙げて驚愕した。
死人が歩いてる! とセリカは驚愕し、シロコも予想外という顔をしている。
「誰が、間に合わないって?」
アビドスの連中が死人でも見てる眼で見やがる。
機内で各種報告書を読み漁ったが、概ね予想通りだ。
ホシノが暴走して行動しているが、逆に利用できる、立ちはだかる全てがヤツを摩耗し、弱めていく。*11
ならやり様はある。
「しかし正式にホシノ先輩から介入を認めないと」
「そうか、じゃあクーデターするか」
「はい!?」
アヤネが驚愕した声を挙げた。
「良いか? ホシノの言い分は滅茶苦茶だ。単独行動と独断と言うのに命令権を未だ有していると主張してる、おかしいよな?」
「ま、まあそうですね」
「つまり今、奴は権能が無いと言えるよな?」
「強引ですけどまあ」
「ついでにうちの隊員への攻撃もあるよな?」
「はい」
「つまりこうだ、ホシノはいまただの生徒。権能なし」
セリカとシロコから「滅茶苦茶だ」と視線が飛ぶ。
滅茶苦茶なのはホシノのほうだ、止めて欲しいのかしてほしくないのかあやふやである。
詰まる所その発言自体が正当性の問題を誘発するのを気付いていない。
本質的にはホシノは何らかの建設性を有していない全く将校として向いてないタイプだ、ミュラもびっくりだよお前。
「であるからによって、アビドスは新政権が必要だろ」
「はあ」
「というわけで奥空政権誕生だ、クーデター指導者殿」
「ええええええ!?」
新政権はあまりにもスムーズに成立した、汚い政治工作はブリテンから学んだ。文民統制解釈バトルするならウサギの馬鹿*12並みに勉強しろ。
全く戦う事ばかり覚えやがって、あれの先輩は何をしてたのだ? 死んだと聞くがそんな末路遂げるとか何したんだよ。
「じゃあというわけで、奥空政権最初の仕事はこれにサインだ」
「”アビドス砂漠における連邦捜査部の全面的な一時権限の徴発”!?」
「終わったら返します」
ホシノ見てるか? お前が畏れた通りの事をしてやるよ!
汚い大人の総力戦してやらァ!
アビドス旧市街が燃えている。
ネフティスが大枚をはたいてかき集めた部隊は塵芥と化そうとしている。
そんな只中に事件は起きた。
≪アビドス旧市街東13号交差点から機甲部隊!?≫
それの報告を受けた直後、ネフティスの社員は旧中央駅に襲い掛かるAH-1Eの機影を見た。
唸りをあげる機関砲が中央駅の駅ビルを掃射し、ハイドラロケットが通信設備を破壊していく。
これでネフティスの耳と口は閉ざされた。*13
旧市街地ではカイザーの遅滞防御部隊が──ジェネラルの切り捨て前提の動員兵──ホシノと交戦を開始している。
あんなカカシ、100だか300だか居ても数分も持たないだろうな*14、ジェネラルはそう考えている。
触接中のAH-64D、虎の子が観測しているデータから見てあれの武装は恐らく。
「旧アビドス生徒会専用装備、おそらく黄金期の遺産だな……」
旧アビドスの黄金期、キヴォトス最高の資本と武力の下作られた最高級装備。
ミレニアムより高度、ゲヘナより実戦的、トリニティより高額。
かつて最強の学校が有していた最強の戦闘員向けの装備。
確か記録ではアビドス校舎の近くにPOMCUS(事前重装備集結地点)があったらしい、そこから持ち出された最後の遺産か。
「<サンダークラップ>は!?」
「配置につきました!」
「よろしい、基準線イエローへのCAS支援を要請!」
ジェネラルは指揮所から第一次作戦を発動させる。
OH-58WR*15の観測下から撃ち出すCH-53改造機からのニムロッドミサイル*16 長射程を用いての遠距離攻撃。
続けて放つは待機した重迫撃砲と待機していたぺレフの同時弾着攻撃。
確定命中散布界を無視した総攻撃だ、来年度の予算など知るものか、あれを倒さねば会社が滅ぶ、俺が滅ぶ。*17
「弾着!」
次々と炸裂する誘導弾、砲弾。
近隣のビルが轟音をあげて崩落していく。
「戦車前へ!」
マガフがゆっくりと隊列を組みながら前進を開始する。
行進間射撃が不能なので、速度は出せないが、射撃は続ける。
観測機は未だ観測を続けているが、光学・熱源は観測不能だ。
普通ならこれで済む、普通なら、だが相手は。
「目標健在!」
「化け物め……ッ!」
机を思い切り叩く。
「スピアーヘッドは待機中か」
「待機してます」
「直ちに発射!」
「ですが危険域に味方が」
「だからなんだ!」
気迫で押し切られ、切り札を放つ。
MGM-52C、プレジデントとの交渉の末手に入れたランス戦術弾道弾*18。
サーモバリック弾頭型を用いれば、制圧が可能かもしれない。
「だーんちゃく」
そう観測手が言いかけた瞬間。
空が光った。
爆発の光だが違う、落雷!? ふざけるな! 気象まで俺を滅ぼそうとするか!
「地上部隊各隊、交信不能」
「航空部隊は気象急変により後退」
作戦は、失敗だ。
アレは最早制御不能かもしれん。
ジェネラルは最後の予備案を持ち出した。
ネフティスを利用し背後から刺す。
カイザーの計画はかなりうまくいっていたと言えた。
しかし変数としてのホシノはともかく、先生と言う異常による状況急変があまりにも激しすぎた。
そして、ここに来て異常は急速に拡大し出した。
ホシノより、シャーレの方が先についたのだ。*19
「君が先生かな? お初にお目にかかる」
プレジデントのホログラムが先生を見る。
無言で歩み寄り、地面にへたり込んでしまったネフティスの社員も無視し、机のコーヒーカップを手に取る。
そして先生は契約書に向かって、ブラックコーヒーをカップ1杯分ぶちまけた。
「き、貴様!?」
「汚損書類で読めないからこれにて無効だ、バカタレ」
そういうと先生はその契約書を飲み込んでしまった。*20
「そもそもシャーレは介入する権限など」
「知らんのか? さっき誕生した新政権だ」
「……きさまクーデターを!?」
プレジデントが驚愕の声を上げた、契約と書面の屁理屈がカイザーの特技だが、ここまで滅茶苦茶な奴は居なかった。*21
つまりこれでは、列車砲の権利は誰のものか不明慮になる。
生徒会もカイザーもネフティスも全員がその正当性が無くなった、だがいま居るのだ! ここに連邦生徒会長の全権を委任されたままの男が。
そして危険物を排除するのはシャーレの大義名分である。
「現時刻をもちまして列車砲シェマタはシャーレが解体致します」
「ふ、ふざけるなよ!」
「ふざけてないよ、廃棄物処理サービス、市民への奉仕だよ。空薬莢まで回収するんだようちは。」*22
詭弁! 全くもって詭弁! だが否定できない! これを否定すると自身の正当性が破綻する!
ネフティスの社員も青い顔をしている。
「……なんでいるのさ、先生」
「よおバカホシノ」
ホシノは唖然というほかない顔をした。
「半年前にお前が恐れた事をした」
「まさか」
「奥空政権が成立しちまったぞ、どうしてくれんだ」
やられた! ホシノはこの大人の強引さを甘く見たと後悔した。
契約書は無効が宣言され、ネフティスの正当性はカイザーが奪い、それを先生が奪った。
「なるほどね……先生らしいなあ」
ホシノの苦笑が、口調と共に戻る。
「それじゃあ困る」
全員の眼が其方を向く。
先生は首を傾げた、会議室へ現れたスオウは何故かノノミを連れてきていた。
「お前自分とこの身内まで拉致したのか!?」
「アビドス再建の旗頭が必要だったんですううう!」
「家族を何だと考えてんだボケ!」*23
ネフティスの社員を殴り飛ばして部屋の隅に放り捨てると*24、スオウを見る。
「あんたが介入されちゃ困る」
先生はスオウの眼に、違和感を感じた。
何か違うのだ、何かが。
「それじゃあ終わってしまうじゃないか」
「スオウさん?」
ノノミがゆっくりと後退しようとした。
直後、ノノミの足を蹴飛ばして続けざまに射撃を行う。
撃ち出された散弾は先生へと飛んでいく。
着込んでいた防弾着*25はスオウの散弾をほぼ受け止めたが、スオウは二発目を構える。
「何考えてる!」
ホシノが即座に射線を塞ごうとするのを見て、二発目はカイザーの端末へ狙いを変える。
咄嗟に飛び込む様に伏せたカイザーの社員はともかく、銃弾はホログラムのプレジデントを貫いて端末を破壊した。
「最強の名が聞いてあきれる、お前は何なら守れるんだ?」
スオウの問いかけに、ホシノの眼が変わった。
「殺す!」
殺意、完全な研ぎ澄まされた狂気が剥き出しになった。
ノノミを蹴り上げてホシノへ叩きつけるようにすると、スオウは窓をぶち破り、降下していく。
先生が身を起こした瞬間には、ホシノは完全に追撃戦へ入っていた。
「あの馬鹿ども」
立ち上がって軽く払い、追いついてきたシロコが飛び込む。
「大丈夫⁉」
「生きてるよ、しかしあいつら……どこへ行くんだ」
シロコは窓の外を見て、あっちと指さした。
ただそれじゃわからない、端末を壊したという事は。
「おまえなんか知ってるだろ!」
「勘弁してください非戦闘員です!」
「やかましいわバカ、なんか見つけたんだろ」
「え……」
カイザーの社員が言いよどむ。
シロコを手招きし、強盗カッターの爪の先端に服を引っかけて窓ガラスの割れた穴から突き出す。
「思い出した?」
「ハイ!」
「そうか」
記憶力がよろしくてなにより、時間が惜しいので加減はしない。
「確かにここから280キロ向こうの何処かにあると特定はできました、でも詳しい位置までは」
「280キロ向こう?」
ビンタしてネフティスの社員を起こす。
「神の使いだ、サインなしだぜ」
「ひえ」
ハローあんちゃん悪夢の使いだ。
地元の為に洗いざらい吐いてくれ。
「列車砲破壊されたら再建計画があぁ!」
「んじゃ俺がシェマタごと弾道弾撃つぞ、俺がMIRVを証拠品として残してるのご理解?」
無論嘘である、推進剤は抜いて弾頭は撤去し、ミレニアムで最終処分計画中である。
だがここで今までの行為が輝く、俺が撃たないと思える奴は多分ユウカとかの一部だけだ。*26
「せ、生徒会の谷というのがあります」
聞きたい事は聞き終えた。
MEDVAC*27にノノミを後送させ、追撃戦の用意に入る。
この俺に鬼ごっこか? くそ、俺のコートも穴あきにしやがって。*28
どいつもこいつも俺の私物をどうしようというのだ。
【次回予告】
人の命が地球より重いというのは無論、嘘だ。
地球がなければ、あらゆる生命が存在できない。
その地球が瀕死の重症だ。
治す事ができるのは私だけだ!
次回「 i don't want to see tomorrow 」
ゆえに、この小生の命は地球より重い
あんまり自分好かれて無いんじゃないかとは思って居ますが、そうでも無いよと言う回でもあります。
原作のどっちを見たり知ってます?
-
長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
-
ブルーアーカイブだけは知ってます
-
どっちも知ってます。