キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
官憲たちのプールサイド
白河スズは憤慨していた、この邪知暴虐の先生を場合によっては除かねばならぬと思うほどに。
此奴は、海嫌いの癖に民主主義の名を借りた数とアリウスの姫の圧力に屈しオフィスの面子を海に連れて行った。
そこまでは良い、だがこの私を無きものとして一人で留守番にしやがった!
写真を見ると楽しそうなのがより苛立たせる。行きたかったなぁ……皆と海、代休では許せるわけがない!
冷やし中華旨そうに食ってるんじゃないよ、何時もみたいにオフィスでカップ麺啜ってろよ……
だが、これを認めるなら許してやろうと思う、私もキヴォトスの生徒だ! 大人の責任を果たしてもらおう!
私こそシャーレ──の実働部隊指揮官──だ!
「姉からエーギルウォーターパークのチケット貰ったので同道してください!」
「予定が多すぎるから無理だ、姉と行け」
その冷やし中華にソース掛けてやろうか、頭の中で飛び蹴りも食らわせることで許してやる。
「一応生徒で女子生徒ですよ? 世の先生方が喜ぶ奴ですよ?」
「あ、そう……。昼休憩もあと10分だぞ? 要件はそれだけか」
鼻で笑いやがった! もう許せねぇ!
「やだーっ!!!」
「スズ……?」
ユウカやアリウスも全員こっちを見ている、プライドは捨ててきた。
そうでなければこいつに要求は通せない。
そもそも論私のプライドなんか必要なら棄ててなんぼである。
「他の連中の迷惑だから、大声出すなよ? 佐官に一番必要な尊敬が無くなるぞ?」
「なりたくてなったわけじゃないやい!」
そっちがその気なら私も攻勢を続ける、そのまま寝そべる、そして大声で叫ぶ。
おかしいだろ!私は軍事官僚になろうと思ったことはそもそも無い! こうなったのは何かの間違いだ!
アビドス砂漠から今まで私の予定はぐちゃぐちゃじゃあい!
「やだやだやだ、プール行くのぉぉぉ!! プール、プール!」
「あの年であれが出来るのは辛いですよね、苦しいですよね……」
「はぁ、それで通じるのは8歳までだけだぞ?」
此奴おもちゃ売り場の駄々こねるガキ見る目で見てやがる!
もうすべて、捨ててやる!!
「プール連れて行ってくれないなら、装甲中隊の導入してください! それすら無理なら階級章もすべて捨てて子ウサギ公園で抗議しますよぉ!」
「うっそだろオイ……」
無様な物を見る顔でウサギの噛ませ犬が見ているが、嫌ならこいつを説得するんだな!
貴様らも海に行っただろ! 許せねぇ! レーション今度食い荒らしてやる!
「その、連れて行ってやったらどうだ? すくなくとも理屈は通るぞ……」
サオリ分隊長が上手く擁護してくれた。
「リーダー。人間って、あそこ迄尊厳捨てれるんだね」
「先生、予定開けときますよ、百花繚乱の参謀さんも来られるんですし。忙しいなら自分から来るって言ってましたし」
「やけに優しいな、ユウカ?」
「装甲中隊強請られるより、ウォーターパークに連れて行く方が遥かにコスパが良いので」
「我々が海に行った時全部任せたんだ、それぐらい、いいんじゃないか? 事実生徒なのだし、息抜きくらいするべきだろう。作戦指揮官が過労でイカレたら誰が代わりになるんだ?」
サオリ分隊長は話が分かる! あんたはズットモだよ!
今度分隊のみんなに飯でも奢ろう。
「俺のお袋なら、水掛けられて引きずって帰られるのにな、親父は……あれは何するか分からんけど。はぁ、良いだろう」
対価はこの姿を1週間シャーレ通信に乗せられるぐらいだったが、それくらいなら安い!
でも、姉はどうやってこのチケット仕入れたんだ?
面倒事だったら、ボコボコにして対価を貰おう。コノカ副局長の部下なんだ、何か毟れる。
それに、ここにいる奴らもカイザーも無理だったこの大人に譲歩させるのを一人で成したのだ、そう思うと達成感出てきた。
恨むんならこのタコ足化した組織にした自身を恨んでいただきたい。
公安局、同刻。
コノカ副公安局長はゆらゆらと揺れながら、部下のデスクへやってくる。
「妹にチケット渡せたっスか?」
「フリーパスでアホみたいに喜んでましたよ、あの子、私より高給取りで休暇多いんですけどね」
その部下は長めの銀髪を纏めながらぼやいた。
公安局と言っても、彼女は戦闘要員ではなく事務が仕事だ。
機密の山のような会話を清書して記録書にする、そう言う仕事である。
その会話の中身についても、会話に関する全ても、彼女は自己の仕事を妹に言ったことは無い、言いたくも無かった。
機密である以前に最悪のカスのような内容ばかりだ、SRT内部の醜聞や横領と汚職、ブラックオプス、連邦生徒会の揉み消し、更にヴァルキューレ内部の腐りきった話。
知らない方が人生は楽しいだろうと思っている。
「……あとは姉御だけっすねえ」
悪巧みはこうして成立した。
お互いシャーレのビルに住んでるようなものなので、同じ家から車に乗るのが近い。
一応先生にはお仕事という名目──正確には生活安全局や現地施設の監察──があるので、スズがサイドカー付きのバイクを借りた。
こうしたサイドカー付きバイクはサイドカーにMGを積んでいる事も多い。
「お前水着だと見た目が小学生と変わらんくなるな、いやまあ変な水着着られても困るからいいか……」
「見たかったんですか?」
「ドラム缶体形はそのぐらいしないと、スタイル見せれないってヒビキが読んでた雑誌で見たぞ」
「少なくとも中央が凹んだ空き缶位はありますよ、先生こそ意外と腹出てないし」
「最近はどいつもこいつも健康考えろと煩いのもあってな、昔は乗馬もしてたんだが、尻痛めるんだよなぁアレ……」
少なくともこの大人は雑に話題を振っても適当に返してくれるので話しやすい、サオリもこのぐらい気安くなればいいのに。
ドラム缶体形は中学と1年時に散々言われた、このぐらいで返せる、ミサキや一部みたいに肋骨が浮き出るタイプではないから良いだろうに。
そう言えば、最近ミサキは肋骨浮き出てないな、栄養状態が良くなってきて健康状態も回復してきたんだろうか?
「俺で良かったのか? 動く事件フラグだぞ、雨は降りそうではないな」
「今日はオフなので、テロでもない限りは休日ですよ」
早々事件何て起きてたまるか、それに我々の努力で少なくとも犯罪発生率は落ちて来てる。
七囚人は懸念事項だが、それ自体の脅威性は分析できている。各個撃破してしまえばそれでいい、連中は絶対に連帯なんかしないしな。
それでも出てくる奴はボコボコにしてる、本当に怖いのはこの大人の直接指揮の鎮圧なのにね、バカどもは理解してないが。
歴戦の兵隊の士気を破砕するような攻撃なのだ、学園交流会を見たら普通は挑みたく無くなる。
トリニティやゲヘナの戦闘部隊を指揮崩壊起こして潰走させるのだ、これを食らって犯罪者が耐えれるはずがない。
あのゲヘナの横乳がヒナが居るから余裕と言っていたのを戦闘後見た時の顔は面白かった、一人に頼り過ぎだよ。
「どうした? 考え事か?」
「いや、先生に挑む連中ってバカが多いなーと。アビドスの時はカイザーに戦争挑んだ先生が馬鹿だと思いましたが」
「今の戦力なら、完膚無きまでに殴り倒してやれたんだがな、だが後半のヘリ空挺からの奴らは勇敢な良い兵隊だった」
「死ぬかと思いましたよ」
「そう言う奴は案外長生きするから安心しろ」
あの時もそうだ。結局この人の背中に憧れたんだ、柄じゃないしそれまで物語でしか見ないような表現だと思った。
SRT時代から戦友愛とかについてのクソみたいな戯言、特別な絆と言う話を信じた事は無かったが、今は違う。
それによく周りとは兵器の納入で喧嘩してるように見えるが、インフラ整備やPKF活動の報告とそれに見合ったこともしている。
姉がチケットくれた時に「先生って相手を殴り飛ばすことばかり考えてるの?」と聞いてきたので違うと答えた。
初動の動きは基本完成している、先手は基本譲るが、その後は相手よりも素早く動き、主導権を奪い取ってボコボコにする。
だから、普通に捜査部としてやるべき仕事では無い物の計画だ。本人曰く「今まで連邦生徒会が無駄にした時間の報いを処理してやって居るんだ」とキレていた、短気なのは間違いない。
「付いたぞ。近所に此処まで立派なのができるとは、来年から全部ここで良いんじゃないか?」
「風情が無い事で」
私は普通にスク水だ、去年も使ってた旧型のスクール水着だ。
先生自体はラフな服装だ、気が向いたら泳ぐかと言う具合である、そう言えば着衣泳法を習っていたなこの人。
今なら分かるが、恐らく先生は正規の軍事教育等を修了しているからだろう、前にやったフェンシング大会に際しても型はちゃんとしていたし。
「先生日焼け止めは?」
「もう塗ってる、アビドスの連中は毎日塗ってんのかねぇ?」
「連中はもろに身体を晒すのを嫌いますからねえ」
「どこ行くんだ?」
「必要な物を取りに、運ぶの手伝ってください」
ビーチチェアを2つ、パラソル付きで借りる。チェアは先生に持ってもらう。
パラソルを持ってると一つネタが浮かんだ。
「先生、レースクイーン」
「バカやってないで運ぶぞ」
「飲み物買ってきます」
「俺を荷物持ちとはいい神経してんなおめえ……」
メロンソーダフロートのLを買って戻ると、先生が見慣れた連中と話してる、生活安全局だ。
ライフセーバーの講習や安全指導かな、まぁいい、チェアに座りメロンソーダフロートを啜りながら聞き耳を立てる。
防水仕様のタブレット端末で電子書籍を読み始める、レッドウインター工務部の部員が書いた小説で、アリウス内戦と色彩の経験から末世的な世界を書きつつ人が有する尊さも書く作品だ。
D.U.が壊滅し、人々は地下鉄で辛うじて生きてるがトリニティの残党は純血主義へ走り、ゲヘナはより専制的で互いに争うという追い詰められた人々の描写は凄まじい。
「ライフセイバー? まあそれも仕事か……」
「屋内プールだと思ってたら、屋外プールで参っちゃうよね」
「カンナ局長! 先生来てますよ!」
キリノが呼び、先生と二人してえっと驚く。
生活安全局はともかく、公安局の仕事だったか?
やってきたカンナ局長はなんというべきか、攻めた水着である、競泳水着なのはわかるがややサイズにあっていない様な気がした。
向こうもキチゲ発散か、あるいはあの人がハナコのような何かイカレた性癖があるのか。
随分病んでると聞くので、恐らく何かが壊れたんだと思う。可哀そうにね。皆、優しくしてあげなきゃ。
「向こうに居るのは?」
「スズ、アイツについて行く羽目になった……」
「ああ、あの白河の妹の方」
しかし、あくせく働いている方々をこういう場所で眺めながら飲むドリンクは旨いよキミィ。
何言われても、負け犬の遠吠え。気分が良い、手でも振ってやろう。
ライフセイバー頑張ってくれたまえ。
ミレニアム、セミナーの会長の部屋はその日も特段の異常も無く進んでいた。
リオ自身が類まれな能力を有しているが、それを有効活用する為に編成されたセミナーは会長の介在をさほど必要としない。
いわばリオは自分無しで回るシステムを作り上げたのである。
それによって空いた時間をリオはアーティファクトとアノマリー調査に使っているわけである。
もっとも最近はアノマリーなども少ない、シェマタは吹き飛んだし、アビドスの遺産はゲヘナが即時介入したのもあり、完全に熱滅却措置して溶かした。
つまるところ、リオは暇を持て余していた。
これが平和か、悪くない。
そう思いながら、トキに何か食べるか尋ねる。
彼女は一部の人が知る通り中々甘やかすタイプで、こうした時の希望は大体叶える。
トキが何かを言おうとした瞬間、爆発音がした。
「エンジニア部のようですね」
リオがため息交じりに電話機を手に取り確認した。
「爆発についてなにか言う事は?」
トキは腹減ったなぁと思いながら待機していると、リオ会長が更に呆れた顔をした。
「……EOD対策用に依頼されてたロボが脱走?」
しばらく食う暇は無いな、トキは観念して装備品の確認を開始した。
メロンソーダを飲み終える頃には、小説はかつてシャーレ本庁だった場所を中心に広がるアノマリーの話になっていた。
タブレット端末の時間から昼飯時か、と気づき、おいしそうな匂いに惹かれ腹が鳴る。
匂いの方へと歩くとなんでかカンナ局長がタコ焼きを焼いていた。
「……バイトですか」
「……似たようなもんだ」
「……天かすあるんなら入れて下さい」
12個入りを注文し、焼きあがるのを待つ。
「……スズ、お前今の仕事好きか?」
カンナ局長がふと口にした。
「随分、予定が狂いましたがね。……COIN作戦だPKFだはやると思わなかったです」
「だろうな……。私も、お前が志願で入った時は馬鹿だと思った」
タコ焼きがひっくり返されていく。
「いつの間にか、知らない間に全てが変わっていった。何もかもがひっくり返されていった。カイザーが泣きをいれるほどに」
じゅうという音が響いていく。
「理不尽や滅茶苦茶に妥協して生きようとしていた。それが正義だと言い聞かせてきた。いつの間にか何が正しいか分からなくなった」
ソースがかけられ、かつおぶしとマヨネーズがかけられる。
「……結局私は、ただの体制の暴力以外になれないのだろうな」
爪楊枝を刺して、ぱくりと一つ食べた。
中々美味い、中はフワフワで天かすのサクッとした感触がアクセントを添えている。
ごくんと飲んで、言った。
「暴力装置は少なくともこんな真心こめたたこ焼きを作ってはくれやしませんよ」
「……仕事だからな」
「局長が不器用で優しいのは知ってます、大事な人たちにはね」
貴女には思いやってくれる部下が居て、同僚が居て、後輩もいる。
それにあなたにはちゃんとした信念と正義もあるじゃないか、それは名誉心や歪んだ主義思想じゃなくて、よく悩んで決めている。
しかしながら美味いな、このたこ焼き……。
「少なくとも私は知っています、エデンの時に封鎖線構築でお世話になりましたし」
「……あれは、仕事だったからな」
「仕事を完遂出来るのは大事なことだと思いますよ? 正直もう一度やりたくないですけどね」
「……そうだな、あれは苦労した」
すると、キリノが慌てて走ってきた。
「局長! 大変です!」
「どうした」
「で、でました! でっかいわにさん! いまフブキと先生が対応してます」
勘弁してくれ、もう面倒ごとは御免だ。
私は休暇が欲しいんだよ!
悲しいかな、SRTとヴァルキューレ、更にシャーレの教えは自然と騒乱と鉄火場から逃げるのを許してくれなかった。
到着した時、目標はプールサイドから上陸しようとしていた。
シルエットは明らかに見覚えがある6脚、連結式の胴体で、塗装は未了の赤い姿、間違いない。
「先生、うちがエンジニア部に発注した爆破処分作業用工作機ですよアレ!?」
「ああ、珍しくユウカが特に何か言わなかった奴だ!」
胴体部VLSから打ち上げられたドローンが展開する。
フブキのMINI14やキリノの38口径に対応してバリアーを展開、小銃の弱装弾なんぞまるで効いていない。
カンナ局長が「なんであんなの作ったんです!」と尋ね、困り果てながら自身の装備を確認しつつ言う。
「アリウスやアビドス戦で不発弾に地雷処理用の作業機械を依頼してたんですよ!」
「なんでそれがワニで、あんな武装や装甲してる!」
「ワニのが屋内捜索に適切で、多用途な爆発物処理の為です!」
バッグからゴソゴソと探し、見つけた電磁手りゅう弾をぶん投げる。
バチっと電気が広がり、横転して倒れる。
先生が周りからかき集め、しれっと指揮権を掌握した警備員たちが半円形の包囲隊形を組んだ。
「目標再起動!」
「クソ! 頑丈に作りすぎだ!」
警備員たちのG36CやSPAS12もまるで豆粒と前面装甲で弾き返しながら、突進を開始、警備員たちをごぼう抜きにして走り去る。
先生が呆れた顔で「ミュラの突撃みてえな圧がある」と呆れかえりながら、警備員の無線機を使って阻止線を貼らせる。
「目標の屋内侵入をなんとしても阻止!」
阻止と言っても有効な火器が無いんだけどなあ。
ううむヒヨリちゃんあたりが来てればアテになったんだけど今居ない! 民間人が居るから60式自走無反動砲や15榴は危険がデカいし。
屋内施設で臨時のバリケードを組む用意をしながら、質量か何かがあればと考える。
……待てよ、勢い?
「局長! 意見具申!」
「なんだ?」
「良い案があります!」
爆発音が響き、警備員の抵抗線を火力で踏みしだきながらワニが迫る。
作戦案を説明し、キリノとフブキ、そして警備員たちで陽動をかける。
側面からの一斉銃撃、フルオート射撃の嵐が襲い掛かる。
「カバンにしてやらァ!」
予想通り針路を変更、こちらへ前進を開始する。
銃列が左右に開き、消火用のホースを握りしめ、照準を定める。
弾道計算はほぼ必要ない、このタイプのノズルと圧力なら一気に押し込める!
予想通りほぼ直進した消防用水の濁流が解き放たれ、展開していた防御ドローンが飽和して一気に押し流されていく。
水圧! 質量と圧力、それが全て物を言う。
この世の被造物が耐えられないものである。
しかしなまじ優秀なエンジニア部の製品、脚部からパイルを撃ち込んで現在地に固定させ、尻尾を地面へ喰い込ませ、口を開いた。
「ヤバい!」
その時、カンナが一気に飛び出す。
本来ならば押し流してトドメに出てもらう予定だったがこれは予定と違う!
「局長!」
突如飛び出すカンナにワニも驚いたか、その首を上げる。
雄叫びと共に跳躍したカンナが急降下! 一気にワニへ取り付く。
「お巡りさんを舐めるなァ!!」
水圧で歪んだ胴体連結部の装甲から、グロックのフルオートと、電磁手榴弾を叩き込む。
一気に回線と機体がショートしたワニはリチウム電池に水が及んだ事で発火、大爆発を遂げる。
しかしあの距離、カンナ局長だってただじゃすまないはず。
「局長!」
キリノが飛び出し、カンナを呼ぶ。
返事が聞こえない。
すると、プールから音がした。
「水着を着ていてよかったよ」
爆発の破片をプールへ飛び込んで回避し、カンナは心からの笑顔を浮かべた。
その後、ミレニアムのストライカーICV装甲車から降りてきたC&Cと、ヴェリタスのトラックがワニを回収していった。
「で、なんでこうなったのかね」
先生がやれやれと言いたげに尋ねる。
「ウタハ部長曰く”OSの確認してたら仮想用のと間違えてコネクタを繋げた”そうです」
トキがアームで散らばった破片を回収しながらそう告げた。
何のことは無い、ただのタコ足配線が生んだしょうもないミス、それだけだったのだ。
改善命令として部屋を掃除しろと言うほかないなと呆れかえっていると、先生に後ろから声がかかった。
全てが終わり、数日が経過した。
ヴァルキューレ警察学校の公安局局長室に、コノカ副局長が入る。
「姉御ー、おとどけものでーすよ」
「ん? 何も頼んでないが?」
首を傾げ、コノカが言う。
「え? でも安全検査合格してシャーレの判子付きですよ? 事件資料にしちゃ変っすけど」
基本的な事だが、ヴァルキューレ警察学校は届け物が厳重を極める管理がされている。
しかしシャーレを経由して届くと言うのは確かに不可思議である。
問い合わせてみると、確かに家から送ったよと先生が返信して来た。
郵便番号も全て確認されている。
「んじゃあ、中を開けてみますか」
封をあけると、手紙と絵が贈られてきていた。
子供の絵で、カッコイイお姉ちゃんへと書かれていた。
カンナは少し微笑み、そして丁寧な厳かさで、感状を受け取る様にそれを受領した。
彼女は自己の職務を愛している。
その日の夜、スズは夢を見ていた。
何処か、何時かの場所、恐らく冬か秋の終り頃だろう。
夜の闇になじんだ様に、サオリが立っていた。
しかしながらそれはスズが知るサオリでは無かった、すらりと伸びた身長、大人びた顔つき、深い知性と鋭さが共存する瞳、いつかそうなるだろう彼女の姿。
「さあて素早く片付けよう、私もそろそろゆっくりと食事をしたいからな」
「はい、サオリ先生。スズ司令」
悪夢だ!
スズはなんてことだと恐怖した。
私はそこまで仕事になんか生きたくないぞ! ふざけんなあの大人ァ! 楽隠居なんか許さんぞ!
私は世間一般で言う「へえ」と思われる程度の善行を元手に安穏と暮らしたいんだ!
世界の危機とかアレコレ言われても困るっちゅうのおおおお!
そういうの私の仕事じゃないんじゃああい!
ぎりぎりと歯噛みしながら寝台から落ち、スズは目を覚ました。
時刻はまだ午前2時、二度寝しようと彼女は寝台へ戻る前に、個人用冷蔵庫から水を150ml分一気に飲み干した。
正義の味方は間違いなく楽しくは無いに決まってる、彼女は深くそう確信した。
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。