キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
トリニティ系の黒いスーツに、ゲヘナの革製ブーツ、ミレニアムの腕時計、まあ僕の姿を見れば誰もがどこかのおハイソな生徒だと思うかもしれない。
無論そんな訳じゃない、僕がアリウス出身者なのは見れば分かる訳じゃないけど、同郷にはバレる。
歩き方とかが妙に"漂う"らしい、分からなくはない、たまにD.U.の公園で座ってみると確かにわかる。
え?僕が誰かって?まあ大したことない話なんだ、少し長いけど。
Quartermaster
ちょいと時を戻して2年前、んまあーつまりは先生の来る前のアリウス。
エデン条約の戦いで復員するまで私は兵站将校、というよりその手伝いの下っ端。
アリウスには物はねぇけど戦争しろって大人がいるお陰で苦労する、そのくせ物を寄越さない、嫌になるね。
偵察総局を事実上差配してた三年のマギって生徒から「お前前線部隊は向かんな」と兵站送りされたが、おかげで命はつながった。
そこの大人はコイツ、そう、顔面火傷野郎のFALをぶら下げた憲兵隊のジャケット着てる大人、あぁ誤解しないでくれ、嫌いだけどコイツはカスじゃないんだ。
先生から見たって真っ当では無いが年金くらいは出してやるべきだと言われるヤツ、厳しいがクズでは無い、餓死しそうな奴に缶詰をしれっと渡してくれるが、回復した後にぶん殴ってくるタイプ、まあ飴と鞭ってやつが分かってるんだな。
地元出身でアリウス内戦を経験したし、親しかった生徒の死も経験したらしい。
噂じゃ世が世ならアツコ会長の個人教官って話だった。
真実は知らん、この兵站将校のオッサンはマダムが苦し紛れに命じたロケット弾攻撃で、避難所の年端もいかねえガキに缶詰配ってる最中におっ死んだ、幸いサクラコって言う偉いシスターさんと、ミネって言うお医者さんと、あとなんか手伝いのコハルって奴が弔ってくれた、少なくとも良い奴に弔ってもらえて良かったと思うよ。
で、問題はこのオッサン、記録目録を常に持ち歩いてたんだ。
理由?簡単だ、アホがギンバイするし、大人もカスなんだ、しかも責任を子供に押し付けるクズがいっぱいさ、それのせいでサオリって奴が懲罰房に送られた。
裏でこのおっさんが無罪を証明したが大人は無謬であるとか隠蔽しやがったがな、けっ、死んで当然だあのクソども。
話を戻すが、あの時あのオッサンは目録と死んじまった、白燐直撃、一撃であの世よ、身体弱かったんだな、60はいってたし。
そう、アリウスにどれくらいの武器弾薬があったかみーんなしらねぇんだ。
偵察総局がコッソリ秘密資料隠してクズの大人が殆どシャーレの戦犯狩りにあって消息が消えたが、武器も消息不明なんだ。
旧兵站部の人間なんてそもそも最初から殆ど居なかった、みんな目録が焼けたのを知ってる、そうなるとどうなる?
あーそう、私も覚えてねえなとスルーされる、実際の所は違う、ちゃんと覚えてた。
そう!キヴォトスの違法銃器の供給不足、私の小遣い稼ぎはこうして決意されたって訳。
忘れもしないあの戦闘後、隠れてた僕も2日後に捜索隊に投降した。
大概の目立った需品倉庫は大体が叛乱軍と旧体制派の攻撃で滅茶苦茶で、「何処に何がどれだけあるか分からない」わけ。
そうこうして掃討戦が終わり、仕事に立ち返るか考えたがその気も無かった。
どうするかぼけえっとアビドスで復興支援のバイトしてると、大体バイト先の人間と親しくなるわけだが其処にオルグを図る者もいるわけだ。
カイという女性が丸眼鏡に鳥打帽でやって来た、どうやらアリウス市街地に詳しい奴を必要としているという、明らかに堅気じゃなかったし、一度は断った。
だがそいつは「キミが元需品将校なのは知っている」と言われたのがトドメになった、そう!そのころに私は軽く手榴弾を融通するアルバイトをし出していたのだ。
売った相手?ヘルメット団、スケ番、まあ軽いチンピラだ、あああとゲヘナの学生にトリニティの連中、それに百鬼夜行とかにも軽く売った。
売り物もそう大したもんじゃない、5.45㎜の真鍮製弾丸、曳光弾、RGD-5、まあ軽い火器類の分類ギリギリだね。
軽く売りあげ上げていたらまあカイも似たような仕事してたってわけさ、その日のうちに一端内地に帰って煙に撒いたが、外での時間は色々教えてくれていた。
まずアホほど倉庫で転がっていたAKやガリルやG3が大金を生むという事、交換部品に弾薬は銭の山になるという事、天啓が来た。
生きてく上では喰わなきゃならぬ、ケンカするには撃たねばならぬ、弾薬は入用で武器価格は跳ね上がる。
折しもこの頃先生は違法武器摘発でカイザーをしばき倒していた、価格は更に吊り上がる、生活インフラを牛耳るしかない!
さて生活インフラと言うが、まず商品を売るには元手と信頼が居る、この場合は製品の信頼だ。
なんで信頼が居るかっていえば、出来得る美味い飯の方が食いたいだろ?
それと同じよ、カゼヤマや
キヴォトスじゃ一日中何処かで銃撃戦だ、なら弾と銃は常に入り用、信頼は実演するに限る。
と、いうわけで儲け話を思いついたが困った事がある、僕に戦闘はまるで向いていない。
さてどうするかと考えていると、ちょうど姫たちが「金がない!各自自活しろ!」と苦悶の言葉を嘆いていた、兵器と人しか居ないので傭兵が組織される、思いついたのは其処だった。
アリウス・マーセナリーに初回無料で使わせて宣伝させればいい、幸いあいつらに渡す分くらいロハで良い。
ついに僕は武器バイヤーの途を始めた。
が、最初は上手く行かないもんである。
まずキヴォトスじゃロクな大人が居ない、ある日商品を奪おうとする馬鹿が出た。
最初は耐えるかと考えたが、ふと気づいた。
仮にこれが報復を呼ばれても「せんせー!悪い大人がいじめてきまーす」が言えるという事に。
というわけで一転攻勢、まずナイフを相手の手にぶっ刺して「舐めてんじゃねえよ客は神様か?ホトケにすんぞ」とドス利かせてハッタリかました、いやあ、時に偏見も役に立つ!
すっかり僕にビビり散らして悪党が泣きをいれた、正直ゾクゾクしたね!
キッチリ代金頂いて「ガラス片で手を切るなんて御不運ですね」と治療代は渡した、ガツンと一撃入れると効果は偉大でね、以来ブラックマーケットも歩けるようになった。
さて初めて商売を成功したんだが……売れる!売れる!滅茶苦茶売れる!
最初は無刻印銃器と手榴弾に携行火器弾薬程度が、売れる!売れる!うなぎ上り!
僕も思わず舞い上がっちゃってさ、お洒落さんしたり美味いモノ食べてみたりするけどめっちゃ売れる!
そしたらある日さ、ほら、ミレニアムの生徒会長さん、リオさんだっけ?あの人がさ来たんですよ。
「ねえあなた、ちょっと耐久試験に必要な重火器があるのだけど」と、僕の中でなにか線を踏み越える感覚がしたのはこの件からだ。
僕は要件に見合ったミラン対戦車ミサイルとHOT-1を売った。
そこから僕は商売の事を真剣に考えだした。
マーセナリーが実演するからいつしかこう言われるようになった。
「アリウスの傭兵が使う武装は一流のイカす奴」と、好機到来だ!僕は宣伝攻勢に出た、まずヘルメット団だ!連中はアビドスでカイザーと揉めてる!入り用だ!売るぞ!
そのころの僕は契約したマーセナリーが四人いた、やっぱ地元出身は話が通じる、ちなみに広告塔も兼ねてる、売れる度にこいつらにもマージンが入る。
そうして僕らは初めての大型契約を開始した、僕はヘルメット団がろくな対空火器が無いのを見ておまけでFIM-92Aを初回無料でつけてやった、最初に売ったデカブツはBTR-80Aだ。
更に聞いてみると「じ、実はうちら戦車相手の火器もほしくて」と言われて、割引適用でファゴット対戦車ミサイルを売った。
いやー、アビドスで知己を得ておくと効果があるもんでね、アビドス方面隊の交通検問が「あーお前か」で通りやすいのよ。
契約成立おめでとーう!と行きたいところだけど、僕らも早々呑気にしてられない。
金がダブつく、非合法な金は溜まると即座にバレるのだ。
まず思いついたのは不動産とかに変換する事、なにせ僕はアリウス以外にも拠点を持たなきゃいけない。
幸いこれ自体は上手く行った、トリニティの高級生地スーツ着て歩く僕は間違いなくアリウスと無関係な奴だ。
不動産をいくつか購入し、名義上の会社も作る。
名目は警備会社だ、別になんのことはない、安くてそこそこのガードマンの需要はあるし、何人かマーセナリーが居て教官にすればいい、立派な警備会社出来上がりだ。
軌道に乗れたか?と考えていたら、別件で問題発生、温泉開発部が隠してた武器庫見つけやがった。
「おいおいおいおい全然うまく進まねーじゃん!」と僕は悲嘆にくれたが、まず手を考えた。
取り敢えずハイランダーでしか外部に出れない以上、僕のコネで沿線に弾薬庫が見つかり危険物除去部隊を展開する様にして運転計画を乱す。
あとは追いかけてカスミをふんじばって別件で武器バイヤーの仲介してたアランチーノへ投げた、あいつは僕が武器を売る相手のある程度選別と仲介に関与していたからだ。
とかやってたら先生が絡んできた、困る。
僕が何した、武器を客に売っただけだ、客の問題だ。
無論言えるわけがないんだけど。
仕方ないと大人しく諦めて僕は別の武器庫をオープンした、探せばかなりあるもんだが探すのはかなり大変だ。
レムナントとPKO部隊が戦闘するケースもあるし、ミメシスがうろつくし、たまにアンブロシスだかいうバケモンもいる。
頑張って武器庫掘り出してもやっぱり大変だ、ハイランダー鉄道学園で運ぶルートは賄賂で繋げた奴が捕まった、あのアホ……。
陸路輸送にも問題がある、目立ち過ぎる。
カタコンベ自体は輸送車両が通るからまだ使えるけど、あれもあれでまずい。
眼を付けたのは別の選択肢、つまりバラシてカタコンベの別ルートを使う。
瓦礫輸送のトラックに紛れて武器類を運び出し、カタコンベの進撃ルートの記録を掘り出してキヴォトスへ!というわけだ。
一度レッドウインターの山に出て死にかけた、変なフワフワする液体奢ってくれたあの生徒には感謝してる。
さてそうやって武器を売り捌いていたらライバル登場。
そう、あのくそったれの7囚人のカイだよ!ヤク作る為の副業で兵器生産工場構えて売って稼いでやがる!お前僕が苦労して運んでるのになんだよ秘密工場って!
クソッタレとキレていたら、今度はニヤニヤ教授とか言う奴が来た、武器バイヤーの仲介をしたいという、しかし何だか胡散臭い。
正直同族以外信用はしていない、まああと先生しか、分かりやすく信用とあてにはなるし。
取り敢えず持ち帰って検討します、と言ってたら武器売買需要を僕らから掻っ攫いやがった、山海経め安い武器をばら撒きやがる!
みんななんとはなしのプレミア感で買う奴ばかりじゃない、そう言うコト。
相手も56式こちらも56式、戦車は59式とか85式でも相手も概ね同レベルだから問題にならねえんだ。
カイは価格を破壊した、兵器バブルの事実上の終幕……にはならない、プレミア感はやはり意味を持つ。
次の顧客は?なんと驚け防衛室長!世も末!
カイザーでもなくうちに来た理由は簡単、アシがつかない武器だもの!
売れるぜ売れるぜAR-18、M249、M82、各種弾薬類!
カイザーじゃない理由は装薬量でアシがつく、あそこも迂闊に殴らせる種を遺したくない。
で、ある日あの防衛室長が尋ねた。
「スオミKP-31とかの弾薬もありますか」と、僕は正直戸惑った、303や308を頼むならともかくとしてそれは流石に知らない。
あてはないですねと伝えるとやや困った顔された。
翌週新聞見たらラビット小隊だかが制圧されていた、なるほどこいつらを裏からあれこれしたかったわけか。
僕の中で何か諦観が浮かびだしていた、結局僕は何がしたいのだろう。
金は儲けた、儲かりすぎるくらいに、僕は一応成功者という事になる。
どうしたもんか考えながら新聞をまた見ると、ヴァルキューレ警察学校のリベートが暴露されていた。
瞬間言葉を失った、僕はヴァルキューレ警察学校内部に多すぎるくらい”友人”が居る、ハッタリってすげえんだ、大概の警官は武器密売や密輸をアリウス生徒と気付くと黙りこくるんだよ。
まあ喋ると困るからお小遣いはあげている、危険手当の3倍だ!真面目に正義の味方をするのが馬鹿らしくなるだろ。
安い給料で元軍相手にしたくない連中が多数派だ、しかしそうもいかなくなりだした。
さてそうこうしていると僕の生活も中々賑やかになりだした。
ある日のことだ、僕のトラックを駐禁を切りに来た警官が来た。
片方の髪が銀色っぽい奴は真面目そうで、片割れの警官は面倒そうな眼をしていた。
丁寧に「いやあ申し訳ない」と訛り強めに言うと銀髪の方は切符を切ってきたが、片割れがじっと車体を見ていた。
「あんちゃん、トラックの中調べていいかなあ」って、言うんだ。
正直背筋が冷えた、面倒くさがりの警官から眼だけ冷徹な雰囲気してるんだ、こりゃ肝冷やすよ。
僕はそっと身分証と共に20万ほど包んで渡した、返事は一言。
「長く続くと思わない方が良いよ」で、賄賂は返された、賄賂が通じない警官は天敵だ。
強制捜査に踏み切らないのは簡単、泳がせるから。
仕方ないから拠点を移転、お引っ越しだ。
次に選んだ拠点は悩んだ結果レッドウインター。
四六時中革命であるがレッドウインターは自活してるので、工場もあてがある。
そう、僕らも生産する側に移ろうと決めた。
が!天敵がここにも居た!
工務部部長、賄賂が通じない!
素直に銃弾生産工場と伝えてみたけど、すっげえ疑いの目が飛んでる。
どうしたもんかと悩んでいるが、頭に浮かぶのは潮時って単語。
だが困った事に未だに不法武器はダブついている、在庫抱えて負債にしたくもない、だけど売る相手が必要で、しかもその場だけのが良い。
そうこう悩んでいる中、突如DUで戦闘が始まった。
先生とカイザーは本気で大げんかをはじめ、僕は「今がチャンス!」と飛び出した。
夜があけて空が赤く染まり、変な化け物が出てるけどむしろこれでいい!
そう!僕はダブついた在庫を安値で売りたたいた!
と、いうわけで僕はついに不法武器類の売り逃げに成功した。
マダムの馬鹿もたまには生徒の為になるってわけだ、まあ原因アイツらしいんだけどね。
で、武器を売らずに所得を稼ぐにはどうするか?
別の手段に出る事にした、認可された車両生産だ。
レッドウインターには安い車両が馬鹿みたいにダブついている、こいつらをパーッと世に解き放とう。
むろん、車両に機関銃や対戦車ミサイルが付けれる様に改造をある程度施してだが。
「というわけで違法武器なんかもう売ってないよ」
現在、僕はシャーレ本庁舎の取調室に居る。
いやー、アシがついちゃったらしいね、アオイ財務室長にユウカ会計の眼を撒くにゃ目立ち過ぎたね。
羽振りがいい生活すると目立つからやーねえー。
困った事に賄賂が通じる気配はない、まあそうだよなあ、桁が違うしなあ……。
「まあ資産凍結ですかね」
「……自己の行いを悔いてらっしゃらない?」
何を言っているんだ、この捜査官は。
「なんで?武器を売った事を?」
「ええ、だってあなたは」
「アリウス出身?だから?銃が人を殺すわけないじゃないですか」
僕が銃を売った、買った相手が誰かを傷つけた、だからって販売責任なのか?
銃器がジャムって負けた、弾薬が湿気てた、信管がおかしいなら悔いるけど。
僕が売ったのはただの道具だ、暴力装置、でも悪い事か?
「あのさ、正式に契約すれば戦車や戦闘ヘリも許されるんだよ?周りを観なよ。まるでカオスだ、いつだって変わらないよ。武器が要らなくなるその日まで僕らはまた出てくるんじゃないかなあ」
外に出て分かった事がある。
シャバの人間が理解できてないのは、そもそも戦いそのものが忌むべきものだという事だ。
常に何か騒乱を起こすゲヘナ、身内同士で争うトリニティ、奴らを見てみろ。何らわかっちゃいねえ。
奴らはアリウスをおかしいという、じゃあ聞く、外交官が正式に宣戦布告すればブラックオプスや弾道弾は許されるのか?
文明人はどんな闘争をするんだよ、結局僕らはまた必要になる。
取調官が変わった。
「……さて、仕事の話をしよう。アシがつかない銃器の話だ」
ほらね、文明人はどんなジハードをするんだい?
みんな欲しいんだよ。
人が変わるか、戦争が我々を終わらせるかだもんなあ……。
「悪いが品切れ、アシを洗ったんだ」
「へえ?なんでだい」
「血を吐き続けるマラソンを見るのに飽きた、馬鹿同士で争い合うのも馬鹿に付き合うのもつかれた、嫌気が差した」
「急に罪悪感でも生えたか?」
「いや、変わり栄えしないから……かな」
さて、僕はいい加減にこのつまらない場所から出て行きたい。
「さて、売るものは別にある。あんたも喜ぶもんだ」
「なんだ?」
「残りのアリウスの武器庫」
僕が武器を売るのはこれで最後だ、最後に得たのは僕の自由とは皮肉だねえ。
その日、僕は司法取引で自由を買った。
さて、このゲームには飽きた。
次は……。
「株式か」
新聞紙には、【War Is Over!】と題名が振られたカイザーとシャーレの休戦案が書かれていた。
休戦、ということは武器価格崩落、経済が動くぞ!
「プレイボール!」
僕は新しいゲームへ乗り出した。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。