キヴォトスの若鷲(エグロン)   作:シャーレフュージリア連隊員

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強盗なので初投稿です。

マッセナ団は団員募集中だそうです。





ブラックマーケットへ遊びに行こう

 

 アビドス学園へカイザーの集金車両が走る、いつものワゴンの現金輸送車と、VBL軽装甲機動車が護衛についている。

 アロナによるサイバー攻撃で現在データリンクや派遣部隊の電子システム、本社システムが損傷しているばかりか、機械化連隊規模のカイザーではあるが完全に動ける即応戦力は今手元には無い。

 何故か? 機械化大隊を動かすのにいくらかかると思っている、カイザーは営利企業で、正面配備重点の正規戦争国家軍ではない。

 そのため3個機械化大隊を中心とするカイザーアビドス派遣部隊は事実上、概ね2個大隊にいくつかの追加部隊が回されているのだ。

 これに加えてビナー警戒の対デカグラマトン大隊が即応でいるが、これは回せない。

 

「本社から増援はまだ来ねえのか」

「無理じゃねえっすかね、”Damned 33rd(呪われし第33大隊)”なんて誰が信じるんです」

「だよなあ、朝起きたら大隊戦闘群消えてんだからな」

 

 俺らは辺境の砂漠でまあしがねえガードマンのはずだ、どうしてこうなる。

 社員たちの考えは無理もない、ここは正規戦争がされてる砂漠じゃないのだ。

 

 

 

 

 ”楽しからざる出来事”で予定より1日ほどずれたが、本日カイザーローンの集金員が来訪すると言う連絡が来た。

 対策委員会の引き渡しに随行したが、露骨なまでにお互い見栄を張りあっている。

 集金員などと言っても相手はカイザーだし、我々が弱ってるなどと知られた日にはより足元を見られるであろう事は容易に想像できる。

 用廃品を擬装させて見かけだけ稼働しそうな戦車などを活用して、堂々と胸を張らねばならない。

 ここ数日校舎付近での戦闘は起きていないので整備班の創意工夫と努力と、あと小型発電機をあれこれしている。

 昨晩UAVで観測したが、熱源反応もそれらしくなった。

 ちなみに小型発電機で発電した分はアビドス高等学校の電気代を減らす一助になっている。

 

 連絡員から集金車が来てるとの連絡が届く。

 全員配置に付き、動いてもらおうか。

 見てくれが──この場合ガタイや体格──良さそうなのを4人ほど選抜し礼服で立たせ、俺の横には帳簿担当として現地視察中のユウカを一般隊員に擬態させた。

 赤のロングウィッグでPASGTヘルメットに広域多目的無線機を背負う姿は普通のRTOだ、向こうがヘイロー丸暗記勢かノアかストーカーじゃない限り分かるまい、ユウカのヘイロー自体シンプルで助かった。

 

「いやぁ、シャーレの会計ちゃんまで立って貰って悪いねぇ」

 

 ホシノが珍しくふざけていない声で言った。

 

「これもシャーレの仕事ですので、そちらで迷惑かけてません?」

 

 人を何だと思ってるこいつら? まあ拗れるよりマシだろう、ここで分裂など笑い話にもならんからな。

 ただホシノはあまりミレニアムの会計が居るのを好まないだろう事は理解した、観光旅行なら良いが政治目的で来られても困るのは分かる、たとえ味方でも。

 そんな話をしていると無線から、集金車を確認と言う連絡が入り総員姿勢を正す。

 そうすると塗装がまだ砂漠迷彩じゃないAPCに護衛された白旗を掲げた集金車が、校門前に止まる。

 

「増援があちらも来たらしいねえ」

「案外余裕ないんだな、再塗装してないとは」

「と、思わせたいのか。あるいはあちらはもう少し狙いが違うのか」

 

 ホシノと現在の状況を概ね予測する、案外理事も自由にあれこれ出来ないのか? 

 中からビジネスマン風のオートマタが下りてきた、やや緊張気味で口調は上ずっている。

 

「毎度、カイザーローンをご利用ありがとうございます」

 

 今回は我々シャーレは立ち合いと言う形なので返済用の788万3250円を入れたアタッシュケースをホシノが向こうに手渡す。

 そうすると、向こうは集金車内で金額の確認を行うとこちらに空のアタッシュケースを返してくる、今回は断念したが、盗聴や発信機の類は仕込めそうに無いな、上手くやればアロナとの組み合わせでどうにかしてやれたのだが。

 ユウカが、返済方法や手続きの変更などを交渉しているが取り付く島もないようだ、次回からこちらが直接持っていくのも拒否された。

 アオイ財務室長あたりに今度法的根拠の参考資料貸してもらうか。

 

「788万3250円確かにお預かりいたしました、次の集金は何事も無ければ来月のこの日付に」

 

 来月までには決着をつけてやる、そう思いながら、集金車を見送る。

 変装は止めてないユウカに目線を送り、返済方法のあれこれをもう一度確認すると、此処まで現地に集金車を送り現金しか認めないと言うのは異質すぎると言う判定だった、もう一つ待って居た報告が手元に届く。

 

「車両番号特定しました、存在してますが車種が違いますねえ」

 

 説明を受けてもやはりお行儀が良い車両だと言えない様だ、一息吐きもう一つの本命とも言えるプランを確認する。

 

「送り狼は気づかれて無いな?」

「2重3重で尾行してます」

 

 本命の方には、不良生徒に変装した隊員を張り込ませた、此処から反応があれば、本当に残念なお知らせになるだろう。

 ほぼ、自由に動かせる戦闘員を出したので、最後の砦代わりに呼んだユウカに後を任せ、俺達もブラックマーケットに向かうのであった。

 各自ラフな私服を命じている、銃はユウカが黒い鞄を二つ抱えてスーツを着ている、お前いつからリオみたいなツラをするようになった? 

 

「珍しいですか?」

「おう、お前非戦闘員に近かったはずだろ」

「あー、護身でネル部長からCQC訓練は受けてるんですよ。これも仕込み銃です」

 

 カバンは書類ではなくMPXが収まっていた、世の中便利になるもんだ。

 うちの隊員はリュックサックが多い、これも私服戦闘用の装備で防弾版を入れてアーマー代わりにするのだ。

 本当はカラーギャングとかがやる方法だが、有効だし、闇市でギャングスタ気取るのは悪くあるまい。

 武器も普段の奴ではなくMAC10やTEC-9、それにM870だ。

 何処からどう見ても悪い大人だ、悪い大人という点は否定しないけど。

 

 

 

 

 ブラックマーケット

 

 噂に聞いたが闇市という活気はすさまじいものがある、3大校やそれに次ぐ学園の規模には及ばずとも、確かに小規模校数個分の経済規模には匹敵するであろう。

 連邦生徒会の手が及ばない治外法権区域。

 銀行も法治機関もあるが守るべきルール自体がぶっ飛んでいる類だ、スラムの闇市風情が笑わせてくれると思っていたが、露店の品物はえらいものがある。

 なんとゲヘナ、ミレニアム、トリニティ、その他各種学園の治安維持部隊装備品が並んでいた、明らかに横流しか略奪だ! 

 個人的には横流しは一番虫唾が走るので、早急に消えて欲しい、昔なら擲弾を投げてただろう。

 

「お前ら、観光してんじゃないんだから」

 

 うちの隊員も含めてアビドス組も露店などに目が向いている、SRTの経歴じゃ闇市なんて見た事あるだろうと考えたが、生で元気にやってるのは見た事ないらしい。

 只でさえこいつ等は身形等で回りから浮くんだ、目立つような行為は止めた方が良い。

 

『メルリ先生の新刊ありまあす!』

『PRO-Aランチャーならここだよ!』

『オイゲンシステムズ社員募集中!』

 

 闇市はこんなやかましいものだと忘れていた、耳が疲れる、大砲のがまだ眠れる、味方のならなお寝れる。

 着任以来聞かない日の方が珍しい銃声が聞こえ、此処には似つかわしくない生徒が不良生徒に追いかけられているのが見えた。

 群衆に構わず不良が乱射している、跳弾で直撃・至近弾を受けた露店の各所からAKやG3が火を噴いている。

 

「ざけんなぶち殺すぞ!」

「うるせえ!」

 

 大半の住民は我関せずだ、事実隣のチワワの市民は天ぷらうどんを何食わぬ顔で啜ってる。

 あの大きさの背嚢と手荷物であの走り方だ、近い内にすっ転ぶか、捕まるだろう。

 そのまま勢いでこっちに突っ込んで来た、ぬるりと隊員が直線上を塞ぎ、シロコが衝突を受け止めた。

 暗殺対応訓練を受けたSRTらしい警戒心と、アビドスらしい野生の勘だ、これくらい良い兵なら中国までロシア横断出来たかもしれん。

 

「大丈夫? な訳ないか。追われてるみたいだし」

「そっ、それが……」

 

 説明しなくてもいいぞ少女よ、多分このままだと。

 

「何だ、お前らは、どけ! アタシたちはそこのトリニティの生徒に用がある」

 

 予想通りの発言だ、うんざりするのでとりあえず交渉はする、戦闘による悪目立ちとタイムロスは避けたい。

 隊員の一部は何食わぬ顔で相手の左右を撃てるように展開しようとしている。

 

「追われてる方には用はないみたいだが、おい向こうさんに何かしたのか? 服にコーヒー掛けたとかなら一緒に謝ってやる」

「あはは……それが……」

 

 アヤネが通信でこの少女がトリニティ生だと言う事を伝えてきた、それを聞いた向こうが勝手に計画を伝えてきた、馬鹿か? そんな大型自治体の所属員を攫って身代金要求とは。

 戦闘態勢に入っている対策委員会の連中を手で制して、たまには大人として説得してやろう。

 

「いいかお前ら、金持ちと言う事は大きい組織の庇護下なんだぞ? 身代金誘拐でなんてしてみろ、そこの荒事担当の連中が飛んでくるわけだ、そして高い交渉金が狙える人質なら報復も厳しい訳、そんなことするより地道に復学の準備でもした方が良いと言う事だ、その方が長期的にお得だ皆で幸せになろうや」

 

 この渾身の説得だ、大体の奴が冷静になって考えを改めるだろう。

 

「あんちゃんが代わりに金でも払ってくれるのか?」

「我々はそのような組織では無いな、雇用先なら教えてやれるぞ?」

「話聞いてねえのか!!」

「駄目だ、ホシノ話が通じん言語が違うのか?」

「油にマイト縫って火をつけるの好きそうだねえ先生」

 

 素で呆れてそうなホシノがショットガンを仰々しく装填した。

 チンピラが銃撃するが、ホシノが盾を展開して受け止め、後は隊員数名で警棒をぶちかました。

 餅かうどんか解釈に困る乱打の末、タタキ4丁が出来上がる。

 

「あーあやりすぎだ、まあいい薬になった、な!」

「ん、先生多分聞こえてない」

「まともな場所なら拘束して治安維持組織にでも突き出すんだが、こんな場所じゃな、せめて車とか人に踏まれない場所に寝かせてやれ」

 

 チンピラを道角に置いた際、妙に首裏に視線を感じた。

 振り返るとスターリングSMGやL1ライフルを持った生徒らしき数名がゆっくりと離れていくのが見えた、万が一のためその場を早急に離れる。

 ヒフミとか言うらしいこの世間知らずそうな言い分を聞くと、探し物があるなどと言う。

 こんな場所にこの手のお嬢様? が居る、親の形見でも売られてんのか? 対策委員会も不可思議そうにしており、何かを聞いてみた。

 

「いや、ええっとですね……ペロロ様の限定グッズなんです」

 

 シロコとセリカも疑問符を浮かべている、限定……レア物、この言葉が好きそうな昔の部下を連想して感傷に浸っていると。

 このヒフミが取り出したのは、アイスを口に突っ込まれ窒息しそうな鳥のぬいぐるみだった、2人目以降の捕虜を恫喝すための見せしめで〆られた様子だな。

 グロテスクな風刺絵画や文学もある、そう言うものだろう。

 

「ペロロさんとアイス屋さんがコラボした時の限定ぬいぐるみです!」

「アイス屋はさぞ驚いただろうな、うん」

 

 俺ならキレて戦列艦で掃射したくなるよ。

 限定100体で生産中止だとか言うが、アイス屋の英断に賞賛を送りたい。アイスをこのように使わないのであればだが、見ろあのシロコが押されているぞ、思って居ると、ノノミが釣れたようだ。

 

「わあ! モモフレンズですね! 私も大好きです! ペロロちゃん可愛いですよねえ! 私はミスター・ニコライが好きなんです」

「分かります! ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて。最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ! それも初版で!」

 

 このモモフレンズと言うのは地下愛好家が大量に居る商品らしい、そう思うと実は此奴もモモフレファンかと疑念が出てくる、そしてこの手のファンは地下に根広く広がっている、味方にしても役には立たないかもしれんが敵にすると非常に厄介な手合いだ、しかし『善悪の彼岸』とは何だ、後で確認しよう、こいつ等に聞くのは絶対にダメだ。沼の底に引き込んでくる。

 俺はこういう手合いが一番ヤバいと革命期フランスで見た。創作でおかしくなった奴はサドのアホで十分だ! 今でもアレをギロチンにかけなかったロベスピエールの判断を理解できない。

 

 ホシノとセリカの会話を横で聞いてると、確信できたがこいつ等は正統派ファンシーやデフォルメだろう。

 考えを切り替えるネタを思い出しているとそう言えば昨晩、帰宅できたとアルちゃんからモモトークが届いたが、あいつ等雇い主にどう報告するんだろうな? 単独講和とかバレたらえらいことになりそうだが。

 

「先生、ビンゴです」

「よおし、楽しくなってきたな……」

 

 バイクで尾行を終えた隊員が直接連絡する、資金源が流れているとアコどころかヒナが確信するレベルなのだ、証拠があるのだろう。

 

 

 引き渡しを待つ間、ヒフミがブラックマーケットの説明をしてくれているが、聞けば聞くほど連邦生徒会の働きぶりに感動しそうになる。

 この事件が終わっても忙しくなりそうだ、退屈とは無縁になるだろうがな。

 犯罪との戦争は根気よく容赦なくが一番だ。

 

「あら! あそこにたい焼き屋さんが!」

「やめとけ、腹壊す」

 

 ホシノに肘で小突かれた、無粋だよ先生との事だ。

 食品衛生とか気にしないのか? でもこいつらが腹壊すと確信も無いよなとも思う。

 

「まあ良いか」

「ひと休みしましょうか。 たい焼き、私がご馳走します!」

 

 また遮られた、しかしこのノノミと言う少女は殆どニコニコして周りを眺めているがこういう時に言動が鋭いと言う事は、やはり良いNo2と言う事なのだろう、そして金回りも良い、良家の子女なのだろうが実家の背後が見えない、やはり不思議だ。

 そんなことを思いながら空を眺めていると頬にアツアツのたい焼きをくっつけられた。

 

「甘いな」

「うん」

 

 俺とシロコがたい焼きを食べているとヒフミに皆さんはどうしてブラックマーケットで何をお探しで? と聞かれたので闇銀行を指さし、あの辺に落とし物をしてな、確認に向かってると返す。

 

「ええっ!? あそこのビル。あれこそブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」

「闇銀行なんかどれも同じじゃないの?」

「それが違うんですよ、ホラ、警備のオートマタの武装が違うでしょう?」

 

 ヒフミが指さして示した、見るからに物々しい連中と違い、シンプルな警備オートマタがベレー帽をつけている。

 カイザーセキュリティの警備オートマタだ、常駐警備員が威圧感が低いのは間違いなく、本命の警備部隊が居るからだろう。

 殆ど知っていたが改めて聞くと目くらみしそうになる、だがしまった、途中でこいつ等といったん分かれて調査する予定だった、これ以上ホシノに心労を与えたくなかったんだが……

 ため息を付きながらヒフミの補足を聞く、随分詳しいなこいつ。

 

「ブラックマーケットで最も大きな銀行のひとつです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品はあそこに流されているそうです……。横領、強盗、誘拐などなど、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられてまた他の犯罪に使われる……そんな悪循環が続いているのです」

 

 聞けば聞くほど、擲弾兵連隊を3つほど叩き込むか、ウサギ狩りを兼ねたお誕生日会でも開いてやりたくなる。

 金庫にカーカス弾投げ込む馬鹿でもいないだろうか。

 

「連邦生徒会いずこにありや、まあいつもそうだけど」

「ん、今はそこにいる」

 

 シロコが先生を指さす。

 セリカ悪いが俺も連邦生徒会の構成組織だ、一番の新顔だがな。

 一台朝に見た車両が駐車している横に、黒い別のワゴンが止まる。

 

「来た、あいつ等最低限のモラルも無い、くそったれの様だ」

「か、カイザーローンですよ?」

 

 ヒフミがカイザーコーポレーションなどの説明をしているが最早相思相愛の相手・関係だ。

 理事なんて今頃熱い感情高ぶらせて夜も眠れぬ思いだろう、お前の部隊壊滅させたのがそんなに嫌かな、たかが部隊1個でキレやがって。

 

「──カイザーグループ自体は犯罪を起こしてはいません。しかし合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振舞っている多角化企業で……」

「犯罪はもう起こしている、小突いただけで犯罪が零れて落ちてきた、奴ら不安定化工作まで手を付けてるよ」

 

 それを聞いてホシノはむっとした顔をする、部外者にしては出来過ぎてる、ヒフミは恐らく。

 

「私たちトリニティの区域にもかなり進出しています、生徒たちへの悪影響を考慮し、『ティーパーティー』でも目を光らせていますからねえ。無理もない話です」

 

 こいつ『ティーパーティー』の下部組織か。

 それも上の意向を語れる類だな、ふうん、こいつ見かけは普通だが中身は規格外だぞ。

 後ろで妙にあわあわしているのは護衛か手ごまか? 

 

 秘密裏に受け渡した金は、袋を入れ替えられて銀行へしまわれた。

 名義は違うと言い張って逃げるためだ。

 なるほど現金に拘る訳だ、資金洗浄するより稼がせた方が楽だよな、足が付かない綺麗な現金だ。

 狙うは決定的な書類や帳簿だ、アロナでも殆どがオフラインだからアクセスができないから、やるなら乗り込むしかない。

 まずは駐車場に消音器を付けたMAC‐10で闇銀行員を掃射、制圧の後に機材を確保しようとするが、何でか書類しかない。

 実はアロナのサーバー破壊によって偶々そうなっていたのが後日取り調べで判明したが、今は知らない。

 残るはここの中だけ、じゃあやる事は一つ。

 

「銀行、襲うか」

 

 全員驚いたがシロコが特に力強く目を見開いた。

 ヒフミがこそっと背筋を丸めようとしている、どこへ行く、恩義は返せ。

 

「目標物とチャートは」

 

 シロコの妙にキラキラした目が突き刺さる。

 急にイキイキとして人生はつらつ気分爽快、まるで青春を迎えた学生みてえな顔をするな、何の話してると思ってるの。

 

「現金に関する帳簿だ、特に目的としているのは出納帳だな」

「望成目標はある?」

「命令書および顧客リストだな」

「ん!」

 

 限りなく人生という事に深い充足を得てそうなシロコを横目に、ホシノが念を押す。

 

「お金じゃないんだね」

「金? 金庫燃やすのは良いぞ、汚い金だし。俺がやっても良いけどやりたい?」

 

 ホシノはショットガンのチョークを弄って拡散度を狭めた、誤射警戒だ、同意とみていい。

 セリカはあまり納得してないらしい。

 

「元はうち等の金でしょ、貰っちゃダメなの?」

「駄目に決まってるだろ、シャーレは被害者のアビドスを守る為に来ているんだからな」

「……やっぱ、だめ?」

「何しても良いんなら俺はここ*1燃やして撤退路の偽装に使うぞ?」

「分かった分かった、うん、こっちのがマシよ」

 

 セリカがついに根負けした、お前の望みは分かるが子供が贅沢言うと俺も子供に戻るぞ。

 俺はいつでも9歳児の夢を大事にしてるしな、つまり俺も子供だ、言ってて悲しくなった。

 各自はマスクを着用し、俺もコルシカから逃げた時の様に顔を覆う。

 

「お前の分どうするよ」

 

 ヒフミが好機とばかしに、これを理由に逃げようとする。

 しかしノノミが「仲間外れは良くない」と主張して阻止し、ホシノがたい焼きの袋にマジックで書いた。

 

「それじゃ、リーダー、威勢と景気よくやろうねえ」

 

 海より深いディープブルーをしたヒフミを伴い、前代未聞の強盗が始まる。

 マッセナ! あの世でせいぜい羨んでろバーカ。

 

 

 

*1
ブラックマーケット




皇帝は必要ならモラルも踏み倒すのでカチコミになりました。
金は盗んで無いので、書類や金庫にテルミット投擲したくない?


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