キヴォトスの若鷲(エグロン) 作:シャーレフュージリア連隊員
シャーレによる美術館計画に際して、刑務活動を兼ねアキラを矯正局からほじくり出した。
美術品鑑定としてはコイツにやらせるしかないのと、どうせ矯正局は人員不足で管理限界に近付いているからしょうがない。
こいつも変な犯罪をするよりやる仕事が多いなら仕事の方を片付けるタイプだ。それに犯罪の根幹原因は潰したのだから、コイツが逃げる理由がない。
分からないのはアキラが随分と”長いお耳”をしている事だ。失踪芸術品追跡に全精力を傾けているのだろう。
何度目かのブラックマーケット摘発が行われ、真贋鑑定が始まる、ペロログッズはヒフミたちにやらせたが既に済んだ。
「贋作ですね、模倣の模倣です」
アキラが書類を見ながら線を引く。
「これも贋作、観光土産に半世紀ほど前に製造されたものです、贋作以前ですね」
更に線を引く。
「贋作です、古いものですが模倣によるものです」
更に線を引く、やがて一つの物の前で暫く止まる。
「……これは贋作ですが、良い物です、収蔵しても良いでしょう」
続けてアキラが次に並んだ壺を見る。
「……これは……恐らくユスティナ時代の壺ですね、現存数が多い作品ですが収蔵するべきでしょう」
「専門家が見ると早いもんだ」
「いや全く」
ユウカと二人して呆れかえる。
ヒフミはマニアの熱狂だから分かるが、アキラは最早何か別の方向へぶっ飛んでいる。
昔イタリアで大勝利した際の収奪品リスト作った経験が、再びこうして活かされるとは思わなかった。
「分別終わりました。そう言えば、贋作はどうするのです?」
「贋作が寧ろ欲しい物好きも居るんだよ」
アキラはなるほどと理解した。
確かカイザーのプレジデントは「贋作だから集めたい」という話を聞く、真贋の経済価値性が云々とか言っていた。
確かに芸術品とは人の主観で価値が変わるが、だとしても不可思議な話だ。
少なくとも会長からは悪癖と言われていたのを経済誌の話で見た事がある。
「さて、目録は終わりました。
移送を」
アキラは手馴れた所作で、隊員の一人へハンドサインした。
表の経歴からして当然だが、実に手馴れている、そりゃあ警備を搔い潜るのも出来るだろう。
こいつの表の身分の一つがワイルドハントの治安組織、寮監隊の幹部なんだから。
獅子身中の虫と言うべきか、確かに手馴れた様に警備を見抜けるはずだ。治安部隊のやり方の要点を知れる立場ならな。
すると、アキラの携帯が鳴った。
”表”用の携帯だ。
「どうかしましたか?」
暫くすると、アキラは電話を切り、少し沈黙した後此方を見た。
「先生、ワイルドハント見学はいかが?」
「またなんか悪だくみか?」
「あらおひどい、生徒を信じて下さらない?」
「信じてるからこういってんだよ」
アキラは楽し気にして、安心して欲しいと言った。
「なぁに、ちょっと壁が削れたりするだけですよ」
それ多分ろくなことにならねえんじゃねえかな。
ワイルドハントにご招待、と言うからにはまあ半分私的ではあるが公人としての役目もある。
こういう時はユウカを連れて行くのが最適だろう、技術官僚制のミレニアムなら刺激する事も少ない。
エメラルドグリーンとホワイトの二色で塗装された地下鉄に乗り込む、ワイルドハント方面はDU市街地と違い全線リニア化事業を提唱してない。
MF67とか言う車両は、やや古めかしい車内で心なしか椅子が堅い、4両編成の地下鉄は人がそこそこ乗り込んでいる。
「こういう記録業務なら良いだろ?
最近お前後方業務ばかりだし」
「本来私が前線に居る方が可笑しいんですけどねえ」
長い地下鉄を越えて地上に出た俺達を見たのは、懐かしい城壁の様な入り口だった。
と言うかヴォ―ヴァン式とは。ここにさらに堡塁を追加したりするなりしても、射距離が伸びたらこのタイプの要塞は無理だって!
星型要塞は引き込んで十字砲火出来るから強かったのだ、火力増大は射程も伸ばしたから破綻したのである。*1
「市街城壁か、曲射砲の時代には無理だろ」
「なんで攻略すること考えてるんですか……、それに壁の厚みや材質見ないと無意味ですよ」
そうこう言っていると、心なしか
片方の肩にコートを留めるやり方は俺の時代じゃよく見たスタイルの一つだ、オフの時の騎兵もよくやっていた。
「お、ユウカ。検問があるぞ!懐かしいなあ」
「感動する所そこなんですね……というか市街化していないんですねここ」
なんというか、パリ中心部を思い出す。
ただ中へ入ると、雰囲気はどちらかというと別の地域を感じさせる、南仏や北伊の雰囲気だ。
赤煉瓦で作られてはいるが、石畳の敷き方などはイタリア地域と言った雰囲気である。
ただ確かにユウカの発言は気になる、市街城壁が廃れた最大の原因は人口増大と都市機能の変化が原因だ、要するに手狭になるから新市街が出来る。*2
芸術性の違いで銃撃戦などが起きてるが、そこはやはりキヴォトスだし、まあいつもの事だ。
「おや、もしかして貴方は」
ワイルドハントの生徒が一人、声をかけた。
何処かで見たようなと思ったが、すぐ思い出した。
「あ、クーデターんときに路上ライブしてた奴」
「あら、覚えて下さりました?」
そりゃまあそうだろうよ、燃え盛る警備車の真横でギター弾いてる奴はロックが過ぎるわ。
ツムギと言う生徒が、ぺこりとお辞儀をした。
格式張っていないが落ち着いた気品がある、語り口は何というか妙と言うか変と言うか変わっているが、まあそれくらい些末な事だ。
ツムギに案内され、目的地である第4寮へ向かう。
そもそもアキラからの頼まれ事は、ツムギらがいるオカルト研究会をちょっと手伝ってあげて欲しいと頼まれたのだ。
キヴォトスの存在そのモンがオカルトでは無いのか、という事は言わないで置く。
「オカルトと言うと似非科学部を思い出しますね……」
逃げられたと聞いて頭痛がした案件だ。
セミナーに廃部された最大の理由が「そもそも研究してないじゃん」はあまりにもバカ過ぎる。逆にそこまで行ってなぜ恨める。
ツムギ達の部屋は第4寮の404号室らしい、ユウカがやや眼をジトっと細めた。
「先ほどの話だと私達は404は嫌いな数字ですね……」
「えーっと?」
「PCのエラーですよ、ミレニアム生が一番見たくない数字ですね」
「俺の地元だと、13とかかね」
「4は私は好きなんですけどね」
そんなこと喋りつつ、ツムギが部屋の扉をノックした。
ワイルドハントには正式な部活が無い、いわば各自好きにやるべしの方針だ、故に部室と寮はここでは兼用されている。
「寮が部室か」
「近いのはゲーム開発部なのにあまりにも遠い……」
ユウカが空を仰いだ、扉が開く。
「……少し暗くないですか?」
胸元の携帯L字型ライトを取り出す。
残念ながら我らがガッデムの箱……アロナにライト機能は無い!
「イヒッ……イヒヒッ……」
「ようこそいらっしゃいました、アルカナに導かれし者達よ」
声と同時にライトを向ける。*3
「「うわっ眩しっ!?」」
「普通に挨拶しないから……」
出鼻を挫いてしまったらしい、奇襲にカウンターぶつけてしまったか。
「どうする?やり直すか?」
「お気遣いなく」
まず出て来たのが部長のカノエ、ウイとツルギを混ぜたらこんな感じだろうか?
見た目についてはあまりとやかく言わないが、持ってる武器にはやや懐かしさがある。
「
「良く分かってるね先生……ひひっ」
槊杖の使用具合を見るに、ちゃんと運用しているのだろう。
一部塗装を塗りなおしたりした跡があるのは手入れしている証だ。
そして部員の次は同級生のエリ、帽子がバカでかいからかシルエットが掴みにくい。
「先生は魔法って存在すると思いますか?」
「定義によりけりという奴だ、このユウカは数字の魔術師だし……あ、でもミメシスは見たしな」*4
ちなみにアキラから言われたのは「エリなどが何かしら本当にヤバいものと出くわさないように」という事だが、なるほど確かに心配したくなる。
こちら側と呼ばれて急にマスターと呼ばせてもらうとか言われたが、うっかりユスティナ時代の奴をオープンアップしちゃいかねない。*5
真の事故は悪意無く始まるのが常である。
そして最年少の末っ子扱いされているレナ、見た目からして一番当世に合わせた今風と言う奴だ。*6
「先生達、今ならまだ間に合うよ!早く逃げて!」
「映画とゲームでえらい目にあったりする前ぶりじゃねーかそれ?」
部活では無いが、専攻以外の趣味もやはり必要と言うのは分かる。
非公認ながらエリが皆の趣味を纏めて部活を作ったらしい、なんでそうなるんだろうか。
端的に纏めるとオカルトと芸術の相関性という奴らしい、まあそれについては文句はない。
「創作意欲は……無限だからねぇ……」
「無限だったら未完の名作は生まれて無いんじゃねえかな、作者の急死とか例外はあるが」
「ムムム……」
専攻は絵画枠の会長のエリはともかく、実用音楽専攻で副会長のツムギはやや不思議だったので尋ねたが、理由はデスメタルで悪魔を召喚できるのか確かめてみたいらしい。
昔にヴェリタスが「悪魔召喚プログラム」とかいうスパムメールに引っ掛かった話を思い出した。*7
『悪魔は供給過多ですよぉ……』
アロナが何か言っているが無視だ。
カノエの専攻は秘密だそうだが、案外音声か映像芸術じゃないかと思っている、根拠は銃用の耳栓とゴーグルが私物に見えた。
自分の事をまともだと言い張っているのがレナ、ファションデザイン専攻らしい、確かに服装が趣味なのが分かる。
以上4人で構成された組織が、ワイルドハントのオカルト研究会だという事らしい、まだ何も怖い事をしていない。
「オカルトといっても根拠がないわけじゃないんです!見てくださいこの膨大な根拠!」
ばばーんとエリが手帳を開いた。
DU近郊の海域に突如出現したペロロ型の巨大怪獣、閉鎖された遊園地で踊り狂う人形、怪しげな本から、怪異が飛び出す。
いやあ心当たりがないではない様な事ばかりだ。
「なぁユウカ、全部爆砕したから安心してくださいって言うべきかな」
「夢も爆砕しちゃうので駄目だと思います」
アルカナで占うと言われたが俺はクレープ占いとかの時代だ。
2月の2日にシャンドルールの祝日に、左手にコインを持って右手だけでひっくり返す、落とすのが一番駄目である。
「ところで先生」
「なんだ」
エリが不可思議気に尋ねた。
「シャーレにはオカルト存在に対抗する為の秘密部隊があるって本当ですか!?」
「連邦捜査部本庁舎の地下に公開されてない秘密裏の収容施設があるって噂も確かめるか?」
「……遠慮しときます」
よろしい!
まあ実はそんなモンはない、時々サオリ達がAA-12持ってミメシスをシバく副業してるだけだ。
ワイルドハントの美術館へ歩みを進める。
ドーム型の建築がされ、流麗と言うべき栗色の塗装がされて静寂な美を演出している。
ルーヴルとは言わずとも実に立派な美術館だ。
「流石に芸術学園の美術館だ、しっかりしてる」
それはそうとして、気になるのでエリに聞いて見る。
「
「マスターとは絵画の趣味はズレるみたいですね、私はロマン派なので」
「ロマン派かぁ、反伝統的、反制度的と言えば聞こえは良いかも知れないが」
「抑圧的で、個人の軽視が多いんですよ、もっと芸術は自由で良いんです」
うーむ美術品に関しては合わんか、実に無念。
「同好の士で揉めてどうするんですか……」
呆れたユウカがブレーキをいれて打ち切らせた。
「魂、魔法、幽霊と言った超自然的存在と向き合った結果―――
それらの考察の末、多種多様な芸術が生まれてきたんです」
「抑えてください、こういう論争は終わらない悲劇しか生まないんですよ」
「むぅ、まだ何も言って無いぞ?」
「マキが家に来た理由が分かっちゃったかも」
ユウカがやれやれと呟き、レナが「ミレニアムもミレニアムなりの悩みがあるんだなぁ」と呟いた。
それはそれとして腐っても芸術学園の美術専攻、ドミニク・ヴィヴァンとかよりは劣ってもそれでも初心者が故の語りも面白い。
後世には後世の視点がある、エリ曰く一番感動したのが”創世の影像”と言う作品らしい。
大量の亡霊が夕日へ走ると言う絵だが、実のところこれが何を記しているか解釈が分かれるそうだ。
「創世……この亡霊が目指しているのは夕日なんでしょうかね」
「案外朝日なんじゃねえの」
「というと?」
「朝日か夕日か解釈次第、始まりか終わりかは表裏一体」
「マスター案外ポジティブだったりします?」
「うん」
はっきりと頷く。いやぁHMS ヴィクトリー焼き討ち出来てりゃ自信もって我に並ぶ者無しと言えたんだが、対英遠征は出来んかったからなぁ。
エリはややしょんぼりとして「実は私はあんまり自信が無くて」と呟き、いつか力強い何か作品を、はっきりと自分らしいものを生み出したいと言った。
「変ですかね……」
「大丈夫だよ、排水管からあれこれ叫んで体制崩壊の原因になった作家のがよほどおかしい」*8
「……なんですそれ」
「あと体制崩壊させた後に革命委員会にしれっと参加してた風刺の詩作家とかもいたし」*9
「マスターもしかして結構治安が悪い地域に居ました?」
「俺がその後良くしたからヘーキヘーキ」
美術館でのオカルトというから、てっきり変な絵があるかと思いきや勝手に動く悪魔像らしい。
トリックは置いておいてもデスボイスは止めた方が良いと思う、発砲されるぞ、ここキヴォトスだぞ。
「なんだっけな、12時になると咆える仕掛けのライオン像とかがあったがそういうのじゃないの?」*10
「違いますよー!確かに芸術的で精巧ですが権威の箔付けじゃないですか」
「芸術も割りと権威主義だろ……」
「い、忌むべき者たちですら鼻白むようなことを」
忌むべき者……警備員か?こいつらの行動的に。
レナに聞いてみると、概ねその通りと言われた。
「芸術評議会は厳しい基準で作品の芸術価値を評価・分類する組織で……まあ他校で言う生徒会みたいな感じかな」
「つまり私みたいな?」
「どっちかというと先生が近いんじゃないかな、検問所とかに居る寮監隊は評議会の指揮下にあるの。
だから、圧倒的な権力があるわけ」
「成程、ロマン主義が多い理由が分かったわ……それと兵権は権力の根幹だぞ」
強くない権力に誰が従うんだか……。
エリは次の目的地を占い、噴水の方向を指さした。
流石にワイルドハントの学内だけはある、噴水がある広場は完璧なまでの美術詰め合わせと言う雰囲気だ。
「彫刻通りだぁ」
「あの噴水は巨匠「レオパルド・ザ・ピンチ」の作品で」
「レオナルド・ダ・ヴィンチ?」
「違いますよぉ!お詳しそうなのにその辺は知らないんですね」
「サン・シュルピス教会の噴水はダヴィンチじゃなかったような……」*11
他にはと聞いて見ると、禁忌を破った芸術家の石像があるという。
なんでも怨霊の声が聞こえるそうだ。
「それコンクリに人間入れて沈めたとかじゃないのか」
「証拠隠滅とは違いますよー!」
エリがわたわたと両手を広げる、ふとアリスを思い出した、天然の愛嬌がある。
ふと思い立ったか、カノエが「案外先生が見て回れば変わった反応するかもね」と言い、見て回る事にした。
レナがやや不安げにきょろきょろしている。
「大丈夫だって。怨霊が実在したら、俺の周囲1キロはみっちり居るから安心しろって」
「やだああ!これはこれで安心できない!」
まったく、ちょいと100万単位で溶かしただけだぞ。
飢饉と革命は俺の所為じゃねえしな。
「だいたい人間を突っ込むタイプの石像ってよっぽどその人間が美形じゃ無きゃ無理じゃねえか?」
「え?」
「だって人間だぞ、デカいぞ多分、彫刻とサイズが合わん」
レナが辺りの石像を見回す。
確かに人間と絶妙にサイズが合わない、大きすぎるか小さすぎる。
というか似たような話をゲームで見た、ミドリがおススメしたゲーム……確かラプチャーショックだっけ?*12
他にもいくつか見て回ったが、単純にワイルドハント観光以上ではない、なんというか、生徒全体から「まあなんとかなんだろ」という根拠のない若者特有の希望は見えているが。
部室に戻り、エリが呪文を唱えてみようと準備を始める。
だが一番訳が分からないのはここからだ、何故か爆発した。
爆発物が無いのに爆ぜるってなんだよ!
「これが一番オカルトじゃねえか!」
「いやぁ、煙が上がる程度かなぁと思ってました」
「煙が出る時点でなんかおかしくねえかソレ!」
全く、爆発慣れしてるユウカと俺で良かった。
キキョウとかだったらお説教だぞお前ら……。
「……突然爆発したのに先生反応早いね」
「伊達に鉄火場と修羅場を潜ってない」
カノエがやや驚いた顔をした。
すると、足音が近づいてくる。
「コラァ!寮を吹っ飛ばすんじゃない!」
「あ」
寮監隊が慌てて駆け付け、オカルト研究会を連行していく。
「むべなるかな……」
「貴方もです!」
「え?!」
「監督責任です!」
「待て!俺は連邦役員だ!不逮捕特権くらいはあるぞ!」
「問答無用―っ!」
レナとエリから「「自分だけ助かろうとするから」」と言われたが、失礼な。それくらいの特権があるのだ。
反省室を兼ねてぶち込まれたのは屋根裏部屋という辺りが、ワイルドハントが中々大雑把な所だと示している。
「屋根裏部屋か、雨風はしのげるな、埃はほどほどに湿らせた布を口に当てればまあよかろう」
「何時も水筒持ってるとこういう時便利ですよね……」
「清浄な水は傷も洗えるからなあ」
やる事も無いので、理由を聞いていなかったカノエに話を聞いた。
案外話してみると全員が全員、オカルトの存在を「ある方が面白かろう」で見ている、そういう組織は長持ちしやすい。
ただ、エリの場合は少し違うようだ。
要するに、エリは自信が無いのだ、自信を取り返すには満足行く作品以外道はない、そうなれば猛進あるのみだ。
非常に真面目なエリの独白を聞いてついユウカがジーンときている、気持ちは分かる、モモイのアホ面も少しは見習ってほしい。
「楽して傑作作りたいとかじゃないんだよな」
「楽して出来たらそりゃ天才ですよォ……悩んでませんよぉ」
「なんてこった、ぐうの音も出ねえや」
衝撃だ、非常に残念なニュースだ、モモイよりまともそうなやつがいた。
「変ですかね……」
「楽して傑作作ろうとして禁域突入するより変だと思うか?普通だよ、ちゃんとした悩みだ」
「ありがとうございます……」
真面目な生徒の悩みを解決するとか過去例がないレベルで俺先生してるな……と思っていると、ドアが開いた。
すごーく見覚えある猫耳に尻尾の少女がいる。
「ミリアちゃんだ」
カノエがひょこっと起き上がる。
「今度は何やらかしたんですか、先生まで居てなにしてるんです」
「俺の所為じゃねえよ、魔法陣が何故か爆発したんだよ、意図的に起こせたら採用したいくらいだよ」
「まったく……。
まあ悪意が無いのは事実そうでしょうし、シャーレの先生まで叩き込んだのはアレですから、釈放です。
何かしら誤解されて屋根ごと持っていかれても困りますし」
そうなの?とオカルト研究会がこちらを見る、アキラめ、遊んでやがる。
「さあ?夜中突然停電したりするかもしれんがね」
こわーと呟く一行を後ろに、先に屋根裏部屋を出る。
「しかしなんで吹き飛んだんだか」
「これはオカルトですね!」
「オカルトかは抜きにしても案外なんかあるんじゃないかね」
少なくとも突然部屋が爆発する事より、オカルトな事もあるまい。
「そうだ!学院の重要施設を繋げて魔法陣を描くと何かが起きると言う伝説があるんですよ!」
「それは確か満月の夜ではありませんでしたか?」
ミリアが屋根裏部屋を閉じて呟く。
「むむっ確かに」
「……それ確か今日の夜だぞ」
アロナを開いて確かめる。
アロナはポンコツなので気象データとかを提供できないが、代わりに気象データを他方から転送する事が出来る。
作戦活動上気象データは必須に近いから、きっちり揃っている。
「でも重要施設といっても、場所や配置はバラバラでは?」
「う、確かに」
ユウカが公開されている地図を見ながら不可思議気に言う。
ワイルドハントの都市計画が幾らかの変化と歴史を含んでいるから、街路の形など幾らにも変わる。
「つまり理論は破綻してしまうんですよ」
「……そもそもこれ何年前の地図よ?」
レナが不可思議そうなユウカの地図を見て、疑問に思って呟いた。
それを聞いたエリは、あっと閃いた。
「あ、そうか、今の地図じゃ分からないんだ!」
「そりゃ都市計画で変わるからな、鉄道が内部へ伸びてないから新市街と言う訳では無いんだし」
「という事は……先生!昔の地図って出せますか!」
「公開資料にあるから出るんじゃないかね、アロナ!起きろぉ!」
すやすやしているアロナを叩き起こし、プラナと公開資料を当たらせる。
流石に公文書にはきっちりと変化の歴史が乗っていた。
エリは各館の線を繋げ、間違いないと言った。
「やっぱりです!割り振られた番号を繋げていけば、このように魔法陣が!」
「なあエリ、一つ聴いて良いか」
「なんでしょう!」
「……これ爆発したりしない?」
エリが固まる。
「い、イルミネーション……という事でなんとかなりませんかね」
「爆発の輝きをイルミネーションと呼ぶのは世間では難しいと思うのよ俺」
カノエが、思いついたのか口を開いた。
「そ、それだよエリちゃん……!
蓄光テープで代替してしまえば良い!」
「へ?」
「”夕方の内に蓄光テープを敷いて回る事を禁ず”という規則はない!」
エリが「あっ」と驚く。
全てが合法的で、完璧なまでに正当なのだ。
「でもそれ、何か間違えたら」
「学院ごとどかんぱー……そう「エキサイティング」……ですから」
「何処がよ」
ツムギのにこやかな笑みにレナが天を仰ぐ。
まあ、仮になんか起こったらうまくなんとかしてやるか……。
「まあなんだ、仮にあれな悪魔だったら俺が始末すればよかろう……、ちょいと評議会にお話しするか」
「えっ今からですか?!」
「これでも偉い人なんだぞお前!」
うーむ、なんというか随分と気楽な気分だ。
ノアに呼び出しされた時の数百倍清々しい気分である。
結論から言えば、ワイルドハントがクレーターにはならずには済んだ。
蓄光テープで浮かび上がった光景は「芸術的であるから多少整え直し」をすれば認可する、という上からの許可も出た。
つまるところ……願いは叶ったわけでは有るんだが。
「結局反省室にぶちこまれてんじゃねえか。なにしたんだおめーら」
「噴水広場で魔法陣やるとどうなるか実験したら噴水の規模が大きくなりまして」
最早何も言うまい、吹っ飛んだ水の塊が寮監隊へ直撃したらしい。
やっぱ一番オカルトなのはお前のそれじゃねえのか?
「いやぁ、次はどうしましょうか」
「頼むから何も爆発させるなよ」
「次は……評議会議長の個人所有の非公開博物館に行こう……」
「俺の堪忍袋の方を爆発させてえのかおめえら、申請書類出せよ」
やれやれ、やっぱりこいつらはこいつらで問題児だ。
「良いの、寮監隊幹部さんとしては」
帰り際になんかやらかしたオカルト研究会に面会の許可を出した”ミリア”は楽し気に頷いた。
「あふれ出した芸術衝動は、抑えられぬものですから。
それに、怪盗すら立ち入ったこと無き博物館、実にそそられるものがあると言うのは私人としては否定できぬ事実です」
気は楽だが休まらねえなここも……。
まあ、何があるかは気になるのは確かに分からんではない。
それに博物館というのは確かに好奇心が湧いてくる、鉱石やらなんやらだろうと好奇心は抑えきれんと言うのも分かる。
ただ、ワイルドハントの博物館……いったい何が収蔵されているんだ?
ミレニアムなら分からなくはないが……。
感想評価お待ちしてます。
誤字脱字などの報告本当にありがとうございます!
この場を借りてお礼申し上げます。
最早テンプレのこの文章ですが、風邪の噂で聞いたところこの作品を見て長谷川先生のナポレオンシリーズを買ったと言うのを聞いて大変嬉しく思って居ます。
原作のどっちを見たり知ってます?
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長谷川ナポレオンシリーズは知ってる
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ブルーアーカイブだけは知ってます
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どっちも知ってます。