メシがまずいこの世界、ポイズン   作:ファ○通の攻略本

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さりげなく二年次の星漿体関連のフラグが叩き折られるやつ。える知ってるか、面倒なものはな、最初から叩き折ればええんや。

そして同時に厄ネタを出していくスタイル。パンがなければケーキをスタイルで、呪術の世界には進化(と定義していいのかは疑問ですが)した人類が他にも存在してて羂索の計画には代替案になる上位者が存在するよ、みたいな感じのアレで行きます。それと同時に設定がよくわかっていない羂索や天元関係に関しても、オリジナル展開を挟んでいくゥ〜。

ここまで読まれている方はお分かりかと思いますが、結構好き放題やっている作品ですので、合わないと感じられましたらブラウザバックをお願いいたします。いや本当にね、メシマズ世界観の輸入のためにハーメルンに掲載させて頂きましたが、一般ウケしないネタだというのは理解しているので……。
今回もメシ要素は少なめです。頭空っぽにして読めるものを求めている方は飛ばしてもいいかも。

週に1〜2回、ご褒美に昼食におにぎり食べてます。
米ッ!食べずにはいられない!パン食べすぎて米に飢えているからか、米を食べるとすごく美味しく感じるんですよね。塩だけのおにぎりや焼きおにぎりが美味しく感じてしまう。ああ〜……甘くておいしいね……体が満たされる感覚がする……。


十二月三十一日/たった一人で

 悟が家に帰らないために長期任務に出かけてから数日。

 蟲を腹の中に入れて、悟は各地を回って大量に発生している呪霊の討伐を行なっている。いちいちメールが届いては「いまここ」と呟いてくるので、悟が何処で何を祓っているのか、というのは同期全員が把握していた。コイツTwit○erのサービス始まったら最古参の廃人になりそうだな。

 

 硝子は大量に運び込まれる怪我人の治療でずっと医務室から出れていないし、傑は呪霊の呪具への互換に目をつけた呪具職人に期間限定で師事して貰っているそうだが、発注に対応する為にこき使われて、おかげで前髪がぴょろっと跳ねてた。

 年末の忙しさはやはりクソ。こりゃ、年越しそばを手打ちしたかったけど、みんなで食えそうにないから諦めるか。というかそもそも正月も三人で揃って飯を食えるかすらわからない。

 

 夕方にも関わらず、閑散とした寮の中。キッチンで私は正月の準備をした。

 かつての世界にあった、お節。正月時を休んで過ごすための、保存食。その関係で味付けの濃いものがお節には多く、現代でも冷蔵庫に入れて5〜6日はそのまま余裕で保たせることができる。

 

 まぁこの世界にお節なんて概念ないんですけどね。グジョグジョの米を乾燥させた乾飯もどきみたいなものとか、大根や魚、かぼちゃ……

 とにかくいろんな物を干物にし、グラグラと煮まくって元に戻し、それを通り越してちょっとぶよぶよにさせたものを食べる風習はあるけども、それぐらいだ。

 

 だが私は正月にはちゃんとしたものを食べたいので作り置きを作るし、文句言われたくないし仕方ないから同期の口に渡るようにする。ちゃんとしたお節は作らないけどね、手間がかかって仕方ないし。

 悟は黒豆と伊達巻があったら満足するだろうな。アイツ甘いの好きだし。

 傑と硝子にはどうするかな。とりあえず私が食いたいのと、大量に作れて楽だから筑前煮は用意するんだけれども。

 

 早速、影腕総動員でれんこんや里芋、水煮したたけのこや鴨肉を取り出して切っていく。ごぼうは事前にささがきしてあく抜きしたものを、にんじんは花の形にして華やかに。

 あぁ、せっかくだし茶碗蒸しも作るか。甘いやつに銀杏入れて、その上に塩漬けのウニを添えておこう、よし。

 

 かまぼこに銀杏、それから鴨肉。卵と一緒に、試作品として送られてきた醤油と、昆布だしの液体と日本酒。

 ぐるぐると混ぜ込んだ後に、耐熱性のある容れ物に液体を流し込んだ。水玉模様がポップで可愛らしい茶碗だ。傑が買ってきたものだから多分安いだろうなと思っていたが、後から金額知って二度見した。チョイスは私だけどお金出したのは悟?お前らさぁ。

 レンジ箱に入れて、術式反転の光を流し込む。600wを2分もすれば、だしの香りが優しい茶碗蒸しの完成だ。ある程度冷めたら上にウニと三つ葉を乗せておく。

 

 次に、筑前煮。私は骨は邪魔だと思う派閥なのでがめ煮にはしない。鴨肉を菜種油で炒めて、ある程度火が通ったら寸胴鍋へ。もう一度、少し継ぎ足した菜種油で、今度は野菜を炒めれば、肉から出た油が野菜へと絡んでいく。

 炒め終えれば、寸胴鍋にたけのこやらしいたけを大量に入れていく。

 しいたけだしと昆布だしを寸胴鍋に入れてから、そこへ大量に砂糖を注ぐ。注ぐ。注ぎ入れる。甘くしないと日持ちしないんだよこういうのは、甘くしろ。もっと……もっと甘く!!

 いやコレはちょっと甘くしすぎだろ。

 

 醤油と芋焼酎を回し入れ、こんにゃくをちぎって入れて、さぁ加熱。中まで火が通るまで15〜20分、落とし蓋をして放置だ。中央に豚の頭がある落とし蓋でそっと蓋をする。沸騰したら、豚の鼻からぽこぽこ沸いた中の気泡が飛び出てきて見てて可愛いんだこれが。

 ……しかし、こんにゃくってどうやって世に広めればいいんだろうなぁ。私は好きだし広めたいんだけど、作り方があまりにも複雑すぎて化学の授業状態だし、好みが分かれそう。

 

 待っている間に雑煮用の汁も作ることにした。

 雑煮の汁を冷蔵庫に入れて、餅と一緒に鍋で5〜7分、コンロ呪具の火力を真ん中にした状態で煮込めと言っておけばあいつらでもなんとかなるだろうか。まぁ流石になんとかなるとは思いたいんだがな……。まぁ何かあればメールしろって言っておけばいいか。

 実はなのだが、タイの米は、(昔の)調理しているとまとまりやすいのとまとまりにくいけどいい匂いのがある、と伺って取り寄せたのだ。質は落ちるが、ジャスミンライスともち米だったのだ。

 

 もち米は、栄養食を作る際に、栄養素を含有させやすくて重宝されていた。昔から、加熱して殺菌した上で捏ねて固めれば、保存食として乾燥させて保存することができる、ということで国民食として扱われていたそうな。

 さらに詳しく調べて見ると、日本でももち米はいくつか存在しているらしい。喉に詰まる危険性から、日本では通常のジャポニカ米の方が好まれた、というだけで。

 まぁ、栄養食と言っても、水分が抜けたカチカチでもそもその、よくわからない味付けの餅を食わせられてたんですけどね。

 

 直接農家の方と交渉し、購入させていただいたもち米は、人がいないうちに前世の世界から取り寄せた餅を作る機械で餅にして、小分けにして乾燥させてある。栄養食を作っている企業と交渉して、今現在餅の無人生産工場を作ってもらうように話を進めている。

 その餅に栄養素を混ぜ込み、乾燥させたものが入った紙の器に熱湯を入れて五分放置、その後に、付属の粉末を入れてスープにして餅と共に頂く、という「新しい形の」栄養食を鋭意開発中だ。要はカップもち。

 

 そのうちカップラーメンも作りたいが……、麺類がそもそもこの世界で受けるかと問われると、否だった。前例のない領域だから、「今はちょっと」と断念されてしまった。十年……いや三十年は、様子を見た方がいいと言われた。

 まぁ、仕方ない。菌の汚染を考慮すると、麺なんてとても受け入れられるわけがないよな。じゃあマカロニみたいな細かいタイプなら大丈夫だよね?と交渉を再開している。

 ……なんで平気な顔でそば食ってたんだろあいつら。先入観が無いってのは素晴らしいことかもしれないが、無謀にも程がない?

 

 昆布と煮干しだしを、もう一つのコンロ呪具の上に載せた鍋に入れる。

 煮干しも試作品の段階だが、国の認可を貰えたら、粉末にしたものが大手企業から発売予定となっている。適当に汁に入れてぐつぐつするだけでだしになるし、初心者向けだろう。

 

 さやいんげんににんじん、かまぼこをいれてくつくつと煮ていく。煮立ち次第、薄く切った鴨肉を入れて、火が通れば醤油と魚醤、日本酒を入れて調味していった。途中のタイミングで筑前煮の落とし蓋を、鼻の穴に箸を差し込んで取り出す。しばらくじっくりと水分を飛ばしていけば筑前煮は完成だ。

 雑煮用の汁は、いい感じに澄んだ汁になったら、そこに柚子を絞り入れていく。コレは新鮮なミカンからの差し入れ。冬至の時に湯船に浮かべといたら、悟と傑がキャッチボールで遊んで叱られてた。

 というかみかんじゃないのかよ。この世界の品種改良されてなくて酸味の残ってる冬みかんでいいよ。

 汁を軽く啜った。品のある旨味と共に、舌触りのいい塩味が舌の上を優しくなぞる。ここに餅を入れると絡んでうまいんだ。

 

 最後に伊達巻と黒豆だが……、黒豆は実は事前に作ったものがある。

 いや、ご飯のおかずいつか出そうかなって作ったんだが機会が無かったというか。ちょうどいい機会だから出して冷凍庫に入れておこう。

 加工しきれずとりあえず影にしまっていたサメのすり身を取り出す。

 すり身と卵、しいたけだしに砂糖と魚醤。醤油を入れてもいいが、魚醤の方が塩味が抑えられて、旨味によって甘味が引き立つ。

 ペーパーで漉した液を四角のフライパンで少し厚みを持たせて、表面が明るい茶色になるまで弱火でじっくり焼き上げる。最後に、くるくると巻き簾で巻いてから、冷めるまでコレも放置。

 みんな冷めたら、液体の含まれるものは冷蔵庫へ、それ以外は冷凍庫に入れて食べてもらうようにメールを打とう。

 

 ぐ、っと背伸びをする。一度お手洗いに行こう、と思って電気を消してから————好奇心で、私は「それ」を試みた。

 

 流しの脇、卵の殻などを入れた小さなゴミ袋を見下ろして、人差し指をそろりと伸ばす。

 ちょん、と。指先が触れた、そこにはくらやみのみがあった。

 

 ——何故、この繁忙期にも関わらず、特級である私が高専に留まり、任務や国との交渉を行っていないのかの話をしよう。

 

 私は——高専のずっと地下、天元がいる薨星宮まで、呼び出されていた。

 忌庫を通り、一つだけの扉を開いて昇降機に乗り、更に下へと向かって。螺旋階段を降りてから、参道を教えられた通り歩き、ようやく辿り着いたのは御神木のその下。

「前回」の同化を行った少女の優しい面影が残るその顔で、天元は「ようやく会うことができたね」と口にした。

 

「こうやって会うのは確かに初めてだな、天元」

「そうだね。はじめまして、清与に————あぁ。久しぶりだね、おなきちゃん」

 

 私の魂を抱きしめて覆い隠していた、生きた術式であるその人は私から腕を離すと、ぬるり、とその場に現れた。

 釘を刺して、術式として身体を取り繕った釘まみれの腕。くらやみから現れたのは、顔がなくて、つるりと丸いのっぺらぼうだった。ずたぼろの死装束を身に纏い、暗闇そのもので出来た肉体のその肚、内側に眩しいぐらいに輝く魂がひとつ。

 皮膚を釘で縫い合わせたその人は、ゆらりとゆらめくと——顔の横でダブルピースをして、高速で屈伸をした。

 

 見た目は痛々しい上に、こうなった経緯を考えると天元をぶん殴ってもおかしくは無いと思うのだけれども、恨んでませんよというのを全身全霊で陽気にアピールしている。でもその屈伸はやめなさい。

 

「さて。君は、おなきちゃんからどこまで「見せられた」?」

「なんでこうなったのかの経緯は、一通り」

 

 さて。生きる術式として、1000年の間様々な人間の元を渡り歩いてきた彼女だが、何故こうなったのかに関しては、遥か過去まで遡る。

 

 天元が人類種の世界を維持するための機構として、停滞する事を選んだその後。

 天元、羂索にはもう一人、友人がいた。名を、空亡(そらなき)。くらやみを從る術式の開祖だ。

 

 二人は、人という存在を愛しみ、守り抜きたいと思う正義を抱いた呪術師だった。長い時間を生きることができるのだから、と人類種の進化を見守り手助けしたいと願い、身の回りの人々を積極的に結界で守り、人類種の進化を庇護し共に歩むことを祈った天元。

 一人だけ、永い間生きる事が出来ず、置いていってしまう事を悲しみながら、二人という人間が、一人ではないと教えた、空亡。

 羂索は、当時の術師としては無欲で、いつまでもこの時間が続いてほしい、それ以外には何も望みたくないと、ささやかな思いを抱いて、二人の手を握っていた。

 実際には、その願いこそが一番欲深く、罪深いものであったのだけれども。

 

 彼女は、二人を迫害や孤独から守りながらも、ずっとは守りきれない側であると理解し、せめて、「二人で歩き続けること」を望んだ。

 羂索は、それでも「三人」を望んでいた。一人が恐ろしい訳ではなかったが、それでもぬるま湯のようなあたたかな世界で、「三人で」未来を歩きたいと願ってしまったのだ。

 

 虚影從術は、他人の魂がある、何もない場所すらも従えることができる。その場所にもまた、くらやみ/無が在るというならば、従えることは容易であり、同時に、くらやみに囲まれた魂を——術式を、相手の許可がある、あるいは強引に呪力量を持って頷かせる、という条件さえ満たせば、己のものとするのは容易な事であった。

 

 羂索は、自分という魂を包み込む「くらやみ」として空亡が共にこの世界を歩んでくれるならば、天元と共に自分を抱きしめてくれるのなら、何も怖くはないと思っていた。

 彼女は、育ての親でもあった彼女の肉体を引き裂き、その身を呪いへと貶めた。そして、自分自身というカケラを分け与え、自身に刻まれた術式を喰らわせることで、人類という滅ぶ事が前提の設計図から脱却してもらい、共にどこまでも旅することをこそ願った。

 孤独に泥のように眠る事が定められた「今」というのは、何よりも疎ましいものだったから。

 

 他者の呪いを喰らって、作り替えられて。

 終わっては始まる円環の術式と、理論上はずっと存在出来る他者依存の呪いという肉体の在り方は、致命的なほどに相性が悪かった。根本的な部分から破綻した空亡は、呪霊に近しい何かとなった。羂索の「初めての実験」は、失敗に終わったのだ。

 

 暴走し、暴虐の限りを尽くすくらやみを天元は結界術で抑え込み、そして、自分自身に刻まれた「死ねない呪い」を分け与えた。

 そして、ようやく。自分だけでも続くことができる何かとして、人類の枠組から脱却した誰かの暴走は収束した。

 天元は、育て親の変わり果てた姿を見て、「これのどこが進化なのか」「こんなの、死にながら動いてるだけの、意識を持った死体じゃないか」「——私も、こう成り果てるの?」と愕然とした。

 そして羂索は、その誰かを見て、「みんな寂しくなくなる世界が目指せる」と、希望を見てしまった。野心を、抱いたのだ。

 

 そこから、語る程の重要な情報はさほど無い。

 天元は、「終わりある命」にこそ正当なものを見出し、「終わりの無い死」である自分は、変わらないままに人の道筋を補助する装置として存在する事を選択した。

 そして羂索は、「みんなといつまでも生きる」、今の地獄ではない別の地獄を目指して、変わり続ける肉体で、人々から一人置いていかれながら、人の可能性を開拓する事を選んだ。

 

 最後に、くらやみと成り果てた誰かは。

 自分をこんな目に合わせた、恩を仇で返した仇敵である羂索も、天元も、一緒に抱きしめながらくらやみに還る事を望んだ。

 天元のように、死んだままに意識を保って。羂索のように、人々を渡り歩いて。

 

 妄執に巻き込まれ、救いを求める手は、寂しいと泣き叫ぶことすら許されていない。温度のわからない、何もかもが無い世界に、全て不平等に巻き込まれた。彼らは全員、ぬくもりと、焼けるような寒々しさを望んでいる。

 現に今も、私の身体には、何もかもを手放したいと縋り付く影腕がびっしりと這っている。私はただの人間で、他人を救える程の存在ではないのだけれどもね。

 

 ……私一人で人を救えるわけがないんだよ。こんな、人々が俯いて、満たされない腹を抱えながら前に歩く、諦観の世界じゃ無理だ。私が生きるこの世界で、それは出来っこない。

 私にできることは、流れを変えるための切っ掛けを作ることだけだ。

 目蓋を閉じれば、いつでも、家族と暮らしていた昔を思い出す。

 東京都という、人の多い都会にも関わらず、マンションがろくに無いその場所。人一人が住う戸建ての土地の、寒々しいほどの広い空間で言い争う二人の声が、響き渡って。私は、狭い、狭いトイレの中で、くらやみの中につつまれていて。

 

 この世界の平均寿命は、医療が前世よりもはるかに進んでいるにも関わらず、平均50歳前後とずっと低い。栄養素をより効率的に運用するように進化した生物の肉体は、前世の生物よりも頑強であると同時に、衰える時は一瞬で終わりが見える。

 おまけに、世界に楽しみを見いだせないものが多く、世界への興味を持てる者もずっと少なくなっていて、その影響で出生率も低下してきている。

 俯いたままなんとなく生き続ける人ばかりの世界に於いて、呪いの感情が色濃いこの世界で。それでも呪霊と相対する呪術師は、この世界では狂人の集団だ。

 

 一瞬のうちに、目蓋を開く。

 無意味な感傷に浸る暇なんて無い。無価値と断じられたその行いを、価値あるものだと世界に証明する行為に、その工程は無用だ。

 何より、呪術界の改革にも、この世界そのものの変革にも、時間と人手が足りなすぎる。時は金なり。

 私のために、私の世界のために。この身には余るほどの荷物を背負ってても、震える足で前に突き進め。

 

 こんな、終わりが見え隠れする世界で、終わりから目を逸らした誰かに負けるな。

 こんな、始まりが紡がれ出した世界で、始まりを繋ぐ事を諦めた誰かに負けるな。

 

「そうか……。なら、おなきちゃんが君を選んだその理由は、既にわかっているんだね?」

「……私自身の術式、異界遺傀は、領域展開をすれば「目に見えない概念」ですら取引の対象として含めることができる。

 天元。空亡。あんたらは、何を差し出すつもり?」

「私達の未来を」

「何を得たい」

「私達が納得の行く、結末を」

 

 どいつもこいつも、私に重荷を背負わせやがって、と心の中で毒づく。最初からそれを目的で、私に近づいたんだろ、と罵倒してやりたかった……が、天元の信頼に満ちたその視線を感じ取って、やめた。どこまでも私のことを理解してやがる。

 

「————御要望、承りました」

 

 左手、人差し指を立てて、それを右手で包み込む。智拳印——私の領域を切り開く、私が願われた私という形。

 

「領域展開」

 

唯我有情誓願度(ゆいがうじょうせいがんど)

 

 結界を張り、その表面を私という存在で彩り飾る。

 現れ出でるは、蓮華咲き誇る始まりの海。

 星すら見えない夜空で、ただ一つ輝く満月に見下ろされながら、海の中で、黄色のメダカに青色のベタ、透明な骨の見えるテトラが三匹、蓮の葉の下から見え隠れする。そこには、鴉の羽のような美しい黒色の魚や、ぷっくりとした紅白の出目金や熊のようにまんまるとしたマグロまで泳いでいた。

 優しい漣が、足元をゆらりと揺らすと、一つ、蓮の蕾が海から宙へと伸び、そして、咲き誇る。その花は、可能性そのものを抱く目に見えないものを表している。

 

【保有者:天元

 売却⇒人の枠組みから脱却する可能性】

 

 蓮は咲き誇り、花弁を落とし、やがて黒く萎びた。真ん中、花托はポロポロと崩れ去り、膨大な量の呪力のこもった種子が、中から溢れ、海へと落ちた。

 

【保有者:空亡

 売却⇒肉体/術式の全権】

 

 呪いに満ちたその肉体は、ぴくりとも動かなくなり、やがては最上位の権限持ちとなった私そのものとなる。とろりと溶けたくらやみは、私そのものとなった。人の身ではまず扱う事など許されない、虚ろで私という呪力が塗りつぶされそうになるのを、逆に食い潰す。

 ふつり、ふつりとほどけそうになる自分を、すがりつく死者の腕は許さない。痛いぐらいに握りしめてくるその苦痛が、私という存在を繋ぎ止める。途中から、天元の結界により、自分自身となった呪いの塊から、私という個が護られているのを感受した。

 

【対価:呪力因子体】

 

 充分なほど、有り余る膨大な呪力の種子が発芽する。

 花開くは物品ならざる可能性。本来なら至る事のない、横の軸に存在する、範囲外の領域へと手を伸ばす。その願いは、私という存在に確かに根付いた。

 

【————購入⇒現実世界へのくらやみ/無の適用権限】




おせち、うちは豆と伊達巻用意したらあとは大量に筑前煮作って終わりなんですよね。他は年を跨いだら雑煮を作って食べる程度。なので、何を作るかのチョイスはちょっと考える部分が多かったり少なかったり。こんな夏場になぜ私はお節の料理を検索しているんだ……?
メシテロ要素どこいったんだよこれ。メシマズ世界観が人類滅亡待ったなしってのと、メロンパンの執着しか書けてねぇぞ。次話でさしすに今話で作ってもらったものを食ってもらいます。

年越しそばは長期任務により断念しました。来年食べれたら食べたいね。
茶碗蒸しといえば、執筆者は一度、プリンを作ってる時にバニラエッセンスを入れるのを忘れるポカをしたことがあります。「具のない茶碗蒸しじゃん」と笑われました。ポイズン!
明日(日曜日)の投稿はおそらくお休みさせていただきます。美味しいもの食べるデーなのでそもそもの筆が乗らない説があって……。
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