メシがまずいこの世界、ポイズン   作:ファ○通の攻略本

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二月三日、夏油傑生誕日。

誕生日ラッシュの〆が来ました。誕生日ですがちょうど節分とかぶっているので節分の内容と被せます(無慈悲)
硝子は11/7がちょうど「いい鍋の日」らしいので鍋を、悟はクリスマスが近いのでクリスマスを、オリ主には正月を担当してもらいました。節分……、どうしたものか。恵方巻きはちょっと思考停止すぎやしないか?と難産気味。

お中元でいいコーヒーをいただきました。温度を80度にして、軽く蒸らしてから注ぎ入れたコーヒーは苦味がマイルドで飲みやすいね。酸味が強めのコーヒーの方が好きです。
わざわざお湯をちょろちょろ淹れることができて、温度も調節できるポッドを買ったというのに、安いコーヒー豆を100度の熱湯で思い切りドバーッと淹れる父の暴挙を許すな。
温度設定したらその温度になるように頑張って調整してるのが可哀想じゃないんですよ、それがコイツの仕事なんですよ(苦々しい顔で雑味の抽出された、大量生産されたコーヒーを啜りつつ)


豆ご飯・鯨汁・うねすベーコン・鯨肉ステーキ・シベリア

 北陸、廃坑となった元鉱山。

 

 今では緑化活動により緑が取り戻されたその場所に、私達は訪れていた。

 帳の夜の、少し暖かくなってきたような、それでも寒いような、そんな季節を感じさせる空気の中、補助監督は任務内容を改めておさらいする。

 

「特級呪霊、颪阿囨(おろしあへ)。鉱毒に侵された労働者の撒き散らした、嵐のような血反吐を基に産まれた呪霊です。

 鉱山から一切移動を行わないというその性質上、鉱山を閉鎖し、出入りを禁じ結界で封じていた呪霊で、術式は今に至るまで資料が残存しておりません」

「血に鉱毒、か。加茂家の術式みたいに血液に干渉してきそうな予感がするね」

「時の流れにより、呪霊本体の弱体化はされていると推測されますが、整備が行われていない廃坑の為、崩落や、酸欠と言った危険性を孕みます。

 危険度としては特級認定であるのには変わりない為、慎重な行動をお願いします」

 

 そう、締めくくられたのちに。もしもの時に加勢に加わる事ができるよう、傑の影の中に潜んでいた私は傑に対して期待の念を伝える。

 

「色々できるお前だからこそ、今回の特級昇格試験にここが選ばれたんだ。

 呪霊には酸素とか毒ガスとかある程度は関係ないからな、うまくやれよ」

「大丈夫だよ、私も、そろそろ君達に追いつかないといけないからね」

 

 傑は、しゃがんでから自分の影をそっと撫でて、手のひらの砂を払ってから立ち上がる。

 そこに私はいないというのに、全く。

 背後から傑は呪霊を呼び出した。虹龍——最硬の、守護の化身。ぐるりと渦巻く呪いは、その裡の設計図に呼びかけ、形を変化させた。

 玉虫色に輝く、ナックルガード。己を守り、相手を傷つけることに適した、硬くしなやかなそれを両拳に身につけた。

 

 次々に傑は呪霊を呪具へと変換し、身につけていく。

「ひっ、ひっ、ふぅうううう」とぐにゃぐにゃしながら言い続けるナメクジのようなそれを、呪力を流し込むことで内部の酸素濃度をいじり、外気を防止するマスクに。

「ぼぅやぼおぼぼぼぼぼ」と常に過労死するレベルで使役されている、特級過労死怨霊ターボババアは足腰を防護しつつ脚力を増幅させる具足として。

 最後に、「みたくないみたくないみたくない」と目を見開くサルもどきは、視界を防護し見やすくする暗視ゴーグルとなって装着される。

 ……なんだろう、完全武装なんだけど、イキってるヤンキーみたいだなこいつ。変身バンクみたいな事やってんのに見た目がなぁ。

 

「影の中にいれば、生命活動には問題がないんだっけ。いらない?」

「いらんよ。というか、呪霊暴れさせて坑道壊しつつ特級祓うのかなって思ってたから、自分で行く気満々なの意外」

「はは、人のことを帳下ろさずに破壊活動を行う破壊神か何かだと思ってない?」

 

 言われてるぞ悟。

 

「まぁそれに、「やれること」をアピールしておいた方が、抑止力になりそうかな、と思ってね。特級に上がるのなら、どうせなら私は数で圧倒する以外にもやれるんだ、って顕示していかないと」

「あえて油断を誘うのもありかもだけど、最初の頃しか通用しない手だし、お前本体も強いタイプの召喚士ジョブだからそれを腐らせるのは勿体無いもんな」

 

 小型の呪霊を先行させて、5分。傑は、ようやく鉱山内部へと入って行った。

 呪霊の座標を索敵し終わり、最短・最速で標的の元へと突き進む。

 途中、酸素が薄い場所などもあったが、呪具のおかげで呼吸に支障はない。隙間をするする抜けたり、登り降りしながら最奥へ向かった。

 

 暗闇の中、暗視ゴーグルを付けた傑は、呪力をぐるりと巡らせた。

 籠手からはガチャリ、と細く鋭い鱗が複数逆さに浮き上がり、呪力の防御を展開する。脚の具足はビキリビキリとひび割れのように血管を浮かせ、赤黒い高熱を抱いた。

 瞬きの間に、その呪霊は、急速に練り上げられた呪いに反応し——音速で接近した傑に、高速の勢いを載せた拳で腹を突き上げられる。

 瞬間、籠手から伸びる鱗……ストックされた傑の呪力が、衝撃に伴い、0.000001秒未満の誤差で、呪力を放出し——呪力は、黒く光った。

 

 呪具に変質した虹龍という呪霊の意識体を改竄することで、オートメーション化された術式プログラム、煌虹鱗。

 自身の呪力を意図的に流し込みストックする事で、その呪力を消費する事で防護プログラム等の機構を引き起こすこともできる、傑の新たな戦闘スタイル。

 最大の特徴は、「衝撃を認識すると自動的に、ほぼ誤差なく呪力がその衝撃の方向へ流し込まれ擬似的な黒閃が発生する」という点だ。

 

 もちろん、自分で扱っている呪力がさらにそこに上乗せされるし、ノリにノッていれば自前の呪力も黒閃を引き起こし、更なる威力を引き出すことができる。その時の威力は、悟の茈に匹敵するほどの威力となり、逆鱗に触れた相手を粉砕するだろう。

 

 威力を一点に集中させた事で、その拳は腹を突き破る。腹に穴を開けた呪霊は、退避することもままならない。もう片手を手刀にし、首元を狙い、そして——閃光は、その首を叩き切った。

 

「おや」

 

 片眉を上げて、意外そうな声をあげる、傑。特級というのであれば、ギリギリ腹は破られずにそのまま吹き飛んでいくと思っていたのだが、と思いながら、傑は特級——一級に限りなく近い、ギリギリ特級なそれの核を握りしめる。ぐるん、と黒く固められたそれを、籠手となった虹龍と共に体内へと収める。

 

「なんだか呆気ないね。ねぇ、清与、コレで十分?」

「十分すぎて釣りが出てくるよ、承認の方向で話を進める」

 

 これで、お前も特級だ。おめでとう、傑。

 そう、影の中から伝えると、傑は心の底から嬉しそうに笑う。本当に良かったよ、三人で特級になれた。硝子はそんな私たちには手の届かない場所に手を伸ばしてくれるけれども、こんな私たちは全然手が足りていなかったから、ここまで追いつきてくれたことに心の底から嬉しく思う。

 思えばここまで、短いんだか長いんだがわからないが、よく来たものだ。最初は一目見てザコって罵倒されたり、距離取られたりしてたのになぁ、と感慨深くなる。

 

「私も、君たちにだいぶ近いところまで来れたよ」

「うん」

「もっと強くなって君達の親友/宝物として、側にいるからね」

「うん?」

「ふふふ」

 

 こえぇよ、なんだよその笑い。

 

 荷物から懐に入れるべき美しいものとして、私は君達から離れないし離れるつもりもないからそのつもりで。じゃないんだわ怖い。

「私君達の大切なもの枠だからね、このポジションは譲らないし譲るつもりもないよ」などと言っている傑は、なぜかそのまま座り込み、暗闇の中地面に人差し指を付けて、何やら書いている。すまん影の中にいるから何て書いてるのかわかんないし出たら酸欠になるから出れない。

 凹凸の有無とかはくらやみの手触りでどうなってるのかは把握できるけど、そこから何が書かれているのかの把握をするほどの精密な操作性は持ってないんだ、私。六眼くれ。

 酸素ボンベどこだっけなと探す前に、何やら待ち続けている傑に声をかけた。

 

「何?なにしてんの」

「いや、ね。ここ、廃坑と聞いていたけど、元々何を産出してた、って聞いてないかい?」

「翡翠って聞いてたな。呪霊の発生に伴って、採掘は中止されたけれどもまだ採掘できる可能せ、いが…………」

 

 土の中や、坑道のくらやみを意識して覗き込む。何があるか、どうなっているのかを指先で探るようになぞる。

 坑道の中、複数の呪霊が……、あぁこれはあれか。索敵要員として出した呪霊。その近くには硬い何かがゴロゴロ転がっていて、呪霊は穴を……穴を掘る?

 

「ば」

 

 穴っていうか横穴。横穴っていうか道っぽい。

 おそらく笑った、そんな感じがする。笑ったであろう傑は、堂々と自分の行いが正当なものであると主張した。

 

「索敵のために出した呪霊が、土の中に埋まってる恐れのある呪霊を探し出すために土を掘って道を作って、その時に「うっかり」石が出て邪魔だったから掃除がてら収納呪霊に入れて退かすだけだよ」

「馬鹿野郎!盗掘じゃねぇかよ!!」

「バレても揉み消せば犯罪じゃないだろう?」「夏油傑!略してゲス!このゲス!!」「そんな同期を親友として扱っている君も同類だよ」

 

 それは……、困った。それを言われると何も言い返せない。

 正論マンから飛んできた正論に黙り込む。そうだね、私も同類に含まれるね。はい。誕生日のディナーを用意してきましたしね。

 何事かをそのまま書き連ねていた傑は、やがてぽんぽん、と土を叩いてそれを影に染み込ませるようにしてから、立ち上がった。あ、傑のネックレスで光を出せばそれ経由で何書いてたかわかったかもしれん。でももう潰されたな。

 内側から、呪力が発する光でくらやみの中でも輝くネックレスを制服の中から取り出した。その目が覚めるほどに美しい光に影腕はわらわらとやってきては胸元のネックレスに着いたガラスを手のひらで弄ぶ。

 やめんか。

 

「さ、用事は済んだし戻ろうか」

「……ちなみに、何が採れたの?」

「採ったんじゃなくってたまたま出てきただけだよやだなぁ」

 

 くすくすと笑いながら傑はぬるり、と影の中へと入り込む。帰り道は、私の影の中を通って行った方がずっと早いし楽だ。

 波が引くように散った影腕。くらやみの中、無重力に近いその空間で、傑は呪具化呪霊を解除してから、こちらの手をゆるく握って、水の中を泳ぐように歩き出す。

 

「私たち、再来月から二年生になって……後輩が、できるだろう?今年は二人いるんだってさ。

 その二人に、入学祝いとして護符になるアクセサリーをあげようと思っていてね」

「へぇ、すごいいいじゃん。ところで何獲れたの?」

「…………、ピアスとかでもいいのだけれども、その子達がピアス穴を開けているかどうかわからないし、硝子みたいにアンクレット形式にしようと思っているんだ」

「邪魔にならないものを選んでてすごいいいね。それでお前何盗った」

「…………埋まってたのを収納してどかしただけだから盗掘じゃないよ、本当に」

「おい?」

 

 幾度も追求して、ようやく傑は諦めた。限りがあるとはいえ体内に物を収納することができる、カエル型の呪霊を取り出した。私の拳サイズのそれは、バスケットボールレベルのサイズに大きい。

 

 パンパンに詰め込みましたよと言わんばかりの呪霊の口を引っ掴んだ。

 そのまま、ギリギリと固い口を無理やり開けると、緑色を帯びた原石の表面が見え、あれ待ってなんかこれでか、

 

「落ちちゃうから今ここで出さないで!こんなにおっきいのに落ちて砕けちゃったらどうするのさ!」

「お……、おま、違うだろそうじゃないだろそれどころじゃねぇんだよこいつ見た目より大きい物収納できる呪霊だよな、こいつの中に入ってるのもしかしなくとも一つの塊だよな、おいコレ……、これ…………」

「全くもう。こんなに大きいの、いい素材になりそうなんだからダメだよ」

「マジでこれバレたら揉み消せないレベルの大騒動になるからな?!」

 

 いいもの拾ったんだよ、と傑から見せてもらった悟曰く。

「うーん。俺の目で見る限りじゃ、住みついてた特級とやらの呪力が染み付いてて、呪具に加工するのにめちゃくちゃ優秀な素材って印象。

 家宝なんて言ってうちに置いてあるやつよりはサイズは劣るけど……んー、素材の状態だし、安くて6000万スタート!」

 

 …………これからこんなとんでもねぇ盗掘野郎の誕生日を祝うのか……。

 車や列車に揺られ、一日かけて高専まで帰ってきた私は頭が痛くなった。

 

 ため息をつきながら、用意したのは鯨料理。山口では節分に鯨を食べるらしいのでそれに乗っかった。恵方巻き?この世界の日本人、海苔食ってきてない関係で食いすぎると腹壊すから……。呪力で腹を強化できて無意識に海苔を消化している呪術師ならともかく、一般にも公開するレシピに採用していいかと問われると首を傾げる。

 

 調査捕鯨で捕鯨したくじらを解体した肉は、本来なら成分を分解して栄養バーに活用したり、肥料にしたり等……その命に感謝しながら利用させてもらうらしいが、今回は無理を言って一部の肉をいただいて、影に収納させてもらっていた。

 それを、自分の知る範囲の方法で料理させてもらった次第だ。

 

 鯨の皮膚に皮下脂肪が繋がった部位を薄くスライスして、ジャガイモや玉ねぎ、にんじんと共に味噌で煮込んだ、鯨汁。鯨の良質な脂が染み込んで、それはもう深みのある旨みが出る。

 味噌汁というより、豚汁に近いような、肉のうまみが溢れ出る汁になるんだこれが。

 

 続いてはうねすのベーコン。首あたりの蛇腹になってるところの、脂の乗った肉だ。そりゃもうしっかりとした歯応えと共に脂が溢れる、紅白の対比が美しいベーコン。

 鮮度がいいと生で刺身にしても食べれるのだが、私はうねすと言えばベーコンというイメージが強く、血抜き、塩漬けをした上で茹でて火を通し、桜のチップでしっかりと燻製にさせていただいた。

 黒い皮部分は、この時硬くて食感に影響が出るので取り外した。……どうしたのかって?薄く切った後に細かく切り刻んだにんじんと卵で炒めてもう食べたよ。

 

 ここまでは脂の多い部分だが、主食となるステーキ部分はくじらの赤身だ。赤身は、その巨大な身体を支えるだけの筋肉なだけあって、脂があまりない。

 柔らかく、それでいて歯応えのある、あっさりとした肉の味が楽しめる逸品だ。生姜と醤油を混ぜた和風ソースが合うんだこれが。鉄分たっぷりでたんぱく質も豊富だし、身体が資本の呪術師には嬉しい一品となる。

 

 付け合わせのにんじんと春菊を共に載せて、大根の糠漬けをそこに添えた。ご飯はもりもり大盛りで、素朴で嬉しい豆ご飯を採用だ。

 ひょこひょことやってきた同期三人は、晩食を見下ろして、いつもの未知に目を輝かせる。

 

「これはなんなんだい?」

「くじら」

「くじ、くじら」

 

 予想してなかったのだろう、硝子は一瞬吃った。

 

「……くじらを食べるって、なんだか想像できない、というか。思っていたよりもすごいものを出された気がする」

「自分よりでかい生き物を食べるんだから、もっと頑強に強く育つんだぞ。私たちはまだ子供なんだからな」

「————でも、特級だぞ?俺達」

「ばぁか。4月の頃は「ザコ」だったろ、私も傑も」

 

 その言葉に対して、悟は酷くバツの悪そうな顔をした。ちょっとまずっただろうか。フォロー、となるかは微妙に違うが、その言葉に続けてこう言い放つ。

 

「まだ私たちは未成年だ。社会から守られる立場にあるし、現に改革の始まっている呪術界は、特級であるにも関わらず、私達を飛び級なんて言って卒業させて、そのまま呪術師として酷使させようとしてないだろ?夜蛾先生は、それでもこの青春を守ってくれているんだよ。

 そう。まだ、子どもなんだよ。私も、お前達も。だから、守る意思を見せてくれた大人のために、立派な大人にならないとって訳」

「……私達が、庇護される側」

 

 自分よりも弱い、そんな大人達が、他の大人の手から守ってくれている。

 それは、信じられないくらいに幸せな事。

 

 この生徒は自分が育てた、だから自分は偉い。などとは一切口にせず、その背中で子どもを守ることを選んだその人。傑は、私の家族とはまるで違うな、と思った。私の家族は、私という異物を恐れながら、それを育て上げた事実を偉業であるかのように周囲に語ってきていたから。

 実際は、私だけで育たざるを得なかったところもあるのだけれども。

 

 それを知った上で得る、大人という頼れる存在がどれだけ心強い事か。

 だからこそ、それを知ったのだから、今度は自分たちがそれを受け継ぐ版であると清与は語る。得難いと思える「人」に守ってもらえたのだから、その恩を貶めるようなことだけはしてはならない、と。

 

「オラ、食うぞお前ら!

 デザートにゃシベリア……、あー、あんこをケーキのスポンジで挟んだみたいなの用意してあるからな!」

「医務室帰りに啜るこの汁の一杯がたまらないんだよな。この黒いの、もしかして鯨の皮?下についてるのは脂肪っぽいな」

「え、あ……おう。その、さ!清与」

「飯食いたいから早くしてくれ」

「その、ごめん!お前のこと、ザコだなんて言って!お前普通に強ぇよ!」

「私もその、そうなんだなぁなんて思っちゃったりして、ごめんね……?」

 

 その言葉を硝子は「ようやく言ったのか」と呆れ気味に見ている。ちなみに、硝子は清与の部屋の出入りをするようになった時点で「あのクズどもがボロクソに言ってんの放置してごめんね」「いいよー」と謝罪していたし、即座に受け入れられていた。

 二人の言葉を聞いて、吹き出した。

 

「おっ前ら言えるんじゃんかよそういうの!いいよ!ほら早く座って飯にしよ!」

 

 その言葉を聞いて、二人は破顔する。

 喜びに満ちた顔をしながら、二人は着席すると、「いただきます!」と手を合わせて大きな声で言ってから、早速箸でつまみ始めた。

 

「あー、これだよこれ。このあったかい汁の為に一日頑張ったとしか言えない。この鯨の皮のとこ、噛む度にうまみがにじんでくる」

「鯨って、海にいるけど哺乳類なだけあんな。猪みたいな獣臭さがちょっとある。へ〜、でもなんか身は赤身がすごいあっさりしてて肉ってより食感がしっかりした魚って感じがあって面白いな」

「優しいしょっぱさのこの豆ご飯がたまらないんだよね。豆の粒がいいアクセントになって、あ〜……ごめん、おかわりしていいかい?」

「あ、なら私の汁もお願い」「俺はこの後のシベリアが気になるからいいや。あっこの薄い肉甘醤油かけて食うのめっちゃいい!」「半分おかわり」「私、一応今日の主役なんだけど?」

 

 仕方ないなぁと言いながら傑は立ち上がって、要望に応えて器を回収していく。一つ、自分の分の器は呪霊に持たせた。

 清与、前よりもずいぶんと術式が馴染んでいる、ような気がする。馴染んでいるという表現が正しいかはわからないが、初めて会ったそのとき……前まではまるで本質的な部分とわずかに距離があるような、そんな気がしていたから、正確に術式が稼働しているのか少し不安だったのだ。

 だから、ザコと呼んだ。早く辞めちまえ、とこの世界から遠ざけようとした。

 まぁこの女、最初の時点で俺よりも随分と強かったけどもな。

 

 ある程度ベーコンをつまんで満足した悟は、ふわふわの中にぷるぷるのあんこ……、羊羹の挟まったシベリアを勝手に出して咀嚼しながら、傑の横顔をちらりと見る。

 

 俺と同じ顔だ。

 肩の荷が落ちて、心の底から笑っていた。




三人特級になったね、おめでとう。やっと謝れたじゃねぇか。これから任務地獄が始まるぜ!
人類の総人口が減少してて相対的に呪術師の人数も少ないにも関わらず、呪霊の強さは原作と全く同じです。人類皆俯いて過ごしてるからその分垂れ流される呪いの質が違うという。

今回は調理シーンを省いてみました。いやね、前話書いて感じたんだけど、たまには食べるだけってのもいいかなって思って。
結果、意外とうまくいったなぁと思ってます。

次で、一年編が終わりとなります。最低ノルマのさしすせ一年編を書き上げることは出来そうなのでまぁまぁ満足している状況ですが、ダイエットの結果はまだ満足行ってません。ううっ……体重がっ……
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