メシがまずいこの世界、ポイズン   作:ファ○通の攻略本

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ランキング巡回してたらランキング入りしてて草、ありがとうございます。みんなもメシマズ世界観で飯テロを執筆しておくれ……それだけで救われる胃袋があるんです。

今日は休みの日のほのぼの回。


白パン・卵焼き・バターと苺ジャム

 不動清与の朝は早い。

 

 4時ごろ、胸元が何やらもぞもぞとして、休みの日だというのにパチリと目が覚めたので仕方なくむくりと起き上がった。一糸纏わぬその体から、薄いタオルケットが滑り落ちる。地響きかと錯覚するようないびきの声に視線を落とせば、そこには寝巻きの姿でベッドに入り込んだ硝子が、ぐうすかと眠りについていた。胸を這うように添えられていた硝子の手が、起き上がったタイミングに腰まで下がっている。

 

 呪術というものに関する世界において、女性の地位は低い。そりゃもうとにかく低い。そのうちおフェミに今までの所業がばれて炎上しちまえばいいのにな。その分、呪術師として戦う者達は、同性間での結託が強い。

 女子寮にはみんなそれぞれ鍵が与えられているが、呪力を扉……というか、結界にかざすことでも解錠が可能な仕組みとなっている。未来で言う生体認証みたいなやつ。

 

 その認証を、仲の良い相手に登録させて自由に出入りの権限を与えることで、お互いの身の安全を確認することが高専女子の風習となっているんだそうな。尚たまに裏目に出ることもある模様。

 それを聞いた硝子は、「出入り、自由にしていいよ」とまず自分の部屋の出入りの権利を私に付与してきた。でもまぁ特に用事は無いし邪魔するのも悪いしな、とその権利を使わないでいたら「自己中クズが」と罵倒しながら無理やり私の部屋の入退室権を登録しに来た。

 

 諦めた私はその権限を付与したのだが、それ以来たまに硝子はベッドに潜り込むようになった。この女、意外と寝汚いので朝の目覚めが普段よりも早くなる。夏場は特に顕著で、狭いベッドの上で180度回転していることもあるから勘弁してほしい。人のくるぶしをかじるな。

 

 ベッドから降りて、そのまま近くに置いといた着替えをつかむ。ブラトップとパンツ、短パンにゆるゆるのTシャツ。シャツには「ごはん」という文字と共に米の盛られた茶碗が印刷されている。がばりと着ると、裾が大きめで絶妙に楽である。大雑把に髪を後ろで縛って今日の支度は完了だ。

 部屋から出る前に、チラリとベッドを見た。

 のしのしと足音や物音を立てているにも関わらず、爆睡をキメる硝子が股をおっ広げにしたと同時にタオルケットがズレていくので、元通り整えてあげる。多分しばらくすればまたズレてる。あ、歯軋りし出した。

 

 部屋から出て、そのままリビングを通り洗面台へと向かった。黒い歯ブラシ置きから歯ブラシを取り出し、味度外視の歯磨き粉を漬けて歯を磨く。塩とか硫黄とか薬っぽさが隠しきれない、微妙なまずさのある味だ。それでいて、香りは無駄にトイレの芳香剤。たまに磨いてる最中にえづく。

 歯を磨いてから、続いて顔を洗う。体臭対策の概念は前世と同じように発達している為、洗顔用品を取り寄せる必要はなかった。緑色のよもぎ石鹸を引っ掴んで適当に泡立てて、泡で顔を優しく包み込んだ。

 

 しっかりと顔全体を泡で包んでから、泡を流す。両手の上を流れる流水が、非常に冷たい。いい感じに流してから水を止めて、タオルで顔を優しく拭く。次に、大容量のプチプラ化粧水をコットンに染み込ませた時点で、後ろの扉が開いた。

 

「はよ……」

「おーおはよ。また硝子が夜這いしてきて目が覚めたの?」

「んーまぁ別に早めに起きるつもりではあったし……」

 

 悟だった。家や生活スタイルの関係上、ショートスリーパーなこいつの朝は早い。それはもう「おじいちゃん」って感じ。

 邪魔にならないように空間を作ると、悟はその空間に入り込み、歯ブラシと歯磨き粉を掴む。微妙に眠いのか、憂いのある表情がなんかやたらとしっとりしている。コイツ顔はいいのにな……顔だけはな……。

 化粧水をペタペタと顔に染み込ませてから、コットンはゴミ箱にぽいと捨てた。化粧水が染み込むまでの間に髪ゴムを解き、寝癖を軽く整える。

 

 育ちの良い坊ちゃんな悟は、歯を磨いている最中は喋らない。

 だが、それはそれとして何を言いたいのかは割と顔にはっきりと出る。ちらりちらりとこちらを見てくる悟に対して、おそらく疑問に思っているだろう内容を推測して答えた。

 

「りんごの酵母が出来たから、パン作るつもりだったんだよ。そのレシピを後で上げるつもり。まぁまた変な事にゃなりそうなんだけどね」

 

 米の炊き方が広まってから、世界は混沌と化した。

 米の水の分量を書いている通りに炊かずにべしょべしょにしたり、芯を残したりはまだいい。何故炭を一緒にいれる。レーズンを米と一緒に炊こうと思ったのは何故?その牛乳は何?ヨーグルト使ってビリヤニでも作りたいんか?なら材料が足りなすぎるよ?やめろバカなんで青汁をぶちこんだ、言ってみろ。

 

 美食を知らない者どもは、試行錯誤を繰り返して劇物を作りまくり、世の中は当たり外れに満ちたレシピが色んなところから放流されていった。遂にはそれに目をつけた企業により、クック○ッドならぬイートパッドなるサイトが誕生した。今の所は米関係が充実しているが、最近は、元お隣さん一家向けに個人サイトに初心者向けに掲載していた、しっかりと調理法を記載していた煮びたしや漬物のような簡単に作れるレシピもじわじわ増えている。

 ちなみに難易度の高い物は忘備録程度にしか扱ってないので、分量とかはろくに乗せていない。その内世界が発展したと認めたら詳しく書くさ、そのうち。きっと。たぶんね。

 

 とはいえ、喜ばしいレシピも中には存在する。お茶っ葉とお茶を入れた素朴な味のお茶飯なんかは私もたまに食べていたし、豆ご飯から派生でにんじんご飯みたいなのも誕生した。酢漬けや浅漬けが開拓されて、道の駅で「これは美味しい」と思われたものが販売され、都会以外にも注目の目が向けられ始めた。

 調味料も、塩から魚醤に変えてみたものや、出汁という概念を理解した上位者が美味い出汁を求めて企業に掛け合い、顆粒だしの開発に勤しんでいると上層部に呼び出された時に世間話として聞かされた。そのうち、企業には麹の概念を持ち込んで醤油や味噌の誕生を手伝ってもらいたいが、こういうの誰に相談すればいいのやら。

 

 呪術界は、食事上の変革に伴い何故かこちらもじわりじわりと変革が始まっている。

 己達が行ってきた、食中毒の大元の呪霊を生かし続けていた結果口に入ることのなかった美食を知り、「他にもこのような事例はないか」と多方面から調査の手が入り始めた。今の任務に関するシステムなども、不備が確認されたり、不正が発覚したりなど、上層部の入れ替わりが起こっている。

 

 そんな上層部の会議に、なぜか私はいちいち呼び出されては茶菓子の提供を求められている。最初のうちは生菓子を持ち込んでいたが、だんだん回数が増えるにつれその度に作るのが面倒になった。めんどくさすぎてストックの琥珀糖だけを持ってきたら食べ物を持ってこいと文句言われたので食べ物ですがと返したら二度見された。一口食べてもらった後に、「なるほどこれが……我々の罪……」と呟かれたりした。そうだぞ、全部お前らのせいだぞ。こんなクソみたいな世界産みやがって。

 

 乳液をほんの少しだけ(大容量だがケチる)出して、顔に塗りたくっていれば、歯磨きを終えた悟は「それって」と確認してきた。

 

「新しくやってきた、新鮮なミカンが高専の空いてる部屋に作ったでっかい機械使って作んの?」「オーブンな。おかげで大量生産ができるんだけど、一回パン作るのに時間がかかるから休みの日にやんねぇと」「アレってそんな時間掛かるモンだっけかな……」

 

 普通はかかるんだよなぁこれが。

 

 じゃばばと軽く手を洗ってからタオルで手を拭いた。もう一度、寝癖の取れた髪を後ろで縛る。

 

「朝飯にゃ間に合わすわ」

「おー」

 

 洗面台から離れて、寮の中の元々は物置だった部屋へと進む。オーブンはまだ使わない。

 影からりんご酵母を取り出す。酵母は「生きているもの」と私が認識してしまっているので、時間停止はできない。なる早で使い切りたいところだ。

 小麦粉と、砂糖と、塩。ちょっと甘いぐらいが食べやすいので、砂糖は少し多めに入れておこう。牛乳と酵母に卵の黄身をそこに混ぜ入れて、粉っぽさが無くなるまで混ぜ合わせる。粉っぽさがなくなれば、今度はそこに無塩バターだ。バターはいい。牛乳をペットボトルに入れてとにかく振れば作れる。使い道が多いし、簡単に作れるのは本当に助かるったら……。

 それを前におっかさんと話していたが、「わかる」とものすごく頷かれた。最近旦那さんがバター焼きに嵌り、色んなものをバターで焼いては振る舞ってくるらしい。消費量が激しいので、旦那さん自らバターを大量生産していた。アンタ術師殺しやぞ。田舎の酪農家のおじさんじゃねぇだろ。

 

 バターがいい感じにまとまったので、ラップを敷いたその上に生地を置いた。ビニール手袋を着けて、とにかくこねる、こねる、こねる。とにかく表面が滑らかになって、もちっとしはじめるぐらいまで。

 

 6分ぐらいしてから。いい感じに(耳たぶほどの)弾力を持ったので、生地を軽く折りたたむように丸めて、折り畳んだ部分の繋ぎ目を綺麗に無くして球の形に成形してから、ボウルに入れてラップをかけた。

 そのまま発酵だ。1時間ぐらい放置する必要がある。ビニール手袋を捨ててから、折り畳みのパイプ椅子を広げてそこに腰掛けた。よっしゃ今のうちにポケモンやろ。スケルトンのGBAを影から取り出して、カートリッジ入れからメインROMのエメラルドを取り出した。右下にひっそりと入れているエメラルドはACE環境導入済のROMなのでバレないようにしなければならない。

 

 ポケモンというゲームに関してだが……非常に残念な話をすると、「ポロックが存在しない」。というかフエンせんべいとかもないし、食べ物系がまるでない。甘くて美味しそうなミックスオレ、どこ行った?

 そもそもの概念がないから仕方ないとはいえ、きのみがギリギリ残っているのは僥倖と言えるだろう。まぁオボンやヒメリは成分を抽出したタブレットを作ってポケモンに持たせる形式になってるし、コンテスト用のポロックは毛並みを整えるスプレーが代わりに実装されている。

 不思議のダンジョン系に関しては、物を食べる時に松明のような加熱できるものが必須の仕様だ。相対的に難易度が上がった、とも言える。

 

 ぽちぽちやっていればあっという間に時間が経過する。レポートを書いて電源を落として、片付けてから再開だ。

 

 新しい手袋を着けてから、二倍に膨れ上がったモッチモチの生地を慎重にボウルから取り出して、軽くぎゅむぎゅむと圧迫してガス抜きをする。

 それから、小さくちぎって丸めたものを等間隔に配置して、水で濡れた布巾を被せてから5〜10分ほど再度放置。これをすることで、パンの生地が伸びやすくなるのだ。

 その後に暖かな場所で二次発酵をさせる必要があるため、影から光を内部で通さない、レンジと同じ構造をした箱を取り出した。待っている間に、箱をしっかりと消毒を行う。終わってから、またもう一度パンの生地からガス抜きをして、形を整えてから、キッチンシートの乗った天板ごと箱の中に入れて、密閉する。箱の両側、穴が空いている部分を持ち、呪力に呪力をぶつけて、負の感情を正の感情へと言い換えた。

 

 術式反転、炬虹。闇から光という対極のものへと変質したそれを、じわりじわりと手から放出し、40度ぐらいの暖かな環境を維持する。

 本来ならオーブンを使った方が楽なのだが、オーブンは今予熱中なので大雑把に自前の術式で環境を整えることを選んだ。

 

 控えめなノックが二回。悟はこんな事しないし、硝子は声をかけてくるからこれは傑だ。入っていい、と返事をすれば扉は開かれる。やはり傑だった。

 

「や、清与。おはよう」

「おーおはよ。お前が起きてきたってことはぼちぼち6時か」

「うん、そうだね。ところで、術式使って何してるの?」

「パン作ってる」

「パン」

 

 目を丸くした傑はこちらへと歩いてきて、見えもしない箱の中を覗き込んだ。二次発酵させる前のパンのサイズを見せてればなぁ、と少し残念に思う。きっとこいつはいいリアクションしてくれるはずだ。

 

「今、中で膨らせてるんだよ。ある程度膨らませたら、そこのオーブンで焼き上げる。そしたら完成だ」

「膨らませる?パンを?どういうこと?」

「…………あー、やっぱこの世界の飯事情、クソだわ」

 

 この世界におけるパンは、「ガッチガチの石みたいな保存食」という認識だ。発酵させて作るパンなんて、上流階級のみの特権でしかない。

 

 あらゆる食を汚染した呪霊菌は、粉物にも等しく汚染が行き渡っている。それを、パンを作る際の加熱で殺す事で、ちゃんと食べれる主食として昇華しているのだ。

 焼き立ては菌が死滅しているから食べることができる。しかし、保存していると、外気に触れた部分から菌が再び感染する。そうなったパンをどうやって食べるのかというと————超高温で表面を炙って、焦げ目を落として中身だけ食べるのだ。

 

 現代におけるレンジ・オーブンの利用方法は、パンのためにある部分が強い。超高温で炙ったことで、内部からカスッカスの水分がさらに揮発したパンは、それはもうパッサパサのガッサガサの、食感がまるでひどいもそもそのスポンジと成り果てるというわけだ。

 

「簡単に言うと、中がしっとりしてて柔らかいパンを作ろうとしてる」

「……それ、パンじゃなくないかい?」

「材料が小麦粉だからパンだようるせぇなお前らが間違っているんだ私が正しい」

「自分の産み出したものに対する自信があまりにも強すぎる。君、食べ物に関しては世間一般的なものをボロクソに言うよね」

「私はパンが好きではないけどこの世界におけるパンは存在そのものを許さない」「そんなに」

 

 いい感じにできたと思うので、箱を開けて、複数並べた天板を外へと出していく。まんまるふくふくとした生地が、りんごの香りと共に現れた。

 

「なにこれ」

「焼く前のパン」

「……いや、本当にこれはパンじゃないって。どす黒くないもの」

「この世界のパンが異常なんだよあんなカスッカスのスポンジ」

 

 予熱で温まったオーブンにどんどん天板を入れていく。

 思ったよりも大きなそのオーブンを埋め尽くすほどのパンは無いが、業務用サイズを用意してきた新鮮なミカン側に一般的な家庭の標準サイズのオーブンというのがわかるわけがないのだから仕方あるまい。

 低い音を響かせながら、オーブンは中の柔らかなまんまる生地をじっくり丹念に焼き上げていく。

 

「りんごのいい匂いがしたけれど、甘いのかい?」

「実際どうなるかはわからんけど、甘さが強めになるようにはしてあるよ。たぶん悟は好きじゃないかな」

「へぇ。しっとりしてて、柔らかくて、甘いパンか。予想も付かないけど、君が作るものだから、きっと美味しいのだろうね」

「……いや、私だって失敗するかもしれないだろ」

「失敗したとしても、君の作るものは美味しいよ」

 

 オーブンをじっと見つめるその男は、こちらを見向きをせずに重い信頼をぶつけてくる。

 

「…………本当だって。いつかは私も、君を美味しいと頷かせるような料理を作ってみせるけど、私の失敗作より君の失敗作の方が美味しいからね」

「まぁお前一回卵爆発させたもんな」

「その話はしないでくれない?」

 

 賑やかに話をしていれば、パンはやがて狐色に変わって行った。頃合いを見て、熱に左右されない影腕で天板を取り出すと、丸々としたふっくらパンがそこに鎮座していた。ある程度の粗熱が取れたら、これらは影の中にストックしておこう。

 焼きたてのパンを触ろうとしていた傑の手を掴んで阻止してから、影腕に今日の朝分のパンを8個、皿に置いて持たせる。そのまま傑の手を引いて外に出てから、扉に「パン 熱冷まし中 火傷の危険有り 今は食べるでべからず」という付箋を貼り付けてから台所へと向かった。

 台所では、硝子がちょうどサラダを作ってくれているところだった。「起きたんなら起こせよ、おはよ」と脇腹を突いてくるが地味に痛いのでやめてほしい。

 

「なんその丸いの。熱そう」

「パン。しばらくすればいい感じに冷めるから朝飯に食うつもり」

「パンゥ?これが?」「この世界のパンがクソなんだよ」「君ってパンが好きなの?嫌いなの?どっちなんだい?」

 

 好きなわけではないがこの世界のパンはパンという概念の冒涜だと思ってる。

 

 卵焼き用のフライパンを取り出して、呪具コンロにかける。バターを落として溶かしてから、先ほどのパンに使ったあまりの白身に新しく卵を追加して、そこに魚醤と砂糖、しいたけ出汁を入れてからじゃことネギもぱらりとふりかけて混ぜた。いい感じに混ざったそれを、フライパンでくるくる回しながら丸めつつ卵焼きとして整えていく。

 

「そのパン、バターとかお菓子用のジャム塗って食っても美味いけど出しとく?」

「出すしかないでしょそんなの」

「私、お茶とかと一緒に持っていくよ。出してくれる?」「ん」

 

 適当にいちごジャムとバターを取り出して手渡した。飲み物を冷やす以外にほぼ使っていない冷蔵庫から冷やされたジャスミン茶と共に、その大きな手の中では随分と小さな瓶を掴んで傑は離れていった。

 続いて硝子は、備え付けの棚からスプーンと箸を出してそれを配膳に向かう。出来上がった卵焼きを八等分してから、パン二つと硝子が千切ったレタスとミニトマトを一緒にそれぞれの皿に乗せて、台の上に置いてからフライパンを洗う。洗っている最中に戻ってきた硝子達が運んでくれるというわけだ。

 

「ただいマンボウ!パンできてる?!」

「お、五条。ちょうど飯だぞ、パンはこれ」

「いやこれはパンじゃねぇだろ」「だよねぇ」「私もそう思う」

 

 三人で戻ってきやがった。狭い!

 人の頭を肘掛け代わりにしながら皿を覗き込む悟までもが「これはパンではない」と否定してくる。やはりこの世はクソ……。なんでこれをパンであると認識できないんだよ……!

 

 洗い終わったフライパンを布巾で優しく拭いてから、影の中に戻して、みんなで自分の分の皿を持って机へと向かう。

 机へとついた全員が「いただきます」と唱えると同時に、3人ともおもむろにパンに同じような所作で齧り付いた。

 

「あっ……あふ、あっちち」

「うっそやわらかい……、口の中がパサつかないんだけど」

「俺達の知るパンこそが偽物だった……?うっわなんかいい匂いする。俺米よりもパンの方が好きかも」

 

 もふ、もふ、と喰らいつく三人に対して、そっとバターといちごジャムの蓋を開けて、存在をアピールするようにコツン、と机に置く。顔を見合わせた三人は、ゴクリ、と口の中のパンを飲み込んでからバターとジャムの奪い合いを開始した。




焼きたてのパンってなんであんなふっかふかで得した気分になるんでしょうね。温かいものというだけで満ち溢れた気持ちになってしまう。

執筆者、パンはあまり作ったことがありません。ホームベーカリーで一時期食パンを作ってましたが、小麦の匂いが強すぎて私は好ましく思えなかったんですよねぇ。どうすりゃよかったんやろ。パンよりも米派閥な人間なのであっという間にただの置物になってしまいました。
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