【完結】魔法少女ハレル/OverPhantasm   作:青川トーン

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短めの番外編です
この世界のちょっとした歴史の一つ、本編には絡んできたり来なかったり。


prologue/神の権能

 一つの種族が終わろうとしていた、かつて銀河の覇者とも、神とさえ呼ばれた彼らも決して永遠の存在ではなかった。

 時空を超越した果て知れぬ闘争を繰り返す日々に疲れたのだ、表舞台からひっそりと姿を消し、誰からも忘れ去られ、彼らは辺境宇宙を漂い、滅びゆくのを待つだけの日々だった。

 

 そんなある時、珍しいモノを見つけた。

 物質で出来た生命体だ、精神体である彼らにとっては非常に興味深いサンプルだった。

 

 凄まじい速度で進化と増殖、繁栄と滅亡を繰り返す彼らは時には自滅する事さえもあったが、中には生まれた星々を飛び出し、態々危険な未知の領域へと飛び出すだけの活気があった。

 

 幾多の文明が生まれては死んでいく、あるいはまだ見ぬ明日へ向けて進化していくのを見続けて、一つの望みが彼らに沸き上がった。

 もはや老い衰え、滅びを待つだけの存在だが、彼らが更に飛躍できるようにわずかながらの遺産を託そう。

 

 そうと決まれば早かった、神々は各々に分かれて興味を持った星に命の素材となるもの「ウルテウム」をばら撒いたり、あるいは既に生命の住まう星々に降りては知識や力を与えた。

 

 

 地球もまたその一つだった。

 既に極めて原始的な単細胞生物から多細胞生物が生まれ、奇々怪々なモノ達が跋扈する不思議な星。やがて時代は移り変わり、幾多の大絶滅を乗り越えてついに文明を持つだけの種が生まれた。

 しかし当時の環境はあまり良いとは言えず、次元が不安定化している為か異世界からの侵略者がよくあらわれる様になっていた。外敵によって滅ぶのもまた生命の定めではあった。

 

 だが、彼らの生きたいという願いに神は応えた。

 遣わすは己の権能を分け与えた12の守護者。

 

 それらはよく働いた、守護者同士で連携し、あるいは現地の者と共に並び立ち、やがて大きな文明を築いた。そして彼らは守護者を遣わせてくれた来訪者に感謝と崇拝を捧げた。

 しかし平和と繁栄もやがて曇る、破滅の化身がこの星に訪れたのだ。

 

 ルスフィオンというエネルギーがある、この宇宙に普遍的に存在する「死」が認識出来る程に形を持ち、そして意志を持った存在だ。加えて実体を持つ事で能動的に死を撒き散らす様になったものを「絶滅希死-ルスフィム」と彼らは呼んでいた。

 

 その絶滅希死の更に上位、宇宙を渡り星々を滅ぼす程の巨大なモノ「ルスティオン」がやってきたのだ、当時地球に存在していた友好的な別世界からの渡航者や、異星からの使者、そして神自身も含めて立ち向かい、かろうじて撃破したもののその余波だけで文明が崩壊するには十分だった。

 

 力尽き、もはや長くないと悟った時、神にあったのは心残りだ。

 この星に生きる者達の行く末を見届けるには時間が無さ過ぎる、そしてまた大きな危機が訪れた時に彼らが立ち向かえるだけの備えを残したい。

 

 破壊された大地を手持ちのウルテウムによりなんとか再生させ、守護者を再起動、だがまだ足りない。

 思い浮かんだのは己に残された残り13の権能、これを人々に託そう。

 

 しかし、人はまだ幼い種族だ。

 やはり仲間内で争い、時には大きな悲劇を起こす事だってある。

 

 だから条件付きだ、限定的に貸し与える形としよう。

 平和を望み、人同士で争う事を嫌う者達を選び一つ、また一つと託して、最後に残った一つ。

 

 これはどうしたものかと悩んだ彼の前に現れたのは、それはもうこの世の全てに反抗したいといったイカれた少女だった。

 かつて果て無き戦いの中で暴れ狂っていた自分の姿を重ね、微笑む。

 

「おい、そこの娘。お前が勝てばいいものをくれてやろう」

 

 少女アスカトール、12の権能が人々に行き渡り平和と秩序の再生が始まろうとしていた時代に生まれた戦士は窮屈な世界に飽き飽きしていた。だから突然現れたよくわからない相手であろうと、やる気ならばなんでもよかった。

 

 結果として彼女は勝った、仮にも死にかけとはいえ果てしない戦いを繰り返して来た神に勝ったのだ。

 死ぬ時は戦いの中でと、思っていた若き頃の情熱を思い出しながら神は横たわる。

 

 権能を全て失った時、神は死ぬ。

 

「理不尽や困難に立ち向かう者よ、最後の権能を託そう」

 

 神が最後に残していたのは「反骨」苦境に立ち向かう若さの象徴だった。

 それを手にした一人の少女は13番目の権能を手にして人であり神となった。

 

 

 見届けた神の脳裏に浮かぶのは果て無き戦いを続ける人々の姿。

 こうしてこの地に降り立った老兵は希望を残して眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 神が残した権能の一つ「造物」

 

 それを宿すのはナユタの巫女と神官。時代によって様々な物を取り入れて柔軟に変化していくその組織はいつでも最前線に居た。

 神が居なくなっても侵略者は絶えない、星の外から、あるいは世界の外からやって来るそれらを犠牲を出しながらも打ち倒し、未来を守ってきた。

 

 彼らの力を求める権力者は多かった、神秘の力、あるいは神から託された権威があるからだ。

 だが徹底的に人間同士の争いへは介入を拒み続けた。ただでさえ果ての無い使命なのに余計な仕事をしたくなかったからだ、おまけにこの力は人間に対して使うには過剰すぎた。

 

 幾度と繰り返される戦乱を越えても変わらない、蒸気機関が生まれ産業革命が起こり、世界を巻き込む争いが起きても決して手出しはしなかった。しびれを切らして強引にナユタの技術などを接収しようとする動きなど100回や1000回で済むモノではなかったがその度に死なない程度に叩きのめして追い返した。

 

 そしてしばらくはまだ比較的平和な時代が来た。

 飛躍的に文明は進歩して電子ネットワークが地上を支配するようなそんな時代でも、影には侵略者や妖魔、怪異といった脅威が存在した。だから休む暇もなく彼ら彼女らは戦い続けた。

 

 ナユタの歴史上、西暦2000年頃が最も激しかった時期とされている。

 なんせ毎週の様に新たな世界の危機が生まれては撃滅し、その消耗を補うために過去の遺物を掘り返して来ては使い方すらあやふやなまま実戦投入。まだ残っていた守護者のいくつかとも連携していたという記録もまた残っている。

 

 その間にも人々は日々を繰り返し、進化を続けて、技術は進歩する。

 再び戦乱の時代がやってくるのもまた当然の結果だった、人間同士の摩擦が生み出した歪みが解き放たれ、それは津波の様に何もかもを呑み込み広がっていく。

 

 汚染、枯渇、飢餓、憎悪、そして死。

 

 ついに侵略者すら利用する様になってまで人々は争う、ここまで来てしまえば後は滅ぶだけだった。

 だが、ナユタはそれを拒んだ。無人兵器が闊歩し、鉄の棺桶が火花を散らし、改造された兵士達が駆ける戦場に身を投じる事を決めた。

 

 それを決めた最大の理由は自分達が守ってきた者を侵略者にしたくなかったからだ。

 

 当時、科学技術の発展によりついに他の世界への渡航が現実的な範囲で可能となり、汚染されたこの世界を捨てて新天地を目指すという計画が秘密裏に進められていた。あるいは住めないとしても他世界の住人を兵士として、あるいは労働力としてこの世界に誘致する……というプランもあった。

 

 しかしそれはいわば奴隷だ、自分達が戦って来た侵略者と同じだ。

 希望の芽である技術であったが、それだけは許す事はできなかった。

 

 かくしてナユタは自分達が守ってきた者達に刃を向け、同じく刃を向けられた。

 

 

 争いに勝者などなく、後には荒廃した大地と疲弊した文明だけが残った。

 兵器のまともな運用すら困難な程にダメージを受けてようやく戦乱期は終わりを迎えた。

 

 まだ全ての火が消えた訳ではない、がいつ世界が終わってもおかしくないという時代は過ぎたのだ。

 

 多くを失い、傷つくだけの戦いだったが一つだけナユタには希望となる事があった。

 自分達の守ってきた人間は決して弱くなどなかった、確かに愚かで見苦しい事も多いが……それでも。

 

 もしかしたら共に肩を並べて戦うだけの力を、最初から持っていたのではないかと。

 まだ痛む傷を抑えて癒しながら、彼らは実感していた。

 

 

 それは遠くない話かもしれない。

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