【完結】魔法少女ハレル/OverPhantasm   作:青川トーン

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魔法少女システム、エンジェルモデルの話。



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prologue/天使降臨

 魔術には弱点がある、多くの術式を継続して同時運用するには極めて負担が大きい事だ。

 例えば除染や対環境防御、この荒廃した大地ではこの二つが無ければそれはもう苦しむ事になるだろう。

 

 だからそれ単体を装備やデバイスとして装置に代行させるのは当然の結果だった、後にMCMSの代表となるカルヴァンク博士が作り出したバリアコーティング・システムなどはその最たるもの。

 これによってバリアコーティングを中心としたパワーアシスト機能、力場によるフローティング、コネクトなどがデバイスに搭載されて様々な場面で使われるようなった。

 

 しかしこれらにも弱点があった、元となった魔術自体が人間のサイズで最適化されていた為にそれ以上のサイズとなるとエネルギー効率が悪化していく為に部分的にしか使えず、人間サイズでもそこそこの重量のバッテリーを必要とする。

 

 結果としてはさらに機能を削り、ほぼ最低限度のバリアコーティングとパワーアシストに瞬間的なフローティングだけが残ったモノが世に普及する事となる。

 

 

 これがあらゆる戦場のスタンダードになるのはそう時間はかからなかった。

 魔術師にとってもこれらは極めて有用だった、今まで自分で制御していたモノを手放せばその分だけ余裕が増える。より攻撃的に、より戦術的に、強化された魔術師は機動兵器群にも負けない戦場の華だった。

 

 当然他の兵士とっても有用だ、多少の破片ぐらいなら致命傷を避けられる。重いガレキを持ち上げたり、なんであれば反動の大きい火器だって楽々扱えるのだから。

 

 こうしてバリアコーティング・システムが普及すると戦いは更に激化した。

 

 

 

 

 度重なる損耗で疲弊していたナユタは協力組織の人材に簡易的な巫女の力を貸し与える研究をしていた。

 巫女になるにはナユタの血を取り入れるか、何かしらの方法で人造神格の権能を宿す必要がある、しかし血を取り入れれば何らかの理由で離脱してもナユタの縛りを受け続ける事になり、その後の人生を大きく歪めてしまう恐れがある。そんな不可逆性を取り除くべく研究は続けられ、ついに人造神格をデータ化、それを結晶核に封入する事で他の魔術の様な装置化に成功したのだ。

 

 そこにいくつかの必要な機能を搭載し、資格者が持つ事で機能する「一時的巫女化装置」となって完成する。

 当然ながらテストもせず世に出す事は出来ない。開発者であるナユタ・エイゲツの双子の妹であるナユタ・アマネがそれを運用、当然ながら既に巫女であった彼女に見合うだけの暴力的なスペックであった試作モデルは「ヘブンスハート・アカツキ」としてそのまま彼女の専用魔法少女モデルとなる。

 

 しかし開発が進む間にも戦いは起きる、極めて強大な生命力を持つ異次元の生命体が出現し、それを撃破する為に致死性エネルギー「ルスフィオン」の使用が承認される。しかし、それを運用できる者の候補がおらず、また「何に入れて」運ぶかが問題となった。

 

 そこで白羽の矢が立ったのがヘブンスハートだ、ヘブンスハートのバリエーションとして開発されていた「アズール」はルスフィオンを搭載、運用する為の器として選ばれた。

 効果は絶大だった、使用者へのバックファイアを最小限度に抑え、侵略者の撃破に成功した上で生還まで成した。

 

 以降、ルスフィオンを運用する際にはこのヘブンスハート・アズールが選ばれる事となった。

 

 

 しかして、これらの装備の開発にも費用が必要だ。ナユタの財政事情はとても良いとは言えない、故に同じ様に世界各地で人々の為に戦う組織に協力を募っていた。その対価として提供する品として開発されたのが「ヘブンスハート・ナハト」だ。

 

 高機動ステルスタイプであり、既存の戦力との連携も視野に入れた極めて実戦的な設計でまずは3基が製造され、その後に高い評価を受けた為に追加で増産する程だった。

 

 

 かくして魔法少女システムは生まれた、だが……これらにもまた弱点があった。

 ヘブンスハート系列は極めて高性能であるが故に負担も大きいのだ、単純にスピード一つにしてもあまりにも暴れ馬で、他組織でのテスト運用で建造物に衝突するなどの事故が多発。

 純粋に使い勝手がよくないのだ。

 

 

 そこで考えられたのがルスフィオンを収納できるほどの拡張性に溢れた「アズール」タイプの量産化だった、当然不評であった負担の大きさを考慮して多少のデチューンとリミッターを施した。

 

 「エンジェルモデル」の誕生である。

 

 その当時、ナユタから流出していたデータによってアライアンスが「ファーヴニルモデル」ユニオンが「フルラージュ」を開発して実戦投入、大戦果を挙げた事で様々な勢力が魔法少女システムを求めていた。

 そこに現れた量産型魔法少女システム「エンジェルモデル」の情報は彼らをナユタに殺到させるに十分だった。

 開発担当であったナ技研はあまりもの圧とそもそもの技術流出による世界への影響、さらに当時のナユタのトップである大巫覡の死による混乱などの中、悩みに悩んだ上でエンジェルモデルの設計データを一部組織に有償で提供する事にした。

 

 しかしその先の組織の瓦解や変貌、あるいは製造したものの流出……それらによってエンジェルモデルとそのバリエーションは瞬く間に世界に広がって行ってしまった。

 

 

 それによって既存の兵器は大きな打撃を受け、力のある魔術師や兵士も多くが倒れる事となる。

 エンジェルモデルのスペックだけを見ればそこまでではなかった、だがこれまでにない戦術が取れるという点、直感的な使用感、そして何より低コストで量産可能な点が彼女らの進撃を引き起こしたのだ。

 

 当然、兵士達は子供を撃つのを躊躇った。人と戦う事が耐えられない魔法少女も多かった。

 そういった者達が戦場から去る事にもつながり、皮肉な事にエンジェルモデルの普及は紛争の数を大きく減らしていった。

 

 果たしてそれが魔法少女システムを意図的に流出させた大巫覡の思惑だったのかはわからない。

 だが結果として少しばかり世界が平和に近づいた。

 

 

 

 エンジェルモデル・アズライール

 それはかつてのヘブンスハート・アズールの後継としてハレルが設計し、カスタマイズしたものだ。

 現在原型となったアズールは内部のルスフィオン残留などから厳重な封印が施された、新たにルスフィオンを制御できる者としてハレルが選ばれた為だ。

 

 自身の能力と合わせて作られたそれは死神として、正しく殺すべき者を殺し、生かすべき者を生かす為にとの自戒と共に名付けられた。

 

 

 彼女が後に相棒と呼べる存在が現れるまで、多くの敵を屠った。

 かつての仲間すらも討つことだってあったが、それでも間違った戦いだけはしたことがないと。

 

 そう信じて戦い続けた。

 

 




エンジェルモデル

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