【完結】魔法少女ハレル/OverPhantasm   作:青川トーン

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EP17

「君達とは、初めましてだね。エレミスから話はよく聞いているよ。私はアルダート、マキナ教団を率いる者だ」

 

 時間通りその人は来た。この戦いを終わらせられる……鍵となる力を持った存在。

 教皇アルダート、イメージしていたのとは全く違う、まるで騎士の様な外見の機体をした人だった。

 

「はじめまして、私はハレル。相方のシルスは文字通り一体化しているのと立場上私がお相手します。この度は……」

「そう硬い話し方をしなくて大丈夫だ。同じ様に神の力を宿す神官と巫女なのだから、組織内ならまだしも組織外で上下を付けるのはよくないだろう」

「ご配慮ありがとうございます、直球で行きますが今回の作戦はあなた方の力が最も重要となります。どの程度自信がありますか?」

「4拠点なら端末をそれぞれ最低4つ刺せれば5分で制圧できるだろう。ただ中央本部は未知数だ、それと現在未確認……私が過去にMCMSに所属していた際に聞いた噂であるが……中央本部には何かしらの最大戦力が隠されているとのことだ。それとMCMS代表「カルヴァンク」もそこにいるだろう、確保する必要はないが齢100を超える老体だ、扱いには気を付けるべきだろう」

 

 なるほど……やはり俺達が中央に行くのは正解かもしれない。未知数の相手なら慣れている。

 

「そしてこれがその端末だ、端子を介する必要はなく機材に直接刺せばそれで機能する。今頃他のチームにも配られているだろう」

 渡されたケースを開くと、そこには5本の杭の様な機械が収まっていた。ひょっとしたら砲弾として撃ちだしても効果があるのではないかと錯覚するが「一応、精密機器だ」と念を押されてしまった。

 

「それからお二人にアカネから荷物だ、急ぎで作って貰って来た」

 

 さっきまで姿の見えなかったハヤテがやってきて、もう一つケースを取り出す……こっちは手裏剣と投げナイフのセットだが、素材は緑色の結晶で出来ていた。

 

「ウィルスブレードだ、魔法少女無人機に効く様に作ってある。これが刺されば一発で機材の回路が死ぬから間違っても制圧対象に使うなよ」

 

 ……思い出した、確か前の墓所での戦いの際にドッペルみたいな厄介な奴の相手をするのにって開発してた奴だ、それが出来上がったのか。帰ったら感謝しないとな……。

 

「作戦開始は4時間後だ、そして突入方法だが……お前達には大気圏を突破・再突入して貰う。それが最も安全で確実な方法だ、それ以外はリスクが大きすぎる」

 

 確か思い出せばあの雲の中は結構危険だった筈……どうするんだ?

 

「同化して突っ切りましょう、シルス。それはさておきブースターなどは貸していただけないのでしょうか?」

「ミサイルならあるぞ、片道切符のな」

「それで構いません。制圧したら帰りはなんとかなるでしょうから」

 

 ミサイル……?ミサイル!?ロケットじゃなくて!?

 

「ああ、それと私はネットワークから独立している部隊が報復で核攻撃なんかをしてきた際に迎撃する役目がある。増援は期待できないと思え」

「了解です。そちらこそ、こっちも手一杯になるでしょうから」

 

 ハヤテと拳を合わせ、互いの健闘を祈る。

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、ルスフィオン機体は何機動かせる?」

「今の所10機が限界だよ。時間稼ぎにしかならないね!」

「そうかならば4機だ、拠点一つにつき1機で構わん。残りの機体は動かさなくてよい、ルスフィオンは全てバベルの増幅炉に回せ」

 

 同じ頃、カルヴァンクはジェスターと共に中央本部「バベル」の地下動力室で、最後のプランを実行へと移そうとしていた。

 MCMS側としてもナユタ側の動きは既に想定の内、いずれ共同で攻め込んでくるであろうことも。故に重要拠点には既に戦力は配備してある上に、報復の為の核ミサイルを保有した独立部隊も待機させている。

 だがあくまでそれはMCMSの権力者が生き残る為の手だ。

 

 代表カルヴァンクの思惑は違う、この機会に地球を再生不能にして、全ての人類を抹殺する。

 その為に中央本部の動力炉を極秘裏にルスフィオン増殖炉として改造していた。

 

 

 そもそもの話だ。

 何故カルヴァンクは人類を滅ぼそうなどと企てているか、それは復讐だ。

 彼はかつて善良な科学者であった、戦乱の時代に様々な技術で以て人々を救おうと手を尽くしていた。

 しかしいつまで経っても人々は争いをやめられず、彼が生み出した技術もまた人殺しの道具となっていく。

 

 やがてカルヴァンクを疎ましく思う者達によって、彼は妻と子を失った。

 

 そこからだ、取引先であった企業グループを纏め上げ、MCMSを立ち上げて兵器をばら撒く様になったのは。

 

「殺し合いたいならば、好きなだけやるがいい。滅びるまで」

 

 彼は優れた兵器をいくつも作り出した、そして技術を望むままに与えて来た。時には敵対勢力にまで力を与え、人類同士の争いによる絶滅を望んでいた。

 だが世界の荒廃やアライアンス・ユニオンの台頭、そしてMCMSの自滅により計画は減速を余儀なくされる。

 

 加えて、MCMSの中にも和平を求める者まで現れこのままでは勢力均衡による秩序が生まれてしまうとカルヴァンクは推測していた。元より他人を信頼・信用せず、また政治闘争により飾りの立場に追い込まれつつあり……もしも自分が事を成し遂げず死ぬのならばそれもいいと諦めかけていた時だった。

 

 フールがルスフィオンを手土産にMCMSに参加したのは、カルヴァンクは彼に立場を与え。ルスフィオンの研究に手を出し始め……その特性に気づく。

 ルスフィオンは破滅の意思を持ったエネルギーだと、それは燃え尽きかけていた彼に再び火を灯した。

 

 

 自らの手で、人類を抹殺できるかもしれない。家族を、己の尊厳全てを奪ったこの世界を殺せると。

 

 

 ルスフィオンは魔力エネルギーを与えると極めて素早く増殖する特性がある。幾度かの実験の後にフールの知らない場所で増やし続けられ、中央本部の地下深くに確実に貯め込まれていたソレだが……計算上地球を滅ぼすにはまるで足りなかった。

 

 だが運命は彼の背を押すように使者を遣わした、実験失敗による研究所の崩壊によって偶発的に誕生したルスフィオン体。ソレは自らを「絶滅希死ルスフィム」と名乗り、ルスフィオンに宿る意思だとカルヴァンクへ自己紹介を行った。

 

 その目的は当然ながら「全ての生命を根絶する事」見事に目論見は合致し、復讐に囚われた人間とルスフィオンの奇妙な同盟は成った。

 

 フールの文字通り愚かな行為のおかげでカルヴァンクの計画は文字通り加速した、加えてルスフィオン機体という想定以上の置き土産まで残してくれた。

 

 だが……それでも確実に世界を滅ぼすにはまだ足りていない。確かに汚染さえ出来てしまえば緩やかに人類は滅ぶしかない……がそれではもはやダメだ、自分の手で全て殺す事を望んでしまった。

 ここに来て枯れていた筈の欲望が戻ってきた、ある意味ではそう……充実、情熱といったものを取り戻しつつあった。

 

 唯一のルスフィム「ジェスター」の事は信用も信頼もしていない、だが貴重なルスフィオン制御装置ではあるし、何より目的にだけは真摯だ。徹底的に使い倒す事を前提に思考を巡らせ、思いついたのがこの巨大施設を最終兵器とする事。

 

「5時間だよ、この星を完全に消し去るだけの威力を求めるなら」

 

 追い詰められた時こそ人の本質が現れる、科学者として、復讐者としてのカルヴァンクを奮起させてしまったのは誰にもわからない失策であった。覚悟を決めた人間の勝負がわからないのは善人であっても悪人であっても変わらない。

 

「ああ、この手で終わりを迎えようではないか」

 

 

 

 一方でジェスターは、名もなきルスフィオンの意思は笑っていた。

 こんなに愉快な事があるものか、生命体が自ら死を求めている、絶滅への道を進んでいる。

 

 ルスフィオンはエネルギーであると同時に情報集積体だ。ある程度の質量が無ければ実体になれないが……それだけクリアすれば今まで滅ぼして同化して来たものの知識を、経験を、技術を操る事も出来る。幸運にもジェスターを形作るルスフィオンは実験に居合わせた多くの科学者を呑み込み殺した事でカルヴァンクの計画を後押しできるだけの能力があった。

 

 逆にシルスとハレルに取り込まれたルスフィオンにはそういった情報があまり含まれておらず、古い情報ばかりだ。それはそうだ、ナユタに封じられて数千年以上の時を過ごしたのだから。

 彼らが同化してなお余裕を保っていられたのはそれが理由だ、情報量が大した事がなく、ルスフィオンの基礎的な絶滅衝動ばかりだったが為の意志の弱さだ。

 

 

 青く輝く動力炉を見てジェスターは思考する、地球を消し飛ばせれば相応のエネルギーが発生し、それを吸収できればそれは更に多くのルスフィム、あるいは巨大なルスフィムを生み出す事になる。

 そうすれば次の生命群を滅ぼし、さらに数を増やし、やがていつかはこの宇宙をルスフィオンで埋め尽くし、終焉に導けるだろう。

 

 永遠の静寂、ルスフィオンが真に望むのはそれだけだ。

 

 

 

 

 

 

 この世界には危機が多い、常に破滅と隣り合わせの歴史を歩んでいた。

 一歩間違えれば終わりがやってくる様な綱渡りだが……その度に誰か立ち上がる。

 

 使命を背負った者、強き者、あるいは名も無き者達、人は誰しも戦う力を持っている。

 

 それこそ、かつて神が人に見出した可能性。

 

 もはや何度目かすら数える事すら出来ない世界滅亡の危機、今回はルスフィオンが生命を根絶やしにせんとしている。それに立ち向かうのは苦難と試練の時代に生きる者達。

 

 

 

 

 

「シルス、覚悟はできていますか?」

「ああ、ところで本当にこれは乗り物なのか?」

「いえミサイルですよ?」

 

 弾頭を抜き取り、燃料とブースター・ついでに重量調整用の重しだけを乗せたそれは紛れもなくミサイル。確かに大陸間弾道ミサイルってすごい勢いで飛ぶもんな……中に危険物さえ詰まってなければ移動手段に……はなんねえよ……。

 

「大丈夫か?降りる前に着弾したり、残骸だけでも威力があるだろ?」

「大丈夫ですよ、ほらこれ継ぎ目があるでしょう?到着前になったらこれが分解して私達が放り出される仕組みになっています」

「それはそれで怖いよ、それに雲を突っ切れるのか?危ないんだろう?あの雲」

「それも大丈夫です。弾頭を積むスペースは防御機構になっているので」

 

 ならいいのか?……まあこれしか無いんだろうし決まった事だから仕方ない。

 

「そういえば、こういう飛び方した奴ってこれまでいるのか?」

「………さあ?」

 

 

 

 

 

 戦端を開いたのはユニオンだった。占拠したEU支部からネットワーク攻撃を開始。アメリカ東海岸沿いにある「拠点チャーリー」に向けてフルラージュ・モデルを操る魔法少女「アリエル」とアビスハートモデルを操る「リズエア」を投入。両者は海中を通り、対空防衛網を突破し軍港にある艦艇や移動拠点の底を爆破して混乱させながら上陸。

 

 

「さあ聖戦の始まりです」

「これより制圧を行うわ」

 

 迎撃に出て来た無人機動兵器をアリエルの持つ魔法剣「グラジオラス」から放たれる広範囲電撃魔術がショートさせて駆逐し、リズエアは港にて退路の確保と囮としての破壊工作を続ける。遅れて飛び出して来た魔法少女無人機はアマルガム、それを二人は簡単に蹴散らしていく。

 

 ユニオンの魔法少女は厳しい適性試験と訓練を潜り抜けた精鋭揃い、加えて使用する魔法少女モデル「フルラージュ」は製造コストの高さという代償に凄まじい基本性能を持ち、装備も全て一級品。

 アリエルの持つ魔法剣グラジオラスは特殊環境でしか製造できない希少金属で作られ、強度も魔術増幅力も類を見ない。加えて左腕に持つシールドはアイギス・光波シールドシステムを搭載して物理攻撃・魔術攻撃あらゆるものを防ぐ。

 

 白きその魔法少女装束は穢れなき誇りと信念そのもの、フルラージュを纏うアリエルはユニオンの「象徴」とも呼べる魔法少女だ。彼女を出撃させるという事はその戦いに大義があるというようなものだ。

 

 

 もう一人の魔法少女、リズエア・トゥルースは極めて優れた魔術師であり高貴なる家柄に生まれ付いたエリートだ。彼女もまた政治的には重要なポストにはあるのだが、それ以上に唯一無二の水中戦闘力を持つが故に今回の作戦に抜擢された形だ。

 アビスハートは彼女自身の設計であり、シャチをイメージさせる装束に金色の銛の様な杖と外見通りの水中での機動力でならば他者の追随を許さない。この時代、海での戦いこそ主流ではなく、また艦艇の維持コストなどの増加もあり出番こそ少ないが……リズエアが戦場に現れようものなら瞬く間にあらゆる船は例外なく棺桶となる。

 

 空での最強がヒビキ・ハヤテとされるなら、海での最強はリズエア・トゥルース。とさえ語られる。

 

 そんな二人に襲撃される事となったMCMS拠点チャーリーはそれはもう酷い有様となった、港の戦力は全てリズエアの手によって沈み。どんなに攻撃を集中させても傷一つつく事なく進軍を続けるアリエル。

 

 やがてどうしようもなくなった拠点職員達は降伏を選び、武装解除を行う。ユニオンが本気を出して来たという事はアライアンスも動くという事を察しており、とてもではないがMCMSに未来はないと悟ったからだ。

 

 

 しかしそんな彼らの決断をあざ笑う様に黒い影が空に舞う、再びルスフィオン機体を得たドッペルだった。陥落した拠点を諸共に破壊しろとの指示によりチャーリーを死によって染めるつもりだった。

 

 が、それは叶わなかった。金色の銛が機体の腹部を貫き重力球を発生させてルスフィオンの放出を抑えながら結界を作り出す。そこにアリエルが全力で放つのは魔法「ライトニング・ジャッジメント」純粋な破壊のエネルギーを叩き込まれてルスフィオンは撒き散らされる事なく消滅した。

 

 ハレル達があれほどまでに苦戦した相手だが「魔法少女の中」での最高戦力にかかればあっけないものだった。この報告を受けた同じく東海岸にある「拠点デルタ」は元より和平派閥が多く即座に降伏した。おかげで徹底的に破壊される事はなく到着した部隊によって速やかに、無血で制圧された。

 

 そしてデルタを破壊するべく送られた2機目のドッペルだが、これはデルタの戦力と協力したアライアンスの魔法少女達によって多少の被害を出すも無事に撃破。

 

 これによって二拠点にマキナ教団のハッキング端末が設置され、本格的な戦いが始まった。各地のMCMSのネットワークが遮断、遠隔兵器群は全て機能を停止、都市機能などは生かしたままにしているが完全に機能不全を起こし始め、独立部隊群が行動を開始する。

 

 

 

「くそ、ユニオンの貴族気取りどもが……望み通り消し飛ぶがいい!」

 旧時代の遺物、原子力潜水艦から放たれるのは6発の核ミサイル。だがそれらは目的地に向かう途中で全てロストした。起爆するより早く撃墜、破壊されたのだ。満足な威力は出なかったものの積んでいた推進剤が爆発するだけでも相応の威力となり空を覆う雲に大穴を開けた。

 

 ユニオンの保有する攻撃衛星ステーション・サジタリウス、居住区を持ったその宇宙施設は切り札の一つ。通常の攻撃衛星と異なりサジタリウスは、いわば施設一つそのものが魔術師の拡張装備である。

 

 在住する魔術師部隊「ヴェンデッタ」が魔眼により標的をロックし、大弓「グングニル」から放たれる矢によって対象を撃墜する。当然ながら秘密部隊であり、その存在は公にはされていない。

 

 何が起きたかもわからず原子力潜水艦はサジタリウスから放たれた二射目によって撃沈された。

 

 

 

 しかしサジタリウスにもカバーできる範囲に限界がある、大西洋上をカバーしている彼らに対して太平洋上ではハヤテがソニックインパルスの機動力を生かして対応していた。

 

「バカな!アライアンスの最強の魔法少女が何故ここに!」

「本部への主力戦力ではないのか!?」

 

 重力爆弾を搭載したMCMSの魔法少女「ライトニング」の部隊がそのあまりもの機動力に翻弄され、次々と護衛対象を破壊されていく。しかし隊員に欠けはない、ただ的確に戦略兵器だけを破壊してハヤテは飛び去り、次の報復攻撃部隊を無力化している。

 

 攻撃艦艇の甲板に取りついてはあらゆる設備をブレードで切り刻み、放たれたミサイルを追い越して切り落とし、爆撃機は弾薬庫の底を切り開かれて荷物を全て海にばら撒く事になり、燃料タンクにも穴をあけられ、不時着ギリギリの状態まで徹底的に痛めつけられる。

 

 

 作戦開始から20分でMCMSは大量の戦力を喪失、そして追い討ちをかけるように西海岸「拠点アルファ」に降り立ったのは……魔法少女装束に身を包んだナユタ・アマネだった。

 「ヘブンスハート・アカツキ」最初の魔法少女が再びこの戦場に降り立った、迫りくる機械の軍勢を二振りの槍で塵芥の様に蹴散らし、目にも止まらない速さで飛べば後に残るのは焼き尽くされた大地。

 

 ヘブンスハート・アカツキには特別な機能などない、ただ基本的な魔法少女の能力を持ち、桁違いの出力を持つだけだ。それこそ使用者自身すら破壊しかねない程の大出力、だからただの殴る蹴るでさえ空気を爆発させ、衝撃波でなにもかもを薙ぎ払い、あらゆる攻撃をものともしない防御力を持ち、叩きつけた武器が逆に砕け散る有様で、飛べばもはや並人には認識すらできない。

 

 これが神の力を受け継いできた者の戦いであり、本来ならば人間相手には向けられるべきではない暴力……天罰とも呼べるような破壊の嵐は3体目のドッペルをまるで害虫を駆除するかのように粉砕し、MCMS側の必死の抵抗もむなしく、ネットワーク管理端末を制圧した。

 

 そして残るは拠点ブラボーと中央本部、ネットワークの3/4が制圧されて完全に混乱している彼らを襲ったのは静かな恐怖だった、音も無く機体が停止していく。連絡が繋がらない、伝達に向かった者が帰ってこない。霧が立ち込めて来て視界も悪化し、果ては悲鳴だけが聞こえてくる。

 

 何が起きたのか、何がいるのか、わからないまま怯える者達についにそれは姿を現した。

 

 ナユタ・アカネ、と彼女が率いるシステム・ナインの機体群だ。

 司令室に音も無く現れ、何のこともなく端末にアクセスする彼女を止められる者はいなかった、全員が麻痺し、動けないままそれを眺めるしかできなかった。

 

 そして第四のドッペルが現れると12機のナイン機体達は一斉に飛び上がり「対無人機」用の装備で滅多打ちにした、一度戦った相手であればもはや癖も性能もわかり切っている。加えて改良なんかも加えてないならば一方的な戦いだった。

 

「こちら拠点ブラボー、終わり」

 

 完全に四つの拠点は制圧された、残されたのは中央本部だけだった。

 

 そして天を、雲を、空を割いて天使は舞い降りる。

 

「シルス、行きますよ」

「ああ!後は俺達だけだ」

 

 独立した対空砲撃を潜り抜け、着地したハレル達を待っていたのは機械の軍勢。その中にはMCMSギガンテスの姿もいくつか見られるが臆する事はない。

 

 ハレルの姿が変わる、天使から竜へ、荒々しい爪と角、そして尾を持ち。手には牙にて作られた剣があった。

 

 エンジェルモデル・ドラゴンブレイヴ。カルガ・レイディアントに託された力を纏いハレル達は大地を駆けだした。

 MCMSアマルガムの持つ火器による集中砲火も、レーザー掃射も何もかもを受け止め、前に進む装甲、立ちはだかる戦車を剣の一振りでズタズタに切り刻み。機械の巨人をウィルスブレードが侵して動きを止め、追撃とばかりに竜の力による蹴りの一撃で貫く。幸いな事にここに人間はいなかった、誰も彼もが我が身可愛さに司令部やシェルターに逃げ込む上級役員ばかりだったからだ。

 人間の兵士による裏切りや対立派閥の暗殺を恐れて、全ての戦力を無人化した企業政治の末路だ。

 

 おかげでシルスも心置きなく戦えた、これまでの鬱憤を晴らす様に暴れに暴れ、ギガンテスさえももはや敵ではないと破壊し尽くした。

 残るは中央本部のネットワーク端末を制圧するだけ、マキナ教団のナビゲートの上でそれらしき施設に侵入した二人が見たのは、破壊されて機能を失ったネットワーク設備だった。




ヒビキ・ハヤテ/ファーヴニルモデル・ソニックインパルス

【挿絵表示】


アリエル/フルラージュ

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ナユタ・アマネ/ヘブンスハート・アカツキ

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