【完結】魔法少女ハレル/OverPhantasm   作:青川トーン

24 / 28
EP21

 雪山を越え、洞窟を抜けた先に現れたのは四方を山に囲まれた大きな村だった。赤色に塗られた建築物がよく目立ち、空を見上げれば偽りとはいえ青空が広がっている……これがレキの故郷である鬼の里だ。

 

 俺は幻想的で、古風なその光景に思わず感動した。まるでフィクションの中で見る和風ファンタジーそのものみたいな景色が目の前に広がっている。そして暮らす者達は赤や青の肌、あるいは人と変わらない見た目の者もいるが一様に角だけは生えていた。

 

「ようこそ我らが里へ、ナユタの客人。歓迎しよう」

 

 出迎えて来たのは筋肉質な守衛の赤鬼の戦士。背には古風な槍と盾を背負っているが、よく見ると盾の裏にはバリア発生装置がくっついている。意外にも妖術とか魔術ではなくテクノロジー寄りなんだ。

 

 ここに来た理由は以前の約束を果たす為でもあるが、ナユタの仕事の一環でもある。現在、世界各地が少しばかり荒れているという……俺から見たらもうそりゃ既に荒れてるのにこれ以上荒れようがあるのかと言いたい所だがそうじゃない、紛争もだけれど物理的に天候や環境が荒れているのだ。どうやら大地のエネルギーが不安定なのが原因と思われるが、不安定になったその更に根本がまだはっきりしていない。そこで今まで以上に何かあった時の為に周囲との協力関係を強くしておこうという事でナユタとある程度交流のある鬼の里に改めて親書などを届けようという話だ。

 

 レキはこの為に先に里に戻っており、ここへは俺とハレル、メリエラの3人で来ている。アカネさんは相変わらずこう外出の仕事はしたくないそうで墓所に籠り切りだ。大神殿で正式に親書と贈り物を受け取りここまで来た訳だが。墓所同様に空からは見えない様に結界が施されているのもあるが、同時にこの里は山をくりぬいた中にある。その為空からはまったく見えず、ガイドに従って地上に降りて向かう事となったのだが。イノシシや熊といった動物や所々緑の木々が存在し、命の息吹を感じた。確かに汚染されていない、生きている土地だ。

 

 

「よく来たな、シルス。メリエラ」

 

 そして村の案内を務めるのは……誰?

 

「レキ、随分とその、普段と雰囲気が違うな?」

 

 すごい着飾られてエラい事になってるレキだった、一瞬誰かと思った。普段から美人ではあるがあくまでさっぱりすっきりしたタイプのイメージだったから意外が過ぎた。

 

「母上がな……公の場なのだからと……」

「ああ、わかる。俺も父さんの仕事相手と会う機会があったからそういう時は正装でキツかった経験がある」

「これでは金棒を振るうのにすら苦労する……」

「レキ、私は似合ってると思う」

 

 メリエラはレキのいつもと違う姿を気に入ったようだ。まあわからんこともないがあのレキの印象がこうも変わるとは、これではお淑やかであり華やかな美人だ。

 

「この里はこういった布の産地でもあるのだ、拘り抜いた品は鬼以外の種族にも需要があってな。天狗や雪女なんかも買いに来るぐらいだ」

「ところで他の種族なんかも里を作ったりしてるのか?」

「そうだな、だが最近はもっぱら他種族の集落が殆どだ。中にはそう……ユニオンに渡った者も居ると聞くが……ああ、そうだ。カイナという勢力に所属している者も多いな」

 

 カイナ……たしか前に少しだけ聞いた事がある、ナユタのやり方が合わなくて離反というか離脱した勢力だと。

 

「そうですね、カイナは様々な種族との共存・共生を果たしている組織の一つです。ナユタとはまあ不可侵というか……できれば関わりたくない立場にあります。その……それこそ最近になって大分マシになりましたがやはり今も遺恨はありますしね。妖魔という種族は長生きな分、恨みも中々消えないのです」

 

 ハレルからの解説が入った、確かに争ってた時代の当事者はそう簡単には割り切れないだろうな……ナユタ滅茶苦茶呪われてるとも言ってたけどそういう勢力とかもいるんだろう……。

 

 しかし、村の中を歩いてるとすごく平和という感じがする。中には取引に来たらしい人間の姿もあるおかげか、俺達に物珍し気な視線を向けてくる者もいない。どちらかというとレキの方に視線が向く方が多い。

 

「……誰かと思ったらレキかよ!知らない美人が居るって期待して損したぜ」

 

 そんな中、いかにも軽薄といった感じの若い鬼の男がこっちにやってきた。すごい、滅茶苦茶失礼だけれど軽薄・チャラいという言葉がそのまま形になった人だった。

 

「ロウケイか、久しいな。今は客人の案内をしている、さっさとどこかへ失せろ」

「相変わらず不愛想だなあおめーはよ。後ろにいるのはナユタの神官と……巫女じゃねえな?なんだ?」

「どちらも友人だ」

「レキに友人!?!??!?!しかも人間の!?」

 

 ロウケイと呼ばれた男はありえないという驚愕の表情を浮かべる、まあ尖ってたらしいからな……前のレキは……。

 

「ナユタのシルスです、レキとは同じ所で働いています」

「レキが働いてる!?!?!?」

「私はメリエラ、同じくレキとは仲良くさせてもらってる」

「嘘だろ……あの武にしか興味を示さないバトルモンスターが?」

 

 わかるわかる、ちょっと会わないうちに滅茶苦茶雰囲気が変わってる知り合いはいる。これも父さんの繋がりで会った別の家の子とかで経験したことがある。

 

「まあ守衛の様なものだ、別に武から離れたわけではない」

「お前が守る側になるなんて想像がつかねえよ……突っ込んで叩き潰す以外に能のなかったガキがこんなんなっちまうなんて世の中何があるかわかんねえ……」

 

 しみじみとした表情を浮かべた後その男は俺の方を向いて、何かを思い浮かんだ顔をした。

 嫌な予感がする。

 

「もしかしてそこの神官に惚れたか?」

「いや?シルスには愛理とハレルが居るからな」

「二股してんのか!?」

「いやいやいやそうではないよ!愛理側からはそういう気持ちがあるけれど俺は恋愛関係にないからな!」

「シルス……どうしてぇ……」

 

 この話題になるといつもこうだ、既に背中から愛理に包丁で刺されている。

 

「う……うおおっ!?怪異!?一体どこから!?つか刺されてるぞ!?」

「い……いつものことだから心配は必要しないでいいです……こいつ俺と一体化してるんです」

「いいお祓い紹介しようか?」

「それも大丈夫、こいつを祓う予定はないよ……」

 

 まるでお約束めいた光景だが、初めて見る人にとってはびっくりだろう。案の定血は出てないから問題はない。俺が痛いだけで済むなら大した事はない。

 

「そういう訳で我の付け入る隙などないし、こいつらの事は友人としては大切に思っている。くれぐれも侮辱してくれるなよ」

「わかったよお前がそういうんならば」

 

 なんだ、レキは里に馴染めないとは言ってたが別に喋れる相手が居ない訳ではなかったんだな。少し安心した。

 

「にしても怪異に憑かれて平然としてるし、ナユタの神官は相変わらず大した奴らだ。同盟を結ぶといった代表の目に狂いはなかった訳だな」

「そうであろう、まあそこのシルスがちょっと特段おかしいだけなのだがな」

 

 ちょっと傷つく言い方だが……まあ正規の神官じゃないしな。

 

「この間など国の一つを落したぞこいつら」

「マジかよ……マジかよ!?あれか!?噂になってるMCMS潰したのって!?」

「こいつとこいつの相棒だ」

「コワ……」

 

 そう言いふらされるとちょっと困る!しかも何かヤバい奴を見る様な目をしないでほしい。

 

「あくまでナユタという組織として!アライアンスとユニオンとマキナ教団の共同作戦だから!全然二人でかで潰した訳じゃないから!そこの所勘違いしないでいただきたい!」

「それだけの勢力動かせるのも十分こえーよ!縁の暴力かよ」

 

 失礼な、そもそも俺達も好き好んでやったわけではないし……8割ぐらい既にナユタが手回ししただけだし……。

 

「中々来ないと思えばこんな所で油を売っていたのですかレキ。態々遠方から来たお客人を待たせてはいけませんよ」

 

 そんな話をしていたらやってきたのはレナ代表だった。そういえばこの世界に来てから……滅茶苦茶エラい人の前に立たされる機会が多いな。アマネ大巫覡、教皇アルダート、カルガ氏、カルヴァンク……後はある意味では魔法少女としてはハヤテさんもエラいだろうし。

 

「申し訳ありません母上、しかしお客人も里の事をよく聞いてくださるので」

「それはそれは……まあその子達ならば仕方ありませんね。まあいいでしょう」

 

 俺達がもってきたのは親書の他にもある、荷物の内容は知らされてないが重要なアイテム……とだけは言われている。だから俺だけではとても運び切れず、メリエラの協力で運んでもらっている。

 

 ロウケイと別れて辿り着いた屋敷はそれはもう歴史を感じるような、見事なものだった。丁寧に手入れされた庭は伝統的な日本家屋……といった感じだ、レキから途中聞いた話では里での何かしらの重要な決め事をする時などはここに皆集まるらしい。別で集会場も作ろうかと思ったけれど、術的な防諜対策も施されてる為にここの方がいいと決まったそうだ。

 

「さて……わざわざ遠い所からこの度はお越しいただきありがとうございます。ナユタの神官シルス……あなたの活躍はよく聞こえてきますわ」

「個人的には不本意な事でしたが、平和の為仕方なかった事です。それに多くの人が犠牲になったし、乱れた秩序による混乱を収めるのも俺達の手の届かない場所です」

 

 俺は英雄とは呼ばれたくない、MCMSと戦うのは仕方なかった事であり正しい行為とは認めていない。

 ただカルヴァンクの野望を打ち砕く事だけは……俺達が動かなかったら出来なかっただろうという事だけは認めているし……まだ難しい心境だ。

 

「そこまで考えこみ、背負い込むのは若者にありがちな事ですね。そしてこれがその親書ですね、確かに……まあ、妥当な所でしょう。世界中に火種が散った、でも決して悪い事だけではありません。あなた達が点けた火は世界を動かします、こうやって組織間の結びつきを生み出す事だってあるのです。だから全てが悪いだとか良いだけで判断しない事、それがあなたにとって最も必要な考え方です」

 

「ありがとうございます。それとナユタから、この荷物も……」

 

 メリエラが運んできた荷物、今メリエラ自身はレキと共に別の部屋で話をしているが、結構な大きさの木箱……そこから現れたのは複数の品々。

 

「……これは驚きました。どれもかつてナユタと争っていた時代に失われたと言われていたモノです。てっきり売り払ったものかと思っていましたが。ご丁寧に保管してあったのですね」

 

 盃やら巻物、掛け軸に小判、小槌に着物まで大小様々な品がぎっしりと詰め込まれてた。随分と重い訳だ。

 

「不思議なものですね、鬼はかつて人と争う事など当然で、その間に多くの品々が奪い奪われ、いまではどれも失われたのに。一番苛烈だったナユタが戦利品をこうやって大事に扱って、返してくれるなんて」

 

 そのどれもがまるで色褪せず、今なお輝いて見える、そして不思議な力を残している……思い浮かぶのは墓所に保管されてる品々だ、ああやってナユタは色んなモノを保管してるから慣れてるんだろうな。

 

「この品々があれば、確かに鬼の里の権威と結束はさらに向上する事でしょう。しかし……普段なんでもかんでも自分の所で管理したがるナユタがこうも変わるとは……これも時代の移ろい……かもしれませんね」

 

 新参者であまりナユタに深入りしてない俺はこれにどの程度の政治的な意味が込められてるかはわからない、ただ文化的に何かしらの価値があるモノを返還するというのはそれなりの事だとは思っている。

 

 それを届ける仕事である事をもうちょっと事前に伝えて貰いたかった。信用されてるとは思うけれどもしも何かあったら取返しがつかな過ぎて今更だけど冷や汗が出て来た。

 無事届けられて本当によかった……ありがとうメリエラ……。

 

「確かに受け取りました。これからもナユタとは良い関係を築ければと思います。さて……ここからはレキの友人として楽にしてもらって大丈夫ですよ。シルス」

「ありがとうございます、父の仕事の多少硬めの場にも同席する事がありましたのでこのぐらい大丈夫です」

「そうなのね、あなたの御父上はどのようなお仕事を?」

「頻発する災害から国を、人々を守る為の仕事をする者達を纏める立場でして。……あ、自分はこの世界の人間ではないという話はしましたっけ」

「レキから聞いているわ、別の世界から来たという事は。そうね……さぞ心配しているでしょうねあなたのご家族も……私の知る限りはそう……世界を渡る技術といえば、ユニオン」

 

 思いがけない所から元の世界へ帰る手がかりになりそうな情報が出て来て思わず肩に力が入った。そういえばユニオンは優れた魔術師が多いという話は聞いた事がある。やはり科学技術というより魔術とかでアプローチした方が世界を移動するには合っているのか?

 

「ありがとうございます、これまで全然手がかりがなかったのですがおかげで少し目標ができました」

「ええ、本当なら伝えるかは迷ったのですよ?あなたが帰ってしまえばレキの友人が減ってしまうから、でもあの子はこう言ったの、どれだけ離れていても友は友だと」

「……そんなことを……」

 

 ああ、そうだ。世界を渡るのは果たして往復が可能なのか片道なのか……そして元の世界なのかという課題もある。けれど今まではそもそも何処に情報があるかすら分からなかった、これで一歩は進んだ。

 レキにも感謝しないと、それにこの機会を与えてくれたアマネ大巫覡にも。

 

「きっと帰れるとなっても簡単にはいかないと思う、けれど信じて突き進むのよ。最後はそれしかないのだから……でも、もしこっちにまた来れるならば必ずレキに会いに来てあげてね」

 

 

 

 そこで会談は終わった、今日はこの屋敷で客人用の部屋を借りる事となったが思い浮かぶのがこの世界で出来た繋がりの事。確かに元の世界には帰りたい、けれどこの世界の行く末を見届け、皆と過ごす時間を続けたいという願いもある。

 

 しかし本来なら存在しないイレギュラーなのだから、帰った方がいいという気持ちもある。

 まあこれはまだ、本当に帰れるかどうかすらわかってないのだからまだ悩むには早いか。

 

「海の魚?本当に海の魚???」

 あのメリエラが驚いている。

 

 出された夕食はそれはもう里の雰囲気に違わず和食、なのだが驚いた事に海の幸まで出て来た。確かにこの山々を越えれば日本海側に出る……とはいえこの世界、海も当然汚染されているからとても食べれる魚など取れなさそうなイメージがあった。

 

「ああ、海側から地下を掘って作った養殖場があるんだ。除染機構もあるから安全な海産物が取れるという訳だ。とはいってもここ以外でも普通に海産物の養殖場はあるだろう?」

「基本すり身とか粉末とかに加工したモノしか流通してない、それに大体がバイオ技術で作られたもの……自然なモノは初めて見た」

 

 確かにこっち来てから魚は見た事がなかった。鶏肉は結構見かけるけれど、ブロイラーが超巨大化した奴。ハレル曰くたまに野生化して恐竜みたいになるらしい。

 

「アジの開きとかイワシとか、随分久しぶりに見たし貝類も……」

「墓所に来てから箸使うのになれててよかった、前だったらスプーンとフォークとナイフしか使えなかった」

 

 しかし、マジで玉子焼きとかおひたしとかそうだよこれこれ!って感じの料理が並んでて凄いな……アライアンス行った時はあんまり余裕がなかったから普通にいつもの携帯食料で済ませてたけど。こういう料理がしっかり並ぶとマナーなんかを気にしなきゃなってなっちまう……。

 

「シルス、シルス!味覚共有!」

「そっかお前……そうだよな一体化してるもんな感覚共有しないと味わかんないもんな……」

 

 ハレルもあんまり食い意地を張らないタイプだけれどそれがこんなに食べたい!って主張するの珍しいな。すげーぜ鬼の里の幸……。

 

「いただきます」

 

 すごい、白米だ。滅茶苦茶久しぶりに見た、3ヵ月ちょいしか経ってないのに懐かしい気がしてきた。

 記憶の中にある味そのままだった。

 

「あ~~~たまりません!出来れば毎日でも食べたいぐらい」

「うちでも毎日はこんなには出んぞ、今日は奮発してくれたのだ……その、お前達が来てくれるからとな」

「まさか私の分まで用意してくれるなんて、有難すぎて愛理涙出ちゃいそう」

 

 そう、座布団の数を見ればちゃんと愛理の分まで用意してくれていた。レナ代表はあくまで友人の席だからと遠慮してたけれど、できれば一緒に話をしたかったものだ。

 

「愛理もちゃんと友だからな、そういえばだが……ハレルはシルスと分離できるようにはなったのか?」

「まだダメですね、ちゃんと回復はしているんですが色々取り込んだり、ダメージ受けたりが多くて完全に分離すると私の方が今はキツいかもしれませんね」

 

 ……その言葉である可能性を想像してしまう、今までの戦いや移動なんかでハレルの体を使う事が多い。その分の負担はやっぱりハレルに行ってしまっている……そんなことを。

 

「ああ、でもシルスの方も大概ヤバいダメージを受け続けているので正直分離したら共倒れでしょうね……あくまで最初は三ヵ月ぐらいあればどうにかなる予定だったんですが、激しい戦いが続きすぎて……しかしまだ三ヵ月ですか。てっきりもう3年分ぐらいやりあった気分ですよ私は」

 

 端末越しに見えるハレルはしみじみとした表情を浮かべていたが、やはりこの3ヵ月を濃密に感じていたのは俺だけじゃなかったようだ。

 

「私も、傭兵として過ごして来た日々はあっという間だった。けれど今は一日一日が大事に思える」

「愛理も同感!あんまり表に出てこないけれどちゃんとみんなの言葉とか聞いてるからそれだけでも楽しいよ」

「……そうか、分離できたその時は二人分用意するようにしようか」

 

 しかし、ああ……そうだな。俺はこの世界に来た事、間違いなんかじゃないと思う。

 少なくとも俺が行動した事で良くなった事もこうして目の前にあるのだから。

 

「シルス、我は……いや私もだが例え元の世界に帰ったとしても生涯お前を友として忘れない。だがもしもこっちに来れるならばたまにでいい、顔を出してくれ」

「レキ、ありがとう。俺もそう思う……まあまだ帰れる手段を見つけられてはないから、先の話だけどな。ハレルも分離しなきゃだし」

「そうか……まだまだ先の話だったな。すまない、家に戻ってきたら父上の事を思い出してな……誰しも必ず別れの時が来ると」

 

 ……それはそうだな、命あるもの必ず死ぬし、出会えば別れもある……この世界ではまだ経験した事はないけれど。

 

「ま、その時はその時ですよ。今はご飯食べましょうよ!話してばっかりでみんな全然箸進んでないですよ!」

 

 ハレルがそういって場の空気を変えてくれる、と思ったがこいつ本当に食べたいだけだな?

 

「繰り返すが本当にありがとう、レキ。こうまで思ってくれる友達が出来て俺も嬉しいよ」

 

 それからは思いのほか魚を上手に食べてた愛理に、俺は満腹なのにおかわり要求しようとした図々しいハレルといい、色々な話題があったが楽しい食事だった。

 

 

 食後、なんと里の温泉に入るとなったがここで一つ問題が起きた。

 性別だ。

 

 他の4人は女で俺だけ男だ、しかも視界共有まで出来てしまう。

 

「我は気にしないが?というか混浴が当然だろう?」

「私も全然」

 

 レキとメリエラは気にしない、ハレルもいつも魔術で清潔にしているから関係無しを貫く。

 

「愛理、助けてくれ」

「そうだね~シルスはちょっとの間内側籠ってなよ。やっぱりそういう羞恥心はあったんだね、安心したよ!」

 

 せっかくの温泉だが、俺は今回は辞退する事にしてハレルに代わりに行ってもらう事となった。会話も音だけでもなんか気まずい気がしたから……ちょっと早いし珍しいけれどハレルに肉体の主導権を渡して寝る事にした。

 

 食ってすぐ寝ると牛になるというが、まあ……たまにはいいだろう。

 

 満足感と、多幸感に包まれながら俺は眠りについた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。