【完結】魔法少女ハレル/OverPhantasm   作:青川トーン

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EP23

「さて、本題に入りましょう。ナユタ・シルス、君は自分の世界に帰りたいが故にこのユニオンまで来た。そしてその技術は確かにユニオンにはあります……しかし当然ながら結構な機密事項なのです、この技術は。理由はいわずもがなですね?そう簡単に見せる事は出来ません」

 

 夜、暗闇に包まれた聖堂を蝋燭のほのかな灯りが照らす中、俺とネルラ司教、そしてクラレスティアが居た。

 

「がナユタのトップからの紹介となればここはクリアとなるでしょう……して、実の所……機密が過ぎて我々も現状どうやってるのか知らないのです。なんせ世界同士が繋がる場所ですからね、検疫などの面からも隔離する必要があるのです」

「確かに、異世界からウイルスや細菌を持ち込まれてこちらでパンデミックは御免被りたいところですね」

「その通り、ただでさえ異世界からの漂流物が多いのにノコノコ外に出て持って帰って来るのもアホらしいのですよ。さてその場所なんですが……アイスランド。現在は研究所以外は殆ど何もない人の住んでない島です」

 

 確か歴史で習ったな、人が入植して島の木々をほぼ根絶やしにしてしまった例だと……。

 

「火山活動も今は落ち着いていて、隔離もされている為そういった実験場としては比較的安全な土地なんですよ。して……そこにユニオンの特異魔術研究部門があるのです。ここは普段使うような世界に影響の少ない魔術ではなく。大魔術と呼ばれるモノや正確には魔術とすら呼べないモノを研究しています」

 

 聞くだけでそれはもう機密度が高いなという単語ばかりだ、それが……もしかして。

 

「ネットワークが破壊された事で音信不通とか……」

「その通り、あそこの連中は研究に没頭しすぎて定時連絡というものをしない事で有名なんです。加えて今は内外の混乱を抑える為にリソースを使いたいユニオンとしては構ってる暇もないのです。そこにあなたが来た、これはいい機会なのでぜひ様子を見に行こうという話なのです」

「なるほど……とても、とても嫌な想定なんですが、その……何かしらの事故で全滅してたりしないんです?」

「さすがに事故が起きたら非常事態を知らせる機構があるのでそこは心配しなくていいと思いますよ、ええ」

 

 それはよかった、行ったら島が何かしらのウイルスで全滅してたり消し飛んでたりしたら嫌だもの。けど連絡よこさない研究機関はあんまりになんか嫌だな!墓所は定期的に連絡は出してるからナユタからは変に見られてないといいな……。

 

「まあとういう訳で君らにこの紹介状と端末を渡す。まあパスポートだよ、これがなければ防衛戦力に撃たれる事になるから気を付けるんだよ。で、だ……私の想像だと君の目的である帰還はユニオンでは出来ないかもしれない。というのも今のユニオンはとても君一人の為に大量のコストをかけてなんていられない。だからおそらく方法だけ教えて貰って、ナユタで実行してもらう事になる」

 

 ……確かにたかが子供一人を帰す為に、そんな時間も金もかけてられないもんな。

 当たり前のことだ、自分の勢力内の人間を養う方が圧倒的に優先されるべきだ、俺もそう思う。

 

 

「くれぐれもだけど、漏洩しない様に。使用後は装置などを速やかに破壊するなどをオススメするよ。でないと私の立場も危ういが……ナユタの立場がもっと危うくなるし、この世界が危うい。私や君の所のトップがそれを通したというのは……君に恩があるからだ、世界を、命を救って貰った恩がね。それを忘れない様に」

 

 

 ありがたい言葉であったが、同時に重い言葉でもあった。

 世界を救う、世界を危険に晒す……俺は確かに帰りたい、だがそれはこの世界を犠牲にしてまでか、と思うと踏みとどまる。

 

 だが、その背を押したのはハレルだった。

 

「当たり前です、我々ナユタを甘く見ないでいただきたいものですよ。この程度の危険物なんて山のようにありますからね。今更一つ増えたぐらいなんてことはありません」

「司教、怖がらせ過ぎだ。すまないなシルス君、しかし覚えておいてほしい。行動には責任が伴う事を」

 

 そうだな、確かにいつだってそうだ。ここまで多くの人の背を押してもらったのだから、ここで引き返すのも悪い。

 

「大丈夫です、覚悟は決めました」

「よろしいです。では聖女クラレスティア、あなた方シュバルツフリューゲルに新たな任務を与えます。ノワール、テレスティと共にナユタ・ハレル、ナユタ・シルスの二人をアイスランドまで送り、特異魔術研究部門の様子を見てきてください。そして無事に帰って来るように、他隊員はいつも通り私が指揮しておきましょう。明日の朝に出発です、食事をとってしっかり休む様に、以上」

 

 

 その言葉で会合は終わり、食堂で俺達は明日の打ち合わせを始めた。

 

「聖女、というのはどういう力を持っているんですか」

「簡単に言えば君らと同じ権能の力だ、本来なら守護者が持っていたんだがな……あんまりにも仕事が辛すぎて壊れてしまってな、その仕事の引継ぎを私達暗夜教会がしているのだ。司る権能は「静寂」一言で表すならステルスだ」

 

 共に肩を並べる以上、互いの情報はあった方がいいとの事で簡単にクラレスティアは俺達に情報を明かしてくれた、そこでハレルが首をかしげる。

 

「権能は二つは持てないのでは?」

「それは人造神格というシステムの縛りさ、守護者由来の場合その縛りがなくなる。だから私はナユタから提供された魔法少女システム「ヘブンスハート・ナハト」が持つ造物の権能と静寂の権能の両方が使えるのさ」

「二倍って事か……それちょっとうらやましいな」

「まあナユタと違って体弄繰り回したりしてないから神官に当たるポジションがない、つまり男には使えないという制約がある。それ故に聖女だ、神の力の一端なんだからそう簡単に渡せないって守護者が考えた上でのルールだ……せめて大事にしてやんないとって事でうちではこのルールをきちんと守っている」

 

 静寂の守護者、果たしてどんな者だったのかは知らない……がきっと管理人の様に慈悲深い者だったのだろう。だから慕われて、力を受け継ぐ者が残った。

 

「ああ、だからあの時私達に気づかれずにノワールを確保できたんですね」

「そういうことです、ちなみに隊長と違って私達隊員はナハトから作られた独自のモデル「ザーヴェラー」を使います。あの黒い衣装、素敵でしょう?」

「ええ、まさに闇夜を駆ける感じですね!私のアズライールはほらこんな感じ」

「エンジェルモデルですね、もしかしてアズライールとアズールを掛けて青なんですか?」

「そこに気づくとは、見る目がありますね」

 

 ハレルとテレスティはどこか波長があったようで、魔法少女衣装について談義していた。確かにシュバルツフリューゲル、訳せば黒い羽根だもんな……で黒は黒闇に溶けやすいから暗夜教会にも掛かってるという訳か。

 

「隊長は完全に黒なんですが、副隊長である私は一部ピンクを取り入れてて他の隊員も黒をベースにそれぞれの特技やイメージに合わせて色を取り入れてるの」

「それはいいですね、組織としては纏まりのある格好の方が士気も高まりますが個々人の象徴も大事ですからね……ナユタも基本は白い神官服・巫女服で統一してますし」

「そうなんです?シルス君はこう左側白で右側紺なのは何故?」

「ああ、彼は正規の手段で神官になったわけではありませんしね、加えて忍者なのでそれをイメージして神官と忍者の両方のモチーフを取り入れたデザインにしているんです」

「忍者!?すごい!初めて見ました!術とか使うんです?」

「いや俺は手裏剣投げるぐらいしかしないよ、術っぽいのは神官の権能だし」

 

 そういえば……さっき言ってた雷の力、ちょっと試しておいたほうがいいかもしれないな……。

 

「ここでちょっと力を出して大丈夫な場所とかある?訓練所みたいなとか……」

「すまんな、ここには無い。さっきノワールが言ってた雷のエレメントか?」

「そう、今まで自覚してなかったから試しておく必要があると思って」

「アイスランドに向かう途中適当な廃墟で試そう、この辺りでは何かあった時に住人が驚いてしまう」

 

 確かに、雷っていうぐらいだしズドンとカルヴァンクみたいにやったら被害出そうだもんな。

 

 

 

 

 朝が来て、出発の時が来た。

 ノワールも魔法少女にならないのかと聞けば、彼女は正確にはシュバルツフリューゲルの隊員ではなく、魔法少女システムも持ってないらしいが飛ぶぐらいは出来るそうで猫状態のまま飛んでいた。

 

 途中、言われた様に誰も居ない廃墟で試しに雷の力を試してみたが、今の所はハレルの姿でも俺自身の姿でも放電、あるいは手に持った武器に雷を纏わせるといった使い方ぐらいしかできなかった。

 これの使い方は帰ってからまた別でやろう、との事ですぐに終わらせてアイスランドへ向けて流氷の海を渡り、イギリスを中継、少し休んでまた飛んでを繰り返していた。

 

 びっくりするほど何のトラブルも無く、賊なんかと出くわす事もなく、順調に進んでいた。

 けれどどこか不安があった。

 

 本当に上手く行くのかという不安が。

 

 

 そして見えて来たアイスランド、研究所は物資の運搬などからの観点から海岸沿いに作られているらしくすぐ見えて来た。この距離までくれば通信が届く、とクラレスティアが入場許可を取ろうとした。

 だが返事がない。

 

「妙だ、ここまで近づいてくれば普通は警備隊の迎えぐらいは来るはずだ」

 

 そしてその不安は的中した。

 

「各自、不測の事態に備えろ。何かが起きている」

「了解、隊長。ノワールは何か感じる?」

「恐ろしい程なんも感じないニャ、けど生命の気配はあるニャ」

 

 高度を下げ、警戒しながら港に着くとそこには点灯したまま凍結したドローンが転がっていた。

 程々に固まらず広がり過ぎず、周囲を見渡しながら研究所の方へとゆっくり歩いていく、と俺は倒れている者を発見した。

 

「あそこに誰かいる、生命反応は……ある」

 

 死体ではない、という少し安堵の気持ちがあった。おそらく返事がないから気絶しているのだろうと近づいてみれば、その者もまた凍っていた。

 魔術師の男だ、杖を構えて今にも攻撃しようとした姿勢のまま固まって、そのまま後ろに倒れた形だろう……海側から来た敵を。

 

「どうやら外部からの侵入みたいだな。それも只者ではない、ここにいるのは相応のエリートだ。それがこうも簡単に凍らされるとは」

「……この人達はどうする?」

 

 生きた状態で凍っている、はたして意識はあるのか。そして治す手段はあるのか。

 

「可哀想だが今は処置のしようがない、凍ってるといっても……待て、ノワールこれは氷か?」

「確かに氷……じゃないニャ。氷の匂いがしニャい……ウーーン……」

「もしかして時間・空間の固形化ではないでしょうか隊長」

 

 テレスティがそういうと固まったドローンを持ち上げて勢いよく地面に叩きつける、がビクともしない。逆に叩きつけられた地面にヒビが入る始末。

 

「時間操作・空間操作魔術、ナユタでも研究はされています。秘術の部類なので私は知りませんが」

 

 つまり対象の時間と空間を止めた、と?そんな能力まであるのか……。

「愛理、なんかできないか?」

「無理無理、私もあくまでほら空間干渉までだし!」

 

 とりあえず触っても大丈夫、ということで固まったドローンを触り、同化能力を使ってみる……が。

 

「同化が、出来ない?」

「これは厄介な事になりましたね、まさかこの能力が効かない状態があるなんて」

 

 ……となるとこの犯人と対面した時に気を付けなければいけないのは……攻撃を受けてはいけないということか。

 

「一体どういう手品かは知らないが、はっきり言えるのはこの島は異常事態にあるという事だ、テレスティ。今すぐ引き返してこれを最寄りのユニオン統一軍の部隊に告げて応援を要請しろ、イギリス方面ならどこかあった筈だろう」

「了解、お気を付けて隊長」

 

 これが部隊を率いる者の判断か、冷静に命令を出し、テレスティはそれに従って最大速度で引き返していく。残ったのはクラレスティアとノワールと俺達か。

 

「悪いがお客人、ここからは私の指示に従ってもらう。お互いの目的の為にもな」

「わかりました。シルス、いいですね?」

「了解だ、隊長って呼べばいいのか?」

「大したジョークのセンスだ、良いだろうクラレ隊長と呼べ」

 

 この島で起きている何か、まずはそれを調べる為にも俺達は行動を開始する。

 感覚で優れるノワールを先頭に施設の入り口へ向かうとそこには防衛部隊である銃を持った兵士や先程と同じ杖を持った魔術師、そして魔法少女の姿もあったが皆凍り付いていた。

 

 特に際立つのが放たれた火炎弾もまた凍り付いて地面に落ちていた。これによって空間・時間自体の固形化という説に説得力が出た。炎さえも凍らせてしまうとなればいよいよ何なら通るのか、不安になる。

 

「この世界でこんな能力を持つ者に心当たりがあるかハレル?」

「よっぽどの魔術師ならできるかもしれませんがこれだけの技量があればユニオンに入ってない訳ありませんでしょう、妖魔とか妖精では?」

「それこそないニャ、こんな術みたことないニャ」

「……権能、かもしれんな」

 

 クラレスティアがふと呟いた、つまりは相手は巫女や神官、聖女……あるいは守護者?

 

「……マキナ教団や暗夜教会、ナユタの様に権能を持った者が居てもおかしくはないでしょうね。して、何の権能かですね」

 

 研究所の中を進んでいくとやはり、あらゆる防衛設備も、戦力も、職員も残らず凍り付いてる。物音一つしない。そして俺達の立てる物音や言葉も今は周囲に響く事はない、クラレスティアの「静寂」の力で秘匿されているからだ。

 そんな中でノワールが何かを感じたらしく動きを止める。

 

 

「……ニャ、極めて強い力の流れを感じるニャ。何かいるニャ」

「実験室か……おそらく犯人だろう、臨戦態勢を取れ」

 

 そういわれてグリムリーパーを手に持ち、いつでも何が飛んできても回避できるように実験室の扉を開く。そこには膝まで伸びた氷の様に白い髪を持つ少女が居た、格好を見る限り魔法少女にも見えるが……違う、あれは管理人と同じ守護者だ。そんな気配だ。

 

「……随分とタイミングが悪いね、なんで来ちゃったのかなあ……」

 

 そいつは振り返ってこちらを見る、完全に気配を遮断しきれていると思っていたがそうではなかったようだ。まあ仕方ない、ならば堂々と聞いてみるとするか。

 

「ここの人達をどうした、どうやったら治せる」

「最初にするのが他人の心配、ナユタの巫女……いやもう一人の神官。君は随分と優しいだね……大丈夫だよ、時間を極めて長く引き伸ばしただけで、誰も死んではいないよ。まあ君達でもがんばれば少し時間がかかるけれど元に戻せるぐらいにとどめて置いたから」

 

 それを聞けたなら一安心、だがまだまだ聞くべき事はある。

 

「何の目的でこんなことを?」

「この世界と、この世界に生きる人達の為だ。悪いけれどこれ以上は話せない、それに君達にも止まっていてもらう」

「来るぞ!」

 

 彼女が手を振るう瞬間に回避した、今の今までいた空間が凍り付いて壁が生まれる。分断された!

 クラレスティアが即座に手にしたライフルで発砲、しかし同じように手を振るう事で生まれた氷の壁によって防がれた。弾丸もまた凍り付いて床に転がり落ちる、がその間にバリア手裏剣を5枚放ちそれぞれ別の軌道で飛ばす……がそれらも凍って地に落ちた。

 

「そっちの聖女は……静寂、暗夜教会だね。彼は最後まで黙して動かなかった、見守る事を決め込んでたから結局賛同は得られなかった」

「なんだ?お前の悪巧みのか?」

「そうだね、僕たち守護者も人類を守るという同じ目的は持っていても手段や考えは違ったのさ、権能が違うようにね!」

 

 一際強く目の前の守護者が輝いた、すると空間に亀裂が入るように氷の柱が伸びて部屋中を包んでいく。まずい、このままでは逃げ道がどんどん塞がれる。クラレスティアは器用に柱を回避しているが、それでもいずれはこの部屋全部が氷で埋まりかねない。

 

 だが、ある事に気づいた。守護者の後ろにある装置、まるで輪のようなそれは向こう側に氷の洞窟の様な景色を映している。まるでワープゲート、ポータルの様に。

 

「目聡いね、悪いけれど……君達に構ってる時間は……ッ」

 

 突然、奴が胸を抑えて膝をついた?まさか……だが、それでもチャンスだ。悪いが先に無力化させてもらうしかなさそうだ!

 

 クラレスティアもその意図を察したようで援護射撃で気を引いてそれを防がせる、その隙にグリムリーパーの一撃を叩き込んだが。

 

「消えた……?」

 

 部屋中を覆う氷の柱が融解して消失、凍った職員達はそのままだったが守護者の姿は見えない。

 

「飛び込んだニャ、あのゲートの向こうニャ」

 

 いままで部屋の外に居たノワールが指さした先、それは先ほどまで氷の景色が映っていたリング状の装置だ。

 

「……まさかだが、奴がこの世界の為にやろうと言っていたのは」

 思い返す、今ユニオンは世界間の渡航を禁止している。それは過激な貴族が他の世界を侵略してでも生き延びるべきだと意見した事。

 

 装置の制御端末らしきものに触れる、するとホログラムが浮かび上がるのは地球。

 それを拡大していくと、まだ荒廃していない世界があった。ただ妙な点が一つ、氷の柱だ。

 日本のよりもよって東京に100メートル程の氷の柱が立っている。ふと凍っている職員の方を見れば彼らを固めている氷とよく似た質感だった。

 

「……守護者には私達の知らないような力がある、その柱の詳細を出せないか?」

「やってみる」

 

 装置のホログラムを弄ってみれば、エネルギー量なんかが表示され、その流れもまた可視化できるようだった。

 

「外から内側へ、塔の中にエネルギーが向かっている……しかし何のエネルギーだ?」

「エレメント、と表示されてる」

「星のエレメントを吸い上げてるニャ!?それはマズいニャ!向こうの世界の命そのものを奪おうとしてるニャ!どれぐらいのスピードニャ!?」

 ノワールが身を乗り出してホログラムをのぞき込む、数値としては毎秒/23,42,31,42,52と表示されているがあいにくエレメントの概念自体最近しったモノだから全然わからない。

 

「火が23、風が42、水が31、土が42、そして生命が52か……3日続けば星一つ喰い尽くすには十分だ」

「そんなに早いのか……!?」

「ああ、止めるのもだがただ破壊するだけでは吸い上げられたエレメントが誘爆する事になる。しかし……なんだ?何か増えたぞ」

 

 ホログラムを見れば、タワーのすぐ側に怪物が現れる。40メートルぐらいのサイズで、極めて高い生命エネルギーが表示されている。そしてタワーを攻撃し始めたが、まるで効いていない。

 

「現地の生き物かもしれません、自分達の生きる星を脅かされたと防衛本能が働いているのでしょうか?」

 

 ……考えたくない想像が浮かんでしまう、その巨大生物の高い生命力と極めて高い火のエレメントの数値。まるであの日の炎の災害獣だった。

 

「他にも何か、いえこれはロボット……?」

 

「DFS-T4ガルドロン、どうして」

 その言葉は俺の口から、意識せずに漏れていた。

 俺はその機体形状を知っている、対災害防衛機構の大型格闘機体だ。

 理由はわかる、あのサイズの災害獣が出てくればその制圧の為に出てくるのだから。

 

 でもそうじゃない、なんでこのホログラム上の世界にこの機体があるのか。

 

「シルス、これはあなたの世界なのですね」

 

 そうだ……ハレルは見たんだよな、俺の記憶の中を。

 あの日俺を助けたあの機体を。

 

「……最悪な形で元の世界へ帰るヒントを得てしまったのは気の毒だが、落ち込んでいる暇はないぞ。このまま放っておけばお前の帰る場所は消えてなくなる事になる。時間が無い、装置を再起動してどうにかあのタワーを停止させて逆回転させなければならない。その為にもこのポータルを開かねばならない……がさっきの守護者が渡った事でおそらくかなりのエネルギーが食われてる。操作して確認しろ」

 

 いわれるがままにホログラムを弄れば電力をゲージ化すれば半分。施設の電力を全部合わせて表示してもほぼこれで全部だ、実行コードは可と出ている。

 

「……一回限りか、誰かしらここに残らねばならないみたいだ。でなければ帰りの手立てがなくなる……しかし奴はどうやって帰るつもりだったんだ?……それはいいか、おい」

 

 まだ心の中がグチャグチャで、整理がつかない。そんな俺の手をクラレスティアが握る。

 

「私は今までこの世界を守ってきた事はあるが……明確に救ったと言い切れる様な事はしたことがない」

 もう片方の手で装置を操作し、座標を設定、ホログラムの赤い点が塔の外側に移動する。

 

 

 

「お前達は世界を救った事がある、ならば行くのはお前達が適任だろう。行け、お前の世界を救ってこい」

 

 

 装置の機動と同時にクラレスティアが俺達の体をポータル目掛けて押し込む。

 

 理解できた、これは彼女なりの応援であり、俺達への発破だ。

 

「ついでにお前も行ってこいノワール!」

「ニャ!?」

 

 まるでついでの様に投げ込まれるノワール、可哀想だが確かにエレメントの扱いに関しては俺達より詳しいだろうから、適材適所なんだろう。

 投げ飛ばされるノワールを掴んで、俺達はポータルをくぐる。

 

 青白い光の道を通って、俺達は世界を渡る。

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