【完結】魔法少女ハレル/OverPhantasm   作:青川トーン

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EP25 END

「どうしてだい、どうして君は救われる事を望まないんだ?」

「別に救われたくない訳じゃありませんよ、けれどこんなやり方で救われたくはない。それに自分達で歩いていける」

「その結果があのザマなのにかい、君達をずっと見て来た。繰り返し争い続けて、奪い奪われ続けて、それでも歩いていく……確かに強い意志を持っていたけれど、意志だけではどうにもならないことだってある。飢えれば死んでいく、枯れれば死んでいくだけだ。君達の歩んできた道を無駄にしたくないんだ、どうしてわかってくれないんだ?」

 

 そこにあったのは深い悲しみと、疲弊、そして諦め。使命に縛られて摩耗していった守護者にハレルは自分達ナユタの姿を重ねる。傲慢とは思わない、そのように作られた者がそのように役目を全うして来たのだからそれは酷いというものだ。だが、許す訳にはいかないのだ。

 

「あなた達には、感謝しています。でもいいんです、もう休んでいいのです」

 

 守護者の存在を否定する言葉ではない、認めた上で役目は終わったのだと告げる残酷な一言。

 だがそれが、この久遠の守護者を止める為の最後の一押しになった。

 

「……君達は……それを望むんだね。ならば仕方ない、このハーヴェスターを逆回転させれば確かに吸い上げたエレメントは元に戻るだろう。しかしその権限を持っていても今の僕にはもうそれだけの力が残っていない」

 

 かつてカルヴァンクの時の様に止める手立ての無い装置か、と内心シルスは溜息をつきながら策を考える。

 

「だから君に「権能」を与える、人造神格と守護者の権能はそれぞれ一つずつ持てるから君達にも使えるだろう。しかし権能を失った守護者は存在を保てなくなる、つまりは僕は死ぬ事になるだろう」

「それがあなたの責任の取り方ですか」

「いや、方法があるならそれしかないという事だ……そして……」

 

 久遠の守護者が何かを言おうとしたその時、周囲を揺れが襲う。

 同時にハレル達が持つ端末に通信が入った。

 

『空に亀裂が入った!どうなっている!?』

「亀裂!?こっちは今戦闘が終わったところで……!」

 

 シルスが状況を伝えようとしたその時、久遠の守護者が手を掲げて空間を固形化した。そして凄まじい衝撃と共に二人は投げ出される。

 

 

 二体の災害獣は焼け焦げて倒れ、ガルドロンの頑強な機体は原型をとどめていたがパイロットは気絶、そして外殻の崩壊したハーヴェスターを中心に大きなクレーターが出来ていた。

 

 ガラスの様に砕けた空からアンカーの様に巨大な触手が撃ち込まれ、その悍ましき姿が出現する。

 地球上の、いやこの世界のあらゆる生き物とは似つかない100メートルの球状の何かが降りてくる。

 

「……あれは何だ」

 ハレルとシルスは無事であった、直前に久遠の守護者によって庇われたが為だった。庇った当の本人の体には大きな亀裂が走り……とてもではないが無事とは言える状態ではない。

 

「こんな時にまさか……いやこんな美味しい状況を逃す訳がなかったか……あれは侵略者だよ、僕らの世界にも度々現れる……ね」

「ええ、ナユタにも歴史上で何度か交戦記録があります。ロヴォレースと命名されています、次元を渡り、あらゆるモノを捕食しようとする怪物です。おそらくはここに集まったエレメントが目当てで来たのでしょう、勝てない相手ではありませんが……あなたは」

「……はは……僕もあれと同じことをしようとしてたんだな……我ながら……醜いね。このダメージではどっちにしろ僕は長くない。この権能を、受け取るがいい……あの怪物がハーヴェスターを奪う前に」

 

 残された時間は長くない、予期しない乱入者もだが既にハーヴェスターに回収されているエレメントも相当の量だ、放っておけばすぐにでも世界各地に異常が出始めてもおかしくない。

 

 だからハレルは覚悟を決めた。

 

「いいでしょう、私が受け取りましょう。そしてあなたの罪を、私が清算しましょう」

「すまないね……」

 

 久遠の守護者の胸から権能を形作る為のクリスタルが現れる。それと同時にボロボロとまるで風化するように守護者は崩壊した。それをハレルは握りしめ、同化する。

 

 一本の触手がハーヴェスターのシリンダーに手を掛けようとした、ロヴォレースは邪魔者もなく悠々と餌を手に入れられる状況に喜んでいた。その外見と圧倒的な力だけではなく狡猾で邪悪、そして臆病なこの怪物は普段次元の狭間に隠れて常に力を手に入れられる状況をうかがっている。当然そこに強者が集っていれば手を出さない、なんてことも多々ある。

 そんな卑怯者が手出しを決めたのは守護者が弱っており、その世界の人間達が自分を脅かすに足る存在ではないと判断したからだ。事実、一撃で三機のガルドロンは戦闘不能となって横たわっているのだから。

 

 そんな時だった、触腕の一つが切断された。

 

 目にも止まらない速度で飛翔するハレルのグリムリーパーによって切り落とされたのだ、傷口がすぐにでも再生しようとした……がそれは叶わなかった。凍り付いていたのだ、空間を破壊できるだけの力を持つ侵略者にとっては大したことのない一撃だったが一瞬でも再生を阻害された事が癪に障った。

 

 悍ましい咆哮をあげ、ハレルを敵と認定する。こうやって世界に渡って来た以上は相応にエネルギーを使うのはこの怪物も同じ、このエレメントを食らい回復しなければ引き下がれない。その前に邪魔者を始末しようと全身から小型の生体端末、いわば特攻兵器を生み出してハレルを追わせる。

 

「気色の悪いやつですね!シルス、ルスフィオンはまだダメですよ。ハーヴェスターの中の生命エレメントが反応起こして吹き飛びかねませんからね!」

「了解、ならこいつならどうだ!」

 

 バチバチとハレルが帯電する、そして迫りくる生体特攻兵器が次々と雷に打たれて爆発、カルヴァンクの遺した雷の力が走り、ロヴォレースの触手の塊で出来た体を撃ち抜いて焼く。……がその瞬間にロヴォレースは3つに分離した。

 

 この生き汚さこそが、この怪物の厄介な所だ。生存の為にはどんな手だって使う、それは人質だって。狙いはダウンしていたガルドロン達。だったが、何もかもが上手く行くとは限らないのだ。

 

『さっきは良くも横入してくれたなタコ野郎!』

『うまい所だけ頂いて行こうってか?そうはいかんよ』

『人間嘗めんじゃねえぞ!!』

 

 既に目を覚ましていたパイロット達、彼らは日々強大な敵と戦い付けて来た。それこそ絶望的な災害と、だからこの程度のダメージはへでもない。再起動したガルドロンの鉄の拳が侵略者をしたたかに打ち付けて弾き飛ばす。思わぬ反撃に怒りを感じ光線を放つ、がガルドロンのシールドがそれを正面から受け止めた。

 

 ただガルドロンでは有効打は入らない、相手は理外の存在だ。いくら耐えられるといっても限界がある、彼らの出来る事は時間稼ぎであり、足を引っ張らない事。

 

 それが分かっていたから既にハレル達は行動を開始していた。

 ハーヴェスターを「久遠」の権能を使って逆回転、大地に向かってエネルギーを放出していく。

 すると流石にロヴェレースのうち一体がそれを止めるべく、目の前のガルドロンを無視して向かって来た……が突然空から飛来した何かによって貫かれて歪みながら地へと叩きつけられる。

 

「待たせたな!偶然にも鹵獲したMCMSの移動要塞があったから電力確保が上手く行ったんで手助けに来たぞ」

「クラレ隊長!来てくれたんですね!」

 

 正体はクラレスティアだった、静寂の権能を以てロヴェレースに気取られずに現れ、勢いよく蹴りつけただけ。ただそれだけで分裂したといえど30メートルもある巨体を蹴り飛ばしたのだ。

 ヘブンスハート・ナハトのスペックと聖女の力による二重の強化あっての一撃だった。

 

 再び飛び掛かってきた怪物だが、またしても同じ様に、まるでボールの様に蹴り飛ばされて近づく事はできない、加えてクラレスティアの姿を捉える事すらできない。段々と焦りが募り、動くが粗雑になっていく。

 

 そしてスクランブル発振した航空部隊に支援によって残った二体のロヴェレース分体にも攻撃が振り注ぐ、決して大きなダメージではないが、それでもじわじわと不利となりゆく現状に怪物は焦る。

 

 早く、早く食わねばと残りの2体もガルドロンを無視して、攻撃を浴びながらもハーヴェスターを目指した……が時すでに遅し、一番欲しかった生命エレメントは真っ先にこの大地に帰されていた。怒りが怪物を支配する。もうなんだっていい全部壊して食らい尽くそう。三体の分体は一つに戻り、エネルギーを収束させる。

 辺り一帯を吹き飛ばすつもりだ、がそうはさせない。

 

 離れた破壊光線の前にハレルが立ちはだかり、それを受け止めた。

 光線は凍り付き、砕けて、ダイヤモンドダストとなってハレルによって同化されていく。

 

 久遠の権能とハレル達の力が一つになった事でより多くの力を効率よく無力化した上で同化できるようになったのだ。

 

「これで終わりです、いきますよシルス!」

「ああ、行儀の悪いお客様にはお引き取り願おうか!」

 

 ロヴェレースは即座に光線の第二射を放とうとした、がハレル達はそれよりも早い。

 

 いつもの様にルスフィオンレイの構えを取る、だがそこには久遠の権能、雷の力、そしてルスフィオンの三つがあった。三つの力を一つに束ねた光線「トリニティ・レイ」がロヴェレースを包み込む。

 

 電撃、凍結、そして死を浴びた侵略者の末路はそれはもう酷いものだった、文字通りこの世のモノとは思えない断末魔をあげながら微粒子よりも遥かに細かく、徹底的に破壊され尽くして絶命。残骸すらもこの世界には残らなかった。そして割れた空も元の形に戻り、ハーヴェスターもエレメントを戻し切った為に次回して消滅していく。

 

 後に残ったのは壊された街と、傷だらけの機械の巨人、二人の魔法少女。そして勝利だった。

 

 

 

 

「わざわざ、別の世界の我々の為に協力していただき感謝の言葉しかない」

「むしろこちらこそ詫びなければならない、管理がもっと行き届いていれば……そしてかの守護者が事を起こすほどに世界を荒廃させてしまった……落ち度だらけだ」

「だが、君達は救ってくれた。それだけでいいのだ。そしてツムグ……お前もよくやってくれた」

「今回はハレルに頑張って貰った事の方が多いけれどね……ただ、こんな成り行きで帰って来ちゃったけれど。次はもっと堂々と胸を張って返ってこれる様にしたいな」

「十分にお前は私達の誇りだよ、して……もう行くのか?」

 

 クラレスティアが乱入してきた時から既にポータルは既に開いたままだ、維持にはやはり相応に電力を食う、MCMSの移動要塞を使って確保しているとはいえ無限という訳にはいかない。

 

「ええ、あまり長居して空間を繋ぎ続けるとああいった侵略者を呼び寄せやすくなってしまうのです。さて忘れ物はありませんねシルス」

「ニャ……待ってニャ~!!!報酬のチュール貰ってないニャ!」

「報酬貰える立場じゃねえぞノワール!とっとと帰るぞ!」

 

 果たしてこの世界の研究者達に何を話したのか、余計な事をしゃべってはいないかと心配になるシルスであったが、そうは間違えないだろう。そびえ立つ3体の巨人の方を向けばパイロット達が手を振っている。かつては救われた身が、共に肩を並べて戦う事が出来た。

 

 それがシルスにとって何よりも嬉しかった、自分達の手で世界を守れた事が。

 

「じゃあ行ってくるよ父さん、それで必ず帰って来る」

「ああ、行ってこいイツキ・ツムグ、ナユタ・シルス。お前の信じるままにな」

 

 ハレルの姿に変身してシルスは飛び立ち、続いてクラレスティアとノワールも飛び立つ。

 振り返りはしないまま、ポータルを渡った先、そこはユニオンの研究所だ。

 

「凍らされた職員はもう回復している、ちょっとばかり疲労しているが……すぐにでも現場復帰できるだろう。この度は協力感謝するぞ、ナユタ・ハレル……そしてシルス」

「いえ、困っていたならお互い様です。ただ少し心残りなのは……久遠の守護者、彼女もまた私達を頼ってくれていたならこんな事にはならなかった……そう思えるのです」

 

 シルスに影響されたのか、ハレルもまた相手の事を考える事が増えていた。

 もしも久遠の守護者が一人で突っ走ることがなく、ナユタやユニオン、アライアンスなんかと協力して動いていられたなら……そもそもハーヴェスターをシルスの故郷へ落とすことさえ起きなかったなら……。

 

「そうだな……あいつもあいつなりにこの世界の事を想ってやった、それぐらいにこの世界の事が好きだったんだろうな……やられた側としてはまだ少し言ってやりたい事もあったけれど……けど踏みとどまってくれた」

 

 カルヴァンクの様に、もう後戻りなど出来ないとハーヴェスターを限界まで稼働させれば計画は遂行できたかもしれない。だがそうはしなかった、リスクを避けたのもあるだろうが……ひょっとしたら心の中では間違っていたのだと分かっていたのかもしれない。

 シルスはそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

「ただいま、姉さん」

「おかえりなさい、それで結果はどうだったかしら」

「帰り方はしっかり、ばっちりわかったよ。情報も貰った……まあ準備さえできればいつでも帰れるけれど俺はまだしばらくはこの世界に残ろうと思うよ」

 

 墓所に帰還できたのはあれから一週間経ってからだった。事後処理やらユニオンのお偉いさんへの報告の為にネルラ司教とクラレ隊長に徹底的に話をさせられた。俺の父さんが長官だったおかげで事がすんなりうまくいった事も含めて、ついでにノワールはエレメント理論を向こう側で随分と喋ってしまったらしく手酷くお叱りを受けた。他の世界に大きな影響を与えてしまう、最悪この世界の様に争いに使われてしまうかもって危惧された。

 

 けれどノワールの協力が無ければ多くの事で行き詰って時間が足りなかったかと思うと感謝しかない。

 

「しかしどっと疲れた、まさか予期せず世界をまた救う事になってしまうとはな」

 ソファに倒れ込んだら力が抜ける、確かに自分の世界を救えた事は嬉しい、誇らしい気持ちがあったが……それはそれとしてそんな大層な事をやりたくはなかったという気持ちもある。

 

『君達は世界を救ったのだから』

 

 ネルラ司教の言葉が重く圧し掛かる、クラレ隊長が送り出してくれる時にいった言葉も。

 世界に生きる全ての人達の命を背負う……それはとんでもない重圧だ、父さんの重荷もよくわかった様な気がする。だから人はみんなこの重さを一人で背負わず、皆で分け合うんだ。

 

 そして一人で背負い続けてしまった結果が久遠の守護者の末路だ、あいつには頼れる相手がいなかった。

 それがただ一つの不幸だったのかもしれない、その掛け違いが今回の様な事件を起こした。

 

 管理人が優しく俺の頭を撫でた、気にすることはないと言っているのがよく伝わる。言葉が伝わらなくとも、それぐらいはわかる。

 

「お疲れーシルス、にしてもご家族みんないい人だったね~今度はいつ行く?」

「そうだな愛理、いつもありがとうな気を利かせてくれて」

「うへへ~褒められるとやっぱり嬉しいね~」

 

 今回はまあ愛理の手まで借りる様な事にはならなかった、それもやはりいつもみたいな連戦がなかった為だろう。万全の状態で戦える、というのがこんなに気が楽とは……。

 

 あの悍ましい侵略者、ロヴェレースだったか……あれはどうやら出てくる度に撃退こそ出来ても完全に殺し切る事はできなかったらしい。それを仕留めた初めての例で、できれば残骸を解析したかったとアマネさんは言っていたが……まあ粉々に消滅したから仕方ない。

 

 俺だってあんなバケモンにまで慈悲の心を見せるような器の広さはない、ついでに災害獣にも……エレメントが一時的にだけれど大きく吸い上げられてバランスを崩して災害多発してないだろうか……ちょっと心配になってきたな。負けるとは思ってないけれど、それでも傷つく人は多いだろう。

 

 今は信じるだけだ、父さんが俺を信じて送り出してくれたように。

 

「それでハレル、聖女になった気分はどうかしら?」

「あんまり嬉しいわけではありませんが、背負った以上は使いこなしてみせますよ。それを言えばシルスも」

「ああ……雷の力か、あれで使い切ったかと思ったら回復してるんだよな……」

 

 ロヴェレースを仕留めたトリニティ・レイ、あれで全部の雷の力を使い切ったと思った。だがこの世界に戻ってくれば段々とそれは回復して、今ではまた満タンと言った所。

 おそらく俺が生命活動をしているうちで余った余剰エネルギーが変換されている様だが……カルヴァンクの置き土産か……。

 

「倒した者の想いを背負うのもまた、勝者の務めか」

「そんなに気負う者でもありませんよ、ところでメリエラとレキは?」

「ナインと一緒に工作中よ、里から畑づくりの為の資材を貰って来たらしくてうちでも色々栽培したいらしいわ」

「なんというか本業を疎かにしないならいいんじゃないですか?」

「……そうね、貯蓄資材が大分消費されているわ。早速で悪いけれど明日からまた廃材拾い、お願いしようかしら」

 

 まあ、常にこう何かをやってなきゃって訳じゃないよな。こうやって普段通り、日常って奴も大事だ。

 何よりも平和が一番だ。

 

「ああ!戻っていたかシルス!ハレル!長旅ご苦労だったな!」

「見て欲しい、私も新しい衣装を作った」

『デザインは私が行いました、メリエラの要望通りに和のイメージの魔法少女衣装で、レキのモノと対になるように設計しました。機能性を確保する為に神絹を多めに使用しました」

 

 レキが黒髪に赤ならメリエラはブロンド髪に白、随分とめでたい印象だ。

 

「待ちなさい、今神絹と言わなかったかしら?」

『はい、もちろんレキのモノもアップデートする為に2倍使いました』

「……それはまずいわ、今度アマネ大巫覡の装束を補修する仕事の為に用意してたものよ」

『エッ』

 

 普段余裕な表情を見せているアカネさんが、滅茶苦茶顔を青ざめさせている。

 たしか神絹ってナユタの蚕からしか取れない貴重なモノで……それが大量になくなって……ああ。

 

「姉さん、大巫覡の装束って神絹以外の素材ダメなんですよね」

「そうよ、あくまで権威付けの為のモノなのだから……そうよ、レキ。今すぐ里に行って布を買って来なさい。あなたのツテなら一番いいのが手に入るでしょう、それでならなんとかつり合いが取れるわ」

「しかしな、一番となると高いぞ。それこそ屋敷が立つ」

「そのぐらいはここの予算でなんとかなるわ、さっそくで悪いけれどハレル、シルスにも手伝ってもらうわよ。忙しくなるわ」

「あの私は……」

「メリエラはそうね、ナインと一緒に植物の世話をお願いするわ。管理人、金細工の準備をしておいて頂戴……ああもうやる事が多すぎるわ!」

 

 クラレ隊長もだけれど、アカネさんも指揮官の才能あるよな……その時々によって必要な指示が出せるのは大事な素質だ。

 そんな風にのんきに考えていたが。

 

「ああ……全く……!ナイン!これからはちゃんと物資の等級が高いモノは事前に私に報告しなさい!組織の基本よ!それでハレル、シルス!あなた達にはまたユニオンに飛んでもらうわ!暗夜教会へ行ってあの黒布素材を分けて貰ってきて頂戴!」

「またですか!?」

 

『隊長もお元気で』

『また今度来た時はもっと観光とかしていけよ』

 クラレ隊長としばしの別れの挨拶をしてきたばっかりだというのにすぐとんぼ返りとは、少し笑えてしまう。

 

 ああ、忙しく、せわしないが……悪くはないな。

 

 

 

 

 

「シルス、またロケットですが大丈夫ですか?」

「ああ、慣れたよ。けどまたなんか厄介事に巻き込まれないといいな」

「ええ、今度は出来れば世界規模でない程度でお願いしたい所です」

 

 そんな呑気な事を考えながら俺達はリンゴの木の下で語らう。この温室も随分と賑やかになったもので蝶や蜜蜂だけでなく小鳥やリスまで増えて、なにやら二足歩行のタヌキまでいつの間にか住み着いていた。

 彼らは一体どこから来たのか、謎に満ちているがどうやら妖精の類らしく、この自然に満ちた空間がいいらしい。ドングリを提供してやれば見た事のないアクセサリーを対価として渡してくれる。

 

 お守りのようなものだろうか、不思議に思いながらも俺達は明日の事を考えていた。

 

 

 




これにて一度完結です。ここから番外編やサイドストーリー的なモノを追加していく……かもしれません。
お付き合いありがとうございました!
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