ライジングボルテッカーズにポケモンオタクとバトルジャンキーを加えてみた 作:ギザ
エクスプローラーズの脅威を退けたものの、代わりにニャオハが連れ去られ、嵐から脱した翌日。昨夜までの荒れ狂う雨風が嘘だったかのように晴れ渡った朝。
海上を飛ぶキャモメの鳴き声を聞きながら、ダイチはオリオと、オリオの相棒ポケモンであるメタグロスと共にブレイブアサギ号の損傷具合をチェックして見回っていた。幸いにも目立った損傷は見られず、飛行するのにも今のところ問題はなさそうだった。
「あんな激しい嵐だったのに、さすがですね」
「当然でしょ? なんてったってこの私が改造したんですもの。と言っても、やっぱり無茶な飛ばせ方はしてほしくないんだけど。旗がなくなってるな……」
「あはは……」
緊急事態だったとはいえ雷雲に突っ込ませるのはメカニックのオリオからすれば気が気でなかったらしく、フリードへの愚痴を溢しながらオリオはスマホロトムに映し出されたチェック表にタッチペンで書きこんでいく。ダイチは苦笑で返すしかなかった。
その時、船内への扉が開いて制服姿のリコが姿を見せた。半ば物置に使っていた部屋を急遽片づけてリコにはそこで眠ってもらっていたのだ。
「あ、おはようリコさん」
「あ、おはよう。ゆっくり寝られ……るわけないよねぇ……」
「あの……ベッドと制服、ありがとうございました」
「ああいいのいいの! 気にしないで」
手をひらひら振って笑顔で返したオリオにリコの表情が自然と穏やかになると、再び船内への扉が開いて今度はマードックが姿を見せた。
「おお、起きたか。飯出来てるぞ」
「マードックの料理は一流なんだ~!」
「ん~、いい匂い。私の好きなスープだ」
「正解!」
今度は階段上の扉が開いてポケットに手を突っ込んだモリーが出てくる。同時にホゲータとジメレオン、ヒスイガーディも出てきて階段を駆け下りて来た。ダイチは元気そうな手持ちたちの姿を見てホッとする。
「モリーさん、ジメレオンとガーディはどうでしたか?」
「大した傷も負ってなかったし、問題なく元気だよ」
「ワオーン!」
「うおわ! 危ないよガーディ」
ダイチを見つけるや否やジャンプして跳び込んでくるヒスイガーディを受け止め、ホゲータが続き、ジメレオンはモリーに合わせて、という訳ではないだろうが階段を下りて来た。
「あの……私……」
「ニャオハを取り返しに行くんだろ?」
「え?」
「今フリードがエクスプローラーズを追ってる」
リコが言おうとしていたことをオリオとモリーは先回りして口に出した。
フリードは今船におらず、ブレイブアサギ号が安定したのを確認し、リザードンに乗ってエクスプローラーズを追って飛んでいったのだ。
「そういうことだ。気持ちだけ焦っても碌なことない」
腕を組んだマードックがリコを安心させるように言った。ダイチも頭の角を押し付けようとしてくるヒスイガーディを撫でながら同意した。
「マードックさんの言う通り。こういう時こそ冷静でいないとだね」
「きっとフリードが手がかりを見つけてきてくれるから」
「……はい(やっぱりこの人たち、悪い人たちじゃないのかも)」
ダイチにも諭され、オリオにも励まされてリコは大人しく頷いた。その時、一同に影が差して通り過ぎた。フリードを乗せたリザードンだ。
リザードンが甲板に降り立つと、やはりキャップを肩に乗せたフリードがリザードンの背中から飛び降りてゴーグルを額にずらした。
「よう! 起きたか?」
「っ、ニャオハは……!?」
「……悪い」
リコが駆けよってニャオハのことを確認するが、フリードは顔を曇らせて首を横に振った。リコは期待した結果ではなかったことに少しうつむいてしまった。
「……そうですか」
「あいつらは?」
「この先の港に降り立ったのを追ったが、街中で見失ってしまった」
「最初からそこに逃げ込むつもりだったのかもしれませんね……」
偶然そこに行きついたという訳ではあるまい。エクスプローラーズがどれほどの規模の組織なのかはわからないが、そこに仮拠点のようなものがあるのだろうとダイチは思った。
「(用意周到だな……)」
「わかりました。私をそこに連れてってください。あとは自分で探します」
「リコさん!? さすがに無謀じゃないかな!?」
顔を上げたリコの言葉にダイチが思わず考えを中断する中、リコはまっすぐフリードの眼を見る。フリードは苦笑した。
「そう寂しいこと言うな。時間をくれないか? ニャオハの手がかりを必ず見つけてくる。一人で闇雲に動いても見つからない。相手はエクスプローラーズ。ポケモンなしじゃ戦えないしな。気持ちはわかるがダイチの言うとおり、無謀だ」
「フリードを信じてやってよ!」
「それに、君のお母さんにボディガードを頼まれた以上、君を危険な目に合わせるわけにはいかないだろ?」
腕を組んで微笑んだフリードとオリオにそう説得され、リコは納得したが、そもそもの話を聞いていなかったことに気が付いた。
「あの、お母さんに頼まれてたんですか?」
「おお、そうだが……あれ、言ってなかったか?」
「初耳です……」
「あ、アンタまた……!」
「フリードさん……お願いですから報連相はちゃんとしてくださいよ……」
オリオとダイチのジト目にフリードは「すまんすまん」とだけ言って頭を掻いた。あんまり反省してなさそうだった。
モリーがため息を吐いたところで、別の船内への扉がバァン! と蹴破られる勢いで開き、シンゴが出てきた。
「おっせんだよグダグダグダグダと! はよ飯にすっぞぉ!」
「おお悪い悪い。まずは飯食おう。いい匂いだ」
「ちょっとシンゴ! アンタ扉はもっと丁寧に開けろっていつも言ってるでしょ!」
「うるせぇ! 連中にカチコミ仕掛けるんだからはよしろ!」
「シンちゃん、カチコミかけるって決まったわけじゃないからね?」
食ってかかるオリオの指摘にシンゴはキレて返し、また戻っていった。騒ぎながら朝食の席へと向かっていく一行の後をポケモンたちが追いかけていく。その後ろ姿を見たリコは、思わず笑みを浮かべた。
□□□
「出てこい、マイバディ!」
「ガーディもよろしく!」
ブレイブアサギ号を入港させたライジングボルテッカーズとリコは港へ降り立っていた。マードックとダイチがさっそくモンスターボールからそれぞれイワンコとヒスイガーディを外に出す。犬ポケモンの彼らにニャオハの匂いを辿ってもらおうという作戦だ。
出てくるや否や、イワンコとヒスイガーディはそれぞれのトレーナーへと嬉しそうに飛びついていた。
「おぉ~よしよし!」
「いだだだだ……ガーディ、落ち着いて……!」
イワンコはマードックの懐に飛び込んだだけだが、ヒスイガーディの場合はぐりぐり押し付けてくる頭頂部の角の痛みでダイチは可愛がりながらも苦笑している。リコはその2体の犬ポケモンにスマホロトムを向け、ポケモン図鑑アプリで調べていた。
しかし、ヒスイガーディの方を調べては画面に映し出された通常のガーディと、ダイチのヒスイガーディとの見た目の違いに、小首を傾げていた。
「どうしたんだ?」
「あの……あのガーディ、なんか違うような……」
「あー……ありゃある地方特有のリージョンフォームってやつでな。ちょいと特別なガーディなんだ。詳しくは今度ダイチに聞くと良い」
「はぁ……?」
訳が分からずとりあえず頷くリコ。フリードもヒスイの姿のガーディのことは当然知ってはいるが、勝手に話すのはどうかと思い、トレーナーであるダイチに任せた。人、それを丸投げと言う。
「まあともかくだ。まず俺とマードックでエクスプローラーズを探す」
そう言ったフリードがブレイブアサギ号の船首の方を見た。そこでは座って海に釣糸を垂らしている老人、ランドウが釣り糸から目を離さないまま手を軽く上げている。
「私は船の修理。ダイチはこっち手伝ってくれる?」
「わかりました! マードックさん、ガーディのことお願いします」
「おう、任せろ。ガーディ、イワンコの尻尾についてる匂いを追うんだ」
「ぐふん?」
小首を傾げるヒスイガーディにイワンコが自分の尻尾を向けた。昨晩フミフミしたニャオハの香りがまだ尻尾に残っているのだ。ヒスイガーディはイワンコの尻尾に顔を埋めて匂いを嗅ぎ、「ぐふん!」と強く鳴いた。匂いを覚えたらしい。
「おい、俺もエクスなんたらを探すからな」
「マァグ!」
「シンちゃん、エクスプローラーズね?」
口を出したのは方針が決まるのを見守っていたシンゴだ。足元のマグマラシも昨晩暴れられなかったからか、やる気十分な様子で頭と臀部から炎を噴き出していた。同時にフラストレーションが溜まっているらしく、後ろ足で地面を叩いている。
「いやシンゴ。すまんがお前にはある重要な任務を任せたい」
「あぁ? 連中をぶちのめす以外に重要なことがあんのかよ?」
「ああもちろんだ。これはシンゴにしかできないと俺は思ってる」
しかしフリードはシンゴの申し出を断った。訝しむシンゴだが、フリードはシンゴの肩に手を置き、自信を持って答えた。
「シンゴ、お前はリコとモリーと一緒にポケモンセンターへ行って、キズぐすりを受け取ってきてくれ」
「(えっ!?)」
「……はぁぁぁぁぁぁん!? 俺におつかいに行けってか!? ざけんなガキじゃねえんだぞ!」
「まだ十分ガキだろ。それに、大人だって買い出しくらい行くよ」
「そういうことじゃねえんだよ!」
フリードの予想だにしない内容にシンゴは憤慨するが、モリーがピシャリと返した。しかし納得いかないシンゴはキレてフリードに食って掛かる。エクスプローラーズとのバトルになるのを期待していたシンゴとしては到底受け入れられない任務だった。
なお、リコも声には出さなかったが、驚愕の表情でフリードを見た。リコの中では今のところ、ライジングボルテッカーズの面々は皆いい人という印象であるが、このシンゴという少年に関しては評価を掴み切れていなかったからだ。主に横暴かつ乱暴な態度とか言動が理由で。
しかしフリードはそんなリコの視線に気づかず、両手を上げてどうどうとシンゴを制していた。
「まあ聞けって。俺とマードックがエクスプローラーズを探してる間に、あいつらが先にリコを見つけるかもしれないだろ? そうなった時のための護衛だよ。シンゴならそれくらい余裕だろ?」
「アホかそもそもモブ女を外に出さなきゃいいだけだろうが! どっか船室押し込めて鍵かけとけや!」
「いやそれだと保護じゃなくて監禁だろ……」
これなら納得するだろとほぼ即興で考えた理由にまさかの返しをしてきたシンゴにフリードは顔を引き攣らせた。たしかにそれならばエクスプローラーズに狙われる心配は減るかもしれないが、リコのことをほとんど考慮していないやり方はフリードは好まない。
「アホくせぇ……! 俺は一人でも探すからな! 行くぞマグマラシ!」
「マァグ!」
「あ、ちょっとシンちゃん!」
話にならないと思ったのか、シンゴはマグマラシを連れてずかずかと街の方へと歩いていく。ダイチが呼び止めるも聞く耳持たずだ。
リコもどうしようとおろおろし、その様子に気づいたモリーがその肩に手を置いた。
「大丈夫だよ。どうせすぐ戻ってくるから。フリードに任せときな」
「は、はぁ……」
モリーに諭されるも、リコは心配そうにフリードを見つめた。もしや自分のせいで仲間割れのような事態になったら申し訳ないどころではないからだ。
フリードは今度はその視線に気づいたのか、リコの方を振り返る。安心させるようにウインクして微笑み、背を向けて歩き去ろうとするシンゴの方へと向き直った。
「……そうかぁ~! さすがに護衛とお使いをどっちもやるのは出来ないか~!」
そしてなんともわざとらしい大声で、そんなことを言い始めた。
シンゴはと言うと、それを聞いてピタリと足を止めていた。そしてまたギロリとフリードの方を向いた。
「……あ"ぁ"?」
「いや、無茶言って悪かったなシンゴ! 確かに片方ずつならともかく、護衛とお使い両方やるのはいくらシンゴでも難しかったよな! すまん! 出来ないんじゃしょうがない! 出来ないんならな! 俺なら出来るけどな~!」
「(す、凄い煽ってる……!)」
リコはあまりにわざとらしいフリードの煽りに口許をひきつらせ、ライジングボルテッカーズの面々は呆れつつ苦笑していた。
しかしフリードの煽りはシンゴには効果覿面だったようで、こめかみに血管を浮き出たせ、そしてそのままダッシュで戻ってきた。
「上等だテメェこのクソゴーグルが! そこまで言うならやってやんよ! お使いでも護衛でもなんでもなぁ!」
「おっ! そうかそうかやってくれるか! よーし決まりだな! 頼んだぞシンゴ!」
「……クソがぁぁぁ!!」
笑顔でシンゴの肩を叩いたフリードにシンゴは怒り心頭といった様子で吠えていた。フリードに対してもだが、いつもだいたいこんな感じで制御されている自分にもキレているだろうなぁとダイチはため息をついた。
「な? こうすれば大丈夫だっただろ?」
「いつもあんな感じだから気にしないで。まあ、態度はあれだけど悪い人じゃないから」
「は、はい……」
自信満々に言うフリードと、一応シンゴのフォローをいれたダイチにリコはそう返すのがやっとだった。
ともあれ話は纏まった。リコは改めて全員に頭を下げた。
「捜索、よろしくお願いします」
「ああ。必ず手懸かりを見つけてくるさ。それじゃあ皆!」
「ほらシンちゃんも不貞腐れてないで」
「不貞腐れてねえわ!」
ライジングボルテッカーズのメンバーが集まり、拳を付き合わせ、下に、最後に掌を上にしてまた上げるというハンドサインを行い、各々行動を開始した。
ジメレオン れいせいな性格 特性 げきりゅう
みずのはどう ふいうち みかわり とんぼがえり
ガーディ(ヒスイの姿) むじゃきな性格 特性 いしあたま
もろはのずつき ???? ???? ????
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