ライジングボルテッカーズにポケモンオタクとバトルジャンキーを加えてみた 作:ギザ
リコ、シンゴ、フリードにキャップ、マグマラシ、ベベノム、イワンコ、ヒスイガーディは施設を進む。施設には倉庫だけでなく倉庫を管理しているであろう事務所もあるのだが、どういうわけか人の気配はなく静かだった。そしてイワンコとヒスイガーディが匂いを辿って行った先、いくつか並んでいる中で扉が開けっ放しになっている倉庫を発見した。
フリードの合図で中を調べるべく、3人は堂々と扉を通って中に入った。途端に明かりがつき、奥ではアメジオが待ち構えていた。
「出たなアメジオ」
「ペンダントは持っているか?」
「これをあげれば、ニャオハを返してくれるの?」
リコがペンダントを外してアメジオに見せるも、アメジオは無言だ。ただの交換で返すつもりはないらしい。それを察したフリードが両腕を軽く広げて提案する。
「まあ2人とも落ち着け。提案なんだが、ポケモンバトルで決めるのはどうだ? こっちからはこのシンゴが相手になるぜ」
「……フリードといったな。お前が相手ではないのか?」
「オレは眼中にないって言いてえのかコラ半分頭がよ!」
「マグマァ!」
シンゴは鋭い視線を向けたまま、拳を鳴らして前に出る。マグマラシも頭部と臀部から炎を発して威嚇している。
フリードは得意げな笑みを浮かべ、シンゴの肩に手を置いた。
「こいつは俺なんかよりよっぽどバトルの才能のあるトレーナーだよ。まだ粗削りだが、いつか世界に名を轟かせるすげえトレーナーになるって、俺は確信している」
「……」
「事実、お前の部下もシンジ一人で倒してるしな。それともご自慢の部下を倒したこいつと戦って、負けるのが怖いか?」
「ふざけるな! だが、たしかに部下を可愛がってくれた礼をしなければと思っていたところだ」
挑発に普通に乗ったのか、感情的になりアメジオはフリードとシンゴを睨む。フリードはにやりと笑い、シンゴは犬歯剥き出しの獰猛な笑みで返した。
「シンゴが勝ったらニャオハを返してもらう」
「ならば俺が勝ったら、その子にペンダントと一緒に来てもらおう」
「決まりだ。リコ、シンゴのバトルは派手だからな。ここは俺とシンゴに任せて、巻き込まれる前に離れていろ」
「はい」
合図の意味を込めてウインクしたフリードに従ってリコはイワンコ、ヒズイガーディと一緒に場を離れていく。ベベノムもシンゴといるか迷ったようだが、結局リコを追って飛んでいった。
フリード、キャップ、シンゴ、アメジオは倉庫から外に出て位置に着いた。倉庫内でバトルをすれば保管されている荷物に燃え移る可能性があるからだ。
「ようやくだ……! 行くぞマグマラシぃ!」
「マァァァグ!」
「出てこい、ソウブレイズ!」
一歩前に出たシンゴと、更に前に出て炎を迸らせるマグマラシ。対し、アメジオがボールから出したのはやはりソウブレイズ。荒ぶるマグマラシとは違い静かに佇み、敵を見据えている。
「テメエはあの三下雑魚どもより楽しませてくれるんだろうなぁ半分頭ぁ! マグマラシ!『かえんぐるま』ぁ!」
「部下を馬鹿にするのはそろそろやめてもらおうか!『つじぎり』!」
先手をとったのはマグマラシ。シンゴの指示を受けたマグマラシの全身が燃え上がる。そして体を丸め、車輪のように高速回転して地面に炎の軌跡を残しながらまっすぐ突き進み、悪タイプエネルギーを両腕の剣に纏わせてクロスさせたソウブレイズと正面からぶつかった。
激しく縦回転するマグマラシの『かえんぐるま』の火の粉が散って舞い、しばらく拮抗していたが、ソウブレイズが力を込めて一歩踏み出すと同時に両腕を広げてマグマラシを弾き飛ばす。
「『かえんほうしゃ』ぁ!」
弾き飛ばされながら回転状態を解除したマグマラシは空中にいるまま口から灼熱の炎を吐き、ソウブレイズを飲み込む。しかし激しい炎の中でも炎タイプであるソウブレイズは涼しい顔をしていた。
「『ゴーストダイブ』!」
「マグマラシ後ろだぁ!」
ソウブレイズは炎の中で足元に闇のゲートを作り出し、その中へと沈んで消えた。直後、ゲートの出口が空中のマグマラシの後ろに現れ、中から出てきたソウブレイズが振り下ろした剣によってマグマラシは地面に叩きつけられた。だがその反動ですぐに起き上がってソウブレイズを睨む。
「今度はこちらの番だ。『サイコカッター』!」
「『かえんほうしゃ』で薙ぎ払え!」
先手のお返しとばかりにソウブレイズが振るった剣から放たれたエスパーエネルギーの斬撃が三つに分裂し、マグマラシを取り囲むように飛んで迫る。対しマグマラシは『かえんほうしゃ』を吐いたまま首を動かして三つの『サイコカッター』を燃やし尽くし、爆発させた。
マグマラシはそのまま再びソウブレイズの方を向いて焼き尽くそうとさらに激しい炎を吐いた。
「『むねんのつるぎ』!」
炎には炎とばかりに、アメジオの指示でソウブレイズは両腕の剣に闇色の炎を灯し、自身に迫る炎めがけて振り下ろす。奇麗に二つに断たれた『かえんほうしゃ』は『むねんのつるぎ』の闇色の炎と混じり合い、そのまま宙に散って消えた。
大したダメージを負っていないソウブレイズを見てシンゴは舌打ちする。
「チッ、なかなかやるじゃねえか」
「そちらは大したことないな。昨日のジメレオン使いの子供の方がまだ手応えがあった」
「はぁん!? タイプ相性が悪かっただけだろうがよ!」
真後ろで行われていたバトルだったため、ダイチとアメジオのバトルをシンゴは見ていない。だが、人と比べられて見下されるのはシンゴは死ぬほど嫌いだった。
「上等だテメエ! 見せてやれマグマラシ!『スピードスター』!」
「なんだと?」
マグマラシの全身が白く光り、星型のノーマルタイプのエネルギー弾が無数に放たれその全てがソウブレイズへと向かう。
だがゴーストタイプでもあるソウブレイズにはノーマルタイプ技である『スピードスター』は効果はなし。当たりすらせずにすり抜けるだけだ。トレーナーなら誰でも知っている常識と言っていい。
アメジオはその指示を出したことを訝しんだが、すぐに理解した。すり抜けた『スピードスター』がソウブレイズを取り囲んで旋回し始めたのだ。
「『スピードスター』を制御しているのか……!?」
「どんどん撃てぇ!」
『スピードスター』は必中技。つまりオートで相手を狙う技だ。逆に言えばそれ以外の軌道を取らせるのはエスパー技でも使わない限り非常に難しい。
しかしマグマラシは『スピードスター』を放ち続けながら歯を食いしばってそれらを制御し、ソウブレイズを中心に旋回させているのだ。やがてスピードスター群によってソウブレイズの姿が見えなくなる。
「だが、どちらにせよ『スピードスター』はソウブレイズには効かん!」
「わかっとるわ! だからこうすんだよぉ!『かえんほうしゃ』ぁ!」
『スピードスター』を撃ち終え、続けて放った『かえんほうしゃ』が『スピードスター』に燃え移り、星型エネルギーの一つ一つが火を纏って一気に燃え広がって炎の竜巻と化す。『ほのおのうず』など比ではないほどの火力と勢いに直視できないほどの熱気がその場を覆い、ソウブレイズは竜巻から逃れられず飲み込まれた。
「出たなマグマラシの必殺コンボ。あれをやられたときは俺たちも驚いたもんだ。なあキャップ」
「ピィカチュウ」
フリードはシンゴとのバトルを思い出し、冷や汗をかいた。キャップも腕を組んだままうんうんと頷いている。
そのバトルはキャップの秘奥とも呼べる技で突破してなんとか勝利を収めたものの、こりゃ越えられるのも近いなと、フリードも内心思ったほどだった。
「くっ……! ソウブレイズ!『ゴーストダイブ』で脱出しろ!」
炎タイプゆえに炎には強いとはいえこのままではまずいと、アメジオは両腕で炎の竜巻の熱気から顔を防ぎつつ指示を出す。ソウブレイズは再び闇のゲートを通って炎の竜巻から外へ抜け出した。
だがそれで終わらなかった。なんと炎の竜巻がソウブレイズを追って移動し始めたのだ。
「『スピードスター』の追尾か……! 面倒なことを! ソウブレイズ! 全力で『むねんのつるぎ』!」
「ソウ──ブレイィィ!!」
ソウブレイズが両腕の剣を重ね、チャージした闇色の炎で巨大な刃を作り出し、先ほどと同じ要領で縦一文字に竜巻を斬り裂いた。しかし、散った竜巻の一部がソウブレイズに飛んできて肩にぶつかった。
そもそもこの炎の竜巻は燃えた『スピードスター』の集合体だ。斬り裂かれてばらばらに散った燃える『スピードスター』がソウブレイズに向かって降り注ぐ。ソウブレイズは『サイコカッター』で撃ち落とすがキリがない。
「こんな方法で『スピードスター』を当ててくるとは、出鱈目な……!」
「こっちを忘れんじゃねえぞ! かちこめマグマラシぃ!『かえんぐるま』ぁ!」
しかも燃える『スピードスター』が降り注ぐ中、全身燃えたマグマラシが回転しながら再び突っ込んできたのだ。『スピードスター』に気を取られていたソウブレイズの足に勢いよくぶつかって撥ね飛ばし、すぐさまスピンして真逆を向いてジャンプ、そして急降下。宙に浮いたソウブレイズの背中に落ちてきて前面から地面に叩きつけた。さらに逃がさんとばかりに至近距離から背中に『かえんほうしゃ』を放って押さえつける。
「正気か……!? マグマラシも巻き込まれるぞ!?」
「それくらいの無茶出来んだよ俺のマグマラシならなぁ! くたばれやぁぁ!!」
「マァァァァァァグ!!」
「ブレイィ……!」
アメジオが驚愕する中、シンゴは獰猛な笑みを浮かべたままそう返す。炎の星型弾幕がソウブレイズとマグマラシに降り注ぎ、爆発。2体の姿が見えなくなった。
□□□
少し時間を巻き戻して、リコはニャオハの匂いを辿るイワンコ、ヒスイガーディの案内でベベノムと共に倉庫内の奥へと進んでいた。廊下の突き当りを左に曲がり、最奥の扉へとイワンコとヒスイガーディが走っていく。たどり着いた扉に向かって2体が吠えた。
リコがその扉の窓を覗き込むと、室内でニャオハが伏せていた。ドアノブを回すも鍵がかかっているらしく開かない。リコは扉を叩いてニャオハに呼びかけた。
「ニャオハ! ニャオハ起きて!」
「ニャ? ニャー!」
「待ってて! 今開けるから!」
リコは扉に肩からぶつかるがなかなか頑丈でびくともしない。しかしそれで諦める訳にもいかない。何度もぶつかってなんとかこじ開けようとする。
「ヴェヴェ」
「え? ベベノム?」
それに待ったをかけたのはベベノムだ。ベベノムはリコの肩をポンポン叩き、ジェスチャーでリコに扉から離れるように伝える。
リコが扉から離れると、ベベノムは全身に力を籠め、頭の突起物から紫色の液体を扉に放った。液体がドアノブに着弾すると、じゅうじゅうと音と煙を立ててドアノブが融け始めた。
リコは異臭を感じてハンカチで鼻を覆い、スマホロトムのポケモン図鑑でその液体について調べる。
「こ、これって……?」
『『ようかいえき』。強い酸をかけて皮膚を融かす技。相手の防御を下げることがある』
「さんって……あの酸!? ニャオハ! 扉から離れて! イワンコとガーディも!」
ベベノムが放っているこの液体が『ようかいえき』で、酸だとわかったリコはニャオハに扉から離れるように言った。そして自分もイワンコ達と離れる。
その間にベベノムは更に力を込めて『ようかいえき』を吐き続ける。やがてドアノブが完全にドロドロに溶け、ベベノムが軽く押しただけで扉が向こう側へと開いた。ベベノムが室内へと入っていき、ニャオハを抱えて出てきてリコの元まで運ぶ。
「ニャオハー!」
「ニャオハ! ケガはない!? よかったぁ……!」
「ヴェヴェヴェ~」
「うん、ありがとうベベノム!」
ベベノムから飛び移ってきたニャオハを抱きしめて確認するが、特にケガをしているわけではなさそうだった。安堵で涙がこぼれる。腰に手を当てて胸を張っているベベノムにお礼を言うと、ベベノムは喜んでそこらを飛び回っていた。
「ワン! ワン!」
「っ。そうだね。ニャオハ、一緒に行こう」
イワンコの鳴き声で我に返り、涙を拭って急いで倉庫から外に出る。しかし施設の敷地内の入口へと向かう途中でコニアに立ちふさがれた。
「私の可愛いニャオハちゃんを連れ去ろうなんていけない子ね?」
リコは威圧的なコニアに身構えて対峙する。しかしコニアの視線がニャオハに移った瞬間、コニアは態度を激変させた。具体的には目がハートになって猫なで声で話し始めた。
「ニャオハちゃ~ん♡ こっちにおいで~♡ 美味しいご飯もあるわよ~♡」
「ニャー? フンッ」
しかしニャオハの返事はNO。「何言ってんだこいつ?」的に首をかしげてそっぽを向いた。
「ええっ!? あなたとあんなことやこんなこと、たくさん愛を育むつもりだったのにぃ!? よくも私の純情を弄んだなぁ! ゴルダック、エアームド!」
「──ゴルダァ!」
「──エアァー!」
勝手に焦がれて勝手に玉砕したコニアが逆切れ気味にゴルダックとエアームドを繰り出す。飛行、鋼タイプのエアームドは草タイプのニャオハとはすこぶる相性が悪い。岩タイプのイワンコでも等倍だ。毒タイプであるベベノムは論外。
炎タイプをもつヒスイガーディが唯一の対抗手段だが、そこはゴルダックでカバーするつもりなのだろう。しかも、リコもコニアも知らないが、ヒスイガーディは炎、岩タイプなので水タイプのゴルダックには通常種のガーディよりもさらに相性が悪かった。
「草タイプのニャオハがエアームドに勝てるはずない。謝るなら今だけど?」
数はこっちの方が多いとはいえ、向こうの方が格上。しかもリコはバトルはほぼ素人で、ニャオハ以外の技構成も把握していない状態で4匹まとめて指示を出すなんてことはできない。
「ニャオハ、学校の時を思い出すね。一緒に逃げて、あいつらが追いかけてきて」
「ニャ!」
「今度は負けない……!」
しかし、今のリコは不思議と負ける気がしなかった。正確には逃げられない気がしないのほうが正しいか。
リコとニャオハは、一歩前に出る。
「切り抜けよう! 私たちの技で!」
「ニャハッ!」
「ニャオハ!『このは』!」
「ニャァォハァー!!」
リコの指示で、ニャオハの首元の体毛から『このは』の旋風が放たれた。エアームドがコニアとゴルダックの前に出て、翼を広げて盾となるが、『このは』の余りの量にコニアもゴルダックも反射で顔を腕で隠した。エアームドすら目をつぶっている。
「言ったはずよ!『このは』なんてエアームドには痛くもかゆくもない! にしてもなんて量よ……あっ!?」
やがて『このは』が晴れてコニアが視線を戻した時、そこにはリコたちはいなかった。リコたちは『このは』を目暗ましにしてまんまと逃げおおせたのだった。
□□□
場面は戻って、シンゴとマグマラシ、アメジオとソウブレイズのバトル。燃える『スピードスター』群の爆発が晴れると、マグマラシもソウブレイズも姿を消していた。
シンゴとアメジオがフィールドを見据える中、マグマラシが地面の下から。ソウブレイズが闇のゲートの中から同時に現れた。
「『あなをほる』か。回避の手段も用意してあるとは、面倒な奴だ」
「そっちこそ『ゴーストダイブ』で逃げてんじゃねえわカス」
「……シンゴといったな。確かにお前はただの子供ではないようだ。ジルとコニアでは荷が重かったらしいな。だからこそ、その才能、倒しがいがある……!」
「たりめえだろうが認識が遅えんだよノロマがぁ……!」
マグマラシもソウブレイズもそれなりのダメージは負ったが、まだまだバトルは続けられそうだ。しかし、『かえんぐるま』が直撃しているので特性『くだけるよろい』を発揮させたソウブレイズはスピードが増している。不利はどちらかと言えばマグマラシの方だろう。
だがシンゴはそれがどうしたとばかりに目をギラつかせてアメジオを睨んだ。シンゴは負けた時のことなんて考えない。いつだって、イメージするのは勝利を手にしている自分だ。
「久しぶりにテンションダイナマイト級にMAXだわ……! やれるよなぁマグマラシぃ!」
「マァァァァァグ!!」
「ソウブレイズ。次で決めるぞ」
「ブレイィ……」
マグマラシが気合を込めて頭部と臀部から炎を吹かせ、ソウブレイズも剣をマグマラシへと向けた。
が、その時アメジオの目に、緑色の旋風が吹き荒れるのが目に入った。施設の入り口から外に出ていくリコと、ニャオハたちも。
「そうか……! 救出に離脱までの時間稼ぎというわけか! フリード! お前の作戦だな!?」
「いやいや、俺はちょっとアドバイスしただけさ。リザードン!」
アメジオはバトルを見守っていたフリードへと視線を向けるが、フリードは得意げに自分の胸に拳を当ててそう返し、キャップを肩に乗せてボールから出したリザードンの背中に飛び乗った。
「バトルを中断させてすまないが、決着はまた今度にしてくれ! シンゴ掴まれ!」
フリードはシンゴにそう呼びかけるが、シンゴは答えず、振り返りもしない、あくまでアメジオと、ソウブレイズを見据えるだけだ。
フリードはシンゴの
「おいシンゴ! 合図があったら撤退するって言ったろ!」
「まだバトルは終わってねえ……! あの野郎と決着つけんだよ!」
「……ああ仕方ない! バトルなら後で俺が相手になってやるよ! リザードン!」
「リザァァ!」
断固として背を向けることをしようとしないシンゴを、リザードンが後ろから抱きかかえて捕まえ、そのまま飛び立った。シンゴはマグマラシを咄嗟にボールに戻してフリードの方へ向いて怒鳴なる。
「オイコラフリードォ! 下ろせや!」
「深追いはするなって言ったろ? 大丈夫だ、アメジオとはまたいつかバトルする機会があるさ!」
「クッソがぁ……! 覚えてろよ半分頭ぁ!」
「そりゃどっちかって言うとアメジオのセリフだろ……おい暴れるなって!」
飛び去るリザードンと、リザードンに運ばれたまま手足をばたばたさせてこちらを睨むシンゴを、アメジオとソウブレイズはそのまま見送ることしか出来なかった。
ただ、アメジオは拳だけは力強く握りしめて。
「フリード、そしてシンゴ……あのダイチという少年もか。次は必ず倒す……!」
□□□
その後、フリードとシンゴはニャオハを救出したリコとポケモンたち、そしてマードックとも合流し、港に停泊してあったブレイブアサギ号へと帰還した。その頃にはブレイブアサギ号の修理もオリオとダイチの手によって終えていた。
結果的にモリーに押し付けることになったポケモンセンターからのキズぐすりも無事運び届けられていた。リコとシンゴはモリーに軽く叱られたが。
そうしてブレイブアサギ号はその日の内に港から出航。飛行船が海上を飛び、夕日が海の向こうへと沈もうとしている中、ライジングボルテッカーズのメンバーは甲板に集まっていた。マードックがイワンコを抱きしめて頬ずりしている。
「やっぱお前の鼻はぴか一だな~!」
「ああ、大手柄だ。もちろんガーディもな」
「一時はどうなるかと思ったけど、何とかなってよかったですよホント……」
「ジメジメ」
ダイチは胡坐をかいて座り、お腹に角を押し付けて甘えようとしてくるヒスイガーディと格闘しながら安堵の溜め息を吐いた。ジメレオンも背中合わせに座っている。
リコもニャオハも怪我一つ負わなかったし、唯一傷だらけなのはバトルをしたマグマラシだが、モリーがキズぐすりで治療して今では包帯を巻いているもののピンピンしている。
ただ、全く納得のいっていない者もいた。バトルを中断させられたシンゴ、それにマグマラシだ。マグマラシは港の時よりもさらに苛立たしく後ろ足で甲板を叩き、シンゴは船室の屋根に腰かけているフリードの向かって吠える。
「ぜんっぜん良くねえわ! あの半分頭とのバトルも中途半端に終わったんだからなぁ! フリードテメエ、覚えとけよ!」
「だから悪かったって。また今度、バトルの相手になるからな」
「おおリコ!」
一同が雑談していると、船室への扉が開いてリコとニャオハが姿を現す。ホゲータが嬉しそうにニャオハへと駆け寄り、ニャオハもリコの腕から飛び降りて笑顔になる。
リコは控えめに話し始める。
「あの……こんなこと言うのも、今更なんですけど……私、皆さんを信じてみようかなって……」
「なんだ? 疑っていたのか?」
「だって、何の説明もないし、連れ去るし、その……正直見た目も十分怪しいので……」
「そいつはフリードが悪い」
「たしかにフリードが全部悪いね」
「おいお前ら、そりゃないだろう……」
「あと、怖い人もいるし……」
「誰のことだコラぶっ飛ばすぞ」
「それはシンちゃんでしょ!? そういうとこだよ!」
リコの発言にフリードが苦笑いになり、マードックやオリオも頷いた。続けて出たリコの言葉にシンゴが返してダイチがツッコんだ。というかぶっ飛ばすとか言ってる時点で自覚している。
「私に何が起きてるのかわからないけど、ペンダントのこととか、なぜあの人たちに狙われるのか、それを知りたい……」
その場にいる全員、リコの言葉を静かに聞いていた。リコは全員の顔を順番に見て、最後にニャオハに目を合わせてから続ける。
「だから、もう少し私に付き合ってください!」
言い切ったリコの瞳は強い決意に満ちているように、ダイチにはそう見えた。彼女は今、大きな一歩を踏み出したのだ。
「(僕の時もこうだったのかな……)」
「うーん、どうする? キャップ」
「ピッカッチュウ」
「キャップがそう言うなら」
フリードはキャップに確認を取ると、キャップは笑顔で返した。フリードはキャップとリザードンと一緒に船室の屋根から甲板に飛び降りて着地し、リコに向き直る。
「んじゃあ、改めて引き受けよう」
「いいんですか!?」
「どの道俺たちは最初からそのつもりだしな。それに、ペンダントの謎は俺たちだって知りたい」
リコ以外の一同が、自然とフリードのもとへと集まる。
「俺たちの使命はポケモンの謎、世界の謎を解き明かすこと。人呼んで『ライジングボルテッカーズ』だ!」
「リザァァー!!」
フリードの名乗りに合わせるようにリザードンが吠える。しかしリコのリアクションは薄かった。
「……そういう人たちだったんですか?」
「あれ? 言ってなかったか?」
「聞いてませんっ」
「おいおい……」
「ホントに何も説明してない……」
「そりゃああたしたちヤバい集団じゃん」
「何も言い返せない……」
「アホかよ」
マードックが頭を掻き、モリーが目を伏せ、オリオがやれやれと首を振った。ダイチも苦笑いするしかなく、シンゴはストレートに悪態ついていた。
「ま、まあまあ、何はともあれ、リコさんは仲間になったってことですよね」
「そうだな。改めてよろしくな、リコ」
フリードがリコに向かって拳を突き出す。続けてシンゴ以外のメンバーが、最後にシンゴがそっぽ向きながら拳を突き出した。港でも行っていた、ライジングボルテッカーズのハンドサイン、仲間の証だ。
それを思い出したリコは笑顔で「よろしくお願いします!」と拳を突き出して返す。7人の拳がぶつかり、パッと手を広げ、一度下に向けてから掌を上に返して持ち上げた。リコも見様見真似で、一歩遅れて上へと伸ばす。船主で釣り糸を垂らすランドウも同じようにしていた。
「よろしくリコさん! それでフリード博士、次はどこに向かうんです?」
「おう、次に目指すはパルデア地方のリコの家! ヨーソロー! 依頼主のリコのお母さんにボディガード代を貰いに行こう」
「台無しですよ!?」
「お金がなければ冒険もできん」
「いやそうですけど!」
ロマンもへったくれもないフリードの方針にダイチは叫んだ。しかし実際その通りなので何も言えなくなる。一同、そんな雰囲気に笑い声をあげる。
溜め息がまた出たが、ダイチはフリードが指差した先、改めて広大な海を赤く染める夕日を見ながら、内心ワクワクしていた。
リコが仲間に加わったことがきっかけで新しく始まる、この先に待ち受ける冒険と、新たな出会いを予感しながら。
マグマラシ ひかえめ? な性格 特性 もうか
かえんほうしゃ かえんぐるま スピードスター あなをほる
ドロンチ ようきな性格 特性 すりぬけ
ドラゴンダイブ りゅうのはどう ふいうち ゴーストダイブ
ビリリダマ(ヒスイの姿) おくびょうな性格 特性 せいでんき
ほうでん チャージビーム ???? ????
ベベノム がんばりやな性格 特性 ビーストブースト
ようかいえき ???? ???? ????
Tips.マグマラシはヒノアラシの頃はシンゴにビビっていたが、進化して気が強くなったからか、今ではトレーナーに似たらしい。
次回 第六話 消えた食いしん坊を追え!