ライジングボルテッカーズにポケモンオタクとバトルジャンキーを加えてみた 作:ギザ
なぜなら何気なくポケモンの覚える技を確認していたら、致命的な矛盾点を見つけてしまったからです。
聡明でボケモンを愛してやまない皆様ならもうお気付きかもしれません。そう、ジメレオンは『アクロバット』と『れいとうビーム』を覚えませんね? なんで気付かなかったぁーっ!?
いやインテレオンが覚えるからてっきりジメレオンが覚えられるもんかと……はい、反省してます。本当に申し訳ありませんでした。
「ホゲーター? どこにいるの~?」
「ホゲーター!……うーん、ガーディを連れてくるべきだったなあ……」
ダイチとリコは船から落っこちて行方不明となったホゲータの捜索を行っていた。しかしホゲータを呼びながら広い森の中を2人と2体で歩き回るも、中々見つからない。探し物が得意なヒスイガーディは今頃ダイチの部屋のベッドでゴロゴロしているだろう。
無い物ねだりしてもしょうがないので、犬ポケモン程ではないにしろ人間よりよっぽど鼻が利くニャオハと、ホゲータの残したわずかな痕跡、足跡も見逃さないようにとかげポケモンらしく地を這って歩くジメレオンを頼りに探すしかなかった。
「ニャオハッ!」
「ジメメ」
「! 何か見つけたの?」
やがてニャオハとジメレオンが見つけたのは木の根本にぽっかり空いた"
「これ、ホゲータが……?」
「あー、これは……」
リコがしゃがんで覗き込むと、中は食べかすやきのみのヘタでいっぱいだ。恐らくホゲータが食べた残りかすだろう。そしてそれだけ見てなんとなく事態を察したダイチはまた嫌な予感が膨れ上がっていた。
「ダイチ、どうしたの?」
「……ここ多分、野生のポケモンたちが集めた食料を保管する食料庫なんじゃないかな……?」
「えっ?」
「船でご飯を食べ損ねてホゲータもお腹を空かせてただろうけど、正直ホゲータが自力でこの量のきのみを集めるのは難しいと思うし。もともとここに溜め込まれてたきのみを見つけて全部食べたんだとしたら……今この状況を野生のポケモンたちが見れば、ここにいた人がご飯泥棒ってことになる……」
「そ、それってつまり……」
「よしリコさん、一旦ここを離れて……」
ダイチの推理を聞いて同じく事態を把握したリコが顔を青くし、ダイチは即刻移動しようとしたその時だ。
──がさがさがさっ!
と、背後から草花が揺れる音がした。ダイチとリコはビクッと肩を震わせ、恐る恐る背後に振り向いた。
「ほ、ホゲータ?」
「そうだと良いけど……」
ホゲータだったならばそのまま抱えてでも船に戻るつもりだったが、希望に反して草むらから現れたのはキャタピー、ビードル、ナゾノクサにディグダ、そしてマダツボミが2体ずつ。きのみが空っぽになったうろを見て怒りのボルテージを上げているようだった。
「み、皆怒ってる……!」
「やっぱりそうなるよね! リコさん、こっち!」
「ひゃあ!?」
キャタピーとビードルが一斉に『いとをはく』を繰り出してきた。攻撃技ではないが、虫ポケモンの糸はどれも頑丈で、もし捕まったら逃げられなくなるのは確実。
ダイチは咄嗟にリコの手を掴んで糸から逃れ、森の中を駆け出す。そして食料庫を荒らされて怒り心頭の野生のポケモンたちも当然追いかけてきた。
「ど、どこまで逃げるの!?」
「バトルで追い払うわけにはいかないしね……! とにかく撒く!」
シンゴだったら容赦なくバトルを仕掛けていただろうが、ポケモンの生活を脅かすようなことは極力避けたいダイチからすればその選択肢は最初から存在していなかった。
とはいえ興奮している野生のポケモンたちがこのまま矛を納めてくれるかと言えば、おそらくそんなことはない。今のところ使ってくる技がキャタピーとビードルの『いとをはく』だけだから良いものの、追い付かれて『どくばり』で刺されようものなら洒落にならない。
「「──ストライィク!」」
「待って待って、ストライク!? どっちも怒ってるけど!?」
「うわああ生で初めて見たすごい! って言ってる場合じゃない! ジメレオン!『とんぼがえり』で翻弄して!」
しかも、進路方向にかまきりポケモンのストライクが2体も現れ、両手の鎌を振り上げて立ち塞がる。初めての映像越しではないストライクの姿に感動するも、ダイチはすぐにジメレオンに指示を出す。
『とんぼがえり』を発揮したジメレオンがストライク2体の間に割り込んで『きりさく』を引き付けている間にダイチはリコの手を引いたまま進路を変えてその場から離れた。ストライクたちはジメレオンに任せるとして、キャタピーやビードルたちは依然としてダイチとリコを追いかけてくる。
「ま、待って、ジメレオンは!?」
「ジメレオンなら大丈夫! ああもう、この感じ久々だなぁ!」
野生のポケモンたちとの追いかけっこは初めてではない。ライジングボルテッカーズのメンバーに加わってからも何度か経験した。スピアーだったりズバットだったり、
──良いかダイチよ。ポケモンはな、怖い生き物なんだよ。
幼い頃、シンオウ地方の実家の"庭"に現れるポケモンを観察していた時、祖父に言われた言葉を思い出してダイチは息を飲む。事実、ポケモンに怖い目に合わされたこともある。ポケモンの中では弱い部類に入るであろう彼らだって、やろうと思えば人間を傷付けることなど造作もないのだ。
その恐怖が沸き上がり、リコの手を握る手につい力が籠る。
「痛っ……ダイチ?」
「……僕1人なら良いけど、リコさんをそんな目に合わせるのは早すぎるよね……!」
「えっ?」
しかし、それは冒険にはいつどんな時にだって付きまとうものだ。
冒険をする以上、いつかはリコもそういう壁にぶつかる時が来るのかもしれない。エクスプローラーズのような人的のものではなく、大いなる自然やポケモンに立ち向かわなくてはいけない日が。
でもそれは、きっと今じゃない。
ダイチはリコの手を握り直し、思考を巡らせる。この事態を解決するために。
「バトルで追い払うのは論外として彼らが怒ってるのは僕らに食料庫を漁られたからだって思いこんでるからだけど無実の証明のしようがないし実際仲間のホゲータが食べちゃったんだから僕らの責任みたいなとこあるしなんとかしよう。となるとやっぱり補填してあげるのが一番確実。でもまずは落ち着かせないと……! そうだ、ニャオハなら! よしなんとかなる! リコさん、きのみを探してくれる!?」
「えっ? 急になんで!?」
「いいから! ニャオハも!」
「わ、わかった!」
戸惑うリコを急かし、ダイチはきのみを探す。追いかけてきたポケモンたちも段々と近づいてくるのが聞こえ、ニャオハも辺りを見回した。
「ヤバい、追い付かれるか……!?」
なかなかきのみを見つけられず、ダイチが焦ったその時だ。突如カンカンカン、と音が鳴り、ポケモンたちがそちらに気を取られ始めたのだ。
「こ、今度は何?」
「……石?」
ダイチはどこかから飛んできた石が木から木へと反射して音を立てているのが一瞬見えた。ジメレオンではない。いったい誰が、と思って探す前に、ニャオハが声を上げた。
「ニャー!」
「……あった! ダイチ、あそこ!」
「よし! リコさん、ニャオハに『このは』をポケモンたちに向けて撃たせて! 威力は落として、目眩ましさせる感じで! あと『このは』にフミフミして出た香りを混ぜさせることって出来るかな!?」
「ええっ!? ち、ちょっと待って! ニャオハ、ダイチが言った通りに『このは』出来る!?」
ニャオハが鳴いた方を見たリコが木に成っているオレンの実やラムの実を見つけ、それを聞いたダイチは纏めて指示を出した。リコは注文の多さに困惑しながらニャオハに確認する。
「ニャ! ニャオッハァー!」
ニャオハは心配無用とばかりにダイチとリコの指示に頷いて野生のポケモンたちの方を向き、前脚を地面にフミフミしながら大量の『このは』を放った。フミフミによって発生したアロマセラピー効果を持つ甘い香りが拡散された『このは』に乗り、それによって視界を防がれた野生のポケモンたちは怯んで足を止めてしまっていた。
ポケモンたちは自分たちを飲み込んだ『このは』の中で混乱していたが、甘い香りに包まれて次第にリラックスしていき、落ち着きを取り戻していく。
「ジメレオン! きのみに鋭く『みずのはどう』! なるべく多く撃ち落として!」
その隙を見逃さず、ダイチはここにいないジメレオンに指示を出す。するとどこからともなく水の弾丸が連続で飛んで次々ときのみのヘタに的確に命中。枝から落ちてポロポロと地面に散らばった。それらをリコと一緒に拾い集めて一ヶ所にまとめた。
やがて『このは』が晴れて野生のポケモンたちの視界が戻る頃には、目の前にはきのみが山積みにされていた。興奮状態から落ち着きを取り戻し、散々走ったポケモンたちはやはりお腹を空かせていたのか一斉にきのみの山に群がって皆で食べ始めた。
「ふぅ~……これで落ち着いてくれたかな……」
「皆、嬉しそう……! 良かったぁ……」
「──ストライィィク!……スト?」
「きゃっ!? ストライク!?」
きのみに夢中になっているポケモンたちをリコはほっとして見詰めた。
そこに追い付いてきたのはジメレオンが引き付けていた2体のストライクだ。しかし追い付いたは良いものの、怒っていたはずの仲間たちがきのみを食べている光景に困惑して目を白黒させ、仲間たちとダイチたちを見比べている。
ダイチはというとストライクに歩み寄り、手に持ったラムの実を差し出す。
「ストライ……?」
「ごめんね、君たちのご飯を食べちゃったのは多分、僕たちの仲間なんだ。その子の分まで、許してくれないかな?」
「……ストライク!」
ストライクは最初は警戒していたが、ダイチの敵意の無さを感じ取ったのか、口で直接咥える形でダイチからラムの実を受け取って食べた。もう1体のストライクもそれに倣いラムの実を受け取って食べる。2体はダイチに頷いてみせたので、どうやら許してくれたようだ。
「ありがとう!」
「ストライ」
ストライクたちは頷くとキャタピーたちに混ざってきのみを食べ始めた。ダイチとリコは顔を見合わせ、ほっとして笑い合った。
「ジメ」
「ジメレオン! 無事だったんだ!」
「お疲れさまジメレオン。ナイスショット!」
そこに木の枝の上からするすると降りてきたのはジメレオン。『とんぼがえり』でストライク達を翻弄した後は透明化して木の上から援護射撃する準備をしていたらしい。ダイチはジメレオンならそうしてるだろうなと信頼し、指示を出したのだ。
「さてと……あとはホゲータを探さないとね」
「(そういえばそうでした……)ち、ちょっと休憩しない……?」
「ニャオ~……」
ジメレオンを褒めて労ったダイチが言うとリコとニャオハはハッとしてそもそもの目的を思い出した。しかし先ほどまで走り回っていたリコが疲れた表情で言うとニャオハもぐったりして同意する。
「あー、そうだね。少し休んでからまた探しに行こうか。というかいきなり手を握ってごめんリコさん……(緊急とはいえ思いっきり女の子の手を握っちゃったよ……!)」
「え、あ、ううん、お陰で助かったから!(そ、そういえばさっきまで手を握られてたんだよね……)」
申し訳なさそうにするダイチにリコは首を横に振る。なおお互い内心では異性の手を握ってしまったことを意識してしまい、穏やかではなかった。
今朝の空気がまた舞い戻りそうになった時、ジメレオンが降りてきた木とは別の木の上から声がかかった。
「おーい、大丈夫だった!?」
「ホンゲ~!」
「ホゲータ!?」
「(……と誰!?)」
木の枝から降りてきたのは褐色肌で逆向きに被った帽子からピンクの前髪を零れさせた小柄な少年だ。そしてその肩にはダイチとリコが探し求めていたホゲータが乗っていた。そのホゲータは呑気にダイチとリコに手を上げている。
「ホゲータ? それもしかして、こいつの名前!?」
「えーとうん、ほのおワニポケモンのホゲータだよ」
「へぇ~! お前ホゲータって言うのか! 確かにホゲータって顔してる! よろしくな!」
「ホンゲ!」
少年に名前を呼ばれてホゲータも嬉しそうに返事をしている。何があったのかはわからないが、この短期間で随分仲良くなったらしい。
「向こうの丘の上で歌ってるのを僕が見つけたんだ! ひょっとしてこいつ、君たちの仲間なの? ってことはあの船みたいなのに乗って来たんだ! すごいや!」
「そ、そういうことになるのかな。ちょっと落ち着いて話さない?」
少年のテンションについていけないダイチはしどろもどろに返事をする。ダイチもポケモンに関して知らないことはつい聞き込んでしまうタイプだが、聞かれる側になることはあまり無いので慣れていなかった。
少年は目を爛々とさせて興味津々といった様子だったが、ダイチに言われてそれもそうかと頷いた。
「ごめん、いろいろ気になっちゃって! 僕はロイ! 爺ちゃんたちとずっとこの島に住んでるんだ!」
「僕はダイチ。こっちは相棒のジメレオンだよ。ホゲータを保護してくれてありがとう」
「ジメ」
「リコです。この子はニャオハ」
「ニャオハッ!」
ロイと名乗った少年が差し出した手を握ってダイチたちも自己紹介をする。島から一歩も出ずにずっと暮らしていると言う彼は島の外のことに触れる機会があまりないらしく、目を輝かせてダイチ達を見ている。
「さっきの凄かったよ! 僕初めて見た! あんな方法で興奮したポケモン達を落ち着かせるなんて!」
「えーと、ほとんどダイチの作戦だよ」
「そうなの? 僕とそんなに変わらなそうなのに凄いや! ポケモン博士みたいだった!」
「い、いやいやいや、そんな僕がポケモン博士だなんて恐れ多い……!」
「恐れ多いの!?」
ポケモン博士になることが一種の目標であるダイチにとって自分はまだまだ勉強不足だと思っており、その賛辞は素直に受け取ることが出来なかった。掘り起こされる前に別の話題に切り替える。
「それより、さっき石を投げたのってロイくんなの?」
「くんはつけなくていいよ。ホントは2人を安全な場所まで誘導するつもりだったんだけど、必要なかったね!」
「いやいや、ポケモンたちの気を引いてくれただけで十分すぎるよ。ありがとうロイ」
「私からもありがとう」
「えへへ、どういたしまして! そうだ、他にもポケモン持ってたりするの!? 出身とかどこなの!?」
ロイは嬉しそうに笑った。ダイチもリコもホゲータを保護してくれたことも含めて、彼の行動には感謝している。しかしまた質問責めになりそうな雰囲気を感じてダイチとリコは苦笑した。どうしても聞きたいらしい。
ホゲータも見つかったことだしとっととブレイブアサギ号に戻っても良いのだが、その前にダイチにはやりたいことがあった。
「リコさん、船に戻る前に、もう少し付き合ってもらっても良い?」
「うんっ、大丈夫だよ。多分、ダイチと同じこと考えてた」
リコも休憩を終えて立ち上がった。考えが被っていたらしくお互い顔を見合せ、可笑しそうに笑う。そしてダイチはロイに提案した。
「ロイ、質問答える代わりにちょっと手伝ってもらっても良いかな?」
「うんっ、良いよ! 何をすれば良いの?」
「(決断早い……!)」
「うん、それはね……」
□□□
ダイチがロイに出した条件はポケモンたちのきのみ採取の手伝いだった。きのみを集めて例の食料庫まで運び、ついでにホゲータに教育もしっかりしておく。ホゲータは事の発端が自分だとわかって野生のポケモンたちに謝り、許しを貰うことが出来たらしく、謝った数分後には仲良くじゃれ合ってすらいた。
そんなポケモン達を眺めながらもダイチとリコは色々と島の外について興味津々のロイの質問に答えていた。
「飛行船で世界中を旅してるのか~! すっごく楽しそう!」
「大変なことも多いけど、充実してるよ。ロイには夢はあるの?」
「あるよ! ポケモントレーナーになって島から出て、世界中を旅して色んなポケモンに出会いたい! それで、これのことを調べたいな!」
そう言ってロイがバッグから取り出したのは見たことのない、スチームパンクチックなモンスターボールだった。ロイは人差し指に乗せてそのボールを回している。
「それは?」
「僕のお宝。"いにしえのモンスターボール"って呼んでる。ずっと昔のものじゃないかなって爺ちゃんに聞いたら、じいちゃんもそうかもなって」
「中には何が入ってるの?」
「いや……実は爺ちゃんがすごい昔に拾ったもので開きもしないし、中身はたぶん空っぽ」
「ふぅん……?(実家に保管されてるボールともベベノムのボールとも違うなぁ)」
モンスターボールにも様々な種類があり、基本のモンスターボールから性能が上がったスーパーボール、ハイパーボール。特定のポケモンが捕まえやすくなるネットボールやダークボール。滅多に出回らないおしゃれなボールなんてのもある。実はダイチの腰のボールホルスターにも一つそれがぶら下がっていたりする。
ダイチもポケモンを調べる上で一般に出回ってるボールの知識も持っているが、このような形状のボールは見たことがなかった。
「僕、トレーナーに憧れてるんだ。ただのトレーナーじゃなくて小さい頃爺ちゃんに聞かせてもらった古の冒険者みたいなトレーナーに!」
「古の冒険者……どんな人なの?」
「伝説のポケモンたちに挑戦し世界を巡って旅を続け、いつか誰も知らない場所でポケモンたちとお宝を目指す! そんな冒険者! かな!」
熱弁するロイの顔は年相応であり、希望とワクワクに満ち溢れていた。ダイチとリコはきのみを運び終え、そんなロイの夢を微笑ましそうに聞いている。
「だから僕はいつか、自分だけの相棒を見つけてトレーナーになって旅をする! まずは爺ちゃんに許してもらって島を出られるようになったら、色んなポケモンと出会って、この目で世界を見るんだ! ……ってごめん、ちょっと夢中になっちゃった」
そんな自分の熱弁に恥ずかしさを感じたのか少し頬を赤らめたロイが謝る。しかしダイチもリコもその夢を笑ったりはしなかった。
「夢があるのは良いことだよ。ただ漠然と旅するよりよっぽど有意義になると思う。応援するよ」
「私も、頑張ってほしいな。応援してる」
「えへへ、ありがとう! 2人とも!」
ダイチとリコにそう言われたロイは顔を綻ばせてまた笑った。どうやら照れていたらしい。その笑顔を見てダイチとリコも自然と笑みを浮かべる。
朗らかな雰囲気の3人とポケモン達を包む中、ダイチとリコには見覚えがある影が3人の頭上を通過した。リザードンだ。
「あれって……リザードン!?」
「ダイチ、リコ! お前らここで何して……いやどういう状況だ?」
「フリード博士!」
「え!? この人ポケモン博士なの!?」
飛行していたリザードンが降りてきて、同時に姿を表したのはフリードとキャップ。フリードからすれば船で待機してるはずのダイチとリコがなぜか野生のポケモンたちがご飯を食べてる側で見知らぬ少年と談笑しているのだから訳がわからないだろう。
ダイチは事のあらましをフリードに説明した。
「……なるほど、ホゲータを探してるうちにこうなったと……村の人達がポケモン達が暴れてるって騒ぎになってたんだが、そういう理由だったか」
「お騒がせしてすいません……」
「いや、見た感じ解決したんだろ? 良くやったじゃないか。さすがポケモン博士志望だな」
「やめてくださいよ……」
フリードの褒め言葉にダイチは恥ずかしそうにする。フリードはそんなダイチを見て優しく笑いながら帽子の上からガシガシと頭を撫でた。そのままロイの方を向く。
「それで、君がホゲータを保護してくれたんだって? 俺はフリード。ホゲータを助けてくれてありがとう」
「ロイです! どういたしまして! あの、ポケモン博士って本当ですか!? 凄いです!」
「まあそんなとこかな。俺はそんな立派なものじゃあないが」
「(そういえばダイチはフリードさんのことずっと博士って呼んでたけど、本当に博士だったんだ……)」
リコは今更ながらにダイチがフリードを博士と呼んでいたことを思い出していた。ただあまり気にしていなかったが、本当に博士だったとは。
「さてと、そろそろ帰るかリコ、ダイチ」
「そうですね。フリード博士、リコさんとニャオハはリザードンで運んであげてください。僕は歩いて帰るんで」
「え、でも……」
「良いって良いって。リザードンで全員運ぶのは無理があるし、僕は船までの道を覚えてるしさ」
「……わかった。じゃあお言葉に甘えて」
フリードがリザードンの背中に乗り、キャップとホゲータも背中へ。リコとニャオハはリザードンの両腕に抱えられて空を飛ぶ。
「それじゃあまた後で!」
「うん、後でねダイチ! ロイも、じゃあねぇー!」
「ばいばいリコー! ホゲータもー!」
「ホンゲェ~!」
そしてリザードンが飛び去るのをロイと2人で見送った。ホゲータはリザードンの背中で見えなくなるまでロイに向かって手を振っていた。
「ホゲータはロイのこと、気に入ったみたいだね」
「そうかな……そうだと良いな」
こちらもこちらでホゲータが見えなくなるまで手を振っていたロイは、そう言って嬉しそうに笑った。その笑顔に、ダイチも嬉しくなる。出会って短いながらもお互いに絆を感じていたんだろう。
ダイチはこのまま2人を別れさせるのは惜しいと思った。きっと良いコンビになりそうだとも。
「僕たちはもうちょっとこの島にいると思うからさ。良かったら遊びにおいでよ。ホゲータも喜ぶし。僕らの話でよければ幾らでも聞かせてあげられるしね」
「っ! 良いの!? やったぁ! 約束だよ!? 絶対、絶対だからね!?」
「うん、約束。それじゃあ気を付けて帰るんだよ」
ロイと握手をして別れの挨拶を交わす。名残惜しそうにしながらもロイは笑顔で手を振りながら森を駆け抜けていった。それを見送ってからダイチとジメレオンも歩き出す。
「僕らも行こうジメレオン」
「ジメ」
再会の約束をしてロイは村へ、ダイチとジメレオンはブレイブアサギ号へ。
別々の方向へ向いた2人は笑いあっていた。
これ書いた後にアニポケ最新話見て「リザードンで結構運べるやんけ!」ってなりました。
次回 第八話 生き物を舐めたやつはだいたい痛い目に遭う