ライジングボルテッカーズにポケモンオタクとバトルジャンキーを加えてみた   作:ギザ

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第八話 生き物を舐めたやつはだいたい痛い目に合う

 船から落ちたホゲータをダイチとリコが共に捜索し、島の少年ロイと出会った翌日の朝5時。

 

 水平線の向こうから顔を覗かせた太陽の朝日が船を照らし始めた頃。ブレイブアサギ号から降りた人物とポケモンがいた。シンゴとマグマラシだ。1人と1体は船を離れて砂浜の方まで歩く。

 

 黒いタンクトップに緑のカーゴパンツ姿のシンゴはあくびして、食糧庫から頂戴してきた真っ赤なマトマの実を平らげて小腹を満たし、もう一つをマグマラシに食べさせると、モンスターボールを二つとネオンカラーのボールを投げつけてポケモンたちを外に出す。

 

「──ドロロロ」

「──ヴェヴェヴェ~」

「──ビリリィ……」

 

 まず出てきたドロンチが体を伸ばし、その頭にベベノムが眠そうに乗っかった。ヒスイビリリダマは仮にも草タイプであるからか、朝日を浴びて光合成をしている。

 

 シンゴはそれぞれの好む味のきのみを投げつけて食べさせると、スマホロトムのアラームをセットし、両手をパァンっ! と鳴らす。その瞬間、寝起きであろうポケモンたちは(音にビビったヒスイビリリダマを除いて)表情を引き締めて並んだ。

 

「おし、アラーム鳴るまで特訓すっぞテメエらぁ! まずはビリリダマぁ、テメエの回避の練習だぁ……!」

「び、ビリリーッ!?」

 

 凶悪な笑みを浮かべた主人と、一斉に自分の方を向いた同僚たちの視線に泣き出したヒスイビリリダマはバビュンッ! と音が鳴りそうな勢いで砂浜を転がって逃げ出した。マグマラシと、ベベノムを頭に乗せたままのドロンチが後を追う。

 

「マグマラシ、『かえんほうしゃ』! ドロンチ『りゅうのはどう』! ベベノムは『ミサイルばり』だぁ!」

 

 指示を受けたマグマラシが走りながら口から激しい炎を放ち、上空を飛ぶドロンチが口からドラゴンエネルギーの衝撃波を、ベベノムは頭の毒針から3発の鋭い針を発射する。

 

 それら全てがヒスイビリリダマに迫るも、ヒスイビリリダマは器用にコースを変えたり跳ねたり、急速に方向転換して巧みにかわす。おくびょうな性格ゆえ、危機感地能力がやたらと高いからこそ出来る芸当だった。

 

「『スピードスター』!」

 

 しかし次に来る攻撃はそうはいかない。シンゴの指示を聞いたマグマラシが全身から『スピードスター』を放つ。

 

 必中技ゆえにどれだけ逃げようとも追いかけてくる星型エネルギー弾に対し、ヒスイビリリダマがとった行動は迎撃。自らを中心に『ほうでん』して『スピードスター』を全て撃ち落とす。

 

「ビリリ~……」

「ドロロロロ!」

「ビリーッ!?」

 

 『スピードスター』をやり過ごしてホッとした束の間、自分の真下に出来上がった闇のゲートから飛び出したドロンチによってヒスイビリリダマは空中へと跳ね上げられた。『ゴーストダイブ』だ。

 

 空中へと強制的に運ばれ、そして重力に従って落ちようとしている自分に向けて、口を大きく開いたベベノムが視界に映った。その口内では先ほどドロンチが放ったのと同じ色のエネルギーがチャージされていた。

 

「ベベノムぅ!『りゅうのはどう』ぉ!」

「ヴェ~!」

「び、ビリリリ!」

 

 ヒスイビリリダマも慌てて『チャージビーム』を放とうとするが、それよりも早くベベノムの口から『りゅうのはどう』が放たれ──

 

──ボフンッ!!

 

「ベホッ!!」

 

──ることはなかった。『りゅうのはどう』が放たれる前にベベノムの口の中で暴発、爆発したのだ。

 

 ベベノムはダメージを受けて口から煙を吐きながら落下し、その下に割り込んだドロンチの頭に乗っかった。同じタイミングでヒスイビリリダマも砂浜に着地する。

 

「……チッ、まだ完成しねえか」

「ビリリィ……」

 

 落胆した様子のシンゴにヒスイビリリダマが心配そうに見ている。はっきり言って乱暴かつ怖い主人だが、不思議と嫌いではなかった。特訓やバトルは死ぬほどキツイし逃げ出したくなることも度々あるが。

 

 ベベノムの技に関してヒスイビリリダマに出来ることは何もない。的になるのだけは絶対勘弁だとして、せめて傍にいようかと転がって移動しようとした。

 

「マグマグマグマグゥゥッ!!」

「ビリィィィッ!?」

 

 直後、まだ特訓を終えたつもりは微塵もなかったマグマラシの『かえんぐるま』で跳ね飛ばされて海に落下した。やがて泣きながら海面にぷかりと浮き上がってくる。

 

「ビリリィ……」

「最後まで油断してんじゃねえアホ! 気を抜くのは俺が特訓終了言うまでだろうがよ!」

 

 ぐったりしているベベノムを頭に乗せたままのドロンチに抱えられて海から上がったヒスイビリリダマを叱るシンゴだが、当のヒスイビリリダマは「そんな無茶な」と言いたげな顔をしていた。

 

 やっぱりいつか逃げようとヒスイビリリダマは内心誓った。

 

「ヴェヴェ~……」

「テメエは休憩してまた練習だ。ドロンチの手本ばっかり参考にすんなよ」

「ヴェ?」

「次ぃ! ドロンチとマグマラシで位置つけ! 摸擬戦すっぞぉ!」

 

 技が失敗したことに落ち込むベベノムにシンゴはぶっきらぼうにそう告げ、その言葉の意味がわからないベベノムは不思議そうに首を傾げる。しかしシンゴはそれ以上応える気はなくマグマラシとドロンチにバトルの指示を出す。

 

 砂浜で向かい合ったマグマラシの『かえんほうしゃ』とドロンチの『りゅうのはどう』がぶつかり合って爆発。その煙ごと吹き飛ばさんとばかりにドロンチが『ドラゴンダイブ』で突っ込んで砂浜に着弾し、砂を派手に巻き上げるも、マグマラシはそこにはいない。ドロンチはすぐにその場を離れた。

 

 直後に砂の中に『あなをほる』で潜っていたマグマラシが、ドロンチがいたところの真下から飛び出した。砂の中に逃げていたと読んでいたドロンチは空中で身動きが取れないマグマラシに向かって再び『ドラゴンダイブ』で突撃しようと迫る。対してマグマラシは全身を燃やし、体を丸めて『かえんぐるま』の体勢を取った。

 

「ドロロロロ!!」

「マァァァァグ!!」

 

 『ドラゴンダイブ』と『かえんぐるま』がぶつかり合う……ことはなかった。

 

 正確にはぶつかったが、マグマラシは『かえんぐるま』激しく縦回転することでドロンチの頭を駆け上がり、背中を転がって走り『ドラゴンダイブ』をやり過ごしたのだ。砂浜に着地したマグマラシと、浮遊したままのドロンチが向き直る。

 

「指示なしであれくらいはやってもらわねえとなぁ……!」

「す、すっげぇ……!」

「あ?」

 

 一連の流れをスマホロトムで録画していたシンゴは自分以外の声に振り返る。そこには岩に隠れながら目と口を大きく開いて固まっている少年がいた。シンゴは面倒臭そうに顔をしかめる。

 

「誰だテメエ。見せものじゃねえぞ」

「え!? あ、ごめん! 僕、トレーナーのポケモンのバトルって初めて見て……! 僕はロイ! ひょっとして、君もリコとダイチの仲間なの!?」

「……シンゴだ」

 

 ロイと名乗った少年は岩影から目を輝かせながら出てきてシンゴに近づいてきた。シンゴはそういえば昨日、ダイチが夕食の時間にホゲータがどうとかロイがどうとか言っていたのを思い出していた。あまり興味が湧かずに聞き流していたが。

 

「テメエ、こんな朝早くから何してやがる?」

「僕会いに来たんだ! ホゲータに!」

「はえーわ!? 何時だと思ってんだテメエ!?」

 

 思わず突っ込んでしまったシンゴだった。何せ今は朝の5時である。おそらく船で起きているのは夜行性のヨルノズクがギリギリ。あとはシンゴが外に出た時点で船から釣糸を海に垂らしていたランドウと、船を徹夜で修理しているオリオくらいだろう。そんな時間に訪ねてこられてもはっきり言えば迷惑も良いところである。

 

「い、いやそうじゃなくって! 僕ももうちょっと後に来るつもりだったんだけど、ホゲータに会うのが楽しみで早くに目が覚めちゃったから、散歩がてらその辺で時間を潰そうって思ってたんだ。そしたらシンゴのバトルが見えたからさ!」

「無駄に朝起きるのがはえー爺かテメエは」

「へへへ……あ、でもバトルの邪魔するつもりはなかったんだよ! ただその、ちょっと感動しちゃって……!」

 

 ロイがしどろもどろになりながら言い訳をしているのを見てシンゴも一々怒るのが面倒になり、それ以上言わずにバトルを続けているマグマラシとドロンチに目を向けた。

 

「見たけりゃ勝手にしろ。ただし邪魔すんじゃねえぞ」

「良いの!? ありがとうシンゴ!」

 

 ロイはパッと表情を明るくするとシンゴの隣に立ち、ドロンチが放つ『りゅうのはどう』をギリギリでかわして『かえんほうしゃ』を放つマグマラシの勇姿に「おぉ~!」と興奮する。

 

「すごい! マグマラシもドロンチも強いね!」

「たりめえだ。俺が育ててんだからな。オラ次だ! ベベノムとビリリダマと交代しろ!」

「見たことないポケモンだ~! しかもそのビリリダマ、僕の知ってるビリリダマとなんか違うよ!?」

 

 そんなこんなでロイはシンゴとマグマラシたちの特訓が終わるまでずっと見学を続けながら質問責めにし、シンゴも若干うんざりしながらも特訓を続けた。

 

 そうこうしている内に1時間半ほどが経過した頃、シンゴのスマホロトムのアラームが鳴って特訓は終了となった。マードックに朝食を一人分追加するようにメッセージを送り、ロイと一緒にブレイブアサギ号へと戻る。

 

 ロイは上機嫌に歌いながらシンゴより先を歩いていた。

 

「ホッ! ホッ! ホ、ホ、ゲ~♪ ホゲ♪ ホゲ♪ ホゲゲ~♪」

 

「そりゃホゲータが歌ってるやつか?」

「そうだよ! なんか気に入っちゃってさ!」

「……まあ、悪くはねえ」

「だよね! 昨日もホゲータと一緒に歌ったけど、すごく楽しかったんだ!」

「あいつとぉ?」

 

 シンゴもホゲータが歌うのが好きなことは知っている。それを人に聞かれるのを避けていることも。そのホゲータと一緒に歌えるというのは、つまりロイはホゲータのパーソナルスペースに入り込んでおり、それでいて許されているということだ。

 

 昨日会ったばかりだというのに仲良くなるのが異様に早い。それだけ相性が良かったということなのだろう。

 

「テメエ、要するにホゲータのパートナーになりたいのか?」

「……! そうなのかも!」

「かもかよ」

「だってまだ会ったばかりだからさ! でも、ホゲータともっと一緒にきのみ食べたいし、歌の練習したい!」

「そうかよ」

 

 シンゴは適当に流すように答えた。他人の人生やパートナー選びにとやかく言うつもりはなかったし、そういう話をするのはフリードとかの役目であって自分の柄ではないという自覚があるからだ。

 

 しかし、どうしても言っておかなければならないことが一つだけあった。

 

「テメエが誰をパートナーにしようが知ったことじゃねえけどな。ポケモンにも自分の意思があることを忘れんじゃねえぞ」

「? そんなの当たり前でしょ?」

「その"当たり前"をわかってねえバカがたまにいんだよ」

 

 半ば悪癖のようなものだが、シンゴは訪れた地で片っ端からトレーナーにバトルを仕掛ける辻斬りならぬ辻バトルを行っている。

 

 ライジングボルテッカーズが以前ホウエン地方を訪れた際もシンゴはそうやって辻バトルしていたが、その中に、まともに指示も出してないくせに負けたことを自分のアチャモのせいにして労るどころか蹴り飛ばし、挙げ句の果てにマグマラシとの交換を要求してきたトレーナーがいたのだ。

 

「「なんでもいいから攻撃しろ!」だの「それくらい自分でなんとかしろ!」だの碌な指示も出せねえ分際で「僕の方が君のマグマラシをうまく使ってあげられるよ」だとか舐めた事抜かしやがってあのクソカストレーナーがぁ……!」

「そんな酷いトレーナーもいるんだ……その人どうなったの?」

「その場でアチャモがぶちギレてワカシャモに進化して、『にどげり』で蹴っ飛ばされてた上にボールを踏み潰されてたな。ざまあ!」

「そ、そうなんだ……」

「まあ、そういう訳でだ」

 

 ロイと会話している間にブレイブアサギ号が見えてきた。シンゴは足を止めず、ロイを見もしないが、その雰囲気にロイも自然と足を止めて、自分を追い越して歩くシンゴを見つめた。

 

 シンゴはそのまま「いいか」と前置きして続けた。

 

「ポケモンはトレーナーの道具でも玩具でもねえ。ちゃんと生きてるし、喜ぶし、泣くし、怒るもんだ。蔑ろにしようもんなら、いつかテメエに返ってくる……ポケモンはな、こえー生き物なんだよ。ホゲータのパートナーになるならちゃんとそいつの意思を尊重しろや」

「……! うん! わかった!」

 

 ロイはシンゴのその言葉がとても心に響き、自分の胸の奥深くにしっかりと刻み込まれるのを感じた。そしてこれからの自分に何ができるかを考えて、シンゴに小走りで追い付く。

 

「僕、ホゲータに自分の気持ちをちゃんと伝えるよ! パートナーになってほしいって! それがトレーナーとポケモンの正しい関係だもんね!」

「そうしろ」

「ありがと! シンゴは優しいんだね!」

「……あぁん? なんだそりゃ?」

 

 ロイが発した予想外の発言に、シンゴは思わず足を止めて振り返る。突然向けられた呆れ半分の半目にロイは驚いた。

 

「え? いやだって、僕のために教えてくれたんでしょ?」

「……(イラッ)」

「だからありがとうって……あれ!? なんで怒ってるの!?」

「うっせぇ黙れバーカ」

 

 そう吐き捨てるとシンゴは再び前を向いて歩き出した。ロイは慌ててその後を追う。

 

「ま、待ってよ~!」

「……ケッ」

 

 やっぱ柄にもないことはするもんじゃねえと、シンゴは頭を掻いて舌打ちしながら、ブレイブアサギ号へと帰っていった。

 

□□□

 

「リコ、ダイチ! おはよう!」

「「なんでいるの!?」」

 

 朝からたまたま同じタイミングで船室から出てきたダイチとリコは揃って驚いていた。何故か甲板にロイがいたからだ。

 

 すでに殆どのメンバーが集合しており、笑顔で挨拶したロイの隣ではシンゴがスマホロトムをいじりながら我関せずと突っ立っている。

 

「朝からうるせえな。砂浜うろついてたから連れてきただけだわ」

「シンゴにホゲータに会いに来たって言ったら船に乗せてくれたんだ! バトルも見せてくれたんだよ!」

「えぇ……シンちゃんが優しいとか、何か変なものでも食べたの?」

「どういう意味だこのタコ!」

 

 ダイチの失礼な発言にシンゴは青筋を浮かべて怒鳴った。フリードが「まあ落ち着け」と宥め、シンゴからロイに向き直る。

 

「ダイチから来るかもとは聞いてたが、随分早かったな?」

「へへへ、ホゲータと会いたくて居ても立っても居られなくって……僕、ホゲータとパートナーになりたいんです!」

「ホゲータと?……それはいいがなロイ。他に大事なものが……」

「あ、わかってます! 自分の気持ちを押し付けないで、ホゲータにちゃんと伝える! それでホゲータの気持ちも聞いて、本当のパートナーになってみせる!」

 

 ロイはそう言って真剣な眼差しでフリードを見つめた。フリードは少し以外に思っていた。ダイチから聞いた限りの昨日までのロイなら、ホゲータが欲しいという自分の気持ちだけで突っ走っていただろう。トレーナーに憧れる子ならよくある話ではある。

 

 しかし今のロイは違った。自分をしっかりと見つめ直した上でのパートナー申請だった。

 

「(昨日との違いと言えば……)」

 

 フリードはちらりとシンゴを見た。シンゴは興味無さげにスマホロトムを弄っていたが、フリードの視線に気づくと睨み返してくる。

 

「なんだコラ」

「いや、なんでも?」

「なんかムカつくなぁ……!」

 

 大体察したフリードはフッと笑みを浮かべ、苛立たしげに歯軋りしているシンゴをまた宥めてから改めてロイに向き直る。

 

「オーケー、それなら俺から言うことはない。ホゲータのパートナーになりたいのなら、まずはその熱意を言葉と行動で示すことだ!」

「はい! 頑張ります!」

「おはよう~……」

 

 ロイが気合を入れた返事をフリードに返した時だった。甲板にやってきたのはメタグロスの頭の上に腹ばいに乗っかったオリオだ。疲れ果てた様子であり、目の下に隈まで出来てしまっている。

 

「オリオさん!? まさか徹夜だったんですか!?」

「応急処置も限界……塞いでも別の穴が開いたりで、オタチごっこだった……」

「それは、お疲れ様です……フリード博士、これ急がないとまずいですよ……」

「だな。今日こそ、なんとか材料を調達してくる」

 

 だいぶ参っているオリオの様子を見てフリードは頭をガシガシ掻きながらそう言った。それを聞いていたロイはフリードに「穴って?」と聞くと、代わりにメタグロスから降りたオリオが答えた。

 

「気球の中の袋にね。修理に使う材料が足りなくて、このままじゃ船底がやられちゃう」

「大変だ……! だったら、島のポケモンに手伝ってもらったら?」

「うーん、島のポケモンか……」

「「……あっ」」

 

 フリードが考え込んでいる横でダイチとリコは何かを察したように声を漏らした。同時に思い出したのは、昨日誤解でその島のポケモン達に追いかけられた時のこと。

 

「「キャタピーとビードルの糸なら!」」

「! それだ! 虫ポケモンの糸なら頑丈だしストライクの鎌なら糸も切れるはず……! 」

 

 昨日のキャタピーとビードル達の技ならば気球の修理に役立つ糸が手に入るかもしれない。光明が差し、頭を悩ませていた一同は一気に動き出す。ひとまず朝食を食べてから、メンバーたちは手分けして行動を開始した。

 

 フリードは野生のポケモン達の力を借りる前に一度村の長老に一声掛けに行くため、リコと、その長老が祖父だというロイを連れて村へ出向く。その他のメンバーは船を一旦砂浜に移動させてフリード達が戻るまで待機ということになった。

 

「ロイ、ホゲータは良いの?」

「うーん、それなんだよね……あ、ふ、袋が直ったらすぐに出発とかする!?」

「安心しろ。急いではいるがお前達がどうするのか待つ時間くらいあるさ」

「よ、良かった~……」

 

 船から村へ向かう前にロイにリコが聞くと、ロイは焦るが、フリードのフォローで安心した。ロイとしては朝食の時にホゲータに話すつもりだったのだが、肝心のホゲータがミーティングルームに姿を現さなかったので会えず仕舞いになってしまっていたのだ。

 

「ホゲータはこっちで探しておくから、ロイはフリード博士とリコさんの道案内お願いするよ」

「ホント!? ありがとうダイチ! あ、そうだ! キッチンに置いてあるオレンの実はホゲータのだから、食べたり片付けちゃ駄目だよ!」

「うんわかった。行ってらっしゃい」

 

 そう言ってロイはダイチと別れ、リコとフリードと共に船を降りて村へと向かっていった。

 

「それじゃあ、私らは船を移動させるよ!」

「いやオリオさんは仮眠取った方が良いんじゃ……?」

「何言ってんの! メカニックがこの程度でへこたれるもんですか! マードックは操舵お願い!」

「それは良いが、終わったらちゃんと休んでくれよ? 後でカモミールティーでも淹れてやるか……」

「今は眠気覚ましにコーヒーの方が良いだろあれは。シンゴはサボらないように」

「名指しすんじゃねえ!」

 

 相変わらず目の下に隈が出来たままのオリオが指揮をとって各々作業を開始した。射出したアンカーを巻き戻して岸壁から抜き取り、船を岩場から移動し始める。

 

 マードックが舵輪を回して操舵し、シンゴとダイチ、モリーはオリオの指示を受けて船内の物を移動させたりと忙しく働き続けた。

 

「ホンゲ~……ホゲ?」

「あ、ホゲータいた! どこ行ってたの?」

 

 そんな作業をしていた最中、モリーと一緒に荷物を運んでいたダイチはキッチンの扉が開けっぱなしになっていたので覗いてみると、ホゲータが椅子に置かれた3つのオレンの実を見つけて不思議そうにしているところだった。つまみ食いの常習犯だからこそ、普段からマードックが食材の保管や管理に厳しいことを知っているので、椅子に放置してあることに不思議に思っていたんだろう。

 

「それ、お前がお腹空かせていたらって持ってきたんだよ、ロイが」

「ホゲ!? ホンゲ~!」

「あ、ちょっとホゲータ!?」

 

 モリーからロイの名前が出た途端、ホゲータはオレンの実3つをまとめて口に放り込んでからキッチンを走って出ていってしまった。ダイチが止めるも聞く耳持たずだ。

 

「行っちゃった……」

「よっぽどロイが気に入ってたんだな。さて、私達は私達で仕事しないと」

「はい……頑張れホゲータ」

 

 そう言って、ダイチはホゲータが走っていった方向を向きながらエールを送り、荷物運びに勤しむのだった。

 

□□□

 

 ところ変わって島の一角。エクスプローラーズは港でブレイブアサギ号に張り付けた発信機の反応を追い、潜水艦で海を渡って島に上陸していた。

 

 アメジオとコニアが待機している岩場にエアームドに乗り込んで偵察に出ていたジルが戻ってくる。

 

「アメジオ様! 向こうの浜で奴らを見つけました! 奴らの飛行船、故障で不時着したようです」

「え? それってチャンスじゃない?」

「だが、フリードとターゲットはいないみたいで」

「なら余計にチャンス。船を先に抑えてしまいましょう」

「! それなら待ち伏せできるな!」

 

 コニアの提案にジルも同意するが、アメジオは首を横に振った。

 

「いや、我々の目的はあくまでペンダントとターゲットだ。それに油断するな。警戒すべきはフリードだけではない」

「……あのガキですか……アメジオ様、奴は俺に任せてください! 雪辱を果たしてみせます!」

 

 ジルが苦々しく顔を歪めて拳を握りしめた。以前ブレイブアサギ号に乗り込んだ際にコニアともどもシンゴに返り討ちにあい、雑魚呼ばわりまでされたのだ。ジルにしてみればシンゴは宿敵同然だった。

 

「……任務の達成が最優先だ。そこは忘れるなよ」

「ありがとうございます!」

「シンゴを含め、お前たちは飛行船の連中を引き付けておけ。ターゲットは俺が探す。アーマーガア!」

 

 そうして作戦を立て、エアームドに乗り込んだジルとコニア、アーマーガアに乗り込んだアメジオはその場を飛んで離れたのだった。

 

「ホゲェェ……ホゲゲゲゲ~!」

 

 一部始終をこっそり見ていて、慌てて走り去ったポケモンがいたことに気が付かないまま。




 ダイチとの約束があるのでロイは夜中に来ませんでした。

 地の文や会話文の行間ってどれくらい開ければ良いんでしょうか。永遠の謎。

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次回 第九話 なんだかんだ幼馴染みの影響を受けている
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