「……は?
饅頭がいなくなった?」
授業の休み時間、みさとは明日香達から聞いた話を聞き返した
「そうなのよ、この前の三沢くんとのデュエルの翌日から姿が見えないの」
「何でも、負けた次の日の早朝に寮を出て行ったっきりらしいのよ」
「心配ですわ…」
困ったような顔をする明日香の隣で、ジュンコとももえは顔を見合わせながら話していた
「(…理由は何となくわかったような気がするけど…)
……そこまで心配しなくてもいいんじゃない?」
「みさと?」
「あたし・十代・三沢と3人連続であれだけこてんぱんにされたんだもの、どうせどこかで武者修行でもやってんじゃない?
そのうち帰って来るわよ、子供じゃないんだし」
「もし、帰って来なかったら?」
「その時はその時、その程度の奴だったって事よ
前に評価した通り、今のアイツじゃもう成長出来ないわ…強くなる為に必要なモノを探しに行ったとかそんな感じよ」
頬杖をつきながら言い切るみさとに、明日香は驚いたように目を見開いた
「─みさと、まさかあなた万丈目くんを更正させる為にワザとあんな評価を……!?」
「…さぁて、どうかしらね」
ニッと笑ったみさとはそのまま3人に背を向けて去って行った
…次の授業に明日香やジュンコ達だけでなく、十代や翔も出ていなかった
(……探しに行ったのかしら?)
[多分そうだろ]
[あの嬢ちゃん、かなり世話好きみてぇだしな]
[十代くん達も一緒だといいんですけど…]
(まあ、無茶はしないでしょ)
みさとは三騎士達と話しながら、更正教習で留守にしているクロノスの代わりの教師の講義を聞き流していた
「─はぁ?
サルとデュエルした?」
夕方になって帰って来た5人に話を聞いたみさとは、すっとんきょうな声を出した
「おうっ!!
スゲー頭のいいサルだったんだぜ!!」
「そ、そう…良かったわね……;」
無邪気に笑う十代に、みさとは引きつった笑みを浮かべていた
「…ふぅ~ん、そんな事がねぇ」
十代達と別れ、寮に戻ったみさと達は明日香から昼間の一部始終を聞いた
「ええ…結局、万丈目様は見つけられませんでしたけど」
「アンタ達が無事だったなら、まあ良しとしましょ
十代には感謝ね」
「ま、まあ…ちょっとは認めてもいいわよ…」
「そう、ですわね…」
素直にならないジュンコとももえを見て、明日香とみさとはクスクス笑い出した
……その数日後、この日の体育の授業はテニスだった
みさとは明日香と組んで、三沢とそのパートナーを圧倒していた
「さぁて、マッチポイントまであとちょっと!!
いくわよ明日香!!」
「もちろんよ、みさと!!」
「─やべっ、避けろ明日香!!」
「「え?」」
そんな明日香の方に、別のコートでジュンコやももえとテニスをしていた十代の打ったボールが飛んでいく
十代の声に気づき振り返る明日香達だがそれよりも早く、横から割って入った人物がそのボールを綺麗に打ち返した
打ち返されたボールは……教習に耐えられず逃げ出して来たクロノスの顔面に直撃していた
「明日香っ!!」
ももえとジュンコ、そしてみさとが明日香の方へ走り寄り、遅れて十代と翔が走り寄った
「悪ぃ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」
「アンタって奴は……」
みさとに呆れた目で見つめられた十代は身を固くした
「─大丈夫?
怪我、しなかったかい?」
そこへ先ほど明日香を助けた男子生徒が寄って、キラキラとまぶしい笑顔で明日香に話かける
その笑顔にジュンコとももえはノックアウトされたが、みさとは口元を引きつらせながら引いていた
(何、この無駄に爽やかなの…)
[キモいな]
[吐き気がするぜ]
[私も、あんまり…]
みさとと一緒にいた三騎士達も、その男子生徒の無駄な爽やかさに引いていた
明日香は淡々とお礼を言い頭を下げ、そんな明日香の姿に男子生徒は見ほれていた
「あの…まだ、何か?」
何も言わずに見つめられ明日香が首を傾げると、男子生徒は慌てて首を振った
「…アンタはどんだけバカなのよ、バカ!!」
「痛ってぇっ!!
2回もバカって言うなよ!!」
そのすぐ傍で両頬を思い切りつねり上げ怒鳴るみさとの手を掴んで放させた十代は、つねられた頬を押さえた
「失敬、それにしても知らなかったよ
我がオベリスクブルーに君達のような美しい人がいただなんて」
「え…」
「は…?」
いきなりの言葉に呆気に取られる2人に、男子生徒は慌てて取り繕うように笑った
「あっ…ちょっとキザだったかな…ハハハ、忘れてください!!
ハハ、ハハハハッハハ」
そう言って明日香達の手を離し、ラケットを振り回しながらその男はコートへと戻って行った
嵐のように去って行った男子生徒に、明日香とみさとは顔を見合わせて戸惑っていた
「…何だったの?」
「さあ…?」
(っていうか、「知らなかった」って…あたしこの間の制裁デュエルで嫌って程目立たされたのに……まあ、いっか)
「変な奴だったなぁ…」
「そうっスね…」
「何を言ってますの!!
あんなにイケメンだったじゃありませんの!!」
「そうよそうよ!!」
呆然と呟いた十代と翔に、ももえとジュンコが勢い良く噛み付いた
「助けてもらったのは別として、私はどうでもいいわあの人」
「…あたしもアレはパスだわ」
「「ええーっ!?」」
引きつった笑みで男子生徒を見送る明日香やみさとに、ジュンコとももえは悲鳴に近い叫び声をあげた
授業が終わり明日香とみさとがロッカーで着替えていると、ジュンコとももえが名前を呼びながら更衣室に入って来る
先程の男子生徒のことを調べてきた2人は大声で嬉しそうにはしゃぎ出し、まだ他の生徒が残ってる中で男子の話題などしたくなかった明日香とみさとは場所を移すようにジュンコとももえを促した
「えっと…名前はね、綾小路ミツル
オベリスクブルー3年のテニス部部長にして、なんと綾小路モータースの御曹司!!」
「しかも、デュエルの腕もかなりのものらしいですわ!!
何でもあの丸藤 亮様に、勝るとも劣らないとか!!」
そう言いながら詰め寄るジュンコとももえに、明日香とみさとは引いていた
「そ、そう…;」
「よかったわね…;」
話を止めさせたかった明日香とみさとの方に、翔が慌てた様子で走って来た
「翔くん?」
「どうしたのよ、そんな慌てて?」
「あっ明日香さんにみさとさん!!
丁度よかったっス、テニス部の場所ってどこか知ってるっスか?」
「テニス部?」
「テニス部なら向こうですけど…」
「何かあったの?」
4人で首を傾げると、翔が十代がテニス部部長にしごかれていることを伝えてそのまま走り去って行った
テニス部部長、と聞いてジュンコとももえは意気揚々と翔の後に続くように駆け出した
「2人共!!」
「……行っちゃったわね」
ため息を吐きながらジュンコももえの背を見送っていると、後ろから声をかけられる
「─丁度いいところにいてくれたニャー」
「「え?」」
ファラオを抱いたレッド寮 寮長の大徳寺が手招きして2人を呼び寄せた
「大徳寺先生?」
「どうしたんですか?」
「それがですね、万丈目くんらしい人の目撃情報が見つかったらしいんですよ」
「万丈目くんの!?」
「十代くんにも伝えておいて欲しいのニャー」
「わかりました」
「ありがとうございます、大徳寺先生」
「いえいえ、私にはこれくらいしか出来ませんからニャー」
話を聞いた2人はそのままテニス部の方へ歩き出した
[─みさと、向こうにアイツがいるぞ]
テニス部へ向かう途中、聞こえてきたジャックの声にみさとは立ち止まった
「みさと?」
「(ありがとジャック)
ゴメン明日香、先に行っててくれる?
急な野暮用が入ったから、片付けてから追い掛けるから」
「そう?
わかったわ」
「ゴメンね~」
明日香と別れたみさとは、ある方向へ歩き出した
「まったく、シニョール 十代には困ったものなノーネ!!」
片目にテニスボールを受け、眼帯をしたクロノスが文句を言いながら廊下を歩いていた
「こんな事ナーラ、外に出ずに部屋にいればよかったノーネ
そうすればこんな目にもあわなかったノーネ、眼なだけに
シニョーラ みさとに会ってしまった時の言い訳を考えなければいけませンーノ」
「─…誰に会ってしまった時の言い訳だって?」
後ろから声をかけられて、クロノスはビクゥッと背筋を伸ばして後ろを振り返った
「シ、シニョーラ みさと…」
「こんにちは、クロノス教諭
お怪我は大丈夫ですか?
ご自愛くださいね」
「あ、ありがとうナノーネ…」
無駄に優雅な口調のみさとに、クロノスは冷や汗をダラダラかいていた
「─ところで……まだ更正教習の期間はたぁーっぷりあったと思ったんですけど、クロノス教諭はどうしてここに?」
「そ、それは…その……」
「……あたしからモクバに、期間延長を申請しておきますね」
「マ、マンマミーヤァー!!
酷いノーネェー!!」
大号泣しながら逃げていくクロノスを、みさとは見送った
「…イジメ過ぎた?」
[あのバカには良い薬だ]
[これだけやっときゃ、あの蝋人形も大人しくなるだろ]
[だからみさとちゃんも、やり過ぎには気を付けてくださいね]
「わかったわ
さてと、明日香を追い掛けなきゃ」
踵を返したみさとはテニス部に向かって行った
[…そういやキング、前から言ってた「蝋人形」って誰だ?]
「…クロノスの事でしょ」
[ジャック…お前……]
テニス部のコート前に着いたみさと達だが、入り口はテニス部員の女子達で埋め尽くされていた
「(何なのコレ…?)
あの、中で何かあったんですか?」
近くにいたテニス部員の女子に声をかけると、全員が一斉にみさとを見た
「綾小路部長と、身の程知らずのオシリスレッドがデュエルしてるのよ!!」
「今良いとこなのよ、邪魔しないで!!」
「は、はぁ……」
完全に気圧されたみさとの傍に、一足先に中を調べていたクィーンが戻って来る
[みさとちゃん、中で明日香ちゃんを助けた部長さんと十代くんがデュエルをしてますよ]
(あー…やっぱりか
それで、戦況は?)
[部長さんが優勢みたいだけど…]
(まあ、十代ならどうにかするでしょ
それより…何でテニスコートでデュエルしてるのよ、アイツ等は?)
[確かにな]
「負けたっ…この、僕が…!!
う、うえーん!!」
(あ、十代勝ったんだ)
…しばらくして聞こえてきた綾小路の声に、みさとは勝敗を確信した
バタバタと足音を立てて入り口へ走って来た綾小路は、入り口前にいたみさととぶつかった
「わっ…!!」
「った…!!」
「ん?
よぉ、みさと!!」
綾小路を見送っていた十代と後ろから来た明日香達が、パタパタと走って来る
「あ、十代
明日香達も…」
「遅いから心配してたのよ」
「ゴメンゴメン、入り口を女子達で塞がれてて入って来れなかったのよ
まあ、声は聞こえてたからだいたいの状況は想像してたけど」
「ふぅん、そっか」
みさとと仲良さげに話す十代を見た綾小路は、形振り構わずみさとの両肩を掴んだ
「みさとくん!!
オベリスクブルーの女神と呼ばれている君が、オシリスレッドなんかと仲良くするのは良くない!!
悪い事は言わない、付き合いを考え直すんだ!!
僕が人付き合いを教えてあげよう!!」
十代とのデュエルに負けて涙も鼻水も垂れ流したままの酷い顔に、みさとは全力で引いて本音をこぼした
「─…絶対、嫌……アンタ、キモい…」
「キモ……う、うわああーんっ!!」
更に泣き出した綾小路はそのまま去って行った
「ぇ、へ……?」
「トドメ刺しちまったな、みさと!!」
「何かあの人、踏んだり蹴ったりっスね…」
「な、何なの…?」
「……マジ?」
一部始終を聞いたみさとは、呆然と呟いた
「マジよ」
「明日香様をめぐって、2人の殿方がデュエルで決着を着けられたんですの」
「アレと十代、どっちかのフィアンセ……究極の2択ね」
「そうよね、やっぱりみさともそう思うわよね!!」
強く頷くジュンコを見ながら、みさとは明日香を見た
「何て言うか、明日香が不憫でならないわ
アンタ、今日は厄日なんじゃない?」
「……そうかもしれないわね」
ため息をついた明日香を見ながら、十代は首を傾げた
「なぁなぁみんな、聞きたい事があんだけどさ」
「何スか、アニキ?」
「─……ふぃあんせって、何だ?」
十代のその一言に、三騎士達も含めてその場の全員が前のめりに盛大に転んだ
…数日後、その日の授業は女子生徒だけの座学で、担当は鮎川だった
授業内容は『女性デュエリストについて』、というものだった
教卓に立つ鮎川は、ボードに板書しながら授業を進めていく
「……皆さんも知っての通り、女性のデュエリストの人口は少なく、このデュエルアカデミアにおいても皆さんだけとなっています
ですが、それが女性がデュエルをしてはいけないという理由にはなりません
有名なデュエリストの中にも、女性はいます」
手元の機械を操作し、鮎川はボードに3枚の顔写真を映した
「まずは皆さんもよく知ってると思います
デュエリスト・キングダム ベスト4、バトル・シティ ベスト8 等…様々な大会に出場し優秀な成績を残し続けているハーピィ使いの孔雀 舞さん」
「舞様を知らない人なんていないわよ!!」
「そうよね、舞様は素敵だもの!!」
ボードに舞の顔写真が映され、女子達が一斉にはしゃぎだす
「次はわずか12歳で全米チャンプとなり、KCグランプリ ベスト4にまで上り詰めた才女、レベッカ・ホプキンス」
「あんな小さな子が、全米チャンプに…?」
「信じられないなー」
(確かアレって、初めて会った時の格好よね…)
ツインテールに眼鏡のレベッカの写真を見て、みさとは思い返していた
「そして、決闘王 武藤 遊戯ただ1人の弟子にしてバトル・シティ ベスト8の実力者、
「確か決闘乙女って、今の1年生と同い年のハズよね?」
「いくらなんでも強すぎるわよ」
「どんな感じの人なのかしら?」
「会ってみたーい!!」
そんな話や鮎川の話を聞き流しながら、みさとはデュエルをする決闘乙女の写真を遠くを見つめるような瞳で見ていた
[みさと、まだ無理みてぇだな…]
[ああ、お嬢の心の傷は相当深いからな]
[みさとちゃん……]
三騎士達は心配そうに、遠くを見つめるみさとを見守っていた
今回はタイトル通り、デュエルアカデミアでの日常会となります
アニメを何話分か詰め込んだような形になりましたけども…
そして今回、重要ワードも登場してます
みさとちゃんの正体は……まあ、そういう事です
これがバレるのは…一体いつになるのやら…