十代とエドのデュエルの翌日、バタバタと大慌てで翔はアカデミアの保健室に入って行った
保健室の中では実技デュエル中に倒れた十代が鮎川の診察を受け、みさと達が付き添っていた
「どういうことッスか!?
アニキがデュエル出来なくなったって…」
「カードが全部、白い紙にしか見えなくなったらしい…精霊の声も聞こえなくなったと言っていた」
万丈目から十代のデッキを受け取り、翔は中身を確認した
「みさとさん、アニキの精霊…ハネクリボーは?」
「…存在を感じないわ
今、クィーン達が手分けしてアカデミア中を捜してるんだけど…十代自身がカードが見えないから、あたしにも見えなくなったのかもしれない…」
「そうっスか…」
「昨日嫌な胸騒ぎがしてたのよ…なにがなんでもエドのバカを止めるべきだった……あたしの責任だわ…」
「みさとさんのせいじゃないっスよ!!」
「そうザウルス!!
悪いのは、こんな事をしたエドだドン!!」
額を押さえて俯いたみさとに、翔と剣山は励ますように寄り添った
「体は心配無いわ
けどエドくんとのデュエルが余程ショックだったみたいね」
鮎川の診断に十代は乾いた声で笑った
「ハハ…まいったな……」
そう零すと、十代は翔からデッキを受け取って保健室を出て行った
「アニキ……」
「悪い、1人になりたいんだ…」
呼び止めた翔に答えた十代に、いつもの快活さは無かった
学校を後にし、レッド寮の万丈目ルームに集合した翔達は黙り込んでいた
[おーいおいおいおい!!
十代のアニキかわいそう、精霊が見えなくなるなんて
アニキがそんな事になったら、オイラ耐えられないわー!!]
わめき散らすおジャマ・イエローを万丈目が追い払い、三沢が顔を上げた
「要の十代がデュエル出来なくなった今、学園はチャンスとばかりに攻め込んでくるだろう」
苦虫を噛み潰したような口調で言う三沢に、万丈目はフッと笑った
「アニキ…」
「どうすればいいザウルス…」
心配する翔と剣山に、万丈目は不気味に笑いながら指を立てた
「弱気になるな皆の衆!!
この万丈目サンダーがいる!!」
「サンダーの言う通りだ!!」
「私もいるわ!!」
「僕も頑張るッス!」
「オレもオレも!!」
《オーッ!!!!》
「これがオレ達の更に強くなった結束の力だドン!!」
万丈目に続いて三沢と明日香・翔と剣山が力強く立ち上がり、『レッド寮防衛連合』が結成された
「それに僕達には強い味方がいるっス!!」
「丸藤先輩の言う通りだドン!!」
「ええ!!
みさとも私達に味方してくれているし!!」
「KCからのアカデミア調査員のみさとくんがいてくれたら、学校側もそこまで強くは言えないハズだ」
「何より、みさとさん自身が伝説のデュエリスト
本気のみさとさんに勝てる奴なんて、この学園にいないっス!!」
「そういえば、みさと先輩は奥に籠ったっきり出て来ないけど何をやってるザウルス?」
剣山は扉のしまった奥の部屋を振り返って首を傾げた
「この事を海馬社長に伝えて、応援を依頼しているところよ」
「確かに、KCが味方してくれたならレッド寮廃止は無くなる「あんの、襟足野郎ォー!!」ぅえっ!?」
三沢を遮って、万丈目ルームにみさとの怒声が響き渡った
バンッと勢い良くドアを開けたみさとは、ソファーの空いたスペースにドカッと腰を降ろした
「…その様子だと……」
「そっ、海馬の奴は役に立たないわ
「己の道は己で切り開く、それが出来てこそデュエルアカデミアの生徒だ」…とか何とか言って、援護してくれる気は無いみたい」
「そんなぁ……」
「ったくあのブルーアイズオタク、いっつも肝心な時に使えないんだから!!」
「……そんな事言えるのは君だけだぞ;」
海馬を思い浮かべて文句を言い続けるみさとに、三沢は苦笑いを浮かべていた
「……こぉうなったら、このみさとちゃんがアンタ達に全面協力してあげようじゃない!!
相手が誰だろうが、このあたしが纏めて返り討ちにしてやるわよォ!!
おーっほっほっほっほっ!!」
立ち上がって高笑いを始めたみさとに、剣山は盛大に後退った
「ど、どうしたザウルス!?」
「自棄になったみたいね…;」
「毎度毎度、やかましい奴だ」
「今に見てなさぁい、蝋人形に豚野郎ォ!!
おーっほっほっほっほっ!!」
そんな高笑いを遮るように、外から騒がしいギターの音が聞こえて来た
音の元を確認する為に外に出た翔達が見たのは、アロハシャツにギターを構えた吹雪だった
「誰だドン?
あの突き抜けたお人は?」
「…年長さんだ」
「兄さん…;」
「この忙しい時に、あんのトラブルメーカーめ…;」
「……みさとさん、吹雪さん相手に容赦が無くなって来たっスね;」
額を押さえる明日香の隣で呟いたみさとに、翔はコッソリとツッコんだ
乗っていたボートを岸に着けてレッド寮の前に来た吹雪を、翔達は明日香を中心にして出迎えた
「兄さん……一体何の用?」
「お前を迎えに来たんだよ
ブルー寮へ帰ろう、明日香」
吹雪の答えを聞いた翔達は、驚いたように目を見開いた
「えっ…?」
「それって……」
「まさか…」
「─そのまさかナノーニョ」
崖下から聞こえて来た声に、全員が振り返ると崖下から片手が伸びた
「ドンブラコッと…って、止めるーノ!!」
吹雪が乗っていたボートを背中にくっ付けたウェットスーツ姿のクロノスの片手を、みさとはファラオ用の猫じゃらしでくすぐった
そしてくすぐりに耐えられなかったクロノスは、再び崖下へ落ちて行った
「マンマミーヤァァー……!!」
バッシャーンッという水飛沫の音を聞いたみさとは振り返って爽やかな笑顔でグッと親指を突き出し、翔達は呆然と立ち尽くした
「シニョーラ 明日香・シニョーラ みさと、あなた達にはブルーのアイドル養成コースに戻ってもらうーニョ」
崖を再び這い上がって来たクロノスは、明日香とみさとに話し出した
「お断りします
私達はレッド寮を守るって決めたんです」
「アンタも懲りないわね
あたし達の答えは、いいえかNOの2つしか無いわ」
間髪を入れずに答えた2人に、吹雪は悲しそうな顔を見せた
「何故?
可愛いアイドルになることがそんなに嫌なのかい?」
「どういう事っスか?」
「クロノス臨時校長は、私達と兄さんでアイドルグループを組ませようとしているのよ」
「良い!!」
「良くないわよ/良いわけあるかーっ!!」
急に妄想を始めてアイドルの明日香に目をハートにさせた万丈目に、明日香とみさとの同時のツッコミが入った
「確かに、年齢的にはギリギリだ」
言ってはいけない一言を言った三沢に明日香の跡が残る程強烈なビンタと、みさとの回し蹴りが炸裂した
「今のは先輩が悪いドン…;」
「ま、まさか2人共…この衣装が嫌なのか?」
吹雪はどこからか、ステージ衣装の明日香とみさとの等身大ボードを取り出した
「それもあるけど…」
「あたし等はアイドルに興味ないってのに…」
「じゃあ、コレなら?」
ポップ且つスポーティーな衣装のボードを見せた吹雪に、明日香は怒りに震えみさとはどこからともなく竹刀を取り出した
「兄さん、いい加減にして…」
「吹雪さん、本気で痛い目にあわないと分かんない…?
明日香、クロノスごと殺っちゃいましょ
ンフフフフ…」
「「ヒィッ!!」」
「一旦落ち着きましょ
兄さんのペースに飲まれたらお仕舞いよ」
竹刀を叩きながら不気味に笑うみさとに翔と剣山は怯え、明日香が宥めに入る中でも吹雪はマイペースだった
「うーむ、明日香とみさとちゃんの我儘にも困ったものだな…」
「お前が言うかっ!!」
みさとのツッコミを無視した吹雪は、自身を援護してきそうな万丈目に視線を向けた
「…万丈目くんからも何とか説得してもらえないかい?」
「えぇっ……!?」
矛先を変えて味方を作ろうとした吹雪に、矛先を向けられた万丈目は情けない声を出した
「万丈目くん!!
私達の結束を崩すことは誰にでも出来やしないって兄さんに言ってやって!!」
「そうっスよ、万丈目くん!!
いや、今はレッド寮のリーダー サンダー様!!」
「万丈目先輩!!」
「「万丈目くん!!」」
天上院兄妹に同時に迫られた万丈目は、盛大に困惑して頭を抱えた
「ぬぁーっ!!
罵りたいならそうするがいい!!
だが、オレには決められない!!
決められないんだーっ!!」
万丈目はそのままガクッと膝をつき、Orzのポーズで落ち込んだ
「さっきの結束が台無しだドン…」
「ホント、毎度の事だけど使えない奴ね…」
そんな万丈目の情けない姿に、剣山とみさとはため息混じりに呟いた
「僕と明日香達の気持ちは平行線だね
まるで夜汽車のレールだ、決して交わる事が無い」
「結局、私達はデュエルでしか結論を出せないのよ」
……こうして、明日香とみさとを賭けた天上院兄妹のデュエルが決定した
「間も無ーク、デュエル開始なノーネ」
デュエルリングに場所を変え、クロノスはマイク片手に進行役をやっていた
「クロノス臨時は甘いのでアール!!
言う事を聞かない生徒は、即刻退学にするべきなのでアール!!」
文句を言うナポレオンを無視したクロノスが立ち上がり、再びマイクのスイッチを入れた
「シニョール&シニョーラ、レッツデュエルタイムでアール!!
……移っちゃったのでアール」
「…十代は?」
観客席の防衛同盟メンバーの元に翔が走り寄り、力無く首を横に振った
「……アニキがデュエルを見ないなんて、初めてだよ」
「そう…」
そこに、ハネクリボーを探していた三騎士達とクリボーが帰ってきた
(みんなお帰り……ハネクリちゃんは?)
[どこにもいねぇ]
[これだけ探して見つからねぇのは、かなりおかしいぜ?]
[やはり、十代くんがカードや精霊を見れなくなったのが関係しているのでしょうか…]
[クリィ…]
クリボーが悲しそうな声を出すのを、みさとは頭を撫でる事しか出来なかった
(エド…いくらなんでもこれはやり過ぎよ……もう、絶対に許してやらない…!!)
「シニョーラ 天上院 吹雪ーっ!!」
みさとが静かに怒りに燃える中、吹雪がデュエルリングに登場した
「ハッハッハッハッハッ!!
楽しんでいるかーい?」
「「「「うわぁ…;」」」」
タキシードのような衣装の吹雪は天井から飛び降りて、ワイヤーを使って自分をスーパーマンのように飛びまわり、ファンクラブの席へ投げキッスを向けていた
そんな吹雪を見て翔・剣山・三沢・みさとは全力で引くが、万丈目は真面目に見ていた
《キャーッ!!!!
ブッキーッ!!!!》
「ぶ、ブッキー!?」
翔のツッコミは、ファン達の歓声にかき消された
吹雪は華麗にステージに着地し、ビシッと左腕を天井に向けて人差し指を突きたてた
「僕の指の先にあるものはー!?」
《てーん!!!!》
ファンクラブが一斉に叫ぶと、吹雪は謎の尻振りダンスをして決めポーズをとった
「ン~~~JOINッ!!」
「キャーッッー!!」
「もう駄目ぇぇーっ!!」
「しびれるぅ~!!」
ファン達が目をハートにして倒れる中、吹雪ファン達とは逆の席に座っていたみさとは盛大にコケて直ぐに跳ね起きた
「な、何なのよそれはーっ!?
─っていうか、ジュンコとももえはいつもの事だからもうどうでもいいとしても…鮎川先生、アンタ何してんの!?」
ファンクラブの中には、ジュンコやももえといった女子生徒だけでなく保険医の鮎川も混ざっていた
「えっと、これはその…;」
「……次のKCへの報告書は、内容を少し変更させていただきます」
「いやァーッ!!」
冷たく言い切ったみさとに、鮎川は悲鳴をあげた
「え、えー…シニョーラ 天上院 明日ー香!!」
気を取り直したように、クロノスは明日香の名前を呼んだ
明日香は何故かスワンボートに乗って入場し、再びコケるみさとの隣で万丈目はゴソゴソと何かを取り出していた
「な…何なのアレぇ~?」
「L・O・V・E!!
LOVE YOU 明日香ー!!」
「やかましいっ!!」
「ガハッ!!」
ハッピに鉢巻きに大きなボード…完全装備の万丈目に、みさとのツッコミの拳が炸裂した
デュエルリングに上った明日香は吹雪と向かい合う
「僕が勝ったら明日香とみさとちゃんはブルーに戻り、僕とアイドルグループを組む」
「私が勝ったら、私達はレッド寮に残る」
「グループ名は『ブッキーとアスリンWithミサリン』に決めてるんだよ」
「ブッキーとアスリンWithミサリン…;」
「微妙だ…;」
「絶対に嫌じゃァー!!」
ネーミングの悪さに引いている三沢と剣山の傍で、アイドルになった自分を想像して怯えたみさとが奇声に近い悲鳴をあげた
そんなみさとの隣で、万丈目は手早くグループ名のボードを作っていた
「絶対負けんじゃないわよ明日香ァー!!
負けたらあたし等、赤っ恥街道まっしぐらよー!!」
目を血走らせたみさとの気合いの入った声援を受けた明日香は強く頷いた
「「─決闘(デュエル)!!」」
そして、天上院兄妹のデュエルが開始された
……明日香は得意の『サイバー・エンジェル』の儀式モンスターで攻めの姿勢を見せるが、対する吹雪は獣戦士族のデッキを使ったが使用する魔法や罠は不思議な物が多かった
…数ターンが経過して、吹雪がフィールド魔法『究極のステージ衣装』を発動させた事で状況はある意味一転した
「いくよアスリン!!
─フィールド魔法『究極のステージ衣装』!!」
新たなフィールド魔法の発動で、明日香が既に発動していたフィールド魔法『祝福の教会 -リチューアル・チャーチ』が破壊された
そして代わりにフィールドを支配したのは……巨大な蝶の衣装だった
「─何アレ小林○子!?」
「自分フィールドのモンスター1体を選択、そのモンスターの攻撃力を3000アップする」
吹雪のフィールドのモンスター『褐色のウォーリア』が、ステージ衣装を身に纏った
褐色のウォーリア ATK 800→3800
「攻撃力 3800!?」
「だが同じグループを組む者として、お前1人に辛い思いはさせないよ
褐色のウォーリアの効果で攻撃力 2700になった『不屈闘士 レイレイ』で、『サイバー・エンジェル-荼吉尼-』を攻撃!!」
レイレイの突進を受けたサイバー・エンジェル-荼吉尼-は、一緒に破壊された
「フィニッシュだ!!
究極のステージ衣装を纏いし褐色のウォーリアで、プレイヤーにダイレクトアタック!!」
ライフが尽きるのが頭を過った明日香が顔を引き攣らせる中、観客席の万丈目は大袈裟に叫んでいた
「あぁ~!!
何て事だ!!
結局オレは明日香さんの何の力にもなれなかった!!
大バカ野郎だァー!!」
[今更だろ]
[何喚いてんだ?]
[闘っているのは、明日香ちゃんだというのに…]
[クリィ…]
嘆いている万丈目を見下ろし、三騎士達とクリボーは言いたい放題に言っていた
「─…盛り上がってるところ悪いんだけど……」
「ん?」
「─……何か、詰まってるっスよ?」
「へ?」
「……ぇ?」
ステージ衣装を纏ったままジタバタする褐色のウォーリアに、明日香はポカーンと空いた口が塞がらなくなっていた
衣装を脱ぎ捨てた褐色のウォーリアの攻撃力は、着地と同時に元に戻った
褐色のウォーリア ATK 3800→800
「あれ?
戻っちゃった」
《ダァーッ!!!!》
惚けた口調の吹雪に、翔達は盛大にズッコケた
褐色のウォーリアは、明日香の頭を叩いて吹雪の元に帰って行った
「痛っ!!
何するのよ、もう!!」
明日香 LP 1700→900
「ライフが800下がっただけ…;」
「あのフィールド魔法、使えないドン…;」
「…ただの見かけ倒しかァーい!!
どこまでも恥ずかしい!!」
呆れ果てる翔と剣山の傍で、みさとは全力でツッコんだ
再びステージ衣装を纏った褐色のウォーリアの攻撃力は、また上昇して吹雪のターンは終了した
褐色のウォーリア ATK 800→3800
「…まったく兄さんったら……私のターン!!」
引いたカードを見て微笑んだ明日香は、引いたカードを発動させた
「─私は800ポイントのライフを払って、装備魔法『契約の履行』を発動
自分の墓地から儀式モンスター1体を選択して自分フィールドに特殊召喚し、このカードを装備する」
明日香 LP 900→100
明日香のフィールドに、墓地に送られていた儀式モンスター『サイバー・エンジェル -韋駄天-』が復活した
「韋駄天のモンスター効果で、墓地の祝福の教会 -リチューアル・チャーチを手札に加え発動!!」
究極のステージ衣装が破壊され、その場が教会のバージンロードに変わっていく
ステージ衣装が消えて上から落ちた褐色のウォーリアは、盛大に尻餅をついていた
「イヤンッ!!」
《……「イヤンッ」?》
その一言に、翔達は引いていた
「更に祝福の教会の効果で、自分の墓地の儀式魔法『機械天使の儀式』を手札に加え発動
韋駄天を生け贄に、『サイバー・エンジェル -弁天-』を儀式召喚!!」
明日香のフィールドからサイバー・エンジェル-韋駄天-が消え、鎖で繋がれた2つの扇子を持った女性天使が現れた
サイバー・エンジェル -弁天-
☆6 光属性 天使族 ATK 1800 DEF 1500
「褐色のウォーリアを攻撃!!
─エンジェリック・ターン!!」
サイバー・エンジェル-弁天-の扇子の舞が褐色のウォーリアを破壊し、吹雪のライフは1800になった
「そして-弁天-の効果発動!!
-弁天-が戦闘で破壊したモンスターの、元々の守備力分のダメージを相手に与える」
「何…褐色のウォーリアの守備力は1800……」
「そういう事」
妹の素晴らしい笑顔に見送られ、吹雪のライフは尽きた
「何という事を~!!
明日香ぁ~!!」
「強くなったね、アスリン」
「ありがとう、でもアスリンはやめて……」
デュエルが終わり、吹雪と明日香達はリング上で話していた
「本当はアイドルになったお前が僕と恋の歌を歌う事で、普通の女の子に戻れば良いと思ってたんだけど…」
[って事は…]
[お嬢は巻き込まれただけか…]
話を聞いていたジャックとキングは、吹雪に呆れたような眼差しを向けていた
「そういう事だったんですか師匠!!
それなら、このボクにお任せを「はいド~ン!!」ぶっ!!」
話に入って行った万丈目に、みさとの物理的ツッコミが入った
そのまま万丈目は翔と剣山に担がれ、みさとの吹くホイッスルの音に合わせて退場して行った
「はい運んで運んで~」
「…ん?
何か足りない…そうだ、十代くんは?」
「十代は……」
その一言で明日香達は一斉にしんみりとした空気を纏い、事情を聞いた吹雪はレッド寮側についた
……だがその数日後、事件は起きた
「「みさとさーん/先パーイ!!」」
血相を変えた翔と剣山の声に、みさとは振り返った
「翔くん・剣山くん?
どうしたのよ、そんな慌てて?」
「あ、兄貴を見なかったザウルス!?」
「十代?
今日は見て無いけど…何かあったの?」
「─アニキがいなくなっちゃったんだ!!
荷物も全部無くなってるし!!」
「[[[何ですって/何だって!?]]]」
衝撃の一言に、みさとと三騎士達は大声をあげた
「今、みんな手分けして探してるんだ!!」
「先輩も手を貸して欲しいドン!!」
「分かったわ、あたしも探してみる!!」
「お願いするっス!!」
言うと同時に、翔と剣山は十代を探しに走り出した
「…みんなっ!!」
[[[[ああ/おう/ええ/クリッ]]]]
みさとの一声で精霊達は四方に散り、みさと自身も走り出した
……だが仲間達の懸命な捜索も虚しく、その日十代は見つからなかった
……更に異変は、十代の失踪だけに留まらなかった
「─万丈目くん…?」
「─どうしたんだ万丈目…その、制服は…」
翔と三沢の質問に、万丈目はただ笑うだけ
その制服はこれまでの黒い制服ではない、真っ白な制服に変わっていた
「─斎王様こそ世界の支配者、デュエルアカデミアは…光の結社によって、やがて白に染まる!!」
熱に浮かされたかのような万丈目を翔達は呆気に取られて見ていたが、みさとは呆れたように万丈目を叱り始めた
「ちょっと饅頭!!
いつもイカれてるけど、何更にイカれてんのよ!!
遊んでる暇は「饅頭…実に良い!!」は…?」
遮られたみさとを無視し、万丈目は謎の熱弁を開始した
「饅頭は白い、つまりはこのオレにこそ相応しい!!」
「いや…よもぎ饅頭とか、黒糖饅頭とかも有るわよ…?」
「ナンセンス!!
饅頭は白、それ以外は認めん!!
素晴らしい呼び名だ、フハハハハ!!」
[[[痛い/ですね…;]]]
意味不明な発言と高笑いに三騎士達は引き、みさとは近くにいた剣山にしがみついた
「キ、キモいんですけど…;」
「落ち着くドン、みさと先輩…!!」
顔を真っ赤にさせてあたふたする剣山を見て、明日香は苦笑した
(剣山くん、女の子に免疫がないのかしら…?)
「キモすぎるー!!」
「先輩、落ち着くザウルスー!!」
万丈目にかまっている暇はないと、翔達はレッド寮付近を散策し始めた
「アニキー!!」
「オレの兄貴ー!!」
お互いに睨み合いながら、翔と剣山は十代を探し続けた
「僕だけのアニキー!!」
「僕なんかより、オレを信頼してる兄貴ー!!」
「僕なんかより、オレを信頼してると思ってる奴より、僕を思ってるアニキー!!」
「「……ムムム」」
「……何なのアレ?」
「「さあ…?」」
2人の睨み合いに明日香は呆れたようにため息を付き、みさとと三沢は顔を見合わせた
「兄貴を兄貴と呼べるのは、オレだけドン!!」
「なぁに言ってんだ!!
世の中いくら広いって言っても、遊城 十代をアニキって呼んでいいのは、この丸藤 翔様だけだ!!」
「う~…ドン!!」
「「いい加減にしなさい!!」」
殴り合いになりそうな空気に、明日香とみさとが待ったをかけた
「「だって剣山くんが/丸藤先輩が!!」」
指を差しあう翔と剣山を見て明日香は大きくため息を付き、みさとは呆れてモノも言えないと言わんばかりの顔をしていた
「あのねぇ…十代がいなくなっちゃったのよ?
もう少しシリアスに…マジメに探せないの?」
明日香の注意を受けた翔と剣山が段ボール箱の下を覗いて見たり、石の下を覗いて見たりしていると、明日香は再び大きなため息をついた
そんな翔達を、耳をつんざくような高笑いが襲った
「ハハハハハハ!!
全てはあの方の予言のままだ!!
愚かなる凡人どもよ、聞くが良い!!
もうすぐ革命の朝が来る
世界は光に包まれて、白く輝く新世紀を迎える
我等…光の結社の名の下にな!!」
「何言ってんスか?」
「さぁ?」
屋根の上に立ち意味不明な発言を繰り返す万丈目に、翔達は呆れていた
「万丈目先輩は、兄貴の居場所を知ってるドン?」
「知らん!!
しかし決まっている、十代は迷いの霧に包まれて…深い闇の底に沈んでいくのに…フハハハハハハ…ハハハ…ハッハッハッハうあぁッ!!」
高笑いしながらポーズをつけているうちに、立っていた屋根の上でバランスを崩した万丈目はそのまま地面に落ちていく
ギリギリ屋根の淵につかまって笑っている姿を見て、改めて明日香は頭を押さえていた
「…バカ……;」
「あんなのに好かれて、アンタつくづく気の毒ね…;」
心底同情した顔で肩を叩くみさとに、明日香は一言返した
「……気にはしていなかったけど、私って男運が無いのかしら…?」
「……多分、ね…;」
そこに、みさとの端末が鳴り出した
「あ、ゴメン
ちょっと抜けるわね」
「ええ、いってらっしゃい」
しがみついていた屋根から落ちる万丈目の悲鳴を背中に、みさとはレッド寮を後にした
「…一体どういう事よ海馬!!
何であたしが!?」
みさとは端末に向かって、電話の相手…海馬 瀬人に怒鳴り続けていた
『貴様以外に出来る奴がいないからだ』
「あたしはまだプロに復帰した訳じゃないのよ!?
なのにリーグのオープニングデュエルって…!!
─だいたい何よ、新しい召喚法って!?
あたし、そんなの聞いてないわよ!!」
『もう報道陣への垂れ込みは済んでいる』
「何ですってェ!?」
『今夜迎えのヘリを寄越す
対戦相手はこの電話の後で、パソコンにメールを送っておくから確認しろ』
それだけ言うと、海馬は一方的に電話を切った
「あっちょっと!!
まだ話にOKした訳じゃないわよ、コラァー!!
あんの襟足ィーッ!!!!」
その場に、みさとの怒声が虚しく響いた
…その後、万丈目ルームに置いてあるパソコンのメールを見たみさとは怒りを引っ込め、口元に笑みを浮かべていた
「…ふぅん」
…日が暮れて十代探しを中断した翔達は、万丈目ルームのリビングに集まった
「─アカデミアを出る!?」
みさとの衝撃の一言に、翔は絶叫した
「と言っても、少しの間だけよ」
「けど、いきなりどうして…」
「海馬の奴がプロリーグのオープニングデュエルに、勝手にあたしの名前を入れちゃったのよ
それで断れなくて仕方なくね」
「けど、兄貴はいないし万丈目先輩はおかしくなった…そこにみさと先輩までいなくなったら…」
「クロノス臨時達は、間違いなく攻めて来るだろうな」
「そうなのよね…そこが心配なの」
「だけど、KCからの依頼を断るわけにはいかないんじゃないかい?」
「まぁね……」
「─…いってらっしゃい、みさと」
「「明日香さん/先輩!?」」
踏ん切りがつかないみさとに、明日香は言い切った
「明日香…」
「少しの間、アカデミアを出るだけでしょう?
なら、その間は私達がレッド寮を守る…それで済む話よ」
「アスリンの言う通りさ、僕も力を貸すよ」
「兄さん、アスリンはやめて…」
明日香の肩を抱いた吹雪の手を、明日香はやんわりと払った
「僕もアニキを探しながら頑張るっス!!」
「オレもだドン!!
十代の兄貴の舎弟として精一杯ここを守るザウルス!!」
「だから剣山くん!!
アニキの弟分は僕だけなんだよ!!」
「オレも協力しよう」
翔と剣山のケンカの横で、三沢も名乗りをあげた
「……アンタ、いたの?」
「いたじゃないか!!」
「冗談よ
…みんな、ありがとう
出来るだけ早く帰るわね」
そしてその夜、みさとはヘリでアカデミアを去った
(アンタの鼻っ柱、あたしがへし折ってやるわ…覚悟しなさい…!!)