「ヌグググ…許せませンーノ、シニョーラ みさと」
みさとに弱味を握られたクロノスは、自室で歯ぎしりしていた
「何故あれ程の実力者ーガ、ドロップアウトボーイ達に肩入れするノーネ!?
納得いかないノーネ!!」
ダンッと叩いたクロノスの机から、授業の予定表が落ちた
「落としてしまったノーネ…ん!?」
落とした書類を見た瞬間、クロノスの頭の中に明かりが灯った
「そうなノーネ、この手を使えーバいいノーネ
シニョーラ みさともきっと改心するに違いないノーネ、ムフフフフ…」
不気味な笑い声がクロノスの部屋に響いていた
「いいみさと、男にもっとも必要なのはカリスマ性よ」
「そうですわ!
後、ルックスもとても大事ですわね!!」
「そ、そうなの…?」
翌日、午前の授業が終わりお昼を買いに行く途中、ジュンコとももえはみさとに男に必要なモノについて講義していた
その勢いに負け、みさとや明日香は口を挟めないで相づちを打つのが手一杯なまま、4人は購買に到着した
「……何アレ?」
たくさんの生徒達が群がる大きなカゴに、みさとは首を傾げた
「そういえばみさとは知らなかったわね
アレはアカデミアの名物 ドローパンよ」
「[[[ドローパン?]]]」
みさとと宙に浮いている三騎士達は声を揃えた
「色んな種類の具材がパンの中に入っていますの」
「で、何が出るかは食べてからのお楽しみなわけ」
「だからドローパン、言い得て妙ね……」
「中でも1日1個の限定品の黄金のタマゴパンは絶品らしいわ」
「あの中から1個!?」
[物凄ェ確率だな]
[確かに…]
「まあ、黄金のタマゴパンじゃなくても他にも中々美味しいパンもあるのよ?」
「ちなみに知ってる具材って?」
「えっと…あんパンにクリームパンにジャムパンに焼きそばパンに具無しパンに…」
「豚カツパンにハンバーグパンに煮干しパンにキャビアパンに納豆パンにニンニクパンにキムチパンにクサヤパンに漬物パン「ちょっと待てぇ!!」
次々と名前をあげていくジュンコとももえに、みさとは待ったをかけた
「何なのよそれ!!
後半からゲテモノばかりだったじゃないのよ!!」
[キムチに漬物って…]
[豚カツにハンバーグとか、もうカツサンドとハンバーガーじゃねぇのか?]
[あまり、手を出したくは無い物ですね…]
怒鳴るみさとの後ろで、三騎士達はドローパンの恐ろしさに引いていた
「まあ、そういうものは滅多に当たるものじゃないわ
物は試しと思って、行きましょう?」
「「はーい」」
「え、行くの!?」
「ほら、行くわよ!」
ジュンコに引き摺られ、みさとは渋々ドローパンと飲み物を買って4人掛けのテーブルについた
「うー……」
「そんなに唸らなくてもいいじゃない」
「あんな話聞いた後だと、何かねぇ…」
「そうですか?」
「…でも、買っちゃったんだし仕方ないわね
女は度胸、いただきます!!」
女らしからぬ勢いで、みさとはパンにかじりついた
「みさと、行儀が悪いわよ」
「……ん?
あ、美味しい……コレ、マーマレードだ」
パンの中から見えるオレンジ色に、みさとは呆気に取られていた
「よかったじゃない、そのマーマレードパンって美味しいって評判なのよ」
「ジャムパンやクリームパンにも、複数種類が有るものね」
「そうなの、怖がって損した
んで、アンタ達のは?」
「私のはコーヒークリームパンよ」
「私は葡萄パン…ももえは?」
自分のパンをみさとに見せたジュンコは、隣で固まっているももえの方を見た
「ラ…」
《ラ?》
みさと達だけでは無く、騎士達もももえの答えを待った
「─ラーメンパンですわ、パンが豚骨スープを吸っていてなんて絶品なんでしょう…!!」
ドテッと明日香達3人は、テーブルに突っ伏した
(っていうか、中の具材はどうやって入れてんのよ…?)
パンを食べ終えてお茶をする4人の話は、中断されていたあの話だった
「……で、やっぱり今年1番の男子は万丈目さんだと思うの!!」
「確かに、万丈目様以外有り得ませんわ!!」
「ま、饅頭?」
「「万丈目さん/様!!」」
ジュンコとももえの声に、みさとは引いていた
「知識も実技も1位、中等部でも不動のトップ
しかも、実家は財閥の御坊っちゃま!!」
「なりよりあのルックス!!
とてもイケメンなんですのよ!!」
「次期カイザーとも言われてんのよ!!」
「そう…すごいわね……;」
引いたような声で呟いたみさとの声は、万丈目の話で盛り上がるジュンコとももえに届いては無かった
「何だかなぁ…」
「まあ、万丈目くんは強いけど私あまり好きじゃないわ」
呆れたようにブラックコーヒーを飲んだみさとにならうように、明日香も紅茶に口をつけた
「ん~?」
「万丈目くんはね、エリート意識が強過ぎるせいで他の人を邪見にし過ぎているのよ……言ったそばから」
「え?」
目付きを鋭くさせる明日香の視線の先には、1人のレッド生を突き飛ばしキツく当たる複数のブルー生がいた
「あの集団の真ん中にいる彼が万丈目くんよ」
「へぇ…」
遠目で万丈目を見たみさとは、露骨に眉をしかめながらかけているメガネをなおした
(なんか、昔の海馬みたいな奴ね…)
[気に入らねぇな]
[身の程知らず、と言ったところでしょうか]
[痛い目を見ねぇとわからねぇボウズのようだな]
騎士達と一緒になって辛口コメントをしていると、2人のレッド生が突き飛ばされたレッド生を庇うように出て来た
「止めろよ万丈目!!」
「大丈夫、隼人くん!?」
「十代…翔……」
「万丈目さん、だ!!」
「あ、この間の奴等!!」
「万丈目様に楯突くなんて、愚かですわね」
(まあ、アイツがいれば大丈夫かな)
席を立とうとしたみさとは、座り直してカップに備えられたスプーンを弄んだ
「万丈目、隼人のカードを返してやれよ!!」
「このオレ様に命令するな!!
落ちこぼれのドロップアウトボーイが!!」
「そうだ!!
そいつが万丈目さんにぶつかったのが悪いんだ!!」
「無茶苦茶っスよ…」
万丈目は持っていた隼人のカードを嘲笑った
「ふん、『デス・コアラ』か…弱者にはピッタリのクズカードだな
だがこのオレ様にぶつかった報いは受けて貰わないとな」
「あっ…!!」
「まさか…!!」
「止めろ万丈目!!」
「万丈目さん、だ!!
こんなクズカードは…ぐっ!!」
カードに力を入れて破こうとした万丈目の顔面に、どこからか飛んできたスプーンがぶつかった
「誰だ!?」
「─ごっめぇ~ん、ちょぉ~っと手が滑っちゃったわぁ~」
露骨に惚けたような口調に、全員が声の方向を向いた
「「みさと/さん!!」」
「ちょっと、アンタ何やってんのよ!?」
「万丈目様に楯突くなんて…!!」
「ちょっと行ってくるわね~」
「ふふ、行ってらっしゃい」
焦るジュンコやももえを尻目に席を立ったみさとに、明日香は微笑んでいた
「なっ…天上院くん!?
君が何故ここに…!?」
(「天上院くん」…?
ははーん、なるほどね)
狼狽えたような万丈目の声に、みさとはその意図を瞬時に納得した
「貴様は確か、入学試験でクロノス教諭を倒した女子か」
「─アンタがジュンコやももえが言ってた……紅葉饅頭ね」
「万丈目だ!!
誰が広島名物の和菓子だ!?」
「丁寧に説明してくれたっスね」
「意外と親切だな」
「黙れェーっ!!」
翔と十代のツッコミに、万丈目は怒鳴った
「あたし、お饅頭も嫌いじゃないけど草大福の方が好き」
「貴様の好みなど知らんわーっ!!」
「草大福って…;」
「中々渋いわね…;」
的外れな事を言い切ったみさとに翔と明日香はヤンワリとツッコんだ
怒鳴り続ける万丈目に取り巻き達は慌てたように叫び出す
「お前、この方を知らないのか!?
同じ一年でも中等部からの「1発屋」、超エリートクラスの「ギャグキャラ」ナンバーワン!!」
「未来の「オジャマキング」と呼び声高い、「オジャマプリンス」準さんだ!!……あれっ!?」
取り巻き達が誇り高そうに説明するが所々みさとに言い換えられ、全く威厳の無い説明になっていた
それを聞いた十代を始め、購買にいた生徒達は爆笑し始めた
翔や明日香達は堪えてはいるものの、時々声がこぼれこらえられていなかった
「未来のオジャマキングとは恐れ入ったわねぇ!?」
「(天上院くんが…!!)
貴様、このオレ様をバカにしているのか!?」
「やぁね、バカになんかしてないわよ……あたしは、アンタをからかって遊んでいるだけよ
そのまま弄り倒したらどうなるか、少し気にはなるけど」
「なおのこと悪いわ!!」
万丈目が怒鳴っている間に、みさとは隼人のデス・コアラのカードを奪い返した
「貴様っ!!」
「あら、可愛いじゃないの
カードを破り捨てようなんて、デュエリストの風上にも置けない阿呆もいたものね紅葉饅頭」
「万丈目だと言っているだろう!!
チッ…もういい、行くぞ!!」
腹立たしげに万丈目は取り巻き達を連れて去って行った
「みさと、お前最高だぜ!!
あー、笑った笑った!!」
「ほーっほっほっほっほっ!!
このみさとちゃんにかかれば、ざっとこんなモンよ
って、それよりアンタ大丈夫?」
みさとは翔に支えられている、突き飛ばされたレッド生の前に膝をついた
「だ、大丈夫なんだな…」
「コレ、アンタのカードね?」
「うん」
「はい、次からは取られないようにね」
「あ、ありがとう」
「よかったな、隼人!」
「うん…」
「(随分気弱ね…)
十代、この人と知り合い?」
「オレや翔と同じ部屋の奴なんだ!」
「そっか、あたしは不知火 みさとよ
あなたは?」
「前田 隼人なんだな」
「隼人くんね……隼人くんは獣族デッキ?」
「い、一応はそうなんだな」
「じゃあ…コレをあげるわ
お近づきの印、って事で」
立ち上がったみさとは1枚のカードを隼人に差し出した
「おおっ!!
『ビック・コアラ』だ!!」
「強力な攻撃力のモンスターっスよ!?」
「い、良いのか…?」
「あたしが持ってても仕方ないから良いのよ
いつかデュエルしましょうね」
「あっ、みさと!!
オレとのデュエルが先だぞ!!」
「ああ、そうだった
バタバタしてたからスッカリ忘れてたわ……3人共、端末持ってる?」
「持ってるっスけど…」
「連絡先、交換しときましょ」
「おうっ!!」
3人と連絡先を交換したみさとは、明日香達の方へ帰って行った
「おのれあの女……!!」
「確かアイツ、今年唯一の女子の新入生の不知火 みさとだったハズですよ」
「世間の広さを知らない無知な女なんですよ!!
クロノスを倒したからって、いい気になって…」
「ワタクシがどうかしましターノ?」
苛々している万丈目と取り巻き達の後ろから、クロノスがやって来た
「クロノス教諭…何かご用でしょうか?」
万丈目は苛立ちを消して優等生のような口調に変わった
「シニョール 万丈目、あなたに次の実技授業でデュエルをして欲しいノーネ」
「オレが、ですか?」
「その通ーリ!!
そして、その相手は……」
クロノスから相手を聞いた万丈目は卑しく笑った
午後一の授業は、全校生徒合同の実技の授業だった
全校生徒がデュエルフィールドに集まり、フィールドの真ん中にはマイクを持ったクロノスがいた
「実技って事はデュエルだよな!?
ああー、オレやりてぇ!!」
「アニキ、落ちつこうよ」
はしゃぐ十代を宥める翔の隣で、隼人はみさとから受け取ったビック・コアラのカードを眺めていた
「…そのカードがどうかしたのか?」
十代達の後ろにいた三沢の声に、隼人は慌ててカードをしまった
「な、何でもないんだな!!」
「それデーハ、全校合同の実技の授業を始めまスーノ!!
今から呼ぶ生徒2名にデュエルをしてもらいマース!!
今回は新入生が来て初めての合同授業なノーデ、新入生同士で行いマース」
「はいはい!!
クロノス先生、オレやりたいでーす!!」
勢いよく十代が立ち上がり大きく手を上げた
「ちょっアニキ…!!」
「黙っているノーネ、シニョール 十代!!
デュエルを行う生徒は、もう決まっているノーネ!!」
「ちぇー」
拗ねたような声で、十代は渋々席についた
「まず1人目ーハ、シニョール 万丈目ー!!」
呼ばれた名前に、万丈目を支持するブルー生達が歓声をあげた
「やった!!
万丈目さんだ!!」
「万丈目様のデュエルが見れるんですわ!!」
はしゃいでいるジュンコとももえを、明日香とみさとはどうでも良さそうに見ていた
「そして対戦相手ハー……シニョーラ みさと!!」
「……へ?」
万丈目とみさとは、デュエルディスクをつけてフィールドで向かい合った
「貴様から受けた屈辱の数々、ここで晴らさせてもらうぞ!!」
「あたし、アンタに何かしたっけ?」
「このオレ様を侮辱した事、それが貴様の罪だ!!」
「よくわかんないけど、さっさと始めましょ紅葉饅頭」
「万丈目さん、だ!!
…どうやら、貴様の理解力はその胸の大きさと大差無いようだな」
その一言に、みさとの額にビキッと音を立てて青筋が立った
「……言ってくれんじゃないの、紅葉饅頭」
「万丈目さん、だ!!
何度言えば分かる!?」
「…アンタは今、あたしを怒らせた
覚悟は出来てんでしょうね?」
「ふん、それはコチラの台詞だ!!
さあ構えろ!!」
「絞り潰してやる…」
「「─決闘(デュエル)!!」」