推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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あらすじにも書いていますが
これは僕の性癖をみたす話です。
基本的に主人公は苦しみます。推しのために、推しを救うために。
それでもよろしければ彼の物語を見てあげてください。


0話 始まり

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 僕は家に帰ろうと駅のホームで読書をしていた。

 最近気に入っている。僕のヒーローアカデミアという漫画だ。

 僕のヒーローアカデミア、通称ヒロアカ。

 総人口の8割が'個性'という超能力を持つ世界。

 事故、災害、個性を悪用する敵から人々を守る職業・ヒーローになることを目指した少年、緑谷出久、そしてそのクラスメイトたちの成長、戦い、友情のストーリーが繰り広げられていく作品である。

 悲しいことに僕の推しは死んでしまったけれど……もし救えるならどれだけ良かったことか……。

 それでも素晴らしい作品であることには違いない。

 

 ……いや、僕は誰に説明しているのだろうか?

 そんなことを考えていると、

「まもなく5番線に電車が到着いたします。白線の内側までお下がりください」

 電車の通過アナウンスが聞こえてきた。

 

 ガヤガヤと周りの喧騒がうるさくなっている。

 人が増えてきた。一旦本をしまい電車を待とう。

 そんな時だった。

 

 トン

 

 っと誰かに背中を押された。

 足は地面から離れ浮遊感を感じる。ホームに手を伸ばすが誰もこちらに見向きもしない。

 身体が線路の中に投げ出される。

 「あっ……やば……」

 キィィィーーー!っとブレーキ音のようなものが聞こえるが、電車はすでに目の前に。

 僕の身体は電車のライトで明るく照らされる。

 眩しくて目を開くこともできない。

 

 ドンっという音と共に全身に今までにない衝撃が走る。

 叫ぼうにも口は開かず、あるのは浮遊感と全身が燃えたような熱さだけである。

 

 

 地面に打ち付けられたのかドサッという音と共に周りの声が叫び声に変わる。

「キャーーーー!」

「おい!だれか駅員を呼べ!」

「誰か撥ねられた!」

 

 

 そんな声を他人事のように聞きながら僕は少しだけ動く身体に力を入れて、

 持っていた本を抱きしめる。

 本は大切なものだ。少なくとも僕にとっては命と等価ともいえるかもしれない。

 本があるから、物語があるから生きてこれた。物語はいつだって僕のよりどころだった。

 

 

 自分でわかる。経験はなくともこれはもう助からないと、すでに視界に映る景色は赤く染まり、音もだんだん遠くなっていく。

 それに、もともと止まるタイミングで且つブレーキをかけたから幸か不幸か身体は原型をとどめているが、跳ねられたのに痛みがないのである。

 あるのは赤い視界に、身体が熱いと言うこと、痛みすら感じないという事実だけ。

 

 

 やだ……なぁ……

 こんなところで終わっちゃうのか、僕の人生は……

 

 

 ――――ほんとうに?――――

 

 

 いいや、まだ僕の人生は意味を果たしてない。

 これじゃあ、僕が産まれた意味なんて何にもなかったじゃないか。そんなはずはない。僕にも……なにか……産まれた以上は何か意味があったはずなんだ。

 

 

――――僕はまだ何もなしてない、何の意味も果たしていない。意味も価値もなく無価値なまま、

 終わってなんて……たまるかっ!――――

 

 

――へぇ……――

 

 

 誰かの感心したような声が聞こえた。

 そんな声を最後に僕の赤かった景色は黒く染まった。

 

 

 

 

 

 

 気づくと、僕は白い空間にいた。

 ここは……どこ……?僕はなんでここにいるのだろうか……

 確かさっきまで……うッ……頭が痛い……

 

 

 やぁ、おきたかな?

 

 

 感情のこもらない淡々とした声が聞こえる。

 目の前に白い人の形をしたモヤモヤがある。

 そうだ、電車に轢かれて……

 僕は…………なんで生きてる……?

 

 

 キミの慟哭を聞いたよ、思わず胸が躍った。

 ……産まれた意味が欲しいんだよね?

 

 

 なぜ……それを?

 声が出ない。喉に手をやろうとするが手も動かない。

 いや、違う。そもそも身体がない。自分は今……どうなっている?

 あ……あ、あぁ……

 僕は怖くなった。さっきまでの状況を思い出し、そして今の状況、何もわからない。

 

 

 質問の答えは……おや、どうしたかな?

 あぁ、そういえば忘れていた。

 認識をいじろう…………ほら、これでいいだろう?

 

 

 落ち着いた。落ち着いてしまった。

 先ほどまで混乱していたのにこの存在が何かをした瞬間、そんな不安は最初からなかったように露と消えた。

 そのこと自体が僕はとても……とても、怖い……

 

 

 あぁ、面倒だな、これでも不安になるのか……

 まぁいいや、所詮下位世界の人間だし。

 ダメなら別を探せばいい。

 

 

 ……別を……探す……?

 こんなわけもわからない白いモヤにすら必要とされなくなる?

 それは……ダメだ、これまでと何も変わらない。

 無意味に無価値にただ死んでいくだけになってしまう。

 

 

 湧き出る不安を、恐怖を無理やり抑えて白いモヤに僕は尋ねる。

 ……なん……ですか……?

 

 

 お、すごい、コレはいい。

 他のとは違う反応だ。やっぱ見る目あるなーボク。

 さて、もう一度言おうか。

 ボクはキミの慟哭を聞いたんだ。胸が躍ったよ。

 キミは……産まれた意味が欲しいんだよね?

 

 

 ……はい……

 僕は、……意味が欲しい。

 産まれても良かったと思える意味。自分の価値は無価値なんかじゃなかったんだって証明したい。

 

 

 ふむ、いいね。

 じゃあ、証明ってどうやってするのかな?

 

 

 どうやって……?

 誰かを……救えれば少なくともその人生に意味はあったって誇れると……思います……

 

 

 ほう、いいよ、誇りは大事だね。

 じゃあ、誰かって誰?

 

 

 誰……、特に思いつかないです……

 

 

 ふむ……、それは嘘だね。

 キミの頭の中にちゃんとあったはずだ。

 それは実在しなくたっていいんだよ。

 救うこと、それ自体を成すことが重要なんだから。

 思い出してみなよ、キミにはあったはずだ。

 

 

 思い出す。

 誰だ?誰を救いたい……。

 いや、白いモヤはなんと言っていた?

 実在しない……救いたい人……

 

 

 ……いや、いた。

 確かに何人もいる。だけどそれは存在しない物語の住人だ。

 

 

 見つけたね?

 そう言った白いモヤは顔は見えないのに何故か笑っている気がした。

 

 

 そう、キミが救いたいのは物語の住人だ。

 普通じゃ無理だ。キミの人生は無価値に無意味に消費されて終わる。

 だけど、ボクの目に留まった。

 なら、チャンスをあげよう。

 ボクらはね、退屈なんだ。

 娯楽が少ない。それこそ、君たちのいる次元を覗いている程度には……

 そっちに行ければいいんだけど、それは存在圧があるから無理だしなぁ。

 

 

 ……存在圧…?

 

 

 あ、そうそう、聞き覚え無いよね。

 存在圧、ボクらとキミらは異なる次元にいる。

 次元が違えば存在の圧力も違う、ただあるだけで下の次元を食い潰してしまうんだ。

 キミたちだって紙に書かれた漫画の中に入ろうとして紙に乗っても破けちゃうでしょ?

 まぁ、キミたちの場合はそもそも入れないわけだけど。

 ボクたちは入れるんだ。もしやっちゃったら、

 その入った世界滅びるからやらないんだけど。

 それを応用するとね、キミたちみたいな下位世界の住人をさらに異なる次元に送れたりするんだよね。

 

 

 異なる次元におくる……?

 もしかしてっ!

 

 

 そう、そのもしかして

 ボクたちはキミたちを物語の世界に送り込むことができる。

 だから、送ってあげるからさ。

 救って見せてよ、ボクらはそれを娯楽にたのしむからさ。

 

 

 

 

 会えるの?彼ら、彼女たちに?

 本当に?今まで僕が焦がれてやまなかったあの世界に僕は行けるの?

 

 

 あぁ、行けるとも、そのための力も与えよう。

 だから、安心して救うといい。

 

 

 ありがとう!カミサマ!あなたのおかげで……

 僕は、意味を……価値を持つことができるかもしれない……

 

 

 いいんだよ、気にしなくて。

 みんなちゃんと救うこと、それがボクたちの願いだ。

 その光景を魅せてくれ。

 

 

 さぁ、そろそろ時間だ。

 今からキミは、求めてやまなかった夢の世界に行くことになる。感動すること、喜ぶこと、絶望することだってあるだろう。

 だが、キミの推したちを救うためにそれを乗り越えなければならない。

 救えるのはキミだけだ。

 それでは……いってらっしゃい。――――――――

 

 

 

 

 

 ――――――あぁ、愉しみだ。

 ボクはキミに力を与えるよ、死んだら繰り返す力を……

 安心していい、◾️◾️◾️◾️の名の下に予言しよう。

 キミは推しを助けることに成功するだろう。

 いつか……そう、いつかね?

 例え何度、繰り返しても最後には救うことができる。

 他でもないボクが決めた。

 なら、それは絶対だ。

 ボクは作者。

 キミは登場人物でボクの書いたプロットに肉付けしていくんだ。

 

 

 できることなら壊れないでね?

 直すの面倒だからさ。

 あぁ、それにしても本当に愉しみだ。

 キミは何度目の前で推しの死を目撃するんだろうね?

 何度助けられないことに絶望するんだろう。

 でも、自殺しても逃げられないよ?この物語の終了条件は推しを救うこと。それが全てだから。

 ボクのみたい物語をキミの手で作るんだ。

 

 

 

 

 おや、誰か見ているかな?

 キミも楽しみじゃないかい?彼がどう足掻くか。

 どんな物語を描いてくれるのか。

 

 

 さぁ、では

 ボクたちも行こうか。彼の物語の観測者になりに。

 ページをめくろう。

 彼の物語はもう始まっているだろうから。

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