推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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閲覧注意

いいですね、救いはない、この話に救いはありません。
人も死にます。正直そこまで自分的には鬱要素ないと思っていますが、多分人によっては無理だと思います。
あんまり、そういうのが好きじゃないって、わかっている人は観ないことをお勧めします。


いいですね?注意はしましたよ、ここから先は自己責任です。
さぁ、それではあったかもしれない出来事をどうぞ


13話 IFルート

 

「嫌な予感がしてね……校長のお話を振り切りやってきたよ」

 

 

 オールマイトのその言葉に1-Aの生徒は皆「オールマイトがきてくれた!それなら大丈夫だ。」というように涙を流しながら笑みを浮かべている。

 

 

「来る途中で飯田少年とすれ違って……何が起きているかあらまし聞いた」

 

 

「もう――大丈夫」

 オールマイトはネクタイを引きちぎり

「――私が来た!」

 そう言い歯を食いしばっている。

 オールマイトが笑っていない、それだけでオールマイトがどれほど自責の念を感じているかが窺える。

 

 死柄木がオールマイトに語りかけた。

「待ったよ、ヒーロー……社会のごみめ」

 

 相澤先生との戦いで逃げ延びたヴィランが驚愕している。

「あれが……‼︎生で見るの初めてだぜ……‼︎迫力……すげぇ……」

「バカヤロウ、尻込みすんなよ。アレを殺って俺たちが……」

 

 瞬間、オールマイトは駆け出していた。

 

「‼︎」

 

 まさに、一瞬の出来事だった。

 死柄木たちから離れヴィランに囲まれた僕を瞬きの間に救い出した。

 

「すまない……こんなボロボロになって……」

 僕にそう語りかけると、そのままスッと立ち上がり今度は緑谷くんたちの方へ。

 死柄木がオールマイトの眼光に怯んだ瞬間――

 

 

「⁉︎」

 

 僕を右腕に抱えたまま……死柄木と脳無から、緑谷くん、梅雨ちゃん、峰田くんの三人をまとめて救い出した。さらに、オールマイトはその瞬間に死柄木に一撃を与えるという攻撃すら行っていた。

 

「皆、入口へ。置換くんを頼んだ。意識はあるようだが……負傷が酷い。早く‼︎」

 

「え⁉︎え⁉︎あれ⁉︎速ぇ……‼︎」

 驚く峰田くん。

 

 

 

 

「ああああ……だめだ……ごめんなさい……!」

 

 死柄木はオールマイトの攻撃で落ちた自身の顔についていた手を拾おうとふらふらと歩き出した。

 

「お父さん……」

 死柄木は手の元に辿り着くとスッとその手を拾い自分の顔に付け、ボソボソと呟いている。

「助けるついでに殴られた……ははは、国家公認の暴力だ。さすがに速いや、目で追えない。けれど思ったほどじゃない」

 「やはり、本当だったのかな……?弱ってるって話――」

 

 

 

「オールマイトだめです‼︎あの脳ミソヴィラン‼︎ワン……っ、僕の腕が折れないくらいの力だけどビクともしなかった‼︎きっとあいつ……」

 

「緑谷少年」

 

 オールマイトは緑谷くんに声をかけると、ニカっと笑い顔の前でピースサインを作る。

 

「大丈夫」

 

 

 オールマイトは両腕をクロスさせながら、脳無と死柄木に向かい駆け出した。

「CAROLINA……」

 

「脳無」

 

 オールマイトは両の手の手刀で脳無に攻撃した。

「SMASHッ‼︎」

 

 確実にクリーンヒットしたんぁ。

 でも、脳無はまるでダメージを受けていないように攻撃を返している。

 

「ムッ‼︎」

 オールマイトは脳無の一撃を避けると――

「マジで、全っ然……効いてないな‼︎!」

 と右腕を脳無の鳩尾に叩き込む。

 

 

「効かないのはショック吸収だからさ。脳無にダメージを与えたいなら、ゆうっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね……それをさせてくれるかは別として」

 死柄木はまるで自分の玩具はすごいだろうと自慢げな表情だ。自慢されている間もオールマイトは脳無を殴り続けている。

 

 

「わざわざサンキュー。そういうことなら‼︎」

 

 オールマイトは脳無の腰に手を回した。

「︎――やりやすい‼︎」

 そのまま背後の地面へ脳無を頭部から叩きつけた。

 さながらプロレスのジャーマンズプレックスだ。

 

 

 近くで峰田くんと梅雨ちゃんが話している。

「なんでバックドロップが爆発みてーになるんだろうな……‼︎やっぱダンチだぜオールマイト‼︎」

 

「授業はカンペを見ながらの新米さんなのに」

 

 僕を背負った緑谷くんはなんとも言えない表情をしている。

 オールマイトが来た以上、大丈夫だ。これでみんな救われる。僕はそんなことを考えながら安心感に包まれる。

 

 

 限界などとうに超えている。今まで命のかかった戦いなんてやったことのない学生だ。そんな学生が先生を敵から助けて、腕を両方折られてここまでやったんだ。それだけで充分だろう。そんなことを考えながら僕は眠るように意識を落とした。

 

 

 ここで僕が気絶なんてしなければ、何ができたとは言わないし言えない。あの場面、それでも僕がいれば何かが変わったかも知れないんだ。

 でも、それはもう終わってしまったこと。僕が今無力感や絶望感を感じているのはどうしようもないこと。

 ヒーローがヴィランに敗北した。オールマイトが、雄英生徒が、幾人かのヒーローが終わってしまったあの時のこと、そんなことを僕は思い出す。

 

 とはいえ、僕は気絶していたからこれは目覚めた後に聞いた話だ。だから――細部は違うかも知れない。でもこれは、確かに"この世界"で起きた事実なんだ。

 

 

「大丈夫?置換ちゃん」

 梅雨ちゃんは意識を失った僕に声をかけた。

 返事がないが、呼吸はしているようだ。

 

「緑谷ちゃん、峰田ちゃん、置換ちゃんの意識がないわ‼︎急いで安静にできるところに連れてかなくちゃ」

 

「あ、でもこう言う場合は動かさないほうがいいんじゃ……」

「緑谷!そんなこと言って場合じゃねぇよ、どこもかしこもヴィランだらけ、こんな場所でじっとしてて守れるのかよ‼︎」

 

 

 緑谷くんは峰田くんのその言葉を聞いて確かにそうだと気づいたのだろう。

「そうだね……できるだけ動かさないように、二人とも急ごう」

「ええ」

「おう!」

 

 

 

 その後三人は僕を負傷して意識の失った相澤先生がいるところまで避難させたらしい。

 流石に一人にするのは危険と判断したのか僕と相澤先生のところに梅雨ちゃんと峰田くんは残ったようだ。

 その後、緑谷くんはオールマイトが心配だといい飛び出したと聞いた。

 

 

 

 

 オールマイトが口から血を出している。

「っ〜〜〜‼︎」

 

 なぜか脳無は地面ではなくワープゲートに食い込んでいた。さらに、オールマイトの背中の下の地面にあるワープゲートから上半身が飛び出し、脳無のその両手の指はオールマイトの脇腹に突き刺さっていた。

 

「そういう、感じか……‼︎」

 

 

「コンクリに深くつき立てて動きを封じる気だったか?それじゃ封じれないぜ?脳無はおまえ並みのパワーになってるんだから」

 

「いいね黒霧期せずしてチャンス到来だ」

 オールマイトを傷つけられたことが嬉しいのだろう。死柄木は目を見開き笑っている。

 

「あイタ‼︎」

 脳無の指がさらに食い込む。

「君ら初犯でコレは……っ覚悟しろよ‼︎」

 

 地面から身体を生やした黒霧は

「私の中に血や臓物が溢れるので嫌なのですが……あなた程の者ならば喜んで受け入れる」

 

「目にも止まらぬ速度のあなたを拘束するのが脳無の役目。そしてあなたの身体が半端に止まった状態でゲートを閉じ――」

 

「――引きちぎるのが私の役目だ」

 そう言った。

 

 緑谷くんは最初の致命的な場面にたどり着けたらしい。

 

――――緑谷くんはオールマイトの方に駆け出していた。

「オールマイトォ‼︎‼︎」

 

「浅はか」

 黒霧がそう呟き緑谷くんの前にワープゲートを開く。

 

 緑谷くんがそれに飲み込まれそうになった時――

 

 BOOM‼︎と言う爆発音と共にワープゲートを殴り飛ばした爆豪くんがいた。

「どっけ邪魔だァ‼︎デク‼︎」

 そう言った爆豪くんは黒霧の頭部……だろうかその部分を左手で地面に叩きつける。

 

 

 ――――パキパキと何かが凍る音がする。

「‼︎?」

 今度は脳無が凍りついていた。

 

「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた」

 

「だぁー‼︎」

 死柄木に攻撃を仕掛ける切島くん。

 

「!」

 しかし死柄木は一歩前に出てその攻撃を交わした。

 

「くっそ‼︎!いいとこねー!」

 攻撃を躱され悔しがっている切島くん。

 

「スカしてんじゃねぇぞ、モヤモブが‼︎」

 笑みを浮かべる爆豪くん。

 

「平和の象徴はてめぇら如きに殺れねぇよ」

 そう淡々と話す轟くん。

 

「かっちゃん……!皆……‼︎」

 情けない表情で涙を浮かべる緑谷くん。

 

 彼らはオールマイトを救おうとヴィランの前に立ちはだかっていた。

 

「氷結……‼︎」

 オールマイトがそう呟くや否や脳無の手が緩んだのだろう。やられた両脇腹を抑えて一時後退した。

 

 

 抑えられた黒霧、凍りついた脳無を見てなお何故か、死柄木は平静を保っている。

「出入口を押さえられた…………こりゃあ……ピンチだなぁ……」

 

 黒霧を抑えた爆豪くんはやはりそうだったかと笑顔を浮かべている。

「このウッカリヤローめ!やっぱ思った通りだ!モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られている!そのモヤゲートで実態部分を覆ってだんだろ⁉︎そうだろ⁉︎」

「全身モヤの物理無効人生なら危ないっつー発想は出ねぇもんなぁ‼︎!」

 

「ぬぅっ……」

「っと動くな‼︎怪しい動きをしたと俺が判断したらすぐ爆破する‼︎」

 爆豪くんはまるでヒーローらしがらぬ言動で黒霧に脅しをかけている。

 

 

「攻略された上に全員ほぼ無傷……すごいなあ、最近の子どもは……恥ずかしくなってくるぜヴィラン連合……!」

 

 死柄木の言っていることと表情柄全くあっていない。

 まだまるで……自身の方が優位だと、おまえらの負けは確定しているのだと言いたげに見える。

 

「脳無、爆発小僧をなっつけろ。出入口の奪還だ」

 

 その言葉を聞いた脳無は凍った身体のままワープゲートから脱出を始める。されど凍っている部分を無理に動かした故そこは砕け落ちていった。

 

「⁉︎」

 

「身体が割れているのに……動いてる……⁉︎」

「皆下がれ‼︎なんだ⁉︎ショック吸収の個性じゃないのか⁉︎」

 

 脳無の砕けた腕と足の筋肉が盛り上がり形を成していく。ズグズグと膨らんでは収縮しを繰り返す脳無の身体。

 

「別にそれだけとはいってないだろう。これは超再生だな。脳無はおまえの100%にもら耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ」

 

 脳無は命令通り爆豪くんに向かい駆け出していた。すでに殴り飛ばすフォームに入っている。

 それに気づいたオールマイトが爆豪くんを庇い代わりに殴り飛ばされた。

 

 その拳は拳圧だけで木々を揺らし地面を削る。その時点で威力も想像に難くない。

 

「かっちゃん‼︎」

 

 爆豪くんは緑谷くんの横で驚愕の表情を浮かべている。あのままであれば脳無に殴り潰されていた爆豪くんをオールマイトがここまで飛ばしたのだろう。

 

 

「ゴホッ、ゲホ…………加減を知らんのか……」

 オールマイトは左手を盾にし血を吐きながら防御体制をとっていた。

 

 

 死柄木は手を広げ歌うように叫ぶ。

「仲間を助ける為さ、しかたないだろ?さっきだってホラそこの……あ――――……地味なやつ。あいつが俺に思いっきり殴り掛かろうとしたぜ?」

 

「他が為に振るう暴力は美談になるんだ。そうだろ?ヒーロー?俺はな、オールマイト!怒ってるんだ! 同じ暴力がヒーローとヴィランでカテゴライズされ善し悪しが決まる、この世の中に‼︎」

 

「何が平和の象徴‼︎所詮抑圧の為の暴力装置だおまえは!暴力は暴力しか生まないのだと。おまえを殺すことで世に知らしめるのさ!」

 

 

「めちゃくちゃだな、そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの。自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ」

 

 オールマイトの指摘に死柄木はニタ……と笑いながら答えた。

「バレるの、早……」

 

「3対5だ」

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた……‼︎」

「とんでもねぇ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ……撃退出来る‼︎」

 

「ダメだ‼︎逃げなさい」

 オールマイトは勇む四人を静止する。

 

「‼︎」

「……さっきのは俺がサポート入らなけりゃやばかったでしょう」

「オールマイト血……それに時間だってないはずじゃ……あ……」

 

 オールマイトは右の拳を握り込む。

「それはそれだ。轟少年‼︎ありがとな‼︎しかし大丈夫‼︎プロの本気を見ていなさい‼︎」

 

「脳無、黒霧やれ。俺は子どもをあしらう――」

 

「――――クリアして帰ろう!」

 その言葉と共に生徒四人に向かい走ってくる死柄木。

 

 同時にオールマイトも駆け出した。

 生徒に向かっていた死柄木はオールマイトのその圧に何かを感じたのか後ろに下がった。

 オールマイトはそのまま脳無に向かい駆ける――

 

 オールマイトと脳無の拳がぶつかり合った。

 拳と拳の応酬だ。

 オールマイトは血を口から吐きながら……

 拳を脳無に殴り続けている。

 

「真正面から殴り合い⁉︎」

 誰もその拳圧によって近づけず、ただただ見ていることしかできない。

 

「無効でなく吸収ならば‼︎限度があるんじゃないかと⁉︎私対策⁉︎私の100%を耐えるなら‼︎さらに上からねじ伏せよう‼︎」

 脳無との殴り合いは続いている。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!」

だんだんとオールマイトの身体に――顔に傷が増えていく。

 

「ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!⁉︎」

 その言葉と同時により大きく拳を振りかぶる。

 

「――Plus Ultra‼︎」

 身体の捻る力、腰、足、全ての力が集約されたその一撃は脳無をはるか上空に殴り飛ばした。

 脳無はUSJのガラスドームを割り外へ飛んでいく。

 

 

 

 

「……漫画かよ。ショック吸収をないことにしちまった。……究極の脳筋だぜ」

「デタラメな力だ……再生もまにあわねぇ程のラッシュってことか……」

 

 

「――やはり衰えた」

「全盛期なら五発も撃てば充分だったろうに」

「三百発以上も撃ってしまった――」

 身体から煙を出しながらオールマイトは笑みを浮かべた。

 

 

 

 決して大きな声ではない、それでもその場にこの女の声は響いた。

「――あぁ、そうだ。」

 

 言葉は続く。

「知ってるかなぁ。ヒトってやつはさ、勝利を確信した直後油断する……らしいぜ?」

 そんな女の声と共にオールマイトの背後にワープゲートが開き声の主と思われる両手が出てきた。

「オールマイトだもんな、両腕だ。持ってけ――」

 

 

 その言葉と同時に二本の腕が切り落とされ眩い光と共に一つに収束する。

 

 

 オールマイトが振り返るが遅い、これでは間に合わない。確かにオールマイトは強いのだろう、早いのだろう。しかし、重なった疲労、脳無を倒した安心、この後の救助活動に思考を割いていたオールマイトは確実に避けることはできない。

 このタイミングで出てきた以上致命的な威力ではあるのだろう。

 

 皆はただそれをみているしかない。

 個性を止められる相澤先生はそこにはいない。

 モノを置換できる僕もそこにはいない。

 

 故にその後の展開は必然だった。オールマイトの後方右側、そこに収束した両腕だった光。それが一瞬にして強烈な光となり弾けた。

 

 

「…………ッ」

 流石はオールマイトといったところなのだろうか。本来であれば躱せるはずのなかったその攻撃、咄嗟に躱すのではなく殴ることで少しずらしたのだろう。

 

 しかし――遅かった。

 

 生徒たちの絶望に塗れた声が聞こえる。

「オール……マイト……」

「腕が……」

「オールマイトの腕が……なくなっちまってる……」

 

 

「おいおいおいおい、やるじゃねぇかあの女」

「ええ、流石は先生から切り札になり得ると呼ばれた女かと」

 

「っしゃ‼︎、ちょいズレたけど当たった。流石両腕威力は十分ってな」

 そんなヴィランの声を聞きながらヒーロー科生は現実を直視する。

 

 そこには――

 

「……グ……く、かはっ……」

 右腕は抉り取られ、右半身の1/3もくり抜かれた様に穴が空いている。足はかろうじて繋がっているが立つことすら精一杯に見える。

 

「あー……コレは無理だ。師匠……ナイトアイ、緑谷少年、すまない…」

 

「だが――それでも」

 

 燃え盛っているかに見えたオールマイトの命の灯火が消える。

 

 いいや――

「そう、平和の象徴は――」

 

「終わらない」

 

 まだだ。まだ終われない。ここではまだ。

 

 煙に包まれながらオールマイトの身体が萎んでいく。小さく、小さく、段々と萎んでいく。

 

 女は言った。

「うーん、これは……逃げるが勝ちとみた。最後の力を振り絞る系は総じて危ないからね」

 

 1-Aを見渡し、倒れているヒーローを見渡し

「じゃあね、キミたちまた会えたら会おう」

 そんなことを言いながらワープゲートの奥に消えていった。

 

 死柄木は愉しそうに、それはそれは楽しそうに言った。

「ははっ、なんだあの女逃げたぞ。ここまでやればオールマイトを殺せるのに――」

「ええ、ここが彼の終わりとなるでしょう。さぁ、死柄木弔終わらせにいきましょう」

 

 オールマイトが痛みに耐えながらそれでも生徒を心配させない様に、希望の象徴足り得るように笑みを浮かべながら言った。

「おいおい……身体が半分くらい、ないからって……それでもキミたちヴィランが強くなった訳じゃないんだぜ…‥?」

 

 オールマイトはボロボロの身体で踏み込み、生徒に近づくヴィランたちを残った左手で殴り沈めていく。

 

「オールマイト……やめろよ……血が……」

「俺たちは自分で……やれるから」

「逃げてよ、オールマイトォ!!」

 

「おいおい……ヒーローの卵たちよ。たとえどんな状況であっても……守らなきゃいけない人々がいるのに……ヒーローが……逃げるわけにはいかないし…………それに――」

 声を出すのも辛いのだろう、オールマイトはそれでも生徒たちに何かを伝えようと、声を絞り出す。

 

 

「――私は、平和の象徴だ」

 

「さぁ、……死柄木、これで――最後だ。キミたちを捕まえて……」

 

 そう言った瞬間オールマイトは死柄木たちの前にいた。一瞬にして接近したのだろう。しかし動きは精細を欠いている。左腕を振りかぶる。

 

 

「これで――終わりだァ!」

 死柄木に一撃を加えようとした瞬間――

 

 聞き覚えのない声が響いた。

「ああ、終わりだオールマイト。キミがね――」

 

「その声っ――」

 オールマイトは声のした方向に振り向こうとする。

 しかし、

 

 ――ザクッ――

 

 地面から生えた岩の棘にオールマイトは飲み込まれた。

 

 パチパチパチと手を叩く音が聞こえる。絶望がそこに顕現する。

「よくやってくれた。死柄木弔。まさか――ここまでオールマイトを追い詰めるなんて――」

 

 死柄木はなぜここにいるのかまるでわからない様な表情で言った。

「先生――なんで――?」

 

「ああ、いやね。僕も彼にこんな目に合わされたからさやっぱり最後は直接やりたくて」

 煙が晴れる、男の姿が映し出された。

 顔は潰れており口元だけが笑っている。身体はチューブが刺さっており、まるで生命維持装置でもつけているかの様だ。

 

「本当に――ありがとう。」

 

 ――これで僕は本当の悪の魔王になれる――

 

 

 

 

 オールマイトの声が聞こえた。

「オール……フォー……ワン…………」

 

 

 

「おや、まだ生きてるのか。本当にしぶといなぁキミは……」

 やれやれ本当に困った奴だとでも言いたげにオールフォーワンと呼ばれた男は言った。

 

 

 

「まるで――ゴキブリじゃあないか」

「キサマ……生きていたのか……」

 オールマイトはボロボロになりながら岩の棘から這い出てきた。そこにオールマイトの特徴ともいえる笑顔はない。

 

「ゴキブリは――潰さなきゃだ」

「個性複合『大拳』+『スティール』+『ツル』+『ツインインパクト』」

 オールフォーワンの手は肥大化し鉄と化し、ツルで巻かれコーティングされた。その腕を天に掲げ、満足に動けないオールマイトへと振り下ろそうとしている。

 

「うん、いい感じだ」

「――その個性……」

 

 

「?ああ、そうだ。キミには嫌な思いして欲しかったからさ、先に雄英に行ってきたんだよ」

「まさか――!」

 オールマイトが何かに気づくと同時だった。個性の複合されたオールフォーワンの腕が振り下ろされた。

 

 

 

 

 衝撃がUSJ全体に二度響いた。

 

 

 

 

 オールフォーワンの手の下には赤い血溜まりがじわりじわりと広がっている。

 

 

「やっぱり、自分の手でやるのがいいね。そうだ――」

 

 

 ふとオールフォーワンは思いついた様にあたりを見渡す。

「ここにもいい個性が揃ってる。もらって行こう」

 

 

「黒霧……集めてくれるかな?」

「はい」

 

 

 生徒全員がオールフォーワンの前に集められる。巨悪を前にして誰も声を出せない。震えるのが精一杯で動くことすらできない。

 

 

「よくも……よくもオールマイトをッ‼︎」

 緑谷くんが飛び出した。

 

「ふざけんなよてめぇ‼︎このクソヴィランが‼︎」

 爆豪くんが飛び出した。

 

 

 だけど、現実は無常だ。

 オールフォーワンが彼らに視線を向けた瞬間地面にひれ伏した。

「うん、個性ブラックホール。応用すればこんなこともできるのか」

 

 一瞬だけ極小のブラックホールを彼らの下の出現させ吸引その後すぐ消したようだ。

 

「キミらはイキがいいみたいだ。先にもらおうかな」

 

 

 すでに平和の象徴はいない、ここに救いは訪れない。

 雄英もすでに潰されている。ヒーローは残ってはいるがこの巨悪を倒せたのはオールマイトだけ。彼がいたからこそこの巨悪は身を潜めていた。だけどもう――彼は――

 

「今日はいい日だ――新たな悪の魔王の誕生日。みんなで祝ってくれよ?なぁ、黒霧、死柄木弔――」

 

 

 

 

 

 今の話をしよう。

 オールマイトは斃れ雄英の先生、新たなヒーローの卵も個性を全て奪われた。

 すでに外は壊滅的だ。ヴィランが街で暴れ、街の住人はヒーローはもう役に立たないからとそれぞれで応戦している。

 一人また一人と今日もどこかで誰かが死んでいく。

 僕たちも生きているだけ。希望も夢も何もかも残ってはない。誰かを助けたかった、そんな願いはもう残っていない。だってその助けたかった人すらもうこの世界にはいないのだから。

 

 昨日はクラスメイトだった彼が死んだ、今日は誰が死ぬのだろうか――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 

 ん?やぁ、まさか見にきたの?

 救いなんてないって念を押したのに仕方ないなぁ。

 

 

 

 ボクがここにいる理由?ああ、それはボクは彼の物語をたのしんでいるからね。それは幸であっても不幸であってもなんでもいいのさ。

 

 

 

 見ての通り、この世界では彼は推しである彼女を救うことができなかった。

 だから、この世界に先はない。

 なにせ、平和の象徴が死んでしまった、AFOは彼抜きでは斃せないだろう。それに彼も推しを救えないことが確定しているからね。

 

 

 だから――――

 

 

 

 この枝は切り落として、少しばかり過去に戻ろうか。

 

 

 

 

 さぁ、キミも戻って。ボクもいくからさ。

 別の可能性を観に行こう。

 




さてさて、今回も読んでくれてありがとうございました。

ね?大したことない救いのない話だったでしょう?
絶望と言うには薄くて、もっと濃くより深い絶望を書きたいんですけどね。

アンケートの結果観たいって言う人が1/3をしめてたので…
僕も一人でもいたら書きますって言いましたし。

今日、明日でもう一話進めらたらいいな。続きが気になる組の方たちももう少しお待ちくださいね!
頑張って書きます!
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