推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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1話 中学編

 朝方、気持ちのいい風を浴びながら

 登校前の朝食後庭先に座っていると、

 一枚の紙が風に流されている。

 

 足元の小石を広い目の前に軽く投げる。

 ――――パン――――

 自身の両手で柏手を鳴らす。

 

 すると僕の目の前には先ほどまで風に飛ばされていた紙があった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ”個性”

 

 事の始まりは中国軽慶市

 ”発光する赤子”が生まれたというニュース。

 

 以降各地で「超常」は発見され

 原因も判然としないまま時は流れる。

 

 いつしか「超常」は「日常」に……

「架空」架空(ゆめ)は「現実」に。

 

 世界総人口の約八割が何らかの”特異体質”である超人社会となった現在。

 混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びていた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 紙にはそんなことが書いてあった。

「まったく、ゴミはちゃんとゴミ箱に捨ててほしいね」

 そういって紙を丸めごみ箱に捨てる。

 

 かくいう僕も、八割の側、個性持ちである。

 

 個性「置換」

 両手を叩くことでモノの位置を入れ替えることができる。

 

 先ほどは投げた小石と風に飛ばされた紙を入れ替えた。

 

 一般的に資格のない人は公共の場所での個性使用が認められていない。

 まぁ、迷惑をかけなければ割と見逃されたりもしているので何とも言えないのだけれど。

 僕にできるのは隠れて個性を使用し鍛えるくらいしかできない。

 その甲斐あって少しは便利なこともできるようになったが、今はいいだろう。

 

 カミサマと話した後、

 僕こと”置換 隷”は僕のヒーローアカデミアの世界に生まれ落ちた。

 この世界でも家族はいない。どうやら生まれた直後に捨てられたらしい。

 悲しくはあったが僕は、ただの子供ではない。両親がいても迷惑をかけていただろう。

 だから、これでよかったのだと思う。

 

 

 では僕はどこで過ごしているのか。

 「じいちゃん、ゴミ出してくるね」

 僕を捨てた両親も鬼ではなかったらしい。

 子供のできなかった老夫婦の家の前に捨てたようだ。

 赤子の時から自意識があった僕は可能な限り普通の子供の真似をしていた。

 老夫婦の家に住まわせてもらいここまで育ててもらった。当然恩を感じているし前世の親より親だと思えている。

 とはいえ、普通の子供とは色々違ったのだろう。周りに合わせることができず面倒ごとを幾度か起こしたが、さすがに中学生にもなれば溶け込むことは難しくはない。

 まぁ、そんなこんなで今の家で過ごしているのである。

 

 

「あぁ、いつも助かっているよ……レイ……、最近身体が動きにくくてな……」

 少しかすれた声でじいちゃんが返事をする。

 

 

 「いいよ、気にしないで。たいして苦でもないし、ゴミ捨て場は通学の途中にあるしね!」

 そう、ゴミ捨て場は僕の通っている中学校。公立山岡中学校に向かう途中にある。

 

 

「そうだ!学校行く前にばあちゃんにあいさつしないと」

 そう僕はつぶやくと家の中に戻り仏壇の前に正座する。 

 

 

 心の中で今日も学校に行ってきます。とばあちゃんに話すと靴を履き、

「じいちゃーん!いってくるねー」

 そういってじいちゃんの「行ってらっしゃい」という言葉を聞きながらゴミを片手に山岡中学校に駆けだした。

 

 

 山岡中学校、僕の通っている中学校だ。

 二年生までは仲のいい友人が同じクラスだったのだが……不幸なことに今のクラスに友人はいない。

 もう卒業も近いのでその話は置いておこう。

 そんなことを考えながら席につき読書をしていると……

 

 

 キーンコーンカーンコー―ンとチャイムが鳴ると教室の扉を開け担任が入ってくる。

 僕は読書をやめ担任の声に耳を傾ける。

 

 

 「おはよう!」

 「さて、君らももう中学三年生。

 本格的に将来を考えていく時間だ!!!」

 熱血気味に担任がそう言った。

「順番に進路希望表を配る。一人一枚ずつ取って後ろに回すように」

 

 

 進路希望表が配られた。

 僕が行きたいところは当然決まっている。

 そう、雄英高校ヒーロー科である。

 せっかく二次元の世界にこれたのだ。当然物語に関わりたいだろう。

 それに、推しであるミッドナイトこと、香山睡さんを救いたいんだ。

 だから、まずは雄英校に行かなくてはいけない。

 幸い前世の知識もあり、成績は優秀。生活態度にも気を付けいるため内申点も悪くない。

 個性も直接戦闘には使いにくいが戦えなくもない。

 推し生で見れるし、個性を伸ばすことも考えれば雄英校ヒーロー科が一番いい。

 

 

 問題があるとすれば偏差値が高すぎることだが……

 まぁ、何とかなると思う。

 もしだめなら、その時考えればいいし。

 

 

 第一希望だけ雄英校ヒーロー科と書いた紙を担任に渡す。

 ガヤガヤ騒いでいる周りを尻目に読書を再開する。

 

 

 そう、僕には友達が少ない。

 いないわけではないが、先ほども話した通り仲が良かった友人とはクラスが分かれ一人になってしまった。

 僕も性格的にほかのクラスまで遊びに行くタイプではない。

 今年で卒業なのもあって、すぐわかれることになると思ってしまいこのクラスで友人と呼べる人物はいない。

 もちろん話しかけられれば会話はするし、コミュニケーションは問題ない……と思う。

 

 

 そんなことを考えていると授業が終わったようだ。

 

 

「おーい!」

 と久しぶりに友人である鬼瓦 鬼人が教室の入り口に立ち誰かを呼んでいる。

 ちなみに名前は'おにがわら おにひと'である

 'きじん'ではない。きじんと呼ぶとかなり怒る。見た目通りかなり怖いので注意が必要だ。

 

 

「?」

 顔を上げ鬼人であることを確認右手を上げ挨拶する。  

 あいつは友人が多い、呼んでいるのは僕ではないだろうと思い再度読書に戻る。

 聞こえる話を整理するとやはり誰かを呼んでいるらしい。

 

 

「いやいやいや、今お前顔上げたよね?気づいてるよね?そう、そこの隷さんですよー?俺が用事あるの」

 強面な顔に似合わず、おちゃらけたようにそういう鬼人に目を向け、声をかける。

「?そうだったんだ。ちょっとまってね、今行くわー」

 本にしおりを挟み鞄にしまうと教室の入り口に向かい歩き出した。

 ひさしぶりだなーと少しうれしく思いながら鬼人に近づいていく。

 

 

「珍しいね、どうしたの?」

 鬼人は苦笑いしながら

「いや、進路希望表もらったじゃん?どうしようかなと思ってさ。」と告げる。

 

「真面目そうな話だね、なら移動しようか」

「そうだな!」

 僕は鬼人の返事を聴くや否や中庭に向けて歩き出した。

 

 

 中庭につくと改めて鬼人が

「進路希望について相談があってさ」

「うん、聞くよ。僕はもう決めたけど、鬼人はどうするの?その個性ならヒーローにもなれると思うけど……」

 確か鬼人の個性は異形型個性の”鬼”だったはずだ。

 事実、頭の上に角が生えており、顔も強面である。腕力もある。少しキレやすいのが玉に瑕だが……

 

 

 「そうなんだけどさ、異形型の個性って批判されやすいじゃん?特に俺は短気だし問題起こしそうだからどうしようって。それに家業を継がなきゃいけないってのもある。お前はどう思う?」

「んー、そっか、家も継がなきゃいけないのか。やりたいならチャレンジしたほうがいいと思うけど……鬼人はどうしたいの?」

 

「そりゃ、なれるならなりたいさ、ヒーローは憧れの職業だしな」

「それなら、チャレンジはしたほうがいい。本気であることを示せれば親父さんも許してくれるはずだ」

「本気……か。例えば雄英校ヒーロー科を目指す……とかか?」

「そうだね、あの倍率を超えて合格できたなら本気なのを認めてもらえると思う。それに僕も雄英校ヒーロー科に受験するつもりだし、鬼人がいれば心強いよ」

 親父さんもヒーローに対しての偏見はないはずだ。

 

 

「そうなのか!?レイがいるなら俺も心強い!親父に話してみるわ!」

 そう嬉しそうに鬼人は「ありがとう!またなー」と言いながら駆け出して行った。

 

 

 鬼人の単純さに苦笑しながら僕は教室に戻ることにした。

 その日は何事もなく1日を終え帰路に着いた。

 

 

 翌日鬼人から雄英校ヒーロー科に合格できるならと親父さん言われたと話された。

 「落ちた時はしかたない。その時は約束通り家を継ぐさ。男が自分から言い出したことを守らねぇのはかっこわりぃ」と真っ直ぐな目で語った。

 

 

 授業が終わると誰かが走ってくる足音がする。

 まったく、廊下を走るなんて忙しない人もいるなぁと思っていると……

 鬼人が教室に駆け込んできた。

「そうだ!隷!!受験勉強教えてくれ!」

 そうだ、そうだった、個性の都合上実技は大丈夫だろうが鬼人……あまり、頭がよくない……

「あ、うん……そうだったね、一緒に勉強しようか……」僕はどうカリキュラムを組んだものかと悩みながらそう返事をした。

 

 

「とりあえず、昼休みまた教室来てもらっていいかな?」

 今は授業の合間の休憩時間十分程度しかない。

 せめてもう少し長い昼休みに出直してもらおう。

「そうだな!んじゃまたあとでー!!!」

 いうや否やダッシュで教室を出ていった。

 

 

 ほんとうに忙しない男である。

 何か用事でもあったのだろうか?と少し心配になりながら黙々と次の授業の準備をする。

 

 

 ――――キーンコーンカーンコーン――――

 昼休み前の授業終了の鐘が鳴った。それと同時にダダダダダダと走ってくる足音がする。

 

 

 先生が教室を出ると同時に鬼人が教室に入ってきた。

「よ!隷、昼休みに来たぜ」

「あ、うん……はやいね……」

「そりゃ、もう受験まで日数限られてるからな少しも無駄にできねぇし!」

 僕はハッとした。そうだ、日はないのである。鬼人は自分が勉強できないことをちゃんと理解しているのだ。

 

 

「そうだね、じゃあお昼ご飯ぱぱっと食べて図書室行こうか」

「おう!そうなると思ってもう飯持ってきてんだ!」

 昼食なのであろう菓子パンを右手に掲げながらこちらに見せてくる。

「じゃ、ぱぱっと食べちゃお」

 

 

 5分ほどでお互い食べ終える。

「さ、手洗って図書室いこーぜ」鬼人が言いながら立ち上がり教室の出口に向かう。

「そうだね、早く行こうか」

 僕も相槌を打ちそれに追随する。

 

 

 図書室に向かいながら鬼人に話しかける。

「それにしても、こんなにやる気があるとは思わなかったよ」

「いや、そりゃやる気もあるさ。全力でやらなくてどうするよ」

 少し不純な動機な自分が申し訳なく思える。

 何せ僕の動機はミッドナイトに会って話したい・命を救いたい、物語を近くで見たいこれがメインだ。

 鬼人みたいに夢のために全力なわけではないのだ。

 

 

「僕も鬼人見習わなきゃね」

「何言ってんだよ、お前は勉強も実技も問題なく合格圏内だろ」

「そういう話じゃないんだけど……」僕は苦笑しながらそう言う。

「ま、いいや。よろしく頼むぜ、先生」

「任せて、少なくとも合格平均ラインまでは鬼人の学力向上に全力で協力するよ」

 

 

 そんな話を続けていると図書室に着いた。

「さ、席について。勉強に必要な教科書はもう纏めてある。勉強しようか。」

「おう!」

 

 

 やはり、前から思っていたが鬼人はそんなに頭は悪くない。ちゃんと理解できずに先に進んでしまうからわからないことだけが増えていっているみたいだ。

 今回の勉強で、理解できるところまでちゃんと教えればあとは自分の力で解けているのである。

 時計を見ると、もう昼休みも終わるようだ。

 

 

「さてと、今日はここまでだね」

「ん?もうそんな時間か、にしてもすげぇな隷。こんなできるとは思わなかったわ」

「いや、鬼人。わからないところそのままにしてただけでしょ。ちゃんと理解さえできれば応用して解けてるし……」

「いやぁ……そうなんだよなぁ、先生の話みんな早くって。勉強わかればやっぱ、楽しいな。お前とクラス別れてからわかんねぇことばっかりだったわ」

「聞きにきていいからね、質問そのままにする方が良くないし……前はクラス一緒だったから教えられたけど……他のクラス行くの苦手でさ……」

「ん、気にすんな。わかってる。教えてもらう側の俺が行くさ」

 

 

 話していたら昼休み終了時刻まであとわずかだ。

「やっば、授業始まる……急がなきゃ。また何かあれば放課後図書室いると思うから来てくれれば教えるよ」

「おう!じゃまた放課後行くわ」

「おっけー」と僕は返事をして教室に戻った。

 

 

 授業が終わり放課後である。

 約束通り鬼人は図書室に来た。

 では、勉強である。

「お疲れ様、今日の授業でわからなかったところから行こうか」

「よろしく頼むぜ、先生ッ!」

 

 

 こんな日を3ヶ月ほど過ごしただろうか。

「よっっしゃぁぁぁぁーーー!!」と鬼人の声が廊下に響き渡る。

 学内テストが終わり順位が張り出された。

 僕は安定の5位、鬼人はというと……

 ――35位、前回が120人中の108位だったことを考えるとかなりの進歩だ。

「すごいね!鬼人、前回より73位も順位上げてる」

「おう!隷のおかげだぜ。これで学科試験も合格圏内に入れそうだ」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。じゃあ、次は――」

 

 ――個性の訓練だね――

 

 周りに聞こえないように鬼人に呟く。

「っ!」

 鬼人は少し驚いた表情をしたが、すぐに納得したのだろう。「……だな!」と返事をした。

 

 

「それじゃあ、今日は放課後裏山集合ね。あんまり僕は強くないからさ、今度は頼むね先生?」

「おぉ!任せろ、隷!」

 

 

 

 

 

 カァ、カァとカラスの鳴き声が聞こえる。

 夕日に照らされた山が赤くて少し綺麗だ。

 かくして放課後である。

 場所指定していなかったため歩き回って集合時間を過ぎてしまった。

「遅いぞ、隷!」

 少し怒っているのかいつもより表情が険しい。

 

 

「ごめんごめん、待ち合わせ場所指定してなかったから探してた」申し訳なさそうにそう告げると

「…………あ……」

 鬼人も忘れていたのだろう。今気づいたようにポカンと口を開けている。

「……うむ、そう言うこともあるな、うん」

 鬼人も忘れていたので人のことを強く言えないのか口籠もっていた。

 

 

「遅れたけど、ちゃんとやろう。個性訓練」

「おう!ただ、俺考えても思いつかなくてさ。戦闘訓練になっちゃうけど……いいか?」

「もちろん、最初はそのつもりだったから。発見があれば各々言い合って個性を上手く使えるようにしていこう!」

 

 

 鬼人はにっと笑うと

「じゃあ始めるか」と表情を引き締めて告げる。

 鬼人が手のひら大の石を拾い上げ

「この石が地面に落ちたらスタートだ。」と石を天に投げる。

 

 

 一瞬の空白、投げられる石、お互いの目はすでに相手を見つめている。

 

 ドンと地面に石がついた瞬間――

 

 

 僕は動き出していた。

 体を眺め小石を拾う。そしてそれを鬼人に投げつける。

 鬼人は手で小石を払いながら

「くっ、なんだ、小細工か?」と顔を顰める。

「いいや?そう言えば鬼人には僕の個性見せたことなかったっけ……?」

 

 パン

 

 僕は手を叩く。

 その瞬間僕はもう鬼人の後ろにいた。

「僕の個性は置換、モノとモノの位置を置き換えられるんだ」そう言いながら鬼人に殴りかかった。

 

 

 あと少しで拳が当たる……そんなタイミングで

 鬼人は野生の勘なのかすぐさま後ろを振り向くとニィと強面な顔に笑顔を浮かべながら右の裏拳をぶつけようとしてくる。

 

 

 パン

 

 

 手を叩く。

 鬼人が先ほど払った小石の位置と置換する。

 

 

 ブンっと鬼人の裏拳が空振りする音がする。

「あっぶな……人の拳で音がするってよっぽどよ?

 どんな拳圧してんのさ……」

 

 

「いやいや、これでも個性鬼だから。パワーは負けんさ。それに知ってるだろ?こんな見た目だからちっさい頃から喧嘩売られてたんだぜ?」

 

 

 じりじりと距離を詰める。

 僕の個性は視認できる範囲の置換、つまりは入れ替えだ。

「あぁ、そうだったね、そんなこともあったね」

 懐かしむように返事をしながら、どうすればいいのか考える。

 あの奇襲で気づかれるなら、カウンターしかないのかもしれない。

 

 

「どした?動かないならこっちからいく……ぜッ!」

 そう告げると同時に鬼人は駆け出す。

「速っ」

 鬼人が殴ろうと右拳を振り絞り大きく引き抜く。

 

 

 パン

 

 

 手を叩き今度は右側の石と入れ替わる。

 そのまま流れるように鬼人の右脇腹に拳を叩き込む。

 

 

 入った。

 と思うのも束の間、嫌な予感がした。

 手を叩いて移動すると同時に僕のいた場所を鬼人の裏拳が通り過ぎていた。

 

 

「いってぇ……」鬼人は脇腹を抑えながら軽くさする。

 

 

「いや、うっそぉ……わりと入ったと思ったんだけど……」少しドン引きしながら僕は言う。

 

「あぁ、入ったよ、いてぇもん。久しぶりだよこんな一撃もらったの。だがよ、俺の個性'鬼'だぜ?硬さもあるさ」

 

 

 それに…と続くように鬼人は含みを持たせると

「次は――当てられそうだ」と拳を見せる。

 そこには少し、ほんの少しだけ赤い何かが滲んでいた。

 

 

 はっとする。右腕が少し熱い。

 腕を見る。服が破け血が滲んでいる。

 当てた…のか?あの一瞬で?僕の置換に対応しながら……

「本当に……?鬼人やっぱり強いや」

 

 

 僕は駆け出していた。

 そもそも僕の強みはどこにでも移動できることだ。(置換できるものがあれば…だけど)

 なら、置換し続けて位置をわからなくすればいいッ!

 

 

 手を叩き続ける。

 鬼人の上に、右に、左に、後ろに、正面に。

 移動することしないことは僕の意思次第。

 さらに……僕は別に手を叩かなくても置換はできる。(その場合、置換位置にズレが生じてしまうのが問題だけど)

 叩いた方がやりやすいから叩くだけだ。

 

 

「ええいっ!鬱陶しい!お前はハエか!!?」

 幸い、こちらから攻撃をしなければ、移動して目の前に現れ別の場所に置換する。これをしているうちは鬼人も攻撃を当てられないようだ。

 鬼人も攻撃後の隙でこちらに反撃しようとしているのだろう。

 

 

 鬼人は周りに置換し続ける僕を払うように

「鬱陶しい!!!!!!」と大きく手を払う。

 

 

 ――今だ

 僕はすかさず鬼人の後ろに移動、すかさず後頭部に殴りかかる。

 その瞬間

「いや、わかりやすいんよ隷」という鬼人の声とドンっという衝撃を最後に僕の意識はブラックアウトした。

 

 

 

 すでに外は夜になっている。

「いやぁ、わりぃわりぃ!つい熱が入っちまって」

 電灯の灯りを頼りに、そう言いながら僕のお腹に包帯を巻いているのは鬼人だ。

 

 

 あの瞬間、僕が後ろに来ることを予測していた鬼人は後ろに肘打ちを放っていたようだ。

 そこに僕が飛び込み……と言った感じらしい……

 かなり勢いよく肘打ちが刺さり腹は青紫にアザができている。

 

 

「いったいなぁ」

「ごめん、ごめんって」鬼人はそう言いながらも笑っている。

「にしても、やっぱり鬼人は強いね、喧嘩慣れしてるって言うか」

「そりゃそうだろ、何しろ年季が違う。こちとらガキの頃からこの見た目のせいで喧嘩三昧だよ」

「大変だったよね……、でさ、どうだった?」

 僕は鬼人に問う。

「んー、悪くないんじゃね?喧嘩慣れしてないのにあれだけ動けるのは上場だと思う。あとは…一発が軽いのが気になる……かなぁ」

 

 

 一発が軽い…やはり、そこか。

 今の使い方で個性を使うとどうしても攻撃力が足りないのだ。

 ふと……考えた。

 今僕は呪術廻戦の東堂葵のような戦い方をしている。

 なら、彼を見習って筋力をつけるべきなのだろうか。

 

 

「鬼人はどう思う?僕は筋力をつけるべきかな?」

「そうなるわなぁ……、そうすりゃ一発一発の威力も上がるだろうし」

「じゃあ、筋トレかぁ……頑張ろう」

「おう!一人じゃあれだし俺も付き合うぜ」

 

 

 僕は鬼人に肩を貸してもらい。家路に着いた。

 おじいちゃんには普通に何も言わずに帰りが遅かったことと怪我をしたことを怒られた。

 そりゃそうだ……

 

 

 

 

 

 そんなこんなで入学試験当日――――――――

 

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