推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お待たせしました!
今回はちょっと長め、前回のと合わせて割ればちょうど2話分になります!

それではどぞー!


28話 期末テスト

28話 期末テスト

[時は流れ、六月最終週――――……期末テストまで残すところ一週間を切っていた]

 

「全く勉強してねーーー!!」

 教室に上鳴くんと芦戸さんの嘆きが響いた。

 

 ど、どうしよう。二人とそこまで仲良くないし……。手伝いたいけど、迷惑じゃないかな。と、僕がうじうじ悩んでいる間に八百万さんが勉強会をしてくれる流れになっていた。

 

「お二人じゃないけど……ウチもいいかな?二次関数ちょっと応用つまずいちゃってて」

「わりィ俺も!八百万古文わかる?」

「おれも」

 

 この流れに……乗るしかない!もっとみんなと仲良くなりたいし。人に教えることも自分の勉強になるもんね。席から立ち上がり八百万さんに声をかける。

 

「えっと、僕もいい?勉強会するなら参加したいな」

 

「え、え?」

 八百万さんは一瞬困惑した表情をした後、花が咲くような満面の笑みを浮かべ両手を上げた。

「良いデストモ!!」

 

 わーい、八百万さんちょっとお堅い人なのかなって思ってたけど結構関わりやすいかも……

 

♦︎

 

 昼休憩後、緑谷くんたちがB組から実技試験の詳細を教えてもらったようで、どうやら対ロボット演習らしい。

 

 試験内容を知ったことで気が抜けた芦戸さんと上鳴くんが笑っている。

「んだよロボならラクチンだぜ!!」

「やったぁ」

 

 ふと僕は懐かしさを覚えた。

 懐かしい――そういえば、受験の時も鬼人とこういう感じで笑い合ってたな。

 

 

 

 

「わははは!おい隷。いつもあんがとな」

 鬼人は僕の頭の上に手を乗せると雑に動かし髪をぐしゃぐしゃにした。

 

「まったく、やめてよね鬼人。髪型崩れるじゃん」

「なーに言ってやがる。目元まで髪で隠れてんじゃねぇか。もっと顔出せ顔。元は悪くねぇんだから」

「い、いや、それはいいかな。あんまり自分の顔好きじゃないんだ」

「んだよ、もったいねぇ」

 

「あ、そうだ。隷――」

 

 

 

 

 少し涙が出てきた。あの時は楽しかった。ミッドナイトを救うって目的意識はあったけどまだ会ったこともないから漠然としてて、雄英に入ることを目標に友達と頑張りながら……そんな楽しかった毎日。

 

 

 教室が騒がしい。涙を拭い周りを見渡した。

 爆豪くんが緑谷くんに何か言っていた。

「――なきまでに差ァつけて……てめェぶち殺してやる!」

「轟ィ……!!てめェもなあァ!!」

 

 え、何があったの?僕が昔のこと思い出してる間になにあったの!?爆豪くんが勢いよく開けた扉の音に驚きビクッとしてしまった。

 

 どうやら周りの話を聞くにいつもの爆豪くんの宣戦布告らしい。ただ何か焦っているように感じたって……

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 八百万さんの家での勉強会により無事みんな筆記試験をクリアして――

 

 ――演習試験、当日。

 

 相澤先生ことイレイザーヘッド、ミッドナイト、13号、プレゼントマイク、セメントス、エクトプラズム、パワーローダー、スナイプと名だたるヒーローが僕らA組の前に並び立つ。

 

「それじゃあ、演習を始めていく」

 

「この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたきゃみっともねぇヘマはするなよ」

 

「先生多いな……?」

 そんな耳郎さんの言葉をきき疑問を抱いた。

 ……あれ、ロボット演習じゃ……?しかし、その疑問はすぐに解決することになる。

 

「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々わかってるとは思うが……」

 

 上鳴くんと芦戸さんが言葉を挟む。

「入試みてぇなロボ無双だろ!!」

「花火!カレー!肝試ーーー!!」

 

 しかし、相澤先生の首に巻かれた捕縛布から根津校長がひょこっと出てきてそれを否定した。

「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

「校長先生!?」

「変更って……」

 

 

「それはね……」

 

 

 ――雄英に勤めているヒーローたちが会議室に集っていた。

 

「ヴィラン活性化のおそれ……か」

「もちろんそれを未然に防ぐことが最善ですが、学校としては万全を期したい」

「これからの社会。現状以上に対ヴィラン戦闘が激化すると考えれば……」

「――ロボとの戦闘訓練は実戦的ではない」

 

「そもそもロボは入学試験という場で人に危害を加えるのか等のクレームを回避するための策――」

 

 

「――そう、これからは対人戦闘・活動を見据えた……より実戦に近い教えを重視するのさ!」

 

「というわけで……諸君らにはこれから、二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

「ま、一チームだけ三人でやってもらう事になるんだけどさ!」

 

 

「先……生方と……?」

 

「尚、ペアの組みと対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ」

 

 相澤先生が不敵に笑う。

「まず……轟と八百万がチームで――俺とだ」

 

「そして緑谷と爆豪がチーム」

「で……相手は――」

 

「私がーーする!協力して勝ちに来いよ。お二人さん!!」

 緑谷くんと爆豪くんの相手はオールマイトみたい。

 

 

「それぞれステージを用意してある。十組一斉スタートだ。試験の概要については各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ。時間がもったいない。速やかに乗れ」

 

 イレイザーヘッドvs轟・八百万

 オールマイトvs爆豪・緑谷

 校長vs芦戸・上鳴

 13号vs青山・麗日

 プレゼント・マイクvs口田・耳郎

 エクトプラズムvs蛙吹・常闇

 スナイプvs葉隠・障子

 セメントスvs砂藤・切島

 パワーローダーvs飯田・尾白

 

 

 そして、僕が、僕たちが戦うのは――

 

 ミッドナイトvs 置換・瀬呂・峰田

 

 ――先生だ。

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

「ここが私たちが戦うフィールドよ」

 

「ま、オイラたちは三人もいるしいくらプロヒーローでもよゆーよ、よゆー!」

「んー、先生といえど三人は無理なんじゃないすか?」

「…………」

 どうする?先生の個性は――

 

「あはは……勝てるなら勝っていいのよ。これは試験なんだからね」

 

「さて、説明するわね。制限時間は三十分」

「あなた達の目的は『このハンドカフスを私に掛ける』or『二人がこのステージから脱出』!」

 

「逃げてもいいんだ」

「あ、戦闘訓練と似てるかも」

「二人が脱出……?」

 

「確かに似てるけど……瀬呂くん。戦闘訓練よりハードよ。何せ相手はプロヒーロー。格上……だからね?」

 先生はウインクをしてくる。

 

「それに、他のチームなら一人一人脱出なんだけど……あなたたちは三人いるからね。二人の脱出というクリア条件になっているわ」

 

 そうか、そうだよね。他のチームより有利だもんね。それに僕の個性も一人だけならすぐにクリアできてしまう。二人になることで協力が必須となる。

 

「私をヴィランそのものだと考えてちょうだいね。会敵したと仮定してそれで戦って勝てるならそれでいい。でも、実力差が大きすぎる場合逃げて応援を呼んだ方が賢明。当然、置換くんならわかってるよね」

 

「……はい」

 

「で、こんなルールだと逃げの一択になっちゃうじゃない?だから――」

「サポート科に重りを作ってもらったのよ。重さにして体重の半分の重量を装着。つまりハンデってことね」

 

『皆、位置についたね。それじゃあ今から雄英高一年期末テストを始めるよ!レディイイ――ゴォ!!!!』

 

「言い忘れたけど……私たち教師陣もあなた達を本気で叩き潰すつもり……って言うの遅かったかしら――」

 

 っ!本気……なら、距離を取らなきゃ。先生の個性は――

 

「瀬呂くん!峰田くん後退!先生の個性は――眠り香だ!!!」

 

「「ッ」」

 

 僕の言葉を聞くと同時に僕は銃を撃ち弾と置換し、瀬呂くんは峰田くんを掴みテープ柱に巻きつけそれを使い大きく後退した。

 

「あら、やるじゃない」

 

 

♦︎

 

 

 先生のそんな声を聞きながら僕たちは演習場にある建物の陰に隠れた。

 

「危なかった……」

「わ、わりぃ、置換。先生の個性忘れてた……」

「オイラも危うく開始直後リタイヤするとこだった……」

 

「気にしないで、僕も最近直接見る機会があったから……すぐ反応できただけだし……」

「……直接?」

「見る機会が……?」

 

「え、あ、うん。そう、職場体験の時にちょっとね」

 

 僕の言葉を聞いた峰田くんは大声で泣きながら縋り付いてきた。

「置換ーーーー!!!ずるいぞ!!オイラなんてなぁ、オイラなんてなぁ!!!」

「あのマウントレディの事務所でなぁ……グス、グス、うわぁぁぁぁああー!!!!!!」

 

「ちょちょ、峰田くん、今試験中――」

「そうだぜ、峰田今はそんなことしてる場合じゃ――」

 

「――あら」

 

 ふと、後ろから先生の声が聞こえた。

「泣き声、ゾクゾクしちゃうじゃない――」

 

「ッ」

 反応できたのは僕と瀬呂くんだけだった。

 僕は即座に銃弾を放ち弾と自身を置換し距離を取る。瀬呂くんは峰田くんを個性のテープで逃し――

 

「いやね、そんなに逃げられたら悲しいわ」

 

 ミッドナイトのその言葉とと共に放たれた鞭に足を取られ倒れた。倒れながらテープを先生に伸ばした瀬呂くんだったけど――

「ぐっ、くそ。峰田!置換!俺が――」

 

 瀬呂くんの台詞を遮るように先生が個性を使った。瀬呂くんは眠りに落ち彼の個性は届かず堕ちた。

「――おやすみなさい。拘束力には長けていても、それだけじゃ私は捕らえられないわよ?」

 

 

『報告だよ。条件達成、最初のチームは――轟・八百万チーム!』

 

 

 峰田くんが瀬呂くんを揺すっている。

「起きろ、瀬呂ー!!オイラと置換を置いていかないでくれ!!」

 

「峰田くん一旦下がろう!状況を立て直すんだ!!」

 

 下がる下がる。個性は使えない。峰田くんを置いていくことになるからだ。峰田くんを掴んで後退し続ける。

 

 

 ♦︎

 

 

『蛙吹・常闇チーム。条件達成!』

 

「おい――置換、おい、止まれって!!」

 急に声をかけられ峰田くんを地面に落としてしまった。

「あ、ご、ごめん」

「いってぇーーー!!!」

 

「峰田くん!また気づかれちゃう。小声、小声……」

「……ごめん……ん?……いや、なんでオイラが謝ってんの!?」

「あ、ごめんね……?」

 

「まぁ、いいんだけどさ。んで、えっと……あのさ…………ほんとごめん。オイラのせいで瀬呂が……」

「うん……僕も助けられなかったから同じ……だよ」

「……僕らが合格すれば瀬呂くんも合格になる。だから、一緒に頑張ろう峰田くん」

「そう……だな。おう!オイラらしくなかったぜ。瀬呂の分まで頑張ってやる」

 

「んでさ、思いついたんだけどさ、オイラ作戦があるんだ――」

 

 

♦︎

 

 先生が陣取っていたゲート前まで二人でやってきた。

 先生は瀬呂くんを膝枕して頭を、撫でている………

 ぐぐぐぐ…………耐えろ、耐えるんだ。置換隷、美女ミッドナイトに膝枕で、かつ、頭を撫でてもらうなんて…………羨まし――ダメだ。これ以上は瀬呂くんを許せなくなる。

とりあえず、うん。試験が終わったら殴らせてもらおう……

 

「瀬呂ォ畜生がぁ、許っ羨!!」

 峰田くん……羨ましすぎて血涙が……わかる。

 

「瀬呂がオイラを助けなきゃ今ごろオイラがあの場に……」

 いや、それはどうだろう……

 

 先生を観察していた視線を峰田くんの方に向けた。

「やってられっかこんなクソ試験〜〜〜〜!!!」

 彼は泣きながら逃げ出した。

 

「え!?峰田くん!!?なんで!?」

 

 作戦通りではあるけど……それ、本音でしょ……峰田くん……騙すにはいいけどさ……

 

 

「ウフフ……グレープジュース、そっちはゲートと逆よ仲間割れかしら……そう……それならチェンジャーからね。職場体験で得たもの――見せてちょうだい!!」

 

 先生は鞭を一度しならせると僕に向かって走り出した。僕は先生に向けて銃口を向ける。

 

「銃!?でもそれも……無駄、よ!!」

 僕がトリガーを引く前に銃は鞭に巻き取られはるか上空に上げられた。

 

「嘘っ――」

 弾を打つ前に銃を取り上げられてはどうしようもない。幸い先生の鞭も今は上空。ここから振り下ろすとしても先端が当たる位置にいなければいい。

 

 僕は呼吸を止めゲートに向かって走り出した。本気で向かってきてと言われても、先生は殴れない。

 

 先生、油断したね。僕の個性は置換。空中に行った銃すらも――僕の置換対象だ。

 

 僕は柏手を打った。

「あ……」

 先生の呆気に取られた表情をはるか上空から眺めていた。そして僕はそのままゲートに向けて落下を始めた。

 

「んー……仕方ない。チェンジャーはゴールね。それならグレープジュースを……ふふ……」

 

 

  

『残り時間あと約五分さね』

 

 

「ファッ◯だ!!圧倒的ファッ◯!!こんな理不尽試験やってられるかーーーー!!」

 

 峰田くんは走っていた。ゲート前にいた先生から逃げて逃げて距離が開いた。膝に手をつき呼吸を整える。

 ふと、峰田くんの口から言葉が溢れた。

 

「はぁ……女体。触りたい……モテたい……」

「んだよ、ギリギリでどんどこクリアしやがって……!なんでオイラの試験だけこんな……一嗅ぎすりゃ眠らされて強制終了って……」

「……………………ったくよお…………!」

 

 

カツ、カツと一歩一歩歩いて近づいてくる音が聞こえる。

「ホギャ!?」

 峰田くんが先生の鞭で叩かれる。

「時間いっぱいゲート前で鎮座……してても良かったんだけど……やっぱりそれじゃあんまりだよね……」

 

 

 先生は目の前で鞭をしならせ目を見開き唇を舐める。

「ピーピー喚いて逃げられちゃうとあたし嗜虐心が疼いちゃって仕方ないの」

 

「これか……!敵を精神的に追い詰める捕食者の眼……!やっぱギリギリだぜ、ミッドナイト……!」

 

 そんな峰田くんに先生の香りが迫る。

「っべ……」

「そう、鼻でも口でも一呼吸しちゃえばあなたは終わる。その状態で何ができるかしら?」

 

「〜〜〜!!」

 峰田くんは背を向け逃げ出した。

「そーよね。逃げちゃうよねぇ!!」

 岩の裏に隠れた。

 

 ――さぁ、ここだ。

 

「あと二分とちょっと……息止めて頑張っちゃうつもりかしら!?」

 

「違えんだよなあ。オイラがあんたみたいなドスケベヒーローのファンじゃねえわけないんだよなあ。奥まで逃げたのも、ぶちまけた弱音も!あんたの嗜虐心煽ってここまで引っ張ってきたのも!」

 

「全っっ部かっけえ男になる為なんだよなあ!!!」

 

「手の内ってこと!?いいよさせたげない!!」

 先生の周囲に個性が広がる。一息でも吸ってしまえばそこで終わる。

 

「|ふぁんふぁふぉはおひほほへははひふぁふぁ!!《あんたの香りもこれなら効かねぇ!!》」

 

 

 峰田くんの口元には瀬呂くんのテープが。

 

「そんな窒息状態で戦えるのかしら!?」

 先生の鞭がしなり峰田くんに向かう。

 

「!?」

 

 峰田くんのモギモギが先生の鞭にまとわりついていく。

 

「 |ふぁふぁふぁうひふほーはへぇ、はへはは、ほひはほひっはふははは……《戦う必要はねぇ、何故ならオイラの必殺技は――》」

 

 すでに決まっているのだから――

 

「すごいじゃん……」

 先生の鞭はモギモギと地面にくっつき離れない。

 峰田くんはその隙をみて横を通り過ぎ、口元のテープを剥がした。

 

 ――これは、僕はいなくても大丈夫……かな。と僕が考えた瞬間――先生がポツリと言葉を溢した。

 

 

 

「うん……負けてあげても良かったんだけどね――」

 その言葉が口から溢れ落ちると同時に先生は鞭から手を離し峰田くんの背中を見る。そして無言のまま駆け出し――

 

「おまえがオイラのことかばったりしなけり――ガッ」

 

 その蹴りはもう終わったと思っていた彼の隙をつき、背中に与えられた。

 

「せっかく、二人いるのに協力しないのは……どうなのかしら――

 

 ――ねぇ?チェンジャー」

 

「なっ……」

 

「聞きたいことは、なんで……?かしら。一つ、あなたが彼を置いて一人でゲートを越えないってわかってたこと。二つ、ダメよ、あなた個性使うのに音が出るんだから気をつけないと……」

 

 

 かなり小さく音を出してたのに――気づかれてた。

 そう、僕は一人で先にゲートに越えると見せかけて密かに峰田くんと先生の二人をつけていたのだ。

 

 峰田くん一人だと思っている先生に奇襲を、あるいは危なくなった時に助けを――それが峰田くんの発案した作戦とは決して言えない提案だった。

 言ってみれば行き当たりばったりだ。事実僕はこの場面になるまで手を出せるチャンスがなかった。

 

 それに、峰田くんは僕がいなくてもクリアできる、そんな気配があった。事実あと一歩先生を上回れていればゴールできていたはずなんだ。

 

 そう、僕は忘れていた。先生は社長に教えを受けていたことを。それなら肉弾戦だってできて然るべきなんだから――

 

 どうする?峰田くんが先生をゲートから引き離したからゲートまでの距離、直線距離にして六十メートル。一人でゲートに行っても意味がない。少なくとも二人で脱出。僕がどっちらかを抱えて出れれば合格になるはずだ。

 

『残り時間三分』

 

 

 今、峰田くんの指が……動いた?

 それならもしまだ峰田くんが個性で眠らされていないなら、まだ――なんとかなる。

 僕が注意を引く。峰田くんが、モギモギさえ生成してくれれば、いけるはずだ。あのモギモギは峰田くん以外のものにくっつく性質を持ってるって言ってた。

 

 先生と建物の壁、地面などの動かないものをくっつけてしまえばこっちのものだ。

 幸い壁も先生の後方五メートルの位置にある。

 

「瀬呂くん――!今だ!!壁に」

 

「っ!?何言ってるのかしら、瀬呂くんはわたしの個性で眠っているんだか――」

 先生は気づいたのか後ろを振り返る。

 そう、峰田くんに個性を使用していないことを。

 

 峰田くんはボロボロになっての身体で壁に向けてモギモギを投げた。

「オイラ……だって……やれ……るんだ」

 

 ――通じた!これで……

 僕は先生に向けて走り出していた。先生との距離にして約十メートル。二秒あれば先生の位置まで辿り着ける。

 

 僕は自分以外の生き物を入れ替えることはできない。

 だけど……自分とモノなら入れ替えられる。

 先生に触れた状態で入れ替われば――

 

 僕が向かってくることに気づいた先生は僕に向け右足で前蹴りを放った。僕も先生に向けて右の掌を突き出す。――先生の右の足底と僕の掌底がぶつかり合い大きな音を打ち鳴らした。

 

「……なっ!?」

 

 先生が気づいてももう遅い。僕は壁に向け放たれたモギモギと入れ替わっている。先生の足底には峰田くんのモギモギが――

 

 僕は先生の背後の壁を蹴り、加速そのまま先生に突き進む。右足は宙に、片足立ちの姿勢。片足故に重心は不安定、それを……後ろから押せば――

 

「あ、ちょ、それやばっ――」

 

 結果はこの通り、バランスは崩れ先生は地面に倒れゆく。――故にこの結果は必然だった。先生の足底についたモギモギは地面にくっつき、今度は鞭が止められただけではない、先生の足が、直接地面に接着された。

 

 

 しまった。このままだと頭から落ちる――僕はつい手を伸ばしてしまった。先生の手を後ろから引きせめてお尻から落ちるように……

 

「痛ったぁ…………あれ……?」

 地面に座り込んだ先生は後ろを振り向く。僕の顔、伸ばした手の在処を見て何が起きたかわかったのだろう。ため息をひとつ吐くと、まるで仕方ないなぁとでも言うように口元に微笑みを浮かべた。

 

「あーあ……これじゃ動けないなぁ……負けかぁ……」

 僕はわざとらしく溢した先生に感謝を込めながら一礼すると倒れている峰田くんに駆け寄った。

 

 

 

 峰田くんの元に辿り着き、喜びの声を上げた。

「やた!峰田くん、やったよ!!」

 

「オ、オイラ……限界だからよぉ……手、貸してくれ……」

 

『残り一分だよー、急ぎなさいね』

 

 リカバリーガールの放送が聞こえた。

「やばっ!峰田くん急ぐよー!!」

 

 僕は倒れた峰田くんを背負いゲートに向け走り出した。ゲート入り口に寝息を立てすやすやと寝ている瀬呂くんを見つけたが……ごめん無理!流石に二人は運べないから――二人脱出でクリアだからそこで寝てて……

 

 

『置換・瀬呂・峰田チーム条件達成!!』

『そして――タイムアップ!!期末試験これにて終了だよ!!』

 

 

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 暗いバーの中顔に手をつけた少年が雄英生の写真を手に佇んでいた。

 

「死柄木さん。こっちじゃ連日あんたらの話で持ちきりだぜ。何かデケェ事が始まるんじゃねぇかって」

 

「で、そいつらは?」

 

 一方は、水色の瞳と無造作な黒髪、全身がケロイド状の皮膚で覆われた青年が――

「生で見ると気色悪りぃなァ」

 

 一方は、鋭く尖った犬歯、両サイドにお団子をつくり付け根から髪がハネている髪型の女子高生――

「うわぁ手の人、ステ様の仲間だよねぇ!?ねぇ!?私も入れてよ!ヴィラン連合!」

 




今回も読んでくださりありがとうございました!

次回は来週がんばるぞー!
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