推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お待たせしました!
今回まで日常回です。
それではどぞ!


31話 林間合宿 日常編

 

 

 魔獣の森を抜け――午後五時二十分、夕暮れ時。

 僕たちは宿泊場にたどり着いた。

 

 

 A組の皆はぼろぼろで疲労困憊だ。身体は泥などの汚れにまみれている。

「はっ、はっ、はっ……」

 

 

 それはそうだろう。なにせ薄暗い森の中、足場も悪くどこから敵が出てくるかも分からず、常に注意を払わなくてはいけない。距離が3㎞しかなかったとしても心も身体も疲れ切るのは当然のことだろう。

 

 

「やーーっと来たにゃん」

 

 ピクシーボブのその声を聞き無事宿泊地に到着できたと実感した。

 

「とりあえず、お昼は抜くまでもなかったわね」

 

 

 いやいやいや、何を言ってるんですか。

 

 僕の心の声に同調するように瀬呂くんがぼやいた。

「何が三時間ですか……」

 

「悪いね、私たちならって意味アレ」

 

 そうだったんだ、実力差を実感させるためだったんだ……

 

 

 

 ピクシーボブが口元に手を当て笑顔を浮かべながらにじり寄る。

「ねこねこねこ……でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されっちゃった」

「いいよ。君ら……特に――そこ五人。躊躇のなさは経験値によるものか知らん?」

 小声でボソッとまあ一人警戒が雑な子もいたけど……とつぶやいているのが耳に入った。

 

 

 ……あー、僕のことだよね。どうしてもいざというとき逃げればいいと思ってるから……個性で逃げることができることをわかっているからこそ致命的な危機が迫るまでは警戒が雑になってしまう。反省しなきゃいけない。

 

 ちゃんと警戒して個性を使わくても躱せる攻撃は躱せるように、そういう訓練をする必要があるのかもしれない。僕の個性の置換は……と思考の渦に飲まれようとしている時だった。肩をたたかれた。

 

 

「……ん?誰」

 振り返るとそこには尾白君がいた。

 

「よ、大丈夫か?バスから荷物を降ろして部屋に運べだとさ。置換の荷物これであってるよな?」

 

「あ、うん。ありがとう!」

 尾白君……時間があれば先ほど思いついた訓練に協力してもらうよう頼むのもいいかもしれない。

 

「おう、いこうぜ。今日はもう飯食べて風呂入って寝るだけらしいからさとっとと行こうぜ」

「あ、二人ともどこにいたのさーー!」

「あはは、ごめんね。葉隠さんちょっと考え事してて……」

 

 

 ♦♦♦

 

 そして――プッシ―キャッツに夕食を振舞ってもらたり。風呂で峰田君が女子風呂覗こうとしたり。就寝部屋で男子メンバーと盛り上がりつつ林間合宿初日は終わりを迎えた。

 

 [翌日、合宿二日目。午前五時三十分]

 

 昨日の疲労も抜けておらず寝ぼけ眼のまま僕たちは訓練場に集まっていた。

 

 僕たちの前に立つ相澤先生に視線を向ける。

「本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように」

 

 爆豪君にボールを投げながら相澤先生は言った。

「と、いうわけで爆豪こいつを投げてみろ。前回の入学直後の記録は705.2m……どんだけ伸びてるかな」

 

「おお!成長具合か!」

「この三か月いろいろ濃かったからな!1㎞とかいくんじゃねぇの!?」

「いったれバクゴー!!」

 

 爆豪くんは腕を回し思いっきり振りかぶる。

「んじゃ、よっこら」

 

 

 そして個性を使いながら思いっきり投げた。

「くたばれ!!!」

 大きな爆発音ボールが空気を裂く音とともに、彼の投げたボールは隣の山に消えていった。

 

 ピピッと機械音が聞こえ相澤先生に再び視線を向ける。

「709.6m」

 

「!?」

 

「あれ……?思ったより……」

 A組の皆にざわめきが走る。

 

「約三か月間様々な経験を経て、確かに君らは成長している。だがそれはあくまで精神面や技術面。あとは多少の体力面の成長がメインで個性そのものは今見た通りそこまで成長していない。だから――」

 

「今日から君らの個性を伸ばす。死ぬほどきついがくれぐれも……死なないように――……」

 相澤先生はそう言って不敵に笑みを浮かべた。

 

 

「個性を伸ばす……!?」

 

「そう、筋肉だって筋繊維を酷使することで壊れ……強く太くなる。個性も同様だ。使い続けることでより強く強靭に、使わなければ衰える」

 

「だから、やることは一つだ」

 

「――限界突破。それに限る。ヒーローになるんだろう?己の限界ぐらい軽く超えてみろ」

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型、その他複合型は個性に由来する器官、部位のさらなる鍛錬」

 

「B組も合わせたら四十一人になるんじゃ……?そんな人数を六人で管理出来るんですか?」

 

「だから、彼女らだ」

 

「そうなの、あちきら四位一体!」

 

 マンダレイが――

「煌めく眼でロックオン!!」

 ラグドールが――

「猫の手手助けやって来る!!」

 虎が――

「どこからともなくやって来る……」

 ピクシーボブが――

「キュートにキャットにスティンガー!!」

 

 それぞれの決めポーズを決める。

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」

 

 ラグドールはポーズを維持したまま説明する。

「あちきの個性サーチ!この目で見た人の情報百人まで丸わかり!居場所も弱点も!」

 

 ピクシーボブは個性で場所を形成を。

「私の土流で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

 

 マンダレイは少し自慢げに。

「そして私のテレパスで一度に複数の人間へアドバイス」

 

 虎は淡々と。

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ……!」

 

 いや、言い方!?せめて鍛えるとか……あるじゃないですか……

 

 

 皆が訓練に励む中マンダレイに声をかけられた。

『ね、置換くん。ラグドールのところに向かってもらっていい?なんか来て欲しいんだって……』

 

 

 

 僕は返事をしてラグドールの元へ向かう。

「?はい、わかりました」

 

 僕が近づくとラグドールはこっちこっちと手招きをしてきた。

「あ、きたきた。待ってたにゃん」

「えっと、どうかしたんですか?」

 

「んー、あちき遠くからだとあなたの個性……見えなかったにゃん。だから、近ければ変わるかなーと」

 

「個性が、ですか?僕の個性は置換の筈ですけど……」

 

 ラグドールは急に大声を上げて笑い出した。

「あ、やっぱ近くてもわかんないね!アハハハハハ!!こんなん初めて!」

 

 一瞬真剣な目になったかと思うとポツリとラグドールはつぶやいた。

「……本当にここにいるの?」

 

 すぐに取り繕うように笑い声をあげた。

「アハハハハ!とりあえずわかんないから個性使いまくろ!」

 

「?」

 

「使えば伸びるさ!皆と頑張っていこーね!」

 

 とりあえず僕の個性の鍛える方向性はわからないらしい。わからないものの分類的には発動型の個性に分類されるから……と、個性の連続使用訓練になるようだ。

 

「にしても……おっかしぃなぁ。見えないなんてこと今までなかったんだけど……」

 ラグドールのポツリと溢した言葉は僕の耳には入らなかった。

 

 

 そこからはもう大変だ。個性を繰り返し使う。

 僕の場合は置換対象、今回でいえばビー玉をスタート位置からゴールまで周囲一体にばら撒く。そこからピクシーボブの魔獣の繰り出す攻撃を避けながら歩いたりせず置換のみを繰り返して制限時間内に500m先のゴールまで辿り着く――そんな訓練だ。

 

 

 失敗すれば最初から何度も何度も何度も繰り返す。

 もう身体はボロボロだ。たったの500m。しかし数多魔獣を掻い潜りながら進むのは至難の業。何せ移動手段は個性だけでありだ。当然どこに移動するのか、魔獣の位置は等、把握しなくては先に進むことすらままならない。

 

 魔獣の生成はピクシーボブの任意のタイミング、数が生成される。元が泥だから形も変幻自在。

 当然いてほしくないところに生成されたりもする。置換後魔獣にしばかれるなんてザラにあった。

 さらなる条件付けとして魔獣に対する個性使用は禁止。置換対象は自身を中心とした50cm以内の物体に対してのみというハードモード仕様。

 

 今日の記録は256m、全体の5割程度だ。未だゴールすら出来てはいない。超短距離置換を繰り返し移動を続ける。

 

 

 [午後四時]

 

「さァ昨日言ったね。世話焼くのは今日だけって!!」

「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!!」

 

「は、はい……」

 僕だけじゃない皆も疲労困憊だ。

 

「アハハハハ。全員全身ブッチブチ!!だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」

 

「確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環……さすが雄英無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろう。皆!!」

 

「「オ……オォーー……」」

 

 皆協力し合い一つのものを作っていく。いいねこう言うの。爆豪くんだって轟くんだって火を起こすのに協力していた。……僕?僕はほらじいちゃんの飯作ったりもしてたから切る焼く煮るはお手のものだ。最低限の調理はでき……るはずだったんだけど……

 

 

 以下葉隠さんとの一幕。

 

「ちょ、置換くん何してんの!!?」

「え?カレーでしょ?チョコとか隠し味でいれる……よね?」

「いやいやいや、待って!量!!何枚入れるつもりなの!?」

「……1,2,3……8,9。9枚あるね」

「いや、9枚あるねじゃないからね!?隠していないじゃん!がっつりだよ、チョコカレーだよ、デザートだよ!!?」

「むぅ……」

 何故か非常に疲れたような表情で葉隠さんは言った。

「不服そうな顔してもダメ!置換くんは調理担当クビです。他の人の手伝いしてね……」

「……むぅ」

 

 

 まったく、失礼しちゃうよね。ばあちゃんだってじいちゃんだってあんなに涙流しながら食べってくれたのに……ただ、なんでか台所には塩と胡椒以外の調味料置かなくなったんだよね……買い出しもさせてくれなくなったし。

 

 そんなことがありつつも無事カレーを作り終え、美味なカレーを食すことができた。

 「自分で作ったのも悪くないけど……やっぱり誰かと作って食べたほうが美味しいよね」

 

 そうして僕たちの合宿一日目は終わりを迎えた。

 

 

 ♦♦♦

 

 騒めく森の中四人の人影が揺らめいていた。

 

 黒い外套を纏った仮面の男が。

「疼く……疼くぞ……早く行こうぜ……!」

 

 鞄を背負いガスマスクをかぶった学生服の少年が。

「まだ尚早、それに派手なことはしなくていいって言ってなかった?」

 

 静かにたたずむセーラー服の少女――トガヒミコが。

 「……」

 

 全身が火傷に包まれた青年――荼毘が。

「ああ、急にボス面しやがってな。今回はあくまで狼煙だ」

「虚ろに塗れた英雄たちが地に堕ちる――その輝かしい未来の為のな」

 

 

 四人の影を眺める赤い双眸が暗闇に光る。

「へぇ……今回はここなんだ。なら――隷くんにも挨拶しなきゃね」

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。
次回より彼らを非日常が襲うことになるでしょう。
では、また。
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