今回も執筆しましたのでどうぞー!
僕は鬼人だった"黒鬼"に殴られた。木々にぶつかり数本へし折りながら地面に落ちる。右腕は折れ使い物にならない。
「カイィィィィ!おまえェ…!!!」
ダメだ。逆上してはいけない、わかっている。これはカイの思う壺。だけど――だけどっ!そんな物分かりがよくなれるわけないじゃんか!ダメだよ、わかってる。でも友達が、小学校からの付き合いの友達があんな風にされてキレないのは――無理だ。
確信した。カイあの子は敵だ。自分のために、楽しみのために人を貶められる。今の僕には理解の及ばない存在。
叶うことなら理解してあげたかった。あからさまな好意があって僕なんかのことを好きだって言ってくれるんだ。
僕は折れた右腕を庇いながら笑みを浮かべるカイに向かって走り――
前方より僕に黒い塊が僕に迫る。すかさずあたりに散っていた木片と置換した。
僕が本来いた場所にあった木片は黒い塊とぶつかり粉塵へと変貌を遂げた。
「…………」
黒い塊は何本もの木をへし折りやっと止まったかと思うとこちらに何も写さない虚無の瞳を向けた。
「おー!やるぅ、隷くんがんばれー」
何か言っているカイの声は聞き取らずノイズとして遮断する。
無意識に折れた右腕に手が伸びる。
「ぐっ――」
右腕から脳に稲妻のような痛みが一直線に駆け抜けた。
とりあえ腕に、右腕に添え木か何かとりあえず固定を……
あたりを見渡し――……あった。ここから13m先、ちょうどいいサイズの木片が。一つを置換で手元の木片と置き換える。
瞬間気配。予感に従い首を右に傾ける。動いたことでさらに痛みが身体に走るが我慢する。
「っ――」
僕の顔の右横を野球ボールほどの石が轟きをあげて通過した。
2秒後爆音が後ろで響く。後ろを振り向き目を見開いた。木の幹に先ほどの石と同等のサイズの穴が空いていた。危なかった。……いつもこの予感には助けられているような気がする。いや、これは余分だ。今はそんなことに思考を割く余裕はない。
次弾が来る可能性を考慮し置換で木の裏に隠れる。
雑ではあるが右腕に添え木を当てちぎったシャツでぐるぐると覆った。
「っ、っ――」
片手で巻いたから雑なのだろう。腕は少し動いてしまうが――先ほどよりはいい。これで少しは動ける。
腕に駆け抜けた痛みと、今も絶やさず全身から少しずつ血が抜けていっているからだろうか、少し冷静になれた。
どうやら……鬼人を……黒鬼をどうにかしないことにはカイの元へは辿り着けないようだ。
僕が隠れていた木の幹に穴が開く。姿が見られた――
黒鬼は再びこちらに向け駆け出した。弾丸のような速度で迫る黒鬼。しかし、見える。
まず、駆けたままの右腕の上からの振り下ろし。
――身体を逸らし避ける。
そのまま、踏み込み右肩でのタックル。
――右肩に左手を置き飛び上がり避ける。
左のアッパー。
――個性を使用し距離を取る。
……見えるのだ。黒い巨体の――黒鬼の攻撃が見えるのだ。大気の震えが、木のざわめきが、足音が、それにより攻撃がくるタイミングを予測。さらに情報を広範囲から拾えるようになったからか――あの時には、社長と一緒に戦ったあの時には……見えなかった攻撃が見えたのだ。だから、躱せた。
今までの置換頼りの回避行動がどれだけ大雑把だったか今ならわかる。最小限の動きで敵の攻撃を避ける――これは確かに必要なスキルだった。
とはいえ、最初の攻撃は不意を打たれ受けきれず右腕は折れているし、全身からの出血もある。コンディションは最悪だ。
こんなことで成長を実感したくはなかった。友達に襲われて自分の成長を実感なんて……
止めなければ――黒鬼を、鬼人を。カイの言ったことなんて信じられない。おかしくさせた個性があるなら戻せる個性もあるかもしれない。
すべきは短期決戦。これ一択だ。この後にはカイも控えてる。血がどんどん零れ落ちる以上時間はない。
どうする――?どうすれば勝てる?今まで僕が鬼人に致命打を与えられたのは負傷の隙をついた時だけ。いまの黒鬼には負傷をさせる隙などない。前回までの様子を見るに強靭な皮膚に守られている。そして、僕は今右腕が折れ全身から血を垂れ流している。右脇腹、左腕も木の枝が刺さった傷があり少し力が入らない。
思考の最中も僕は黒鬼の攻撃を避け続ける。このままではジリ貧だ。耐久になった時点で僕の敗北が確定する。
いや――まて、まって…………強靭な、皮膚……?皮膚は硬くても中は……どうだろうか。外を固くするということは中を、内側を守る必要があるからだ。それに……生物である以上内側は脆いはずだ。試してみる価値はある。
なら、次だ。どうやって内側に攻撃をするか。口を開けたタイミングで何かを投げ入れ大きなモノと置換する。それが一番確実だ。
……いや、さっきから黒鬼は喋らない。社長の時とは違う。……本当に違うのか……?食欲がなくなることはあるか?カイの言うことを信じるなら黒霧を使って直接呼び寄せた。あれから何か食べれたとは思えない。それなら、かなりの飢餓状態じゃないのか……?
そもそも、僕が襲われている理由はなんだ……?ここにはカイもいる。でもカイは襲われない……
僕とカイの差異はなんだ。考えろ考えるんだ。思考を止めた時それは僕が終わる時だ。ヒーローとヴィラン、性別、身体の大きさ、負傷の有無、他には……いや……負傷の有無?そうか、それか、それなんだ。
そう、血だ。それなら納得がいく。人を食い物にする鬼が血塗れの獲物を見て無視できるわけがない。だからだ。
ならやっぱりあいつは空腹状態。無意識で飢えを満たそうとしている。
それなら付け入る隙は――ある。
僕が餌だ。
まずは一回距離をと――
いやダメだ。そんな予感がする。これ以上離れちゃいけないこの距離感のまま釣り餌となれ。
どうせ負けたら死んじゃうんだから……使えない腕を気にしてもしょうがない。折れた右腕に力を込め拳を握る。
痛みは……痛くはあるけど、アドレナリンが出ているのだろうかそこまで気にならない。
木屑を投げそれと置換。黒鬼の眼前に降り立つ。右の拳を奴の顔に向け叩きつけた。拳が裂け血が黒鬼の顔に飛び散り、奴の目が血走りだした。
さらに、一発、二発、三発――口が開いた、そしてそのまま僕の右腕を奴の口の中にぶち込んだ。
喉に当たったと思われるも当たりは浅そうだ。でも――本命はそれじゃない。
黒鬼の歯が、僕の前腕に食い込んだ。
世界の動きはゆっくりに。ギチ、ギチと歯が肉を割く。折れた骨をさらに砕き、少しずつ、少しずつ……前腕との繋がりが薄くしていく。
怖い、怖い、こわい。自分で決めたこととはいえ腕がなくなるのは――あぁ、こわいなぁ。
でも、鬼人を止めなきゃ。これは他の誰でもない僕が友達である僕がやりたいことだ。他の人になんて任せたくない。やらなきゃいけないことだ。
歯がぶつかり合う音と共に僕の右前腕は身体から離れた。痛みは、なかった。そんなもの感じている暇もなければそんな余裕もない。
「――――!!!」
そう、痛くはなかったのだ。でも、それでも僕の声にならない声が辺りに響いた。
個性を、置換を発動させる。
黒鬼の口角が上がる。
奴は満足気に僕の腕を噛み締めている。
今ここにいるのは僕と奴だけ。他のものは視界に入らない。
今だ。僕はモバイルバッテリーに傷つける。そして、それを――奴の胃に僕の腕と一緒に飲み込まれた木片と置き換える。
まだ僕の腕は残したまま、少しでも違和感を覚えさせないために――
目的1達成。次だ。すぐさま拳大の石を手元に。
そしてそのまま今度はそれを奴の胃の中にある腕と置換する。目的2も達成。
僕の手元には唾液と胃液に塗れた木片とぐちゃぐちゃになった肉塊があった。ところどころ白い、骨と思わしき物が突き出ている。奴の胃には傷ついたモバイルバッテリーと石が――
あとは衝撃だ。奴の胃の中でそれらをぶつけ合わせて爆発させてやれば……と。
安直な考えなのはわかってる。成功するとも限らない博打だってことも。
だけどもう、やるしかない。腕は賭けてしまった。時間は巻き戻らない、もう後には引けないのだ。
石を拾い黒鬼の元へ投擲。石が目的地に辿り着いたのを確認次第置換。黒鬼の懐に潜り込む。
脱力は十分、そもそも力はほぼ入らない。拳は握らず掌底で、残った左腕で奴の腹部――胃の位置をぶち抜く!
「……やばっ――」
攻撃は当たった。そう、奴の脇腹に。
命中箇所がズレた、右肘から下がない分重心がずれた。
致命的だった。この場面においての最悪。
その最悪は自分へと返還される。
見える、黒鬼の拳が振り抜かれるのを。しかし身体は間に合わない。
訪れる次の瞬間を覚悟し全身に力を――
「っ――」
僕の目の前から爆音が響いた。
モバイルバッテリーについて
肝試しのライトがわりにスマホを使うや予定であり万が一に備えて持っていた。
部位欠損っていいですよね〜
すっごく性癖にささる。
まぁ自分が書いてるし当然ではあるんすけど……
次回、どうなるんでしょう…?
この世界の結末こそ決まってるけど。最近キャラたちが暴れ散らかしてプロットから離れているんすよね……
では次回でお会いしましょう。