推しのために死に続ける話。   作:三つ首黒虎

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お待たせしました!
久しぶりに満足行く分量かけました……
それではどうぞ〜


36話 友達

 

 

 ……夢を、見ていた。

 涙から出るほど懐かしく、心の底から楽しかった、そんな夢を――

 

 夕暮れ時、雄英の校門前で鬼人に声をかけられた。

「おっす、隷。おつかれさん」

 

「うん。お疲れ様、鬼人」

 

 そのまま駅に向かって歩き出す。

 

「今回もテストむずかったよなぁ。A組はどうだったよ?」

 

「テスト……?……あれね。僕たちも一緒のやつじゃないかな。難しかったけど授業ちゃんと聞いてたら解ける問題だったよ」

 

「うっわ、マジかよ。さすが優等生。授業なー。どうしても眠くなっちまっていけねぇや」

 

「あはは……鬼人は昔からそうだったよね」

 

「まぁ、なんだ。でも昔よりは勉強のじゅーよーせーってやつ?わかってんだぜ。知識がありゃ助けられる人がいる。でもよ、知らねぇと何もできねぇんだ」

 

 何か引っ掛かるものはあったけど僕は返事を返した。

 

「そうだね。知識は力だよ。その為に勉強するんだから」

 

「だよなぁ……今度さ時間ある時また教えてくれや。お前教えるのうめーよ。改めて思った。何せ俺を雄英に入れられるレベルまで押し上げてくれたんだから――」

 

「それはさ……鬼人の力だよ。鬼人が頑張らなきゃ何も意味がないから――僕は鬼人が勉強しやすい環境を整えただけだよ」

 

「わははは、そう言ってくれるとありがてぇや。せんきゅな、隷」

 

「違うと思うけどなぁ……うん、まぁどういたしまして……鬼人」

 

「あ、そうだ。これは言っとかねぇとな。ほんと――お前強くなったな」

 

 歩いていた足が止まった。

 

「入学前なんて俺に負けてやがったのに。体育祭では降参したとはいえ俺に勝って――」

 

 鬼人の身体に傷が戻っていく。身体には穴が空き制服は血で染まる。

 

「あぁ、そうだ。職業体験の時も……か。ヒーローが負けたのによくあの時の俺と戦う気になったな」

 

 鬼人の右腕がぼとりと地面に落ちた。

 

「ほんとに、強くなった。おれを――」

 

 鬼人の頭が弾けた。それと同時に蘇る僕の左手に残った感触。柔らかいものと硬いものを壊した感触――

 

「コロスナンテ」

 

「ぁぁあああああ――ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ー!!!!!!!!!!!」

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 僕は眠りから覚めベッドから身体を勢いよく起こした。

 瞬間全身を襲う激痛。特に痛いのは右目と右腕だ。

 

 なぜ――?そんな疑問を浮かべた瞬間。再び蓋をしていた僕の記憶が脳裏に横切った。

 

「……………………」

 

「そう……だ。ぼくが――」

 

 ――殺した。鬼人を、大切だった友達を。

 何がヒーローになりたいだ。何がミッドナイトを救いたいだ。

 何様だ僕は……僕は――ただの殺人者、何の価値もない塵だろう。

 自己嫌悪――いや、自己憎悪だろうか。自身が憎くてしょうがない。殺せるなら殺したい。だけど――そんな気力すら湧かず身体が動かない。

 

 世界の色が失われる。あんなに輝いていた世界。

 僕の視界に映るそれは白と黒の二色で埋め尽くされた。

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 どれほどそうしていただろうか。

 病室にノックの音が響いた。

 僕は変わらずただ真正面だけを見つめる。何をする気力も湧かない。

 

「入るぞ、置換」

 このおとこのこえは……だれだろう。どうでもいい。このままぼくはくちていくのだから――

 

「ッ――」

 その誰かは息を呑んだ。

 

「置換――怪我は、どうだ……?」

 

「………………」

 

「……俺が言うのも何だが……飯、ちゃんと食ってないみたいだな……」

 

「………………」

 

 ほかにもなにか、かたりかけてきたけどおぼえてない。なにかをいいのこしておとこはでていった。

 

「そう……か。置換、また……来る。クラスのみんなも、待ってるぞ――」

 

♦︎♦︎♦︎

 

 また病室にノックの音が響いた。

「……しつれいしまーす」

「おい、葉隠。真面目に行こうぜ」

 

 まただれかのこえだ。おとことおんなのふたりのこえがきこえる。

 

「「っ――」」

 

「置換、お前が休んでた数日の間にいろんなことがあったぜ」

「そうそう!置換くんがお休みの間に色々あったんだよーー!」

 

 なにかいっている。

 

「はやく――もどってこいよ。お前がいないとなんか足りないんだ」

「はやく――もどってきてよ。やっぱり友達がいないと寂しいよ……」

 

「ッ――」

 ともだち……あぁ、そうだ……ぼくはともだちをころしたんだから……

 ぼくはもうつかれたんだ。

 はやくしなないかな、このからだ――

 

「………………」

 

「そっか……」

「行こう、葉隠さん」

 

「またくるね――」

「また、くる――」

 

 ふたりはさっていったようだ。

 あぁ、ながいなあ。いつしねるんだろう。

 

♦︎♦︎♦︎

 

 またノックの音。

 

 なつかしいにおいがする。すきだったにおい。

 

「置換くん、元気――じゃ、ないわよね……」

 

 こえも、ああ――いいな。こんなくずなぼくだけど……すきなこえがきこえてくる。

 

「置換……くん……ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。私たちが、ちゃんと警護してなかったから――」

 

 ちがう、ちがうよ……ぼくが、ぼくがわるいんだから――でも言葉は外に吐き出されない。

 まるで喋り方を忘れてしまったようだ。

 

「………………」

 

 ないてる……?なかないで、なかないでほしい。あなたにはなみだはにあわないよ。

 どれだけ心の中で思ってもそれは口から出ることはない。

 

「………………」

 

「泣いちゃって、ごめんね……先生らしくないね……また、きます」

 

♦︎♦︎♦︎

 

 なんにちたったんだろう。

 のこったうでにくだをつけられて――よるになってあさになってよるになってあさになる。そしてまたよるになってあさになる。

 

 くりかえしくりかえし、そんなひびをくりかえしただじぶんがくちるのをまつ。

 

 

 

 ここなんにちか、だれもきてないな。

 もしかしたらきてるのかもしれない、ぼくがおぼえてないだけで……

 まあ、いいか――ぼくはしぬし、きにされてないほうがきぶんがらくだ。

 

♦︎♦︎♦︎

 

 ノックの音が響いた。

「隷、や。大丈夫かの?」

 なつかしいこえのきがする。としをとったおとこのこえだ。

 

「お前の友達のお父さんがな、用があるんじゃと」

 

 じい……ちゃん?

 

 おにひとの、おとうさん。きかないと、うらみごとでもそれをきく、きかなきゃいけないりゆうがある。

 

「あー……なんだ、せがれが――世話になったな」

 

「本当はもっと早く来ようと思ってたんだが……なかなか俺もせがれを――自分のガキを愛してたらしい」

 

「数日は何もする気が起きなかったんだが……ふと片付けるかって思ってな、あいつの部屋の片付けしてた訳だ。したらどう言うわけか机の上に3枚の手紙があんじゃねぇか」

 

「たくっ、帰ってきたなら顔くらい見せろっての――まぁそこはいい。一枚が俺ら家族に向けて、もう一枚が学校に、最後の一枚がお前宛だよ」

 

「置換隷、お前宛の手紙だ。今はそんな気分じゃねえと思うがよ、読んでやってくれ。あいつの最期の……願いだからよ」

 

「じゃあな、あいつの代わりにちゃんとしたヒーローに――いや、いいか。……元気でな」

 

 扉の閉まる音がした。足音は遠ざかる。

 

 もう一人残った人物がいた。じいちゃんだ。

「のう、隷。こんな状況で言うつもりなかったんじゃが……言う機会なさそうじゃから伝えておくの……わしな、もう長くないんじゃと」

 

 じいちゃんが、長くない……?思考が停止した。

 

「だから、好きにやりんさい。隷は隷の自由に。わしは……わしらはそれを応援するからの……」

 

 しかし、停止した思考はじいちゃんの次の言葉で再び動き出す。

「わしからはそれだけじゃ……手紙よんでやってくれ。友達……なんじゃろう……?」

 

 あ、そうだ。鬼人……の、てがみ?

 

「て……がみ……」

 久しぶりに声を出した。そのせいか喉が痛い。

 

「そう……手紙……じゃ。これじゃな」

 

「隷……わしは、家で待っとるからの」

 

 ――帰ってくるんじゃよ。そう言い残しじいちゃんも部屋から出て行った。

 

「あ……、て……がみ……」

 

 せめて、それだけは読まなきゃ。やる気がなくても動く気がしなくてもたとえどんな状況、状態であっても鬼人の願いなら僕には叶える義務がある。

 それが贖罪。僕の罪。

 

 残った左手で手紙を持ち、右手で――

 

「あ……みぎうで、ないや……」

 

 少し迷い口で封を破る。

 

 手紙を取り出した。

 

 鬼人の最期の手紙――

 

 罪をより明確にする為、今僕はそれを読む。

 書き殴られた鬼人らしい雑な字が綴られた手紙を開いた――

 

 

 

 

 よす、隷。まず最初に……だ。

 今お前は罪がどうだとかそんなくだらねぇこと考えてるんだろうな。

 ざけんな、ちげぇだろ怒れよ。俺が言うことじゃねぇが俺をこうした原因を、そもそも俺がお前に殺されようとしたことを。

 ちったぁ自分本位になれ。他人ありきすぎんだよオメーはよ。

 

 あぁ、ちげぇ、こんなこと書きたいんじゃねぇ。

 時間がねぇんだ。あのクソアマに頼んで家族に手紙書く時間よこせって――ダメ元だったのに、意外なことに許可しやがった、なんか家族に思い入れでもあんのかね……

 あぁそれもどうでもいい。なんだ、こんなこと初めてだからよ。何書いていいかわかんねぇんだよ。

 

 まず、これを読んでるっつーことは、だ。俺はお前にあるいは誰かに殺されてるだろう。なぜ?とかそんなんはいいんだ。

 もう取り返しのつかないことだった。俺は戻れねぇ。

 この人を喰い殺す化け物を抑えられない。ヒーローになりたかったんだ。決して人を喰らう化け物になりてぇわけじゃねぇんだよ。

 

 体育祭の時はこいつに飲まれてどうにもできなかったがよ、覚えてるか?お前があのオカマ筋肉と一緒に俺と戦った時、頑張ったんだぜ。気合い入れて動かねぇようによ。

 

 俺は今は軽く意識が戻ってる。でもそれはアレが寝ているからだ。それがわかる。つーか、寝てるにも関わらずこっちの主導権取ろうとするってどう言うことだよ。マジふざけんな。

 

 あぁ、もう時間ねぇんだっての。こんなこと書いてる場合じゃねぇ。あのクソアマも急かし始めてきやがった。

 

 隷、お前は。ヒーローになれよ。

 昔話してくれたろ?助けたい人がいるんだって――

 今までは誰かはわからんかったが……この前それがわかった。

 多分……ミッドナイト先生だろ?

 お前、惚れてんだろ?なら、救えよ。

 お前はそれが出来る。

 俺のダチだ、出来ねぇはずがねぇ。

 

 これ読んでまだ罪がどうだとかウジウジ言ってんなら

 テメェが救え、俺が救えるはずだった分を。テメェの好きな女を――それが贖罪だ。

 

 一人も一欠片も溢すんじゃねぇ。

 

 あぁクソ、もっと話したことあったのによ。急かしやがって――

 

 じゃあな……もし、もし――来世があれば、

 次はよ、正々堂々――ちゃんとしたケンカ……しようぜ。

 ――親友。

 

                   鬼瓦 鬼人

 

 

 

 手紙を読み終え、雫が落ちた。一粒、二粒、左の目から頬をつたい顎を経由し手紙に落ちる。

 

「おに……ひと……」

 

「ごめん、ごめんね、キミの未来を奪って、キミの夢を奪って……」

 

 キミの、命を奪って――

 

 そんな僕でも、こんな塵な僕だけど、それでも

 

「それでも――なれる……かな。キミを、殺しちゃった僕でも――」

 

 あの人を、みんなを救うヒーローに――

 

 扉の開く音がした。

 顔を向けるとそこには目を見開いたミッドナイトが立っていた。

 

「置換……くん――そう……よかった……」

 

 何かを堪えるようにそう言ったミッドナイトの後ろからひょこりと社長が飛び出した。

 

「あら、聞いてた話より元気そうじゃない。チェンジャー?」

 

「先生……社長……」

 

 あ、二人に謝らなきゃ。

 

「ごめんなさい、二人とも……ぼくは、人を――」

 

 

 

「それは――」

 ミッドナイトが何かを言おうとしたがそれを社長が諌めた。

「睡ちゃん、静かに――」

 

 これを言ったらヒーローの資格なんてなくなるかもしれないけど……それでも、僕を、応援してくれてたんだから。誠実に、伝えなきゃ――

 

「ぼくは、人を、鬼人を殺しました。だけど――」

 

 でも、それでも――鬼人に託されたから。

 

「ヒーローに……なり……たい、です」

 

 無理かもしれない、人を殺したくせにヒーローになろうなんて烏滸がましいかもしれない。

 

「置換くん……」

 

「そう、チェンジャー。話は聞いているわ。本当に人を殺したのならヒーローになるのは修羅の道よ。何せ人を救うはずのヒーローだもの、それが人の命を奪う。この意味分かるかしら?」

 

「……はい」

 

 そうだ、命を奪った人がヒーローになるなんてやっぱり――

 

「でもね、命を奪っても……いや奪ったからこそ続けているヒーローも確かにいるのよ」

 

「奪った……からこそ……?」

 

「社長!」

 

「睡ちゃんは黙ってて」

 

「救うはずの命を奪ったからこそ、より命の大切さが分かる。今の貴方なら少しは分かるんじゃないかしら――」

 

 

「は……い」

 救う、救いたかった友達をこの手で終わらせちゃったんだ……

 

「命の重み、命の価値。結局の所それが分かるのは真摯に命に向き合った人、命を奪ってしまった人、外的要因で命の灯火が消え掛かってる人しかわからないと思うのよ」

 

「当然、命を奪った以上、世間からのバッシング、厳しい目はあるでしょう。ヒーローになるのならそれを乗り越える必要がある。……分かるわよね」

 

「……」

 

 ヒーローになるのなら……乗り越える。

 

「分かっているようね。なら、いいわ。わたしは応援してる。笑いなさい置換隷。笑いの元に福はやってくるわ。多分だけど、貴方の友達最期は笑ってたんじゃないかしら――」

 

「鬼人の、最期……は」

 

 あぁ、たしかに……懐かしい笑顔を浮かべてた。

 そんな気がする。もうどうしようもないものからやっと救われる、解放されるそんな表情。誰よりも怖い見た目だったのに誰よりも優しかった僕の友達。

 

「はい、笑って……いたと思います」

 

 

「そ、なら私から言うことはないわ。睡ちゃん私帰るわね」

 

「ちょ、ちょ、社長!そんな――」

 

「なにせ、世間は今こんなに荒れている。私もやることやらなくちゃ。イレイザーはマスコミの対応、ミッドナイト今のあなたは先生……なんでしょう?生徒を導いてあげなさい」

 

 世間が――荒れている?

 どういうこと?

 

 

「先生……?荒れているって」

 

「全く、社長……今伝えられないのに――ごめんなさい、申し訳ないけどまだ公表されていないの、だからまだ伝えられない……んだけど……」

 

「退院したらすぐわかることだから軽い概要だけ伝えるわ。オールマイトは巨悪と戦い勝利、そしてその戦いが原因で引退。また、ベストジーニスト長期活動休止。プッシーキャッツからラグドールが個性使用不可にて活動の見合わせ。数多のヒーローたちが大打撃を受けました」

 

「ヒーローが……そんな――」

 

「ええ、今世間は混乱の最中にあるわ」

 

「ヒーローに対する不満の声も上がってる。でも、それでも――」

 

「それでもオールマイトはオールフォーワン――巨悪に打ち勝ったの」

 

「オールフォーワン……?」

 

 いや、僕は知っている。オールフォーワン、裏社会を支配する究極悪。ヴィラン連合を陰から操る巨悪の根源。そう、そんなことをなぜ今まで忘れていた……?

 

「えぇ、オールフォーワンよ。これは世間には公表されない……はず、あまり口外しないでちょうだいね」

 

 外から走る音が聞こえてくる。

 

「……あら」

 

 扉が勢いよく開く。

 

「あ、ミッナイ先生!」

「お疲れ様です、先生。置換の様子――」

 

 葉隠さん、尾白くんの二人と目が合った――

 

「あ、あ、あ……あー!!!!ちゃんとこっち向いて起きてる!」

 

「置、換……」

 

「あら、いいじゃない。友達――来たみたいね。私はここで失礼するわ。また、学校でね置換くん」

 

 先生はそう言い残すとウインクをしてそのまま病室を出ていった。

 

「だ、だ、大丈夫なの!?」

「だ、大丈夫なはずだ。ほら、あの何とも言いにくい濃い人も今は大丈夫じゃないかしらって言ったし……」

 

「お、おはよう……?二人とも」

 

「おはよう……置換くん!!」

「おはよう……置換!」

 

 そこから二人と少し話をした。

 あの林間合宿で起きたこと。ヴィラン連合に襲われ、爆豪くんが拐われたこと。そんな爆豪くんを緑谷くん達が助けに行ったこと。ヴィラン連合の本拠地にヒーロー達が攻めたこと。そんな、僕が寝ていた時の……いろいろなことを話した。

 

 でも、僕は――二人に鬼人を殺したことを言えなかった。……というより僕は二人に話を聞かれなかった。

 二人が僕に合ったことを伝えただけ。

 そこで会話が一度止まり、病室に訪れた空白の間。

 

 話を変えるように葉隠さんが言葉を発した。

「ねぇ……置換くん。目――」

 

「目……?」

 

 尾白くんは驚いたように一度こちらをまじまじと見ると言葉を続けた。

 

「置換……お前、右目――そんな赤色だったか?」

 

 僕の右目がズキリと疼いた気がした――




失われた誰かの言葉。
「もっと、生きたかったなぁ……あいつらとヒーローになりたかったし。こんな俺でもやれることがあるって実感したかった。それに──あいつともっと遊びたかった。喧嘩だってしたかった。
夕日バックに河原とかでよ。本音ぶつけ合う殴り合いだ。そういう、青春見たいな。そんなことやりたかったなぁ……
 あぁ、ほんっと思い通りにいかねぇわ……
 でも……これ以上誰かを傷つけずに済んでよかった。クラスメイトは無事でよかった、あいつが生きててよかった。あいつを俺が殺さずに済んでよかった。それならまぁ……最悪じゃ、ねぇか……
 俺は見てるからよ、お前の隣でお前が形作る物語を──」
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