第3話でございます。
一週間後……
「おはよう。レイ、そういえばゆうえいこうこう?から手紙が届いていたぞ……?えーと……これだ」
じいちゃんより雄英高等学校より一通の便箋が届いたことを知らされた。
入試結果の連絡なのだろう。
それは大事だ。
だけど、場合によってはそれと同等に大事な事を……僕はこの一週間ずっと考えていた。
なぜ、なぜ、入学試験であるとわかっていたのにあそこまで全力で挑んだのか…
今終わってみればあの試験であの0Pの仮想敵が現れることは知っていたのだ。そう、試験の内容も全て知っていたはずなのだ。あそこで無理をしなくても合格圏内にはいたことが分かっていたのだ。でもその記憶は試験中にはなかったのである。
――なんで……?――
それに気づくとおかしな点がいくつも見えてくる。
今考えると「僕のヒーローアカデミア」の詳細なストーリーが全く思い出せないのだ。
朧げであり、まるで……その部分だけが霧に隠されたみたいに……
今回であれば入学試験、これは試験が終わるまでその記憶が脳内から隠されていた。
試験後思い出すかのように原作のストーリーが記憶に現れたのである。
ストーリーだけではない、キャラクター達に会うまで名前も思い出せなかったのだ。
その人を見れば名前もどんな個性なのか等、軽い概要までまだ思い出せたのだ。
このキャラはこれからどうなるか……それが朧げに思い浮かぶだけで、やはり詳細なストーリーを思い出すことができない。
さらに、先に進むにつれて霧が濃くなりより物語の流れがわからない。
どちらの記憶も原作に関わることにおいて朧げなのだ。
さらに……僕の救いたい人であるミッドナイト……
この人が死んだタイミング、死ぬ原因も朧げであり
……まるで隠されているようだ。
さらに、そのことに対して僕は今の今まで15年間生きてきて一度も気にしたことがなかった。
そんなことがあり得るのか……?
この世界が二次元の世界であると分かっていて
もしかして……あのカミサ――――――――――
――――――――――――――――――――――
『それ以上はダメだよ、それじゃつまらないだろう?』
――――――――――――――――――――――
思考に一瞬空白が紛れ込み、言葉が聞こえたような……
えっと……僕は何を考えていたのだろうか。
まぁ、忘れてしまったのであれば大したことはないのだろう。
さて、じいちゃんが雄英の試験結果を持ってきてくれたらしい。
どんな結果か楽しみ半分不安半分だ。
僕はじいちゃんから便箋を受け取ると部屋に入りドアを閉める。
机に座り、便箋を丁寧に開けていく。
すると――ブンという音と共に眼前に映像が投影される。
数瞬後、僕の眼前にはオールマイトが投影されていた。
『私が投影された‼︎』
「⁉︎」
『さて、試験結果だけど……筆記試験も高得点、実技も45点とまずまずの得点を獲得していたね。これだけでも合格圏内だろう。』
『だが……先の入試‼︎見ていたのは敵Pのみにあらず‼︎救助活動P‼︎しかも審査制‼︎我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力‼︎』
『救助活動P、置換隷 ――35P――合計75点‼︎当然合格ラインだ‼︎』
『来いよ、置換少年!
雄英が君のヒーローアカデミアだ!』
「ッ」
僕は声にならない叫びをあげて小さくガッツポーズをした。
「やった……合格だ……」
「っ、そうだ。鬼人は……」
僕はすぐさま携帯を手に取ると鬼人の番号にカーソルを合わせ電話をかけた。
コール音が耳元で鳴り響き、自分の時の試験結果を見るよりドキドキしている……
鬼人は大丈夫だろうか、叶うなら夢を叶えてほしい。
彼はすごい人なんだ。いろいろな考えが頭をよぎる。
――――出た!――――
「おう、どしたー?」
といつものように呑気な声が聞こえる。
「けっ、けっ、けっか!結果!入試結果!どうだった!!?」
「おうおう、落ち着け落ち着け。なんで俺より焦ってんのよお前」と電話越しにもわかる苦笑いしたような声色で返事を返される。
「ちと、筆記がギリだったが合格だってよ。まさか、救助活動Pなんてもんがあるとはな。あれに助けられたわ」
救助活動P!そうか鬼人が目の前で困っている人を助けない訳がない。なら、当然救助活動Pも獲得できていたはずなのだ。
僕はほっと一息つきながら
「よかったぁ……、これでまた一緒に学校行けるね……」
「ったく、心配しすぎなんだっての。散々一緒に入試対策頑張ってきたじゃねぇか」
「あれだけ頑張ったからこそだよ……」
僕は嬉しくてちょっと涙が出てきた。
「んで、隷、お前は?」
「?」
「鈍いなぁ、隷の結果だよ。入試結果‼︎」
「あ、それなら合格したよ。それで鬼人はって気になって電話したんだし」
「わはははは、マジか、そりゃ心配かけて悪かったわ」
と鬼人は電話越しにうるさいくらいに爆笑している。
「んじゃ、詫びってわけじゃねぇんだけど、親父から合格祝い勝ち取ったんよ。飯でもいかね?」
「いいね!行こう。ちょっと、じいちゃんに話してくる!待ってて〜」
「じいちゃん!さっきの手紙雄英の合格通知だった!それでお祝いに鬼人とご飯行ってきてもいい!?」
「ん?うむ……いいぞ、楽しんできなさい……」
「もしもし?大丈夫だって、どこいく?」
「ん、あいよ、いつものファミレスでいんじゃね?安くてうめぇじゃん?それに、慣れてるから怖がられねぇし」
「ぷっ…そうだねじゃ今から向かうね!」
「あいあい、俺もいくわ」
笑うのを我慢しながら鬼人との電話を切ると急いで洋服を着替え家を後にした。
時間は十四時、ファミレスに到着。
ドリンクバーを頼み中で窓際の席で鬼人を待つ。
見えた、いつものでかい強面だ。
僕は窓越しに両手を大きく振る。
気づいたようだ、鬼人は表情を少し緩めファミレスに入ってくる。
「わりわり、誘ったのに遅れちまって」
「気にしないでいいよ、今日はお祝いだし。とりあえずドリンクバー頼んでるよ、鬼人何飲むー?」
「そりゃもう、コーラ一択!」
「だよね、おっけ、僕のもなくなったしついでに入れてくるよ」
僕は苦笑しながら伝えると席を立ち、ドリンクバーに向け歩き出した。
「お待たせ、ほいコーラ」
「せんきゅ、くぅぅ――うま、やっぱりこれっしょ!この喉越し最高だわ」
「何言ってんの鬼人、おじさんみたいだよ」席に腰掛け笑いながら僕は言う。
「いやいや、隷もわかんべ?この美味さ」
「いや美味しいけどさぁ、僕はそこまで………」
「ふぅ……コーラの美味さが分からんとは。隷、お前は人生の6……いや、7割損してる!」
「そんなに!!?」
「おう!そりゃもう、コーラこそが人生と言っても過言ではないかもしれん」
始まった。鬼人のコーラトーク……
本当に好きなのだろう。めちゃくちゃ布教してくるのだ。僕も飲みはするけど……あそこまでハマるのは無理がある。放置するといつまでも語り続けるので僕は話を変える為鬼人に話しかける。
「ここに集まったのは合格祝いっしょ?それじゃあ、乾杯しよか」
「だからコーラは……。ん?おう、そういやそうだわ。なくなったから入れてくる。ちょい待ってくれ」
鬼人は席を立ちドリンクバーに向かう。
様子を伺う。あ、鬼人が男性客と遭遇した。
「っひ、鬼……」
「……ちょいわりぃ、コーラ入れさせてくれや」
「……ど、どうぞ……」
男性客はビクビクしながら鬼人に譲る。
「おう、ありがとな!」
「びくっ……」
鬼人がコーラをいれて戻ってきた。
「お、戻ってきた。相変わらず知らない人には怖がられるね」
「んー、もう慣れた。それに、ヒーロー科受かったんだ。いつまでも怒ってられねぇしな」
「たしかに、見た目は仕方ないもんね」
「さて、そんな話してねぇで乾杯すっぞ!乾杯!」
「そうだね、それじゃあ……」
「「かんぱーい!」」
「さすがコーラ……染み渡るぜ……」
「いやもう……ほんとに……まぁ、いいや……そんなことより改めて鬼人合格おめでとう!」
「おう、隷もおめでとさん!お前は試験……あー……気絶して……わりぃ……」
「いいって、気にしてないから。そう、気絶しちゃったんだよねぇ。試験ってこと忘れてて全力でやりすぎた。やっちゃったよ……あはは……」
「いやまさかいつも冷静な隷がねぇ……あんときゃ驚いたわ」
「ハイ、エエ、自分の試験終わった後にわざわざきてくれたみたいで……ご迷惑をおかけしました」
ぺこりとお辞儀をする。
「ま、いいさ、ダチが倒れたって聞いたらそりゃいくだろ」
「ほんと、ありがとね。」
「んと、鬼人の方はたしか入学試験にいた人たちもいたんだよね」
「おう、あの後ワカメと女とは話したぜ。名前は確か……緑谷と麗日だったかね」
「へぇ……そんな名前だったんだあの2人」
当然恍ける。僕が転生してきたことは誰にも話してはいない。それに、話しても信じられないだろうし……
「で、確か、緑谷君があの0Pの仮想敵ぶっ壊したって聞いたけど……」
「そうそう!ありゃ凄かったぜ。拳で一発ドゴンって感じだ。まるでオールマイトみてぇでよ。漢なら憧れるわな!」
「確かに……圧倒的パワーには浪漫感じるね」
「だろ?そういや、隷達のグループも0P倒したって聞いたわ」
「あー……んー……倒したと言えば倒した……と言いますか」
「なんだ、歯切れわりぃな。どしたよ」
……んー……まぁ、鬼人ならいいか。
僕は鬼人に会場で起きたことを話した。
「おいおい、マジかよ。いいじゃねぇかそっちのグループ、一度はビビって逃げたやつが最後協力しただぁ?最高じゃんかよ。アレに立ち向かえたやつ隷含めて四人もいたのかよ。しかも、内二人は女の子ときた」
「たぶん、あの三人は合格するだろうし。会う機会はあると思うよ。」
「おう、そうなることを願うわ!そんな漢気ある奴らと話してみてぇしな」
「で、ぶっつけ本番でいつもの二倍の高さから落下攻撃したら、やっぱり無理があって怪我したんか……いや、お前……バカだろ……」
「返す言葉もありません……」
「まぁ、終わったことを言ってもしょーがねーし。合格自体はしたからいいだろ」
鬼人はそう話を切り上げると
「んー!よし、いい時間だしぼちぼち帰んべ。じいちゃんの晩飯作るんだろ?」
時計を見る。空も暗くなっており、もう十七時になるところだ。
「あ、そうだね。それじゃ解散しようか」
お互いに会計を済ませた後ファミレス前で
「ほいじゃ、今度は雄英で」
キザな感じで太陽を背にしながら鬼人は帰って行った。
「うん、雄英出会おう!」
僕も返事をして帰路に着く。
んー!楽しかった。
悲劇のない日常はここまで。
これから先は雄英高等学校での話。
学校に入学しそこで僕が笑って泣いて悲しんで嘆いて成長して。そして最期にはミッドナイトを救う話だ。
次回からは今度こそ雄英高等学校編入りますから…
絶対入るから……