最近時間はかかってますが文章量が4000〜5000ほどで安定してます…
今後も頑張ります!楽しんでいってください
39話
儚い世界から目覚め、僕は現実に戻ってきた。
テーブルの上ではなくベッドで寝ていた、ということは誰かが運んでくれたのだろう。
「……ここは、……そっか。そうだった」
ここにいる理由、なぜ閉じ込められているのか。
説明はないが察することはできる。今の僕は危ういと思われたのだろう、かなり自罰的になっている自覚はある。だけど、それでもやらなくてはならないのだ。
窓を視線を向ける。外が見える部分は全て鉄板のような物で覆われていた。どうやら僕の個性対策をしているみたいだ。視認範囲の置換。置換するものの全容を視認しなくてはいけない以上こうされると個性を使用しての脱出は不可能。
「まぁ……そんなことされなくても逃げないんだけど……」
そう、僕はヒーローにならなくてはいけない。ミッドナイト……香山さんを救い、鬼人の代わりに一人でも多く泣いている誰かを救うそんなヒーローに。
だから何があろうとここから逃げることはしない。
「あぁ、頭がすっきりしてるなぁ」
僕の思考を阻害していた何かは消え去ったようだ。
香山さんがやはり何かをしていたのだろうか。
さて、どうしようかな。少なくとも雄英に戻る為には香山さんの説得が必須。ここにいたままでは香山さんのピンチに駆けつけることすらできない。
思考の渦に飲まれかけていると扉の開く音、そちらを振り向く。
「あら……おはよう。置換くん」
扉の前には香山さんがいつも通りの様子で立っていた。
「香山……さん……」
あまりのいつも通りさに思わず言葉が詰まってしまった。また思考を鈍らせられるかもしれない可能性を考慮し少し身構える。
香山さんは笑いながらしないわよと近づいてきた。
「えぇ、ミッドナイトこと、香山睡さんよ」
「おはよう……ございます」
「うん、おはよ。で、調子はどう?」
「……いいですね。頭がすっきりしてます」
香山さんは少しほっと一息ついた。
「そっか、よかった。ほんとにたまにだけど……数日ぼーっとなる人もいるからさ、ちょっと心配だったのよね」
「え、そんなのを生徒に……」
香山さんは僕の言葉に対し舌を少しだけ出して手を合わせ謝ってくる。
「あはは……ほんとごめんね?置換くんほんとにやばそうだったからさ」
可愛――って、これじゃあいつもと変わらないじゃないか。僕は、変わらなきゃいけない。
「っ――まぁ……いいですけど。それで、僕いつまでここにいればいいんです?」
「んー、まぁ私が大丈夫って思えるまでかなぁ。外の情報も他の人との接触も今はダメってなっちゃったから」
「外の、情報も……ですか」
「そう、だからつまらなかったら言ってね。好きな漫画でもアニメでも何でも用意するわよ」
「リハビリのプログラムも貰ってるし、そっちがやりたいならそれでもいいけど――」
リハビリプログラム!元にとは言わないけどせめて近い動きができるレベルには整えておきたい。
「っ――お願いします!ちゃんと動けるようになりたいんです」
香山さんは恍惚とした表情を浮かべている。
「いいわね。うん、いいわ……その青臭さ、すっごい好み」
だが、直後思い直したように咳払いをすると真面目な表情で言った。
「でも、過剰なリハビリはダメよ、かえって身体を壊すことになる。だから――約束できないなら残念だけど、教えられないわ」
僕は苦渋の表情で返答を返す。
「大……、丈夫です。プログラム通り、やります」
仕方ない、筋力も大事だけど片腕がない以上今までと同レベルないし更なる精密性も必要だから――
「うん、信じるわね。置換くんは嘘つかないって――
と、言っても今日はもう遅いからゆっくり休んで明日から始めましょ」
「はい、よろしくお願いします香山さん――」
こうして僕のリハビリ生活が始まることとなる。
♦︎♦︎♦︎
翌日僕は自身のベッド上で香山さんを待っていた。
というのも、昨日「準備ができたら置換くんの部屋行くから横になって待っててね」と香山さんから伝えられていた。
部屋に時計の音が響きわたる。時計の針は八時を指している。
「まだ、起きていないのかな……」
………………さらに針は進む。現在の時刻十時
「…………たぶん、今日は休日なんだ。だから寝てる……のかも」
………………扉の開く音、時計の針は十二時を指している。香山さんは何事もなかったかの様にいつもと変わらぬ笑顔で僕に話しかける。
「あの……」
「おはよう、置換くん。朝ごはん作ってきたわ。リビングにきて一緒に食べましょう」
「あの…………今お昼……」
「朝、ごはん、食べましょう、ね?」
「あっ、ハイ……行きます……いただきます」
お昼……朝ごはんの献立はトーストとサラダ、スープだった。胃に優しかった。
時刻は十三時、やっとリハビリしてもいいみたいだ。
僕の部屋のベッドのすぐ横にある収納を香山さんの持つ鍵で開くとそこは下り階段があった。真っ暗であり先は見通せないほどだ。
「……隠し、部屋」
「そう隠し部屋、まさかあるとは思わなかったでしょ?しかも自分の部屋に――」
「そう、ですね……」
香山さんの先導の元僕は壁に左手を添えながら階段を降りていく。
「結構、深いですね……」
「そうね……まぁここ雄英だし」
…………………………?
今おかしな言葉が聞こえた気が――
「?ごめんなさい、聞き取れなかったです。えっと、ここって何処なんですか?」
「ここはね、雄英にあるシェルターの一つなのよ。こう言うこともあろうかとって感じで……なら、トレーニングルームもあるわよね」
「雄英……?」
「そうそう、国立雄英高等学校」
えええぇぇぇぇぇぇーーー!!!?
驚きで一瞬思考が止まる。そうだよ、なんで僕は香山さんの家とか思ってたんだ。そりゃそうよ……生徒とはいえ男を家に入れるわけないじゃん……
「先生である他ヒーローもだれかしら常駐してるから安全面は保証されてるのよ」
光が見えてきた。
「さ、そろそろ着くわよ」
香山さんのその言葉聞き、光の先を見るとそこには教室と同じくらいの広さのトレーニングルームがあった。
「広い……」
「そう、今は無理だけどよくよくは戦闘訓練なんかもやる予定だから……ある程度広くないとね」
「さて、と。じゃ、早速だけどリハビリね。日常的な行動は上で過ごしながらやるからいいとして……ここでは肩と肘のストレッチ、腕の筋肉の強化……この辺りかな。後々義手って話も出ると思うからどんな機能をつけたいか考えておいてね」
「…………義手……」
義手、か。汎用性を求めるか特化させるか。全部取りして都度換装するのもありかもしれない。
「私の真似してねー」
香山さんの方を向き、そのまま真似をする。
肘と肩のストレッチみたいだ。
「はいっ」
♦︎♦︎♦︎
ストレッチをした時間は十分ほどだろうか、少しの時間だったのに疲労感がすごい。病院の時はもっと動いていたはずなんだけど……もしかしたら精神的に麻痺していたのから気にならなかったのかもしれない。
「ね?ちゃんとやると結構、体力使うでしょう?」
僕は香山さんのその言葉に返事を返した。
「そう……ですね」
「ストレッチちゃんとやったし今度は筋力トレーニングね」
「んー、病院では片手で腕立てやってたって聞いたしそれもう一回やってみようか。とりあえず三十回やってみて」
「はい」
僕は膝をつき左手を地面へつける。そのまま身体を起こし左手だけで腕立ての姿勢に入った。
病院でもそうだったが片手だとなかなかバランスを取るのが難しいのだ。筋力も相応に必要だ。
左肘を曲げ、身体を地面ぎりぎりまで下げる。
「一……二っ、三……、四」
……こんなに僕の身体は動かないものだっただろうか。
「五、六……七……、八」
ダメだ、もう動かない。なんで……?
いや、せめてもうすこし――
「九……、十っ!」
十回やったところで身体が限界に達し、支える腕を失った身体はそのまま地面に落ちた。
「うん、そんなところかな」
香山さんは想定通りという表情で言葉を続けた。
「まず、置換くん。病院で左腕に負荷かけ過ぎちゃったみたいね。しばらくは安静にして日常動作とストレッチ以外しないでください」
「理由は、分かるわね?」
「……は、い」
「素直でよろしい。素直な子の方が好感が持てるわ」
「じゃあ、今日のリハビリはおしまい。ここからだと運ぶのは大変か……ちょっと身体だけ拭いて着替え終わったら、布団持ってくるわね」
「……あり、がとう……ございます。」
♦︎♦︎♦︎
香山さんは一度トレーニングルームから出ると少し時間をおいて着替えとタオル、お湯を持ってきてくれた。
「さ、やりましょうか」
その言葉と共に腕をまくりお湯に浸したタオルを絞る香山さん。
「……?…………??」
状況がよく理解できない。
僕が自分で拭くんじゃ……?
「さーてと、手だして置換くん。熱くない?」
香山さんはタオルを僕の手に当ててきた。
「あ、はい。丁度いいです……」
「身体拭くわね〜服脱いで、はーいばんざーい」
「え、あ、えぇ?うえ、えぅ?」
力の入らない身体は香山さんのやりたい様に動かされる。
服を脱がされ上裸にされた。
「おぉ〜意外とがっしりしてるわね。男の子っぽくていいじゃない」
香山さん……推しが、体温を感じれるほど近くに来ていて良い匂いもして――僕の頭は真っ白になった。
「…………」
「それじゃ拭くわね〜」
香山さんは僕の背中から拭きだした。そして背中を拭き終わると右腕の残った肘から上の部分に手を触れる。
「ごめんね」
ぼそりと悲しげな声が聞こえた。
「え――?」
僕は振り向き香山さんの表情を伺う。しかし既に彼女は笑顔を浮かべていた。
「んー、あれね。流石に気まずいわね。何か話しましょ。何が良いかしら……」
そう言いながらも手は止まらずに僕の身体に滴る汗をタオルで拭き取ってくれている。
「んー、あ。置換くんどんな女の子がタイプなの?」
…………?好きなタイプ……?僕のタイプは、好きなのは――
「好きなタイプ……」
「あ、待って待って。当てるわ。置換くんの好きなタイプは――」
「――そう!明るい子?」
「いえ……違いますけど……」
「明るい子良いと思うけどなぁ……」
「で、どんな子がタイプなの?」
「いや、それはちょっと……言えないですね……」
「なーんだ。残念」
「――拭き終わったわ。置換くんのタイプは気になるけど……まぁ、今度問い詰めることにします」
香山さんは布団を敷き僕をそこに寝そべらせてくれた。
「さ、おやすみなさい。寝るまでは手を握っててあげるから安心してね」
……?安心?
「置換くん、夢見悪いのかいつも飛び起きてるのよ、知ってた?」
そんな香山さんの声を聞きながら僕は眠気に抗えず夢の中に旅立った。
ある少女の記憶
「ねぇ、なんでおいていくの、おとおさん、おかあさん。だめだよ、わたしを、おいていかないでよ」
少女のその言葉を他所に二人の男女はまっすぐと進み続ける。
少女は先に進もうとするが身体が動かない。
二人の男女の身体がだんだんと透け始めた。
消える直前二人の男女は何かを少女に伝えた。
「 」
「わかんないよ、そんなの。わたしまだ誰も好きになったことなんて──」